井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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これから数ヶ月、ゲスト講演・対談が目白押し!

これから数ヶ月の間、僕の授業ではゲスト講演・対談が目白押し。知的な刺激をたくさん、どうぞ! (どれも授業の一環として開催しますが、履修者以外の聴講も歓迎です。)

以下に、その予定をまとめておきます。

■ 竹中 平蔵 × 井庭 崇 「政策のパターンランゲージに向けて」
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室
※SFC「パターンランゲージ」の一環。当日の映像はSFC-GCで後日公開予定。

■ 江渡 浩一郎 × 井庭 崇 「創造と想像のメディア」
日時:2010年12月9日(木)4限(14:45~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室
※SFC「パターンランゲージ」の一環。当日の映像はSFC-GCで後日公開予定。

■ 池上 高志 × 井庭 崇 「動きを捉える。動きをつくる。」
日時:2010年12月11日(土)3・4限(13:00~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室
※SFC「複雑系の数理」の一環。

■ 松川 昌平 × 井庭 崇 「計算可能性/不可能性とデザイン」(遠隔対談)
日時:2011年1月13日(木)2限(11:10~12:40)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) ε11教室
※SFC「複雑系の数理」の一環。
イベント・出版の告知と報告 | - | -

特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”(竹中 平蔵 × 井庭 崇)

来る2010年11月27日(土)、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)にて、以下の特別対談を行います。

SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室


対談のテーマである「パターンランゲージ」は、“生き生き”とした町をボトムアップにつくるための実践知を把握・記述する手法として、建築デザインの分野で提唱された方法です。この方法は、後にソフトウェアデザインや組織デザイン等、さまざまな分野に応用されています。このような応用・展開が可能だったのは、パターンランゲージの方法が、広義の意味での 「デザイン」(問題発見+問題解決)の知 を扱う方法だったからです。

この対談では、「デザイン」(問題発見+問題解決)の知を把握・記述する「パターンランゲージ」の方法を、社会や政策のデザインに活かす道を模索します。つまり、自分たちで自分たちの“生き生き”とした社会をデザインするための方法として、あるいは、そのような社会状況を実現するための政策をデザインするための方法として、パターンランゲージの考え方を応用することの可能性を考えます。

対談では、パターンランゲージとはどのような方法なのかという説明から始め、その背後にある社会観や、政策づくりの実際、今後の社会・政策づくりにおいて考えるべきことについて、方法論者の井庭崇と、実践経験をもつ経済政策学者の竹中平蔵が、3時間じっくり話し合います。授業「パターンランゲージ」の一環として開催されますが、履修者以外の聴講も歓迎します(事前登録等はありません。当日定員オーバーの場合には、履修者優先とさせていただきます。ご了承ください)。

竹中 平蔵
慶應義塾大学総合政策学部教授。同大学グローバルセキュリティ研究所所長・大学院メディアデザイン研究科教授。専門は経済政策。小泉内閣時代に、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣を歴任。著書に『「改革」はどこへ行った』、『闘う経済学』、『構造改革の真実』、『経済ってそういうことだったのか会議』、『経世済民:経済戦略会議の180日』、『対外不均衡のマクロ分析』、『研究開発と設備投資の経済学』など多数。

井庭 崇
慶應義塾大学総合政策学部准教授。同大学院政策・メディア研究科委員。専門はシステム理論と方法論。創造性、複雑系、オートポイエーシス、パターン・ランゲージ、ネットワーク分析、シミュレーションの研究・教育に従事。 SFC発のパターン・ランゲージである「学習パターン」を制作。著書に『複雑系入門』、共著に『ised 情報社会の倫理と設計』、『創発する社会』、『総合政策学の最先端 第IV巻』等。


なお、今回の対談を含む授業の全回が、SFC-GC(Global Campus)にて映像配信されています。直接会場に来ることができない方は、後日こちらの映像をごらんください(中継ではなく、数日後からの配信となります)。

SFC-GC 「パターンランゲージ」授業ページ
http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/class/class_top.cgi?2010_25136

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自分が「考える」ことの中心にいる。

クリストファー・アレグザンダーの『A Pattern Language』(邦題:パタン・ランゲージ)に、次のような言葉がある。

In a society which emphasizes teaching, children and students --- and adults --- become passive and unable to think or act for themselves. Creative, active individuals can only grow up in a society which emphasizes learning instead of teaching.

