井庭研B2シラバス(2023春)「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」
井庭研B2シラバス(2023年度春学期)
「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」
■ 重要な情報
井庭研B2は、井庭研B1に追加で履修する仕組みになっています。そのため、必ず、井庭研B1シラバス(2023年度春学期)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」もよく読んで、エントリーするようにしてください。
エントリーの方法は、B1シラバスに記載があるので、それに従ってください。
(1) 「生態系を育みながら自然と共生していく」ための実践方法のパターン・ランゲージ作成
(2)「困難な状況のなかでもなんとか動き出して変化を起こしていくこと」のパターン・ランゲージ作成
(3)「勝利の追求と人間的成長の両立をするダブル・ゴール・コーチング」のパターン・ランゲージ作成
(4) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成
(5) 現地のロールモデルから学ぶ「フィリピンの若者が自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージ作成とそれを用いたワークショップの実践研究
(6) パターン・ランゲージを活用した「気仙沼市におけるまちのイメージ更新」の実践研究
(7) 組織のよさ・らしさの語り合いワークショップの開発と実践
■ Natural & Creative Living Lab(井庭研)とそのなかでのB2プロジェクトの位置付け
井庭研では、新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを開発し、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献することに取り組んでいます。目指しているのは、ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある「創造社会」であり、そのために、素晴らしい質の実践に潜む原理の解明と、その発見にもとづく実践支援の研究を行なっています。
井庭研では、土台となるB1(Foundation)に加えて、B2プロジェクトとして水曜日の午後(3〜6限)に集まって、研究プロジェクト実践を行います(時間割上は水曜6限となっていますが、B2プロジェクトに参加する人は、3限から夜まで授業や他の予定を入れないようにしてください)。みんなで、まとまった時間を取って、どっぷりとプロジェクト活動に浸ります。
■ 2023年度のB2プロジェクト一覧
2023年度に新規メンバー(および継続メンバー)の募集があるプロジェクトは、以下の通りです。各プロジェクトの概要については、本シラバスの中盤に紹介があるので、そちらも参照してください。
(1) 「生態系を育みながら自然と共生していく」ための実践方法のパターン・ランゲージ作成
(2)「困難な状況のなかでもなんとか動き出して変化を起こしていくこと」のパターン・ランゲージ作成
(3)「勝利の追求と人間的成長の両立をするダブル・ゴール・コーチング」のパターン・ランゲージ作成
(4) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成
(5) 現地のロールモデルから学ぶ「フィリピンの若者が自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージ作成とそれを用いたワークショップの実践研究
(6) パターン・ランゲージを活用した「気仙沼市におけるまちのイメージ更新」の実践研究
(7) 組織のよさ・らしさの語り合いワークショップの開発と実践
なお、昨年度からの継続プロジェクトで、新規メンバーを募集しないプロジェクトには、以下のものもあります(すでに内容的に大きく進んでいて、いまからのキャッチアップが難しいであろうと判断し、現在のメンバーのみで継続します)。
(8) 創造を巻き起こす「ジェネレーター」のパターン・ランゲージ作成(ライティング・シンボライジング・仕上げフェーズ)
(9)「楽天主義実践パターン」の社内導入と効果検証
■ そもそも「研究」とは
「研究」とは、「知のフロンティア」を開拓する営みのことです。人類全体で見たとき、これまでの歴史のなかで、誰かが調べたり試したりした結果、「既知の領域」が広く広がっています。しかし、それでもまだ人類にとって、その周辺に「未知の領域」が広がっています。
この状況で、学術的な「研究」は、その「知のフロンティア」を少しでも掘り進み、押し広げていく知識創造活動を行います。それは、多くの場合、苦労の多い作業となります。道なき道を、自ら道をつくりながら進んでいくことになるからです。しかし、そうすることで、ようやく人類で初めてその領域を開拓し、他の人たちに広く共有することができるようになります。このように、研究はとても創造的な活動です。まだ誰も知らない・実践したことのない、意義と付加価値のある成果を生み出すという創造実践なのです。
僕らが考える「よい研究」のひとつの基準は、その研究を行う人が、そのテーマに関心を持ち、思いと情熱を込めて取り組むことに加え、それが学術的意義と社会的価値につながるものであるということです。学術的意義があるというのは、これまでの学術研究・学問に新たな知見を積み上げるということであり、社会的価値とは、現在や未来の社会・他者に何らかの付加価値をもたらすものであるということです。これらの、「個人的関心」と「学術的意義」と「社会的価値」が重なるということが、よい研究のひとつの条件だと思います。このことを逆に言うと、「自分が興味がある」という個人的関心だけでは、「よい研究」にはならないということです(このことが個人研究の難しさにつながっています)。
■ 学年ミックスの複数人で組む研究プロジェクトの素晴らしさ
今見てきたような苦労の多い難しい「研究」を、一人で行うのは困難です。そこで井庭研では、複数人でチームを組み、プロジェクトとして行う、ということを中心にしています。そうすれば、それぞれの得意を持ち寄り、一人では越えることができない高さを、仲間とともに超えることができるようになるからです。これは、プロジェクト制の最大のメリットです。孤独に悩むことなく、仲間とともに話し合いながら、前へ前へと進んでいくことができます。ともに取り組んでいる仲間がいることは、とても心強いものです。
