井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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SFC生なら読んでおきたい10冊の本 ― 創造的であり続けるために (1)

2013年秋に、SFC生協で「SFC生なら読んでおきたい10冊の本」というブックフェアが開催されました。教員が、あるテーマのもと、SFC生におすすめする本を10冊選ぶという企画で、その第一弾として僕が10冊選びました。僕が掲げたテーマは「創造的であり続けるために」というものです。

こういう企画はぜひ現場で本を手に取ってほしいので、僕はネットに情報を書かない方針なのですが、フェアが終わったので、ここに選んだ本と理由を書き残しておきたいと思います。10冊のうち数冊ずつ取り上げて紹介していきます。

興味が出た本は、ぜひ入手して読んでみてください。

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『未来を創るこころ』(石川 忠雄, 慶應義塾大学出版会, 1998)

1980年代に慶應に新しい学部(後にSFCで開設される総合政策学部・環境情報学部のこと)をつくることを構想した当時の塾長 石川忠雄先生の本です。石川先生は、4期16年間慶應義塾の塾長を務められ、SFCやニューヨーク校の開設を含め、いろいろな変革をされました。

本書の特に第I部「教育を語る」には、どのような社会の変化のなかでSFCがつくられ、何が期待されているのかが書かれています。例えば、こういうことが語られています。「日本は自らの進路を自分の力によって切り開いていかなければならない状態に入ってきたわけです。そういう状況に立ち至った時には、他から学ぶということは依然として大切ですが、ただ知識が豊かであるということだけでは十分ではありません。自分の頭でものを考え、その道を探さなければいけない。そういう時代に入ってきているのです。したがって、個性を引き出し、優れた創造性を養い、考える力を強化する教育に変わっていかなければなりません」。

また、「今日、個別科学の領域からだけでものごとが理解できるという時代は過ぎていると思います。……いろいろな個別科学の最先端の成果をうまく組み合わせることによって、新しい時代に対応するのに必要な人間の能力をどうやってつくるかという角度から学部をつくってみることも必要なのではないでしょうか」と。

この部分を読んだだけでもわかりますが、本書は、SFCの存在意義を再認識し、自分たちがどのような環境で学んでいるのか、自分が何をすればよいのかを考えるよいきっかけになると思います。


『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法』(井庭 崇 編著, 宮台 真司, 熊坂 賢次, 公文 俊平, 2011)

この本を選んだのは、SFC生は「社会システム理論」を知るべきだと言いたいわけではなく、特に第2章の熊坂賢次先生との対談である第2章「新しい時代のリアリティ」を読んでほしいと思ったからです。

この対談で僕らは「新しい時代のリアリティをとらえるためには、新しい分析装置が必要だ」ということを語っているのですが、特にSFC生には、このことをしっかり考えてほしいと思っています。

熊坂先生はこう言います。「社会学者の多くが、若い研究者も含めて、新しい分析装置の必要性についてわかっていないというか、やりたくないというか、相変わらず昔ながらのことをやり続けている。……僕が三〇年前にしていたことをいまだにやっていると聞くと、明らかに違うぞ、と思う。これだけ時代が変化したのに、それを解析するツールに変化がないのは、素朴におかしいと思うべきです」と。そして、「新しいものだけが有効な分析装置だとは言わないけれども、そこを十分にわかったうえで、新しい時代に合うかたちの新しい分析装置を持つ必要があると思います」と言います。

その流れで、熊坂先生はインターネット上の情報を分析するための方法・道具を構築した話、僕が創造を支援するメディアとしてパターン・ランゲージに取り組んでいる話へとつながっていきます。これらはあくまでも僕らの時代ですが、みんなにとっての「新しい時代のリアリティをとらえるための新しい分析装置」とは何かを考えてほしい。そして、おそらくそれは未だない新しいものであるだろうから、そのような「新しい分析装置」を自分たちでつくっていってほしい。SFCはそれができるキャンパスであり、歓迎されるカルチャーだと思います。

なお、第2章のほかにも第1章「社会を変える知と方法」(宮台真司×井庭崇 対談)も読んでみてほしい。インターディシプリナリ(分野横断的)トランスディシプリナリ(超領域的)な研究の意義と難しさの両面が語られています。また第3章「情報社会のゆくえ」(公文俊平×井庭崇 対談)では、情報社会のこれまでとこれからについて語られているので、この章も学ぶことが多いのではないかと思います。


以上、今回は、選んだ10冊のなかから2冊だけ紹介しました。
残りの8冊についても、順次紹介していきます。お楽しみに!
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プレゼンテーション・パターン・ワークショップ@Developers Summit

2月13日(木)に目黒雅叙園で開催される「Developers Summit 2014」(デブサミ2014)で「プレゼンテーション・パターン・ワークショップ」を行います。

「プレゼンテーション・パターン・ワークショップ」(井庭 崇)
2014年2月13日(木)17:25~18:45 @目黒雅叙園
Developers Summit 2014(主催 株式会社 翔泳社)


自分の考えや新しいアイディアについて魅力的に語ることが重要となっている現在、「伝える」だけではなく、聴き手の発見や行動を促すような創造的なプレゼンテーションが求められています。本ワークショップでは、プレゼンテーション・デザインのパターン・ランゲージである「プレゼンテーション・パターン」を用いて、創造的プレゼンテーションの秘訣に迫ります。

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Developers Summit 2014 ホームページ
http://event.shoeisha.jp/devsumi/20140213/

「プレゼンテーション・パターン・ワークショップ」情報
http://event.shoeisha.jp/devsumi/20140213/session/369/

申し込み
https://event.shoeisha.jp/order/apply/29/
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『三田評論』に『パターン・ランゲージ』本の「執筆ノート」を書きました。