教えることを重視する社会では、子供や学生——また大人でさえ——が受動的になり、自分で考えたり行動できなくなる。教えることではなく、学ぶことを重視する社会になってはじめて、創造的で活動的な個人が育つ。

これは、"Network of Learning"(学習のネットワーク)というパターンの冒頭の文章である。まったくもってその通りだと思う。

教えよう、教えよう、とすればするほど、教えられる人はますます受け身になり、「与えられる」ことに慣れてしまう。これは、「教育」という営みが元来抱える葛藤だと言えるだろう。


そんなことをわかっていながら、僕はついつい「教える」モードになりがちで(基本的におせっかいなのだ)、その結果、学生たちの「自ら考える力」を弱めてしまうことが多い気がしてならない。

そういう背景(コンテクスト)があるので、先日書いた「教育しようなんて考えを、僕は捨てることにした。」という話になる。


さて、逆の立場からすると、「教えられない」「与えられない」としたら、どうしたらよいのだろうか?

自分で考え、行動し、学ぶ。

このことに尽きる。

自分が今、考えるべきことをしっかり考える。
自分が今、何を考えるべきかも自分で考える。
どう考えるかも自分で考える。


つまるところ、自分が「考える」ことの中心にいる、ということだ。


物事を自分を中心に考えるのは傲慢だが、自分が考えることの中心にいるのは素晴らしいこと。

しかし、自分で考えるというのは、実際にはかなり難しい。

それでも、それを抜きにすることはできない。実践あるのみだ。



もちろん、「自分で」というのは、「孤立」を意味するわけではない。

中心には必ず周辺が必要なのであって、システムには環境が必要なのと同様だ。



考える中心としての自分と、そこから広がるネットワーク。

もはや、教員 対 学生、という二者関係では考えることはできない。

この意識・感覚は、とても大切だと思う。


References
  • Christopher Alexander, Sara Ishikawa, Murray Silverstein, A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction, Oxford University Press, 1977.
  • クリストファー・アレグザンダー 他(著), 平田 翰那(訳), 『パタン・ランゲージ―環境設計の手引』, 鹿島出版会, 1984.
  • 「研究」と「学び」について | - | -

    メディアとしての学習パターン:対話ワークショップの狙い

    ひとつ前のエントリ「"Design Your Learning!" Dialogue Workshop @SFC」で紹介したワークショップ。「学習パターン」を使ったこのワークショップで僕らが狙ったのは、大きく分けて次の二つのこと。

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    まず第一の狙いは、これから取り入れたい学習パターンのSolution(解決策)とAction(アクション)の具体的なイメージを掴んでもらう機会を提供することである。

    パターン・ランゲージは抽象的に書かれているので、自分が経験していないパターンを実感することは少々難しい。パターン・ランゲージでは、あえてそのように抽象的に書いているのであるが、パターンの記述に加えて、具体的な実現例を少し知るだけでも理解度がグッと増す。

    このワークショップでは、体験した人がその場で語ってくれるので、そのパターンをリアルに実感することができる。そして、ピンとこなければ質問だってできる。このような過程を経て、自分のこれからの学びのデザインに役立てることができるのだ。

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    そして第二の狙いは、「語り部」として自分の体験を語ることで、自分のなかにある「学び方」とその経験を振り返る機会を提供することである。自分を「学びの達人」だと思っている人は別として、ほとんどの人は、自分の学び方やその経験は、他の人に語るほどのものではないと考えているだろう。

    ところが、自分が実践した(ささやかな)学びの経験でも、学習パターンのどれかに当てはまり、その具体事例として捉え直すことができれば、それは語る価値があるものに思えてくる。

    しかも、実際に話すと、体験談を知りたいと思っている人が、「なるほど!」と、うれしそうに聞いてくれる。

    このように、学習パターンがメディアとなり、多くの人のなかに眠っている「学び」の経験談を、コミュニケーションの俎上にのせる。この経験は、その場でのコミュニケーションを誘発するだけでなく、自分の学び方や経験についての振り返りの思考を促すことにもなるはずだ。


    全員が、聞き手であり語り部であるという対称性をもつことはすでに書いたが、学習パターンを用いたワークショップは、聞き手の立場にいても、語り部の立場にいても、学びについて考える機会となるのである。

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    実は、去年から学習パターンを用いたワークショップの案については、井庭研/学習パターンプロジェクトでは議論を重ねていた。しかし当時は、「学習パターンを知ってもらう」という意図で構想していたため、面白そうなワークショップを思いつくことができなかった。

    今回のワークショップは、みんながもっている(ささやかな)経験を、学習パターンの光のもとで語ってもらう、という「語り部」への着目が功を奏したと思う。


    特に意識してはいなかったが、この発想の転換が可能だったのは、もしかしたら今年の春にお会いした今村久美さんの「カタリバ」の話の影響が、僕のなかに残っていたからかもしれない(今村さんにお会いしたのは『三田評論』座談会)。もしそうであるならば、出会い・語り合うということは、未来を変える可能性をもっているということになる。