また、井庭研のプロジェクトは、学部1年生から大学院生までの「学年ミックス」で構成されることも特徴的です。経験が多い上級生はプロジェクトを引っ張り、経験が浅いメンバーは、そこで教わり学びながら成長していきます。プロジェクトは、単に「研究のユニット」であるばかりでなく、「学びの場」でもあるのです。
もちろん、低学年だからといって活躍の機会がないわけではありません。プロジェクトにはいろいろな貢献の領域があり、得意の持ち寄りによって高まるものなので、絵を描くのが好きであるとか、外国語が得意であるとか、文章を書くのがうまいなど、研究経験とは異なるスキルや得意が活きることがたくさんあります。
もしかしたら、授業のグループワークなどの経験から、誰かと組むことにネガティブな印象をもっている人もいるかもしれません。負担が偏ったり、途中でいなくなったり、いなくなったと思ったら最後の発表だけ現れてずっといたようなふりをする人がいたり、と、「それなら、自分一人でやったほうがよかった」と思った経験は、誰でも多かれ少なかれあるでしょう。しかし、井庭研ではそのようなことは起きません。みんな、研究プロジェクトに本気で取り組んでいるし、とても楽しんでいるからです。井庭研ほど、最高のグループワークが経験できる場はなかなかない、と言っても過言ではありません。
そのようなわけで、研究をプロジェクトで行うのはとてもよいので、新規メンバーには、「個人研究」ではなく、「プロジェクト」に入ることを強く勧めています。個人研究は、自分一人でやるので、たしかに自由度が高く、他の人との時間調整ややりとりなどの手間も省けてやりやすそうに見えるかもしれません。しかし、研究とはどういうもので、どう研究するのかなどに慣れるまでは、なかなか研究にならず、相当苦しむ人がほとんどというのが実際のところです。その点、プロジェクトであれば、1、2年間プロジェクトで研究経験を積むなかで、研究の基本を学ぶことができます。それから、自分の個人的な関心にもとづく個人研究を始めたり、大学院生になって自分のテーマのプロジェクトを立ち上げてリーダーになったりするだけの知識とスキルを身につけることができるのです。
井庭研には、多様なテーマのプロジェクトがあります。まずは、そのなかから最も自分の興味に近いプロジェクトを選んで、その場で活動しながら、成長していくとよいでしょう。プロジェクトは、居心地のよいサイズの、とても活発な創造の場なのです。
■ パターン・ランゲージの作成プロセス
井庭研では、ワークショップや新しい方法・道具などをつくる研究、創造的なコミュニティの研究など、いろいろなアプローチの研究を行っていますが、多くのプロジェクトでは、パターン・ランゲージの作成に取り組んでいます。国内外にパターン・ランゲージの研究者・実務家はたくさんいるのですが、世界で最もパターン・ランゲージをつくり、集中して研究しているのはSFCの井庭研であり、その先端性と経験を活かして研究することができるためです。
井庭研ではこれまで15年間パターン・ランゲージの作成プロセスを開発・洗練させてきました。その作成プロセスは、以下の通りです。
まず最初に行うのは、パターンの要素となる情報を得て、それをとりまとめる「パターン・マイニング」です。「マイニング」(mining)というのは「掘り起こす」ということで、ここで掘り起こすのはパターンを作成するための「パターンの素材」です。パターンの素材は、実践者との対話を通じて掘り下げ、語りから掘り起こしていきます。この掘り起こしのための対話を「マイニング・ダイアローグ」と言います。実践者に、その実践においてよい結果を生むために「何をすることが大切か」(what)や、それは「具体的にはどうやるとよいのか」(how)、「それはなぜ大切なのか」(why)について聞いていきます。
パターン・マイニングでは、たいてい15〜20人くらいの実践者に話を聞き、数百のパターンの素材を得ることになります。これらの素材は、種類もサイズもばらばらな寄せ集めになっています。そこで、一つひとつの素材の中にある本質的な意味をつかみながら、似ているものを寄り分けて、似たもの同士のグループ分けをしていきます。これを、「クラスタリング」と言います。クラスタリングの結果、だいたい数十から百程度の「パターンの成分」にまとまります。
次に、ランゲージ全体の体系を編み上げます。クラスタリングで得られた「パターンの成分」を眺めて、どのようなものがあるのかを概観したのちに、視点を変え、全体から分化させるように全体像を捉えていきます。これを「体系化」と言います。体系化が終わるときに、だいたい30から40程度の数にまとまるようにします。この段階のものを「パターンの種(たね)」と呼んでいます。
そこから、「パターン・ライティング」の段階に入り、「パターンの種」を育てていくことになります。最初にやることとしては、それぞれの「パターンの種」について、「どういう状況(Context)で、どういう問題(Problem)が生じやすく、そうならないためにどうするとよいのか(解決: Solution)」という形式でその本質を捉えて記述することです。この文章を、Context、Problem、Solutionの頭文字を取って、「CPS」文と呼んでいます。CPS文は、そのパターンの幹にあたります。CPS文は、プロジェクトのメンバーで何度も確かめ合いの対話を行い、みんなで確認し、納得がいく記述になるまで、必要な修正を行っていきます。
その後、CPS文の幹に枝葉をつけていきます。「その問題が生じるのは、背後にどのような諸力(フォース:Forces)が働いているからか」や、「その解決は、具体的には例えばどうやるとよいのか(アクション:Actions)」、また、「それをするとどういう結果(Consequences)になるのか」を明らかにし、記述していくのです。
これらの記述も、何度も何度もプロジェクトメンバーで確かめ合いの対話を行い、本質が記述できているか、わかりやすい誤解のない表現になっているかなどを検討して、洗練させていきます。そして、書き上がりつつある段階で、実践者にそれを見せて「内容が合っているか」や、「表現が実際の感覚に近いかどうか」などを確かめ、記述を確かなものにしていきます。
