井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

<< September 2010 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

「複雑系の数理」(2010年度秋学期担当科目)

次は、秋学期の僕の担当授業「複雑系の数理」の紹介です。

この授業では、「カオス力学系」の基本と、Wolframのいう「新しい科学」についてじっくり考えたいと思います。Mathematicaを使って、実際に現象を体験しながら。

授業は基本的に、履修者による発表、PCを用いた演習、僕の解説、という三部構成。履修者はただ先生の話を聞く立場なのではなく、担当範囲を先に勉強してそれを他の履修者に説明するという役割を担います。授業内での半学半教スタイル。

この授業では、ゲストとして池上高志先生をお迎えし、対談する予定です(詳細は未定)。お会いするのはずいぶん久しぶりで、いまからドキドキです。

そして、複雑系の考え方を取り入れてコンピュテーショナル・デザインに取り組んでいる松川昌平さんにも遠隔講演していただく予定。ハーバード大学GSDにいる松川さんとは、昨年僕がMITにいたときに、複雑系関連の話で相当盛り上がりました。楽しみです。

あとは、この授業を担当するのは今年が初めてなので、やりながらチューニングしていきたいと思います。



慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)総合政策学部・環境情報学部
「複雑系の数理」(木曜日2時限, 担当:井庭 崇)

■主題と目標/授業の手法
人類のながい歴史のなかで、「生命とは何か」、「知能とは何か」、そして「社会とは何か」という問いは、幾度となく繰り返されてきました。しかし、これら生命・知能・社会の原理は、現代の科学をもってしても、いまだに解明できていません。それは、生命・知能・社会という対象は複雑であることに加え、動的に自らを変化させていく存在であり、従来の概念や方法では太刀打ちできないためです。この問題に、新しい数理概念やシミュレーション手法などを駆使して研究するのが、複雑系科学です。
 本講義では、複雑系科学における思考・探究の基礎である「力学系」(dynamical systems)の考え方、「カオス」 (chaos)、および「セルオートマトン」(cellular automata)における現象について学びます。数理的な原理を理解するとともに、実際に各自のノート型パソコンを用いて体験的に理解します。ぜひ複雑系科学の面白さと可能性を味わってほしいと思います。

■授業計画

第1回 Introduction
授業の内容と進め方について説明します。

第2回 Constructive Approach and Simulation
理解したい対象のモデルを「つくって動かすことで理解する」という構成的アプローチと、コンピュータ・シミュレーションの特徴について解説します。

第3回 Chaotic Dynamical Systems (1)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第4回 Chaotic Dynamical Systems (2)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第5回 Chaotic Dynamical Systems (3)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第6回 Chaotic Dynamical Systems (4)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第7回 A Hidden Order in Chaos
カオスのなかの隠れた秩序についての最新の研究を紹介します。

第8回 Cellular Automata and A New Kind of Science
格子状空間の力学系(セル・オートマトン)における状態変化のパターンと、そこから導かれる興味深い帰結について学びます。

第9回 Capturing & Generating Dynamics
「動き」(ダイナミクス)を捉える方法/生成する方法について考えます。(ゲスト対談:池上高志氏)

第10回 Capturing & Generating Dynamics (ゲスト対談:池上高志氏)
「動き」(ダイナミクス)を捉える方法/生成する方法について考えます。(ゲスト対談:池上高志氏)

第11回 The Generative Power of Chaos
カオスのもつパターン生成能力についての最新の研究を紹介します。

第12回 Cellular Automata and A New Kind of Science
格子状空間の力学系(セル・オートマトン)における状態変化のパターンと、そこから導かれる興味深い帰結について学びます。

第13回 Cellular Automata and A New Kind of Science
格子状空間の力学系(セル・オートマトン)における状態変化のパターンと、そこから導かれる興味深い帰結について学びます。(遠隔ゲスト講演:松川昌平氏)

■授業中のグループ発表
履修者は複数人でグループを組み、カオスやセルオートマトンなど複雑系の概念/理論をひとつ担当してもらいます。担当になった概念/理論について、書籍やWeb等で調べて理解し、さらに、実行可能なMathematicaモデルをつくります。そして、担当の回に、概念/理論についての解説と、実行可能なMathematicaモデルのデモンストレーションを行ってもらいます。

■授業で用いるツールについて
・授業の演習と宿題で、ノート型パソコンを使用します。各自用意してください。
・授業で用いる Wolfram Mathematica 7 は、SFC生であればサイトライセンスにより無料でインストール/使用できます(詳細はITCホームページ参照)。
・履修に際して、Mathematicaの操作方法についての事前知識は必要ありません。

■教科書
・『はやわかりMathematica 第3版』(榊原進, 共立出版, 2010)
・『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭崇, 福原義久, NTT出版, 1998)

■参考書
・『Chaos: Making a New Science』(James Gleick, Penguin, 2008)
・『Nonlinear Dynamics And Chaos: With Applications To Physics, Biology, Chemistry, And Engineering』(Steven H. Strogatz, Wes qtview Press, 2001)
・『A New Kind of Science』(Stephen Wolfram, Wolfram Media, 2002)※オンライン版
・『動きが生命をつくる:生命と意識への構成論的アプローチ』(池上高志, 青土社, 2007)
・『生命とは何か:複雑系生命科学へ』(金子邦彦, 東京大学出版会, 第2版. 2009)
・『JA—The Japan Architect:建築と都市のアルゴリズム』(Vol.77, 2010年4月号, 新建築社, 2010)