    この学習パターンのワークショップも、学生の誰かが「出会い系だ!」と言っていたが、そういう未来を変える「出会い」につながるならば、僕らとしてはとてもうれしい。
    パターン・ランゲージ | - | -

    "Design Your Learning!" Dialogue Workshop @SFC

    SFCの授業「パターンランゲージ」で、初めての "Design Your Learning!" Dialogue Workshop with Learning Patterns を行った。学びのパターン・ランゲージである「学習パターン」を使ったオリジナルのワークショップだ。

    ワークショップの内容は、40個ある学習パターンのなかから自分がこれから取り入れたいと思う5つのパターンを選び、すでに経験している人から体験談を聞くというものである。

    人によって取り入れたいパターンも経験しているパターンもばらばらなので、全員が聞き手、かつ、語り部となる。

    ワークショップの時間を短縮するため、事前準備として、前の週に次のような宿題を出しておいた。

    『Learning Patterns』(学習パターン)の冊子を読み、以下のものを作成する。

    (1)自分が体験したことがある「学び」のパターンについて、すべてリストアップし、各パターン100~200字の体験談/エピソードを書く。複数枚にわたる場合にはホッチキス止めで提出。

    (2)自分が体験したことがある「学び」のパターンのリストを、A4用紙1枚に収まるように、なるべく大きめに印刷する。

    (3)自分が今学期取り入れたい「学び」のパターンを5つ選ぶ。それを A4用紙1枚に収まるように、なるべく大きめに印刷する。

    (1)は事前に一度経験を思い出しておくための準備であり、実際のワークショップでは、(2)と(3)の紙を使う。

    ワークショップを始める前に、まず教室の机と椅子をすべて壁側に寄せて、真ん中に大きな場をつくる。これで場づくりは完了。


    ワークショップでは次のことを行う。

    参加者は「自分が体験したことがあるパターンのリスト」の紙と、「自分が今学期取り入れたい5パターンのリスト」の紙を手に持って歩く。

    自分が今学期取り入れたいパターンを、すでに体験している人を探す。ただし、ふだんから話す機会がある友達は避ける(この機会がなければ話さないと思われる人と話す)。

    体験している人を見つけたら、体験談を聞き、「体験談の概要」と「その人の名前」をメモする。1パターンあたり、何人も聞く。

    逆に、自分の体験したパターンについて、体験談を他の人に話す。

    このようにして、ワークショップ中に、5パターン分すべての体験談を集める。5パターンそれぞれ最低1人は違う人の体験談が入るようにする。

    ルールは、たったこれだけ。所要時間50分。


    ワークショップは、(僕らが予想した以上に)かなり盛り上がっていた。

    自分の体験を生き生きと話す。そして、自分が取り入れたい「学び方」を実践している人から話を聞く。

    誰でも何らかの「学び」を日々実践しているので、知らない人同士であっても、必ず何らかの共通点や、理解しあえる差異があるものだ。特に、同じキャンパスにいる学生同士なので、重なる部分はさらに多くなるはずだ。

    学習パターンが、コミュニケーションのメディアとなり、ふだんはなかなか語らない/聞くことがない各人の「学び方」に関するコミュニケーションが誘発される。これが、このワークショップの肝である。

    ワークショップに込めた僕らの狙いについては次の機会に書くとして、今回はパターン・ランゲージを使った新しいワークショップをやったという報告まで。

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    授業関連 | - | -

    特別対談(中埜 博 × 井庭 崇) @SFC「パターンランゲージ」

    来週2010年10月28日(木)の「パターンランゲージ」の授業では、建築家の中埜 博さんをお呼びして、クリストファー・アレグザンダーの思想やパターン・ランゲージに関する対談を行います。履修者以外の聴講も歓迎しますので、興味がある方はぜひお越し下さい。

    「パターンランゲージ」特別対談2010 “The Nature of Order”
    日時:2010年10月28日(木)4限(14:45〜16:15)
    会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)大学院棟 τ(タウ)11教室

    中埜 博
    カリフォルニア大学バークレー校環境設計学部建築学科大学院修了。環境構造センター在日代表として、クリストファー・アレグザンダーの日本での建設プロジェクト「盈進学園プロジェクト」に参加。現在、東京環境構造センター代表。著書に『パタンランゲージによる住まいづくり』井上書院、『パタンランゲージによる住宅の建設』監訳、建築作品多数。