このパターン・ライティングの後半から並行して走らせるのが、「パターン・シンボライジング」です。パターンの内容のイメージをつかみやすく、かつ魅力的に伝わる象徴的に表現をしていくのです。具体的には、パターンの名前(パターン名)をつけるのと、そのパターンの内容のイメージを伝えるイラストを描いたり、パターンの記述を読みたくなるキャッチコピーのような導入文を書いたりします。
パターン・シンボライジングでは、魅力的に象徴的に表現するということで、木々に花を咲かせるということにあたると言えます。一つひとつの異なる木に異なる花を咲かせていくのです。それらには統一感はありますが、個々には個性があるような花を咲かせていきます。人々は、その花の魅力に惹かれて、一つひとつの木に近づいてくれることになるわけです。
それから最終段階として、パターンの文章と名前とイラストなどをより調和がとれたものにするとともに、ランゲージ全体の整合性や調和の微調整、物語性の質感を宿らせるなどの仕上げをしていきます。こうして、1〜2年で数百時間の時間と労力をかけて、一つのパターン・ランゲージが完成します。
パターンの種だったものが、幹と枝葉がついた一本の樹木となり、それらがたくさん集まり、森になるのです。パターン・ランゲージの読者は、その森とともに生き、それぞれの実践の成果(fruit = 果実、収穫)を得ることになるわけです。
以上のようなプロセスの進行やそれぞれのステップでの具体的なやり方をマスターする必要があるので、いきなり個人研究ではなく、プロジェクトに入ることをおすすめしているという理由がよくわかるのではないかと思います。
しかも、井庭研では、パターン・ランゲージの作成は、一人でつくることを避けた方がよいと考えています。一人よがりなものになってしまうリスクがあるからです。プロジェクトで、本質はこれでよいだろうかとみんなで確かめ合い、どうしたらよりよい表現になるだろうかと話し合う ------- そういうことを繰り返していくなかで、パターン・ランゲージは、多くの人に受け入れられる普遍性を持つものに近づいていきます。
そして、こうして仲間とともに作品をつくり上げることの喜びは、とてつもなく大きく、素晴らしい体験になります。井庭研のプロジェクトのこの創造の深い喜び・面白さを、ぜひみんなにも味わってほしいと思っています。
■ 新規メンバー募集があるプロジェクトの紹介
以下の通り、井庭研のプロジェクトには、多様なテーマがあります(各プロジェクトは、井庭や大学院生がリーダーをします)。自分の興味・関心に近いプロジェクトを探してみてください。
(1) 「生態系を育みながら自然と共生していく」ための実践方法のパターン・ランゲージ作成
近年、産業や日々の暮らしなどの人間活動によって、自然環境は汚染し、数々の種は絶命し、地球の生態系はどんどん崩れてきています。そんななか、「自然農法」や「パーマカルチャー」「協生農法」など、生態系を育んだり拡張したりする方法が研究され、実践されています。そこで、本プロジェクトでは、そのような研究や実践から学び、生態系を育みながら自然と共生していくための実践方法のパターン・ランゲージの作成に取り組みます。同時に、生態学に関する文献も読み、自然の構成要素それぞれの機能や、それらの関係性によってつくり出される自然システムへの理解も深めていきます。自然と人間が調和し、ともに豊かになる未来をつくっていきたい人、是非一緒に研究していきましょう!新規メンバーを2〜3人程度募集します。[リーダー:林 聖夏]
(2) 「困難な状況から少しずつ動き出して変化を起こしていくこと」のパターン・ランゲージ作成
現代社会では、いろいろなところで、社会的に困難な状況で生きていたり、対人関係のなかで息苦しさを感じていたりする人たちがいます。その状況は個人の力では到底変えられない「動かし難い」状況のように感じられ、ほとんどの人が「嫌だけれども、仕方がない」「困っているが、変えられない」と思うのも無理はありません。しかし、そのような状況でも、ごく一部に、なんとか状況を変えていこう、打破しようと動き出す人もいます。そのことが起点となり、変化が始まることがあるです。そういう人たちは、いったい、何をどのように考え、どうやってその困難ななかで動き始めることができたのでしょうか。本研究では、自分の置かれた状況を変えたり、社会的な問題を解決したりした人たちの「最初の段階」にフォーカスします。そこでは、おそらく、単に物事の進め方・働きかけ方をうまく工夫するというだけでなく、自分の認識やあり方を変えるということが含まれていると思われます。「世界を変える」というのではなく、「自分が変わり、世界も変わる」ということが重要になりそうです。似たような問題意識を感じたことがある方、ぜひ一緒に研究できたら嬉しいです!新規メンバーを2〜3人募集します。[リーダー:太田 深月]
(3) 「勝利の追求と人間的成長の両立をするダブル・ゴール・コーチング」のパターン・ランゲージの作成研究
スポーツの教育現場では、2013年に部活動における体罰の事案が明るみになったことを境に、新たなスポーツ教育のあり方への変革が求められるようになりました。勝利のみを絶対的な目的とする「勝利至上主義」に基づいて行われるコーチングは、行き過ぎた指導になりやすく、選手の主体性を低下させるとも言われています。一方、完全な放任主義では、選手の競技力の向上は見込めません。そこで、本プロジェクトでは、勝利を追求しながらも、自立し、自走できる選手を育てていくというダブル・ゴールを目指したスポーツ教育のあり方を、パターン・ランゲージの作成を通して明らかにすることを目指します。過去に競技スポーツを経験したことのある方だけでなく、教育の分野に関心のある方も楽しめる内容になっているかと思います。新規メンバーを2〜3人募集します。[リーダー:日置 和暉]
(4) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成
物事の「本質をつかむ」ということについて、哲学の現象学の方法である「本質観取」(seeing of essence)を研究することで、その実践のコツを明らかにしていきます。パターン・ランゲージの作成では、竹田青嗣さん、西研さん、苫野一徳さんに哲学実践や哲学対話ワークショップの経験を踏まえて語ってもらったものと、井庭研でのパターン・ランゲージ作成における本質観取の実践経験を素材とします。なお、このプロジェクトは、井庭が直接リーダーとなり、プロジェクトを率います(来年度、最も難解で最も厳しいプロジェクトになると思います)。地道な創造の道をグングン進んでいくので、しっかりついてきて学び、力をつけながら活躍してください。「本質をつかむ」ことや、本格的な「パターン・ランゲージの作成」に興味がある人を歓迎します。継続メンバー数人とともに、新規メンバーを2〜4人募集します。[リーダー:井庭 崇]