■初回授業
2010年9月30日(木)2限。SFC。
授業関連 | - | -

「パターンランゲージ」(2010年度秋学期担当科目)

秋学期の僕の担当授業「パターンランゲージ」を紹介します。

「パターン・ランゲージ」というテーマ・内容だけで1学期間授業をするという、日本で唯一の授業です(おそらく世界でも?)。

今年は、日本におけるパターン・ランゲージ実践・研究のキーパーソンである 中埜博さんと 江渡浩一郎さんをゲストとしてお招きします。

さらに、竹中平蔵先生と「政策のパターン・ランゲージ」の制作に向けての初めての対談を行います。

履修者は学期を通じて、自分たちの興味・関心のあるテーマでパターン・ランゲージをつくる、というグループワークに取り組みます。

この授業を通じて、ぜひ「パターン・ランゲージを理解し、使うことができる人」ではなく、「パターン・ランゲージをつくることができる人」になってほしいと思います。




慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)総合政策学部・環境情報学部
「パターンランゲージ」(木曜日4時限, 担当:井庭 崇)

■主題と目標/授業の手法
この授業では、創造・実践のための言語として「パターンランゲージ」を取り上げ、その考え方と方法を学びます。パターンランゲージは、創造・実践の経験則を「パターン」という単位にまとめ、それを体系化したものです。かつて、建築家のクリストファー・アレグザンダーは、建物や街の形態に繰り返し現れる関係性をパターンとしてまとめました。その後この考え方は、ソフトウェア開発の分野に応用され、成功を収めました。SFCでは、「SFCらしい学び」のパターン・ランゲージとして、「学習パターン」(Learning Patterns)が制作・配布されています。この授業では、パターンランゲージの考え方を学びながら、創造的コラボレーションや社会デザイン、ものづくりなど、新しい分野において、自らパターン・ライティングできるようになることを目指します。

■授業計画

第1回 Introduction
この授業の内容と進め方について説明します。

第2回 Philosophy of Pattern Language
パターン・ランゲージの背景にある思想・哲学について学びます。

第3回 Pattern Forms / Case: Learning Patterns
パターンの形式について理解します。事例として、SFCで制作・配布されている「学習パターン」を取り上げます。

第4回 The Nature of Order
パターン・ランゲージを提唱したクリストファー・アレグザンダーの思想やその可能性について考えます。(ゲスト対談:中埜博氏)

第5回 Pattern Mining
対象のなかからパターンを見つける方法について学びます。

第6回 Pattern Writing
パターン・ランゲージを記述する方法について学びます。

第7回 Toward a Pattern Language for Policy Making
自生的な社会を実現するための「政策」をつくるパターン・ランゲージの可能性について考えます。(ゲスト対談:竹中平蔵氏)

第8回 Toward a Pattern Language for Policy Making
自生的な社会を実現するための「政策」をつくるパターン・ランゲージの可能性について考えます。(ゲスト対談:竹中平蔵氏)

第9回 Writer's Workshop (1)
グループワークで作成しているパターン・ランゲージを、履修者同士でレビューし合う「ライターズ・ワークショップ」を行います。

第10回 Media for Creation and Imagination
パターン・ランゲージや、そこから派生したツール/方法論について考えます。(ゲスト対談:江渡浩一郎氏)

第11回 Writer's Workshop (2)
グループワークで作成しているパターン・ランゲージを、履修者同士でレビューし合う「ライターズ・ワークショップ」を行います。

第12回 Writer's Workshop (3)
グループワークで作成しているパターン・ランゲージを、履修者同士でレビューし合う「ライターズ・ワークショップ」を行います。

第13回 Final Presentation
グループワークで作成してきたパターン・ランゲージの発表を行います。

■グループワークについて
興味・関心が近い3~5人でグループを組み、パターン・ランゲージをつくるグループワークを行います。作成したパターンは、Writer’s Workshopを通じて、グループメンバー以外の人からのコメントをもらい、ブラッシュアップしていきます。授業最終回に、グループワークの最終的な成果を発表してもらいます。

■教科書
・『The Timeless Way of Building』 (Christopher Alexander, Oxford University Press, 1979)
※邦訳ではなく、英語原著を読みます。

■参考書
・『A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction』(Christopher Alexander, Sara Ishikawa, Murray Silverstein, Oxford University Press, 1977)
・『パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則』(江渡浩一郎, 技術評論社, 2009)
・『クリストファー・アレグザンダー:建築の新しいパラダイムを求めて』(スディーブン・グラボー, 工作舎, 1989)
・『Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, Addison-Wesley Professional, 2003)

■初回授業
2010年9月30日(木)4限。SFC Ω12教室。
授業関連 | - | -
CATEGORIES
NEW ENTRIES
RECOMMEND
ARCHIVES
PROFILE
OTHER