    井庭 崇
    総合政策学部准教授。創造社会の実現に向けた「新しい方法をつくる」研究に取り組んでいる。創造性、複雑系、オートポイエーシス、パターン・ランゲージ、ネットワーク分析、シミュレーションの研究・教育に従事。 SFC発のパターン・ランゲージである「学習パターン」等を、研究会メンバーとともに制作。


    なお、今回の対談を含む授業の全回が、SFC-GC(Global Campus)にて映像配信されています。直接会場に来ることができない方は、後日こちらの映像をごらんください(中継ではなく、数日後からの配信となります)。

    SFC-GC 「パターンランゲージ」授業ページ
    http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/class/class_top.cgi?2010_25136

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    トキコエとパタラン:井庭研究会(2010年度秋学期)スタート!

    2010年度秋学期の井庭研究会のゼミが始まった。学期2週目に海外出張が入ってしまったので、少し遅めのスタート。ようやくキックオフができたという感じがしている。

    輪読ゼミの初回は、夏休みの宿題として読んだ、井庭研テーマに深く関わる3冊について、その共通点と議論した(詳しくはエントリ「Summer Readings --- 井庭研2010 夏休みの課題」 参照)。

    (1) The Timeless Way of Building (Christopher Alexander, Oxford University Press, 1979)
    (2) Ubiquity: Why Catastrophes Happen (Mark Buchanan, Three Rivers Press, 2001)
    (3) Orality and Literacy (Walter J. Ong, Routledge, 1988)

    ゼミの議論や僕の考えついて書き出すと切りがないので、今回はその詳細には触れないが、ひとつ衝撃的な発言だけ、記録しておこうと思う。


    学生のひとりが、本の内容について議論しているとき、「トキコエでは・・・」と言った。僕も含め、みんな頭の上に「?」マークが点灯した。「トキコエ」? そんな言葉知らないぞ。。。

    尋ねてみると、「トキコエ」というのは『時を超えた建設の道』のことだという。トキをコエた建設の道、略して「トキコエ」。

    「ときメモ」じゃあるまいし、アレグザンダーもびっくりだよ、それ。現代っ子の手にかかると、30年前の建築思想の“問題の書”も、こんなにキャッチーな印象になってしまうのか。

    そういえば、SFCの授業「パターンランゲージ」を開講した年に、学生が「パタラン」と呼んでいるのを耳にしたことがある。

    「トキコエ」と「パタラン」。。。

    もうこの勢いで、「もしドラ」みたいな青春小説でも書いてみようか。
    生き生きとしたコミュニティをつくりたい女子学生がアレグザンダーの本に出会う。(いや、それではただのパクリになってしまう!ボツ。)


    なにはともあれ、来週からはいよいよ、アレグザンダーの新著 "The Nature of Order"の輪読が始まる。(はて。これは略称がつけにくいぞ。どうしよう。)


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    井庭研だより | - | -

    COINs2010 (Collaborative Innovation Networks) 学会報告 その5

    The Second International Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010) の3日目には、もうひとつ、僕らの発表を行った。パターン・ランゲージの制作のプロセスに関する発表だ。

    パターン・ランゲージをどうやってつくるかという方法/プロセスについては、これまでほとんど語られてこなかった。Pattern Writingというタイトルのドキュメントでも、実際には、パターンの形式(form)についての説明であったり、パターンとはどういうものかという説明にすぎないことが多い。

    パターン・ランゲージをつくるということは、個々のパターンを書くということのみならず、それらの関係性の総体としてのランゲージをつくるということでもある。それをどのようなプロセスで行うのかということを、僕らの学習パターンの経験を踏まえながら紹介した。

    この学会では、ポスター発表の場合も、プレビューとして5分間の口頭プレゼンをする。今回は、著者の一人の坂本さんが担当。学部3年生で、初めての学会発表であり、かつ、帰国子女ではなく留学経験もないのに、英語できちんと話していて、素晴らしかった。学生の口頭発表をみて、"I'm proud of you."と思ったのは、今回が初めてだと思う。きっと、この夏休み、研究関連の文献を読みまくり、ずっと考え、日々書いてきた経験が活きているんだろう。素晴らしい。

    この発表に対しての反応も非常によかった。なかでも、パターン・ランゲージの新しい動向について有益な情報をくれた人がいて、その人と新しく共同研究が始まりそうな予感。楽しみである。


  • Takashi Iba, Mami Sakamoto, and Toko Miyake, ”How to Write Tacit Knowledge as a Pattern Language: Media Design for Spontaneous and Collaborative Communities”, The Second International Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010), 2010

    Preview Talk by M. Sakamoto.
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    COINs2010, GA, USA, 2010. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.