(5) 現地のロールモデルから学ぶ「フィリピンの若者が自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージ作成とそれを用いたワークショップの実践研究
フィリピンには、今もなお十分に教育を受けられていない子どもたちや、その影響で安定した収入を得られる仕事に就けていない若者が多くいます。そのような社会状況のなかでも、家庭環境や経済的な困難を背景に持ちながらも、経済的な自立と仕事の継続を実現している人もいます。そのような人たちがどのようにそういうことを成し遂げたのか、その実践のコツを明らかにし、パターン・ランゲージを作成します。また、そのパターン・ランゲージを活用したワークショップを実施し、フィリピンの若者のエンパワメントも試みます。研究のフェーズによっては、現地に赴きインタビューやワークショップを実施したり、フィリピンの方とオンラインでミーティングを行ったりすることがあり、その際は英語でやりとりします。現地の人たちの暮らしや生き方を支え、道しるべになるような研究・実践をおこなっていくことに興味がある人を歓迎します。新規メンバーを2~3人程度募集します。[リーダー:金井 貴佳子]
(6) パターン・ランゲージを活用した「気仙沼市におけるまちのイメージ更新」の実践研究
本プロジェクトでは、パターン・ランゲージを活用して、宮城県気仙沼市の市役所・子育て支援団体のコンソーシアムと協働して、まち全体のイメージを3.11の被災地から一新することを目指します。2022年度、広告業界での経験が豊かな共同研究者とともに、新しいサービス・概念で市場を生み出すことのパターン・ランゲージを作成してきました。2023年度は、気仙沼に実際に足を運び、このパターン・ランゲージを活用して、子育てをする母親を中心とした地域住民とともにワークショップ等を行い、「被災地、気仙沼。から日本一子育てを楽しめるまち、気仙沼。」へとブランディングしていきます。フィールドを持つことは思った通りいかないこととも向き合うことになりますが、そんな時こそ、現場のたゆまぬ努力を真摯に受け止め、子どもたちの可愛い姿をたくさん感じ取り、まち全体で良い成果を生み出せることにワクワクしながらともに取り組んでいきましょう。新規メンバーを2〜3人募集します。[リーダー:田中 惇敏]
(7) 「組織のよさ・らしさの語り合いワークショップ」の開発と実践
研究会やサークル、企業などの「組織」に所属するメンバーたちは、そこでどのような歴史を歩み、彼らにとってどのような場所となっているのでしょうか?本プロジェクトでは、自分にとってのその組織のよさ・らしさを、他のメンバーとの対話を通して深め、愛でるという「語り愛ワークショップ」の設計・実践を行っています。また、そのワークショップの設計意図やファシリテーションのコツをパターン・ランゲージの形式でまとめていきます。2022年度秋学期から始まったプロジェクトですが、新規メンバーを1〜2人程度募集します。大好きな組織がある人、コミュニティの魅力を考えることが好きな人、ワークショップ設計や場づくりに興味がある人を歓迎します。[リーダー:柴田 爽水]
■ 現役メンバーから見た井庭研のプロジェクトについて
井庭研のプロジェクトがどういうものか、現役メンバーたちに書いてもらいました。17人の計3,600字をテキスト解析し、ワードクラウドで表現してみたところ、以下のようになりました(”井庭研”と”プロジェクト”のワードは抜いて可視化)。井庭研のプロジェクトの感じがよく表れていると思います。
※ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析
各人が書いてくれたものも、いくつかピックアップして載せておきます。
■ 履修上の注意・留意事項
1年生・2年生のうちからの参加を強く推奨します。長く一緒に研究・活動して経験を積み重ねることで、理解が深まり力がつくので、その後、より活躍できるようになります。そのため、井庭研では早い時期からの履修・参加を強く推奨しています。
3年生後半や4年生からの受け入れは、特別な理由がある場合を除いて原則として行っていません。卒業プロジェクトの段階になって焦って研究会に入ろうとすることのないように、しっかりと計画的に考えて、早い段階から入るようにしてください。
GIGA生や海外経験のある人、留学生を歓迎しています。井庭研では、日本語での成果をつくるとともに、英語で論文を書いて国際学会で発表したり、海外の大学やカンファレンスでワークショップを実施したりしています。日本語以外の言語を扱えることは、活躍・貢献のチャンスが大きく高まります。ぜひ、力を貸してください。
井庭研メンバーは、原則として全員B1を履修する方針ですが、他の研究会(A型)に所属しながら井庭研B2のプロジェクトに参加・履修したい場合など、特殊な事情がある場合には、事前に相談するようにしてください(説明会の際、もしくは、ilab-entry@sfc.keio.ac.jpまでメールにて)。
■ 評価の方法
研究会の成績評価は、日頃の研究・実践活動への貢献度や成長の観点から総合的に評価します。
■ エントリー方法
新規エントリーも継続エントリーも、井庭研B1シラバス(2023年度春学期)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」の「エントリー方法」をよく読み、それに従い、エントリーしてください。
・新規エントリー〆切:1月29日(日)23:59
・継続エントリー〆切:1月20日(金)23:59
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「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」
■ 重要な情報
- 新規エントリー〆切:4月初旬まで延長していましたが、終了しました。
(1) 「生態系を育みながら自然と共生していく」ための実践方法のパターン・ランゲージ作成
(2)「困難な状況のなかでもなんとか動き出して変化を起こしていくこと」のパターン・ランゲージ作成
(3)「勝利の追求と人間的成長の両立をするダブル・ゴール・コーチング」のパターン・ランゲージ作成