慶應義塾機関誌『三田評論』(2014年1月号)の「執筆ノート」のコーナーに、『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』について書きました。ぜひご覧ください。

  • 井庭崇, 【執筆ノート】『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』, 三田評論, 2014年1月号, 2014

  • Mitahyoron.jpg


    『三田評論』
    http://www.keio-up.co.jp/mita/
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    【告知】井庭崇×中埜博 対談「創造的なコミュニティをつくるための方法論」

    『パターン・ランゲージ』刊行記念トークイベントとして、下記のような対談イベントを行います。

    井庭崇×中埜博 対談「創造的なコミュニティをつくるための方法論」
    2014年1月23日(木) / 代官山蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース

    詳細情報&申し込み→ http://tsite.jp/daikanyama/event/003040.html

    応急処置的な社会から、創造的な社会にシフトするためには何が必要か? 組織や地域、社会が創造的に活動するための基盤となる「パターン・ランゲージ」の方法とその可能性について、『パターン・ランゲージ ―― 創造的な未来をつくるための言語』の著者である井庭崇と中埜博が語り合う。デザイン(設計)の本質、これからの町づくりの方法論、いきいきとした生き方のデザイン、創造社会(クリエイティブ・ソサエティ)へのヴィジョンなど、これからの社会のあり方と生き方について考えるためのヒントが盛りだくさん。お楽しみに!

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    井庭 崇(いば・たかし)
    1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、同大学大学院政策・メディア研究科博士課程修了。博士(政策・メディア)。千葉商科大学政策情報学部専任教員(助手)、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院 Center for Collective Intelligence 客員研究員等を経て、現職。編著書・共著書に、『複雑系入門――知のフロンティアへの冒険』(NTT出版、1998年)、『社会システム理論――不透明な社会を捉える知の技法』(慶應義塾大学出版会[リアリティ・プラス]、2011年)、『プレゼンテーション・パターン――創造を誘発する表現のヒント』(慶應義塾大学出版会[パターン・ランゲージ・ブックス]、2013年)、『パターン・ランゲージ――創造的な未来をつくるための言語』(慶應義塾大学出版会[リアリティ・プラス]、2013年)など。

    中埜 博(なかの・ひろし)
    1948年生まれ。合同会社CEST代表。コミュニティ・アーキテクト。早稲田大学理工学部建築学科卒業。カリフォルニア大学バークレー校環境設計学部建築学科大学院修了。環境構造センター在日代表として、クリストファー・アレグザンダーの日本での建設プロジェクト「盈進学園プロジェクト」に参加(1982~1986年)。他にも、東京都台東区の谷中銀座商店街でのプロジェクト(1997~1999年)など、アレグザンダーの考え方にもとづく町づくりを手がけている。著書に 『パタンランゲージによる住まいづくり』(井上書院、1988年)、監訳書に クリストファー・アレグザンダー『パタン・ランゲージによる住宅の生産』(鹿島出版会、2013年)。電子ブックレットに 『やわらかいパタンランゲージ』シリーズ(2009年)。建築作品多数。

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    おすすめ本を選び、POPを書いたブックフェアを開催中!@代官山蔦屋書店

    代官山蔦屋書店では、僕がおすすめ本を選び、POPを書いたブックフェアを2つ開催中です。

    まずひとつは、昨年から継続中の『プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』(井庭崇+井庭研究室, 2013)の棚で、一緒に読むとよい10冊を選び、POPを書きました。約1年間にわたり、この棚は好評とのことで、うれしい限りです。

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    また、新しい棚は、『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』(井庭崇 編著, 2013)の棚です。一緒に読むと理解が深まる30冊を選びました。パターン・ランゲージの考案者 クリストファー・アレグザンダーの邦訳書もすべてそろえました。

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    ぜひ、実際に書店に行って、手に取って見てみてください。

    代官山蔦屋書店 (代官山T-SITE)
    http://tsite.jp/daikanyama/access/
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    コツコツと取り組む「職人」的な一年に(2014年の抱負)

    今日から始まる2014年は、コツコツと取り組む「職人」的な一年にしたい。

    コツコツ取り組む領域は3つ。


    ひとつめは、本の執筆

    今年は3冊出したい!

    書きたい本がどんどん増えているので、本当は5冊くらい書きたいのだけれども、今年中に出版まで行けるのは最大で3冊、というのが現実的なラインだと思う。

    ひたすらコツコツと書き続けたい。


    ふたつめは、英語力強化

    「伝わればいいんだ」というレベルは卒業して、説得的で共感的なコミュニケーションを目指したい!

    自分が研究でやっていることの水準に、英語力が到底見合わなくなってきたので、かなり急を要する。

    英語で書くこと、話すこと、読むこと、聴くこと、そのすべてをしっかり身につけたい。


    みっつめは、身体づくり

    中長期的に生産的・創造的であり続けるために、タフな身体をつくる!

    今年40代に突入することを考えると、身体づくりの習慣をしっかりと確立したい。

    1、2年前にやっていたようなランニングをまたやろうかな、と思っている。

    ネガティブな部分を減らすという「守り」の姿勢ではなく、構築的な「攻め」の姿勢でいきたい。



    1年は365日しかない。

    たかだか365日しかないのだから、なんだかんだと理由をつけてサボっていては前に進むわけがない。

    年末、ついにそのことを実感した。


    今年も夏くらいまで講演やワークショップなど、すでにいろいろ予定が入っているけれども、そういう人前に出る仕事以外は、裏に籠ってコツコツとやっていきたい。

    「最近会わないな」と思ったら、籠ってるんだなと思って、放っておいてやってください。


    それでは、今年もがんばります! みなさん、よろしくお願いします!
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