    Poster ”How to Write Tacit Knowledge as a Pattern Language: Media Design for Spontaneous and Collaborative Communities” (PDF)
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  • 井庭研だより | - | -

    学習パターン英語版の表紙デザイン案

    昨日、特別研究プロジェクトの予定されていた全日程が終わった。それで、学習パターンの英語版はどうなったかというと・・・まだまだ鋭意作成中!(笑)

    まだまだ先は長い。結局、昨日までにどこまでできたのかというと、2周目のレビューが完了したのは20個(全体の半分!)だけ。まだ、そういう状況なのだ。

    で、どうするのかというと、明日/明後日、参加できる有志の人だけでレビューを続ける。2周目のレビューは、朝10時から夜7時までやって、12パターンというペース。あと2日あれば全パターンの2周目のレビューが終わるはず(終わってほしい。ほんとに)。

    というわけで、今日は集まりはなかったので、ひとり作業に集中。いろいろ冊子制作に必要となる作業を進めた。

    そのなかで、英語版冊子の表紙のデザイン案をいくつかつくってみた。

    どうだろう???

    (このブログ、コメント機能をOFFにしているので、感想等はぜひ Twitterで @takashiiba まで!)

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    (右側が表表紙、左側が裏表紙。画像をクリックすると拡大。今回は、印刷の都合で、灰色は使わず白黒のみの表現で制作。)
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    学習パターンの英語化プロジェクト、その後

    特別研究プロジェクトの開始から5日が過ぎた。

    前回書いたように、初日からずっと学習パターンの英訳版のレビューを行ってきた。そしてようやく、40個のパターンのレビュー1周目(!)が終了した。

    2つのライターズワークショップを並行して行ってきたが、毎日朝10時から夜7時まで取り組み、まる5日間かかったことになる。やはり、パターン・ライティングは時間がかかる。

    今回は、新しくパターンの内容をつくっているというわけではないが、それでも、そのパターンの意味するところや表現の意図を深く理解し、それを踏まえて、英語らしい表現で書く必要がある。

    そういうこだわりをもって取り組むと、ひとつのパターンあたり、たいてい1時間半はかかってしまう。苦戦したパターンのなかには、3時間かかったものもある。

    パターン名についても見直し、必要なものについては新しいものを考えた。例えば、以下のようなパターン名の変更を考えている(左が新名称、右が旧名称)。

    Right Way (← 目的へのアプローチ:旧 Appropriate Approach)
    Fruit Farming (← 小さく生んで大きく育てる:旧 Start Small, Let it Grow)
    Talking Thinker (← 「はなす」ことでわかる:旧 Release of Thought)
    Tangible Determination (← 断固たる決意:旧 Firm Determination)
    Good Asking (← 教わり上手になる:旧 Good Learner)
    Manebu (← 「まねぶ」ことから:旧 Mimic Learning)
    Frontier Finder (← フロンティアンテナ:旧 Frontier Antenna)
    Field Diving (← フィールドに飛び込む:旧 Field Dive)

    日本語のパターン名は、日本語がもつ独特の表現/音・韻にもとづいてつくられているので、そのまま英語に訳しても、英語でのパターン名として成り立たない。あきらかに不自然になってしまう。

    また、日本語版冊子には英語パターン名も記載されているのであるが、当時の時間的制約のなかで決めたものにすぎず、完璧なものではない。今回ようやく、内容をより反映したパターン名にしたり、英語らしい言葉を選び直したりすることができた。

    このパターン名の変更も、パターン本文の修正も、ビシっと決まる表現が見つかるまで、非常に息苦しい時間が続く。まさに産みの苦しみである。

    5日間の活動のほとんどの時間がこの苦しい時間。そのなかに、すっきりする瞬間がほんの一瞬だけある。でも、すっきりしたら、すぐまた次の苦しみに移る。だから、ほとんどの時間は苦しんでいる時間だ。

    何かを「つくる」というのは、そういうことなのだと思う。


    なにはともあれ、5日間かけてすべてのパターンをレビューした。今日(土曜日ではあるが)からは、各自が書き直してきたパターンのレビューの2周目に入る。

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    SFC特別研究プロジェクト(井庭 崇)「Creative Systems Lab(特別編):『学習パターン』英語版の制作」プロジェクトメンバー
    (今回一緒にがんばっているメンバーは、井庭研の学部生と大学院生。下は学部1年生から上は修士2年生まで。このうち、日本語版の学習パターンの制作に関わったのは3人。)
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