(4) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成
(5) 現地のロールモデルから学ぶ「フィリピンの若者が自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージ作成とそれを用いたワークショップの実践研究
(6) パターン・ランゲージを活用した「気仙沼市におけるまちのイメージ更新」の実践研究
(7) 組織のよさ・らしさの語り合いワークショップの開発と実践
■ Natural & Creative Living Lab(井庭研)とそのなかでのB2プロジェクトの位置付け
井庭研では、新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを開発し、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献することに取り組んでいます。目指しているのは、ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある「創造社会」であり、そのために、素晴らしい質の実践に潜む原理の解明と、その発見にもとづく実践支援の研究を行なっています。
井庭研では、土台となるB1(Foundation)に加えて、B2プロジェクトとして水曜日の午後(3〜6限)に集まって、研究プロジェクト実践を行います(時間割上は水曜6限となっていますが、B2プロジェクトに参加する人は、3限から夜まで授業や他の予定を入れないようにしてください)。みんなで、まとまった時間を取って、どっぷりとプロジェクト活動に浸ります。
■ 2023年度のB2プロジェクト一覧
2023年度に新規メンバー(および継続メンバー)の募集があるプロジェクトは、以下の通りです。各プロジェクトの概要については、本シラバスの中盤に紹介があるので、そちらも参照してください。
(1) 「生態系を育みながら自然と共生していく」ための実践方法のパターン・ランゲージ作成
(2)「困難な状況のなかでもなんとか動き出して変化を起こしていくこと」のパターン・ランゲージ作成
(3)「勝利の追求と人間的成長の両立をするダブル・ゴール・コーチング」のパターン・ランゲージ作成
(4) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成
(5) 現地のロールモデルから学ぶ「フィリピンの若者が自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージ作成とそれを用いたワークショップの実践研究
(6) パターン・ランゲージを活用した「気仙沼市におけるまちのイメージ更新」の実践研究
(7) 組織のよさ・らしさの語り合いワークショップの開発と実践
なお、昨年度からの継続プロジェクトで、新規メンバーを募集しないプロジェクトには、以下のものもあります(すでに内容的に大きく進んでいて、いまからのキャッチアップが難しいであろうと判断し、現在のメンバーのみで継続します)。
(8) 創造を巻き起こす「ジェネレーター」のパターン・ランゲージ作成(ライティング・シンボライジング・仕上げフェーズ)
(9)「楽天主義実践パターン」の社内導入と効果検証
■ そもそも「研究」とは
「研究」とは、「知のフロンティア」を開拓する営みのことです。人類全体で見たとき、これまでの歴史のなかで、誰かが調べたり試したりした結果、「既知の領域」が広く広がっています。しかし、それでもまだ人類にとって、その周辺に「未知の領域」が広がっています。
この状況で、学術的な「研究」は、その「知のフロンティア」を少しでも掘り進み、押し広げていく知識創造活動を行います。それは、多くの場合、苦労の多い作業となります。道なき道を、自ら道をつくりながら進んでいくことになるからです。しかし、そうすることで、ようやく人類で初めてその領域を開拓し、他の人たちに広く共有することができるようになります。このように、研究はとても創造的な活動です。まだ誰も知らない・実践したことのない、意義と付加価値のある成果を生み出すという創造実践なのです。
僕らが考える「よい研究」のひとつの基準は、その研究を行う人が、そのテーマに関心を持ち、思いと情熱を込めて取り組むことに加え、それが学術的意義と社会的価値につながるものであるということです。学術的意義があるというのは、これまでの学術研究・学問に新たな知見を積み上げるということであり、社会的価値とは、現在や未来の社会・他者に何らかの付加価値をもたらすものであるということです。これらの、「個人的関心」と「学術的意義」と「社会的価値」が重なるということが、よい研究のひとつの条件だと思います。このことを逆に言うと、「自分が興味がある」という個人的関心だけでは、「よい研究」にはならないということです(このことが個人研究の難しさにつながっています)。
■ 学年ミックスの複数人で組む研究プロジェクトの素晴らしさ
今見てきたような苦労の多い難しい「研究」を、一人で行うのは困難です。そこで井庭研では、複数人でチームを組み、プロジェクトとして行う、ということを中心にしています。そうすれば、それぞれの得意を持ち寄り、一人では越えることができない高さを、仲間とともに超えることができるようになるからです。これは、プロジェクト制の最大のメリットです。孤独に悩むことなく、仲間とともに話し合いながら、前へ前へと進んでいくことができます。ともに取り組んでいる仲間がいることは、とても心強いものです。
また、井庭研のプロジェクトは、学部1年生から大学院生までの「学年ミックス」で構成されることも特徴的です。経験が多い上級生はプロジェクトを引っ張り、経験が浅いメンバーは、そこで教わり学びながら成長していきます。プロジェクトは、単に「研究のユニット」であるばかりでなく、「学びの場」でもあるのです。
もちろん、低学年だからといって活躍の機会がないわけではありません。プロジェクトにはいろいろな貢献の領域があり、得意の持ち寄りによって高まるものなので、絵を描くのが好きであるとか、外国語が得意であるとか、文章を書くのがうまいなど、研究経験とは異なるスキルや得意が活きることがたくさんあります。
