学会発表「書籍販売市場における上位タイトルの売上分析」
5月17日に行われた情報処理学会MPS(数理モデル化と問題解決)研究会で発表した研究の2つめは、「書籍販売市場における上位タイトルの売上分析」というものだ。
これは、日本における書籍販売市場の実データを解析した研究だ。書籍販売市場は、売れているものは爆発的に売れているが、たいていのものはほとんど売れていないというのが現状だ。クリス・アンダーソンのロングテール論などでもこのような話は有名だが、それが実際にどのような分布になっているのかを実データで示した研究は国内外でもほとんどない。
そのような分布を明らかにするために、僕らは日本全国の書店のPOSデータを用いて実証的に示したというわけだ。結果からいうと、販売冊数と順位の分布はほぼ「べき乗分布」に従っていた。このことは年間でみても、月間でみても当てはまる。
分布がいつも一緒ということは、非常に興味深いこと。書籍販売市場では、毎年約7万7千点の新刊が出ており、書籍の顔ぶれは日々変わっている。しかも、ふつう同じ本を2冊以上買う人はいないので、買っている人の顔ぶれもどんどん入れ替わっている。しかし、それにもかかわらず、販売冊数と順位の分布はいつも同じ形をしているということは、実に不思議なことなのである。
まとめると、個々の書籍、個々の購入者というレベルは絶えず入れ替わっているのに、販売冊数-順位分布という市場レベルでは、ある法則性が維持されている。これは、まさにこの法則性が、市場レベルの「創発」特性だということを示している。
この研究では、その販売冊数-順位分布の特徴について解析したのだ。詳しくは論文を参照していただくとして、今回わかったことは、次の2点。
1)売上の上位1.5%の書籍が、市場の約半分のシェアを占めている。
2)売れるものがますます売れるという傾向がある。
どちらもなかなか興味深い。なぜこのような傾向が生じているのかについては、今後の研究で明らかにしていきたい。
●井庭 崇, 深見 嘉明, 吉田 真理子, 山下 耕平, 斉藤 優, 「書籍販売市場における上位タイトルの売上分析」, 情報処理学会 第64回数理モデル化と問題解決研究会, 大阪, 2007年
論文PDF
また、この市場レベルの創発特性ということについては、以下の雑誌にも書いた。オンラインで読めるので、こちらもご覧ください。
●井庭 崇, 「新しいシステム間にもとづく思考と実践」,『Mobile Society Review 未来心理』, vol.009, 2007年3月
論文PDF
これは、日本における書籍販売市場の実データを解析した研究だ。書籍販売市場は、売れているものは爆発的に売れているが、たいていのものはほとんど売れていないというのが現状だ。クリス・アンダーソンのロングテール論などでもこのような話は有名だが、それが実際にどのような分布になっているのかを実データで示した研究は国内外でもほとんどない。
そのような分布を明らかにするために、僕らは日本全国の書店のPOSデータを用いて実証的に示したというわけだ。結果からいうと、販売冊数と順位の分布はほぼ「べき乗分布」に従っていた。このことは年間でみても、月間でみても当てはまる。
分布がいつも一緒ということは、非常に興味深いこと。書籍販売市場では、毎年約7万7千点の新刊が出ており、書籍の顔ぶれは日々変わっている。しかも、ふつう同じ本を2冊以上買う人はいないので、買っている人の顔ぶれもどんどん入れ替わっている。しかし、それにもかかわらず、販売冊数と順位の分布はいつも同じ形をしているということは、実に不思議なことなのである。
まとめると、個々の書籍、個々の購入者というレベルは絶えず入れ替わっているのに、販売冊数-順位分布という市場レベルでは、ある法則性が維持されている。これは、まさにこの法則性が、市場レベルの「創発」特性だということを示している。
この研究では、その販売冊数-順位分布の特徴について解析したのだ。詳しくは論文を参照していただくとして、今回わかったことは、次の2点。
1)売上の上位1.5%の書籍が、市場の約半分のシェアを占めている。
2)売れるものがますます売れるという傾向がある。
どちらもなかなか興味深い。なぜこのような傾向が生じているのかについては、今後の研究で明らかにしていきたい。
●井庭 崇, 深見 嘉明, 吉田 真理子, 山下 耕平, 斉藤 優, 「書籍販売市場における上位タイトルの売上分析」, 情報処理学会 第64回数理モデル化と問題解決研究会, 大阪, 2007年
論文PDF
また、この市場レベルの創発特性ということについては、以下の雑誌にも書いた。オンラインで読めるので、こちらもご覧ください。
●井庭 崇, 「新しいシステム間にもとづく思考と実践」,『Mobile Society Review 未来心理』, vol.009, 2007年3月
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