もしかしたら、授業のグループワークなどの経験から、誰かと組むことにネガティブな印象をもっている人もいるかもしれません。負担が偏ったり、途中でいなくなったり、いなくなったと思ったら最後の発表だけ現れてずっといたようなふりをする人がいたり、と、「それなら、自分一人でやったほうがよかった」と思った経験は、誰でも多かれ少なかれあるでしょう。しかし、井庭研ではそのようなことは起きません。みんな、研究プロジェクトに本気で取り組んでいるし、とても楽しんでいるからです。井庭研ほど、最高のグループワークが経験できる場はなかなかない、と言っても過言ではありません。
そのようなわけで、研究をプロジェクトで行うのはとてもよいので、新規メンバーには、「個人研究」ではなく、「プロジェクト」に入ることを強く勧めています。個人研究は、自分一人でやるので、たしかに自由度が高く、他の人との時間調整ややりとりなどの手間も省けてやりやすそうに見えるかもしれません。しかし、研究とはどういうもので、どう研究するのかなどに慣れるまでは、なかなか研究にならず、相当苦しむ人がほとんどというのが実際のところです。その点、プロジェクトであれば、1、2年間プロジェクトで研究経験を積むなかで、研究の基本を学ぶことができます。それから、自分の個人的な関心にもとづく個人研究を始めたり、大学院生になって自分のテーマのプロジェクトを立ち上げてリーダーになったりするだけの知識とスキルを身につけることができるのです。
井庭研には、多様なテーマのプロジェクトがあります。まずは、そのなかから最も自分の興味に近いプロジェクトを選んで、その場で活動しながら、成長していくとよいでしょう。プロジェクトは、居心地のよいサイズの、とても活発な創造の場なのです。
■ パターン・ランゲージの作成プロセス
井庭研では、ワークショップや新しい方法・道具などをつくる研究、創造的なコミュニティの研究など、いろいろなアプローチの研究を行っていますが、多くのプロジェクトでは、パターン・ランゲージの作成に取り組んでいます。国内外にパターン・ランゲージの研究者・実務家はたくさんいるのですが、世界で最もパターン・ランゲージをつくり、集中して研究しているのはSFCの井庭研であり、その先端性と経験を活かして研究することができるためです。
井庭研ではこれまで15年間パターン・ランゲージの作成プロセスを開発・洗練させてきました。その作成プロセスは、以下の通りです。
まず最初に行うのは、パターンの要素となる情報を得て、それをとりまとめる「パターン・マイニング」です。「マイニング」(mining)というのは「掘り起こす」ということで、ここで掘り起こすのはパターンを作成するための「パターンの素材」です。パターンの素材は、実践者との対話を通じて掘り下げ、語りから掘り起こしていきます。この掘り起こしのための対話を「マイニング・ダイアローグ」と言います。実践者に、その実践においてよい結果を生むために「何をすることが大切か」(what)や、それは「具体的にはどうやるとよいのか」(how)、「それはなぜ大切なのか」(why)について聞いていきます。
パターン・マイニングでは、たいてい15〜20人くらいの実践者に話を聞き、数百のパターンの素材を得ることになります。これらの素材は、種類もサイズもばらばらな寄せ集めになっています。そこで、一つひとつの素材の中にある本質的な意味をつかみながら、似ているものを寄り分けて、似たもの同士のグループ分けをしていきます。これを、「クラスタリング」と言います。クラスタリングの結果、だいたい数十から百程度の「パターンの成分」にまとまります。
次に、ランゲージ全体の体系を編み上げます。クラスタリングで得られた「パターンの成分」を眺めて、どのようなものがあるのかを概観したのちに、視点を変え、全体から分化させるように全体像を捉えていきます。これを「体系化」と言います。体系化が終わるときに、だいたい30から40程度の数にまとまるようにします。この段階のものを「パターンの種(たね)」と呼んでいます。
そこから、「パターン・ライティング」の段階に入り、「パターンの種」を育てていくことになります。最初にやることとしては、それぞれの「パターンの種」について、「どういう状況(Context)で、どういう問題(Problem)が生じやすく、そうならないためにどうするとよいのか(解決: Solution)」という形式でその本質を捉えて記述することです。この文章を、Context、Problem、Solutionの頭文字を取って、「CPS」文と呼んでいます。CPS文は、そのパターンの幹にあたります。CPS文は、プロジェクトのメンバーで何度も確かめ合いの対話を行い、みんなで確認し、納得がいく記述になるまで、必要な修正を行っていきます。
その後、CPS文の幹に枝葉をつけていきます。「その問題が生じるのは、背後にどのような諸力(フォース:Forces)が働いているからか」や、「その解決は、具体的には例えばどうやるとよいのか(アクション:Actions)」、また、「それをするとどういう結果(Consequences)になるのか」を明らかにし、記述していくのです。
これらの記述も、何度も何度もプロジェクトメンバーで確かめ合いの対話を行い、本質が記述できているか、わかりやすい誤解のない表現になっているかなどを検討して、洗練させていきます。そして、書き上がりつつある段階で、実践者にそれを見せて「内容が合っているか」や、「表現が実際の感覚に近いかどうか」などを確かめ、記述を確かなものにしていきます。
このパターン・ライティングの後半から並行して走らせるのが、「パターン・シンボライジング」です。パターンの内容のイメージをつかみやすく、かつ魅力的に伝わる象徴的に表現をしていくのです。具体的には、パターンの名前(パターン名)をつけるのと、そのパターンの内容のイメージを伝えるイラストを描いたり、パターンの記述を読みたくなるキャッチコピーのような導入文を書いたりします。
パターン・シンボライジングでは、魅力的に象徴的に表現するということで、木々に花を咲かせるということにあたると言えます。一つひとつの異なる木に異なる花を咲かせていくのです。それらには統一感はありますが、個々には個性があるような花を咲かせていきます。人々は、その花の魅力に惹かれて、一つひとつの木に近づいてくれることになるわけです。
それから最終段階として、パターンの文章と名前とイラストなどをより調和がとれたものにするとともに、ランゲージ全体の整合性や調和の微調整、物語性の質感を宿らせるなどの仕上げをしていきます。こうして、1〜2年で数百時間の時間と労力をかけて、一つのパターン・ランゲージが完成します。
パターンの種だったものが、幹と枝葉がついた一本の樹木となり、それらがたくさん集まり、森になるのです。パターン・ランゲージの読者は、その森とともに生き、それぞれの実践の成果(fruit = 果実、収穫)を得ることになるわけです。
以上のようなプロセスの進行やそれぞれのステップでの具体的なやり方をマスターする必要があるので、いきなり個人研究ではなく、プロジェクトに入ることをおすすめしているという理由がよくわかるのではないかと思います。
しかも、井庭研では、パターン・ランゲージの作成は、一人でつくることを避けた方がよいと考えています。一人よがりなものになってしまうリスクがあるからです。プロジェクトで、本質はこれでよいだろうかとみんなで確かめ合い、どうしたらよりよい表現になるだろうかと話し合う ------- そういうことを繰り返していくなかで、パターン・ランゲージは、多くの人に受け入れられる普遍性を持つものに近づいていきます。
そして、こうして仲間とともに作品をつくり上げることの喜びは、とてつもなく大きく、素晴らしい体験になります。井庭研のプロジェクトのこの創造の深い喜び・面白さを、ぜひみんなにも味わってほしいと思っています。
■ 新規メンバー募集があるプロジェクトの紹介
以下の通り、井庭研のプロジェクトには、多様なテーマがあります(各プロジェクトは、井庭や大学院生がリーダーをします)。自分の興味・関心に近いプロジェクトを探してみてください。
(1) 「生態系を育みながら自然と共生していく」ための実践方法のパターン・ランゲージ作成
近年、産業や日々の暮らしなどの人間活動によって、自然環境は汚染し、数々の種は絶命し、地球の生態系はどんどん崩れてきています。そんななか、「自然農法」や「パーマカルチャー」「協生農法」など、生態系を育んだり拡張したりする方法が研究され、実践されています。そこで、本プロジェクトでは、そのような研究や実践から学び、生態系を育みながら自然と共生していくための実践方法のパターン・ランゲージの作成に取り組みます。同時に、生態学に関する文献も読み、自然の構成要素それぞれの機能や、それらの関係性によってつくり出される自然システムへの理解も深めていきます。自然と人間が調和し、ともに豊かになる未来をつくっていきたい人、是非一緒に研究していきましょう!新規メンバーを2〜3人程度募集します。[リーダー:林 聖夏]
(2) 「困難な状況から少しずつ動き出して変化を起こしていくこと」のパターン・ランゲージ作成
現代社会では、いろいろなところで、社会的に困難な状況で生きていたり、対人関係のなかで息苦しさを感じていたりする人たちがいます。その状況は個人の力では到底変えられない「動かし難い」状況のように感じられ、ほとんどの人が「嫌だけれども、仕方がない」「困っているが、変えられない」と思うのも無理はありません。しかし、そのような状況でも、ごく一部に、なんとか状況を変えていこう、打破しようと動き出す人もいます。そのことが起点となり、変化が始まることがあるです。そういう人たちは、いったい、何をどのように考え、どうやってその困難ななかで動き始めることができたのでしょうか。本研究では、自分の置かれた状況を変えたり、社会的な問題を解決したりした人たちの「最初の段階」にフォーカスします。そこでは、おそらく、単に物事の進め方・働きかけ方をうまく工夫するというだけでなく、自分の認識やあり方を変えるということが含まれていると思われます。「世界を変える」というのではなく、「自分が変わり、世界も変わる」ということが重要になりそうです。似たような問題意識を感じたことがある方、ぜひ一緒に研究できたら嬉しいです!新規メンバーを2〜3人募集します。[リーダー:太田 深月]
(3) 「勝利の追求と人間的成長の両立をするダブル・ゴール・コーチング」のパターン・ランゲージの作成研究
スポーツの教育現場では、2013年に部活動における体罰の事案が明るみになったことを境に、新たなスポーツ教育のあり方への変革が求められるようになりました。勝利のみを絶対的な目的とする「勝利至上主義」に基づいて行われるコーチングは、行き過ぎた指導になりやすく、選手の主体性を低下させるとも言われています。一方、完全な放任主義では、選手の競技力の向上は見込めません。そこで、本プロジェクトでは、勝利を追求しながらも、自立し、自走できる選手を育てていくというダブル・ゴールを目指したスポーツ教育のあり方を、パターン・ランゲージの作成を通して明らかにすることを目指します。過去に競技スポーツを経験したことのある方だけでなく、教育の分野に関心のある方も楽しめる内容になっているかと思います。新規メンバーを2〜3人募集します。[リーダー:日置 和暉]
(4) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成
物事の「本質をつかむ」ということについて、哲学の現象学の方法である「本質観取」(seeing of essence)を研究することで、その実践のコツを明らかにしていきます。パターン・ランゲージの作成では、竹田青嗣さん、西研さん、苫野一徳さんに哲学実践や哲学対話ワークショップの経験を踏まえて語ってもらったものと、井庭研でのパターン・ランゲージ作成における本質観取の実践経験を素材とします。なお、このプロジェクトは、井庭が直接リーダーとなり、プロジェクトを率います(来年度、最も難解で最も厳しいプロジェクトになると思います)。地道な創造の道をグングン進んでいくので、しっかりついてきて学び、力をつけながら活躍してください。「本質をつかむ」ことや、本格的な「パターン・ランゲージの作成」に興味がある人を歓迎します。継続メンバー数人とともに、新規メンバーを2〜4人募集します。[リーダー:井庭 崇]
(5) 現地のロールモデルから学ぶ「フィリピンの若者が自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージ作成とそれを用いたワークショップの実践研究
フィリピンには、今もなお十分に教育を受けられていない子どもたちや、その影響で安定した収入を得られる仕事に就けていない若者が多くいます。そのような社会状況のなかでも、家庭環境や経済的な困難を背景に持ちながらも、経済的な自立と仕事の継続を実現している人もいます。そのような人たちがどのようにそういうことを成し遂げたのか、その実践のコツを明らかにし、パターン・ランゲージを作成します。また、そのパターン・ランゲージを活用したワークショップを実施し、フィリピンの若者のエンパワメントも試みます。研究のフェーズによっては、現地に赴きインタビューやワークショップを実施したり、フィリピンの方とオンラインでミーティングを行ったりすることがあり、その際は英語でやりとりします。現地の人たちの暮らしや生き方を支え、道しるべになるような研究・実践をおこなっていくことに興味がある人を歓迎します。新規メンバーを2~3人程度募集します。[リーダー:金井 貴佳子]
(6) パターン・ランゲージを活用した「気仙沼市におけるまちのイメージ更新」の実践研究
本プロジェクトでは、パターン・ランゲージを活用して、宮城県気仙沼市の市役所・子育て支援団体のコンソーシアムと協働して、まち全体のイメージを3.11の被災地から一新することを目指します。2022年度、広告業界での経験が豊かな共同研究者とともに、新しいサービス・概念で市場を生み出すことのパターン・ランゲージを作成してきました。2023年度は、気仙沼に実際に足を運び、このパターン・ランゲージを活用して、子育てをする母親を中心とした地域住民とともにワークショップ等を行い、「被災地、気仙沼。から日本一子育てを楽しめるまち、気仙沼。」へとブランディングしていきます。フィールドを持つことは思った通りいかないこととも向き合うことになりますが、そんな時こそ、現場のたゆまぬ努力を真摯に受け止め、子どもたちの可愛い姿をたくさん感じ取り、まち全体で良い成果を生み出せることにワクワクしながらともに取り組んでいきましょう。新規メンバーを2〜3人募集します。[リーダー:田中 惇敏]
(7) 「組織のよさ・らしさの語り合いワークショップ」の開発と実践
研究会やサークル、企業などの「組織」に所属するメンバーたちは、そこでどのような歴史を歩み、彼らにとってどのような場所となっているのでしょうか?本プロジェクトでは、自分にとってのその組織のよさ・らしさを、他のメンバーとの対話を通して深め、愛でるという「語り愛ワークショップ」の設計・実践を行っています。また、そのワークショップの設計意図やファシリテーションのコツをパターン・ランゲージの形式でまとめていきます。2022年度秋学期から始まったプロジェクトですが、新規メンバーを1〜2人程度募集します。大好きな組織がある人、コミュニティの魅力を考えることが好きな人、ワークショップ設計や場づくりに興味がある人を歓迎します。[リーダー:柴田 爽水]
■ 現役メンバーから見た井庭研のプロジェクトについて
井庭研のプロジェクトがどういうものか、現役メンバーたちに書いてもらいました。17人の計3,600字をテキスト解析し、ワードクラウドで表現してみたところ、以下のようになりました(”井庭研”と”プロジェクト”のワードは抜いて可視化)。井庭研のプロジェクトの感じがよく表れていると思います。
各人が書いてくれたものも、いくつかピックアップして載せておきます。
「プロジェクト活動では、自分たちで実際に手を動かして、井庭研が大切にしている「本質を捉える」ということをたくさん経験することができます。プロジェクトに入ったばかりの時は経験のある先輩方と同じように取り組むことはとても大変で、つらいと感じることもありますが、それ以上に自分を成長させてくれる貴重な時間です。井庭研でたくさんの時間を共有しながら一緒につくりあげていくプロジェクトは、他では経験することのできないものだと思います。」(1年)
「私は今年度の春学期に井庭研に入り、一からパターン・ランゲージをつくっています。プロジェクトメンバーの妥協しない姿勢や本質を掴む考え方、伝えたいことを発見的に・魅力的に書く力を見て、本当に学ぶことばかりの日々です。長い時間をかけて徹底的にこだわって「つくる」経験をしていることで、春と比べると自分がひと回りもふた回りも成長したのを感じています。自分たちのつくった言葉や道具が、誰かの支えになり、誰かの創造実践を応援しているなんて、幸せで尊いなと思います。」(2年)
「井庭研のプロジェクト活動では、目指す成果に向かって、最後の一人の違和感が無くなるまで、どこまでもじっくり考えて全員の納得のいくものを作ります。その一方で、期日までに成果物をつくり上げたり論文を書き上げるために、研究会の授業時間の他にも集まれる時間を作ってどんどん進めていきます。時にはタフに感じることもありますが、自分の力だけでは絶対に到達できなかった成果が出せると「あぁ、やって良かった」と思うことができます。」(3年)
「井庭研のプロジェクト活動では、プロジェクトメンバー1人1人が、多くの時間とエネルギーを注ぎ、決して誰かが欠けるとつくり得ないような本気の創造を経験できます。お互い求め合い、手を取り合い、混沌とした状態を乗り越えて成果が見えた時は言葉には表せない嬉しい気持ちになります。このような本気で学びをともにする仲間はかけがえのないものです。ぜひ、このような経験をしたい人は私たちと一緒に研究をしましょう!」(4年)
「プロジェクト活動と聞くと、自分の興味にぴったり合っていないと...と思うこともあるかもしれませんが、興味がなんとなく近そうなところでどっぷりやってみると、自分の興味分野が深まったり、自分が知らなかった世界に触れて自分の視点を広げることができます。私も今4年生ですが、研究自体についても、それ以外に誰かと協働したりコミュニケーションを取ったりすることも、誰かと一緒に研究するからこそ学べることがたくさんあると実感しています!」(4年)
「井庭研のプロジェクト活動で必要となってくるのが、本気のコラボレーションです。授業のちょっとしたグループワークとは次元が違います。もちろん人と一緒に何かをするということは大変なこともありますが、一緒にたくさんの時間をともに過ごし、苦楽を共にするなかで、一人ではたどりつけない世界を知り、素晴らしいものをつくりあげていく経験は、すごく貴重で、ワクワクするものです。ぜひ、どっぷりつかって、最高のコラボレーションを存分に味わってみてください。」(修士1年)
■ 履修上の注意・留意事項
■ 評価の方法
研究会の成績評価は、日頃の研究・実践活動への貢献度や成長の観点から総合的に評価します。
■ エントリー方法
新規エントリーも継続エントリーも、井庭研B1シラバス(2023年度春学期)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」の「エントリー方法」をよく読み、それに従い、エントリーしてください。
・新規エントリー〆切:1月29日(日)23:59
・継続エントリー〆切:1月20日(金)23:59
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