井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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SFC授業「複雑系の数理」(2011 秋学期)シラバス

「複雑系の数理」(2011年度秋学期)@慶應義塾大学SFC
開講:火曜日2時限
担当:井庭 崇

■ 主題と目標/授業の手法など

科学は世界の仕組みを明らかにし、芸術は新たな世界をつくりだす。この二つの「世界との関わり方」が出会うとき、何が起きるだろうか。この授業では、生命・知能・社会を研究する「複雑系科学」(the science of complexity / complex systems)の探究で得られた概念/理論/世界観を用いて、自分なりにひとつの「世界」を構築することに挑戦する。言うなれば、"Complexity-Inspired Art and Design" である。

ここでのキーワードは、「生成的」(generative)というコトバである。それは、動的な発展・展開、状況に応じた反応、そして、収束することなしに変化し続ける、ということを意味している。そのような「生成的」な世界を表現・構築する。近年話題となっている ジェネレーティブ・アート(Generative Art)や アルゴリズミック・デザイン(Algorithmic Design)の活動・分野とも近い。

授業の進め方も、出来る限り「生成的」なかたちでいきたいと考えている。一方的に知識を伝達するのではなく、逆に、参加者の作品をレビューするだけでもない。授業の各回が、その場でしか生成し得ないような「一回性」を含むようにつくっていきたい。具体的には、ジェネレーティブ・アートや複雑系の分野で活動・活躍されている方々をゲストとお呼びし、その場かぎりの対話を重ねていくといった具合である。もちろん、参加者の側も生成的であることが期待されている。

最後にひとつ、注意点というか、補足を。「複雑系の数理」という授業名からもわかるように、この授業では多少の数式を扱う。また、コンピュータ上に「世界」を表現する方法として、簡単なプログラミングも行う。だからといって、恐れることはない。大切なのは、むしろ、概念/理論/世界観をひとつの世界として表現するというパッション(情熱)であり、自ら飛躍できるイマジネーション(想像力)である。いろいろなタイプの参加者が来てくれることを期待します。


■提出課題・試験・成績評価の方法など

学期を通じて、一人もしくは複数人で、"Complexity-Inspired Art and Design"の作品をつくってもらいます。成績は、その作品の出来と、その活動から得れれた学び、そして、授業参加への積極性などから総合的に評価します。


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■授業計画

第1回(9/27) イントロダクション
授業の内容と進め方について説明します。上限人数を超えた場合には、ここで履修者選抜を行います。

第2回(10/4) フラクタルとベキ乗分布
自然のなかに潜んでいる自己相似的なかたちや分布について学びます。

第3回(10/11) 力学系とカオス
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第4回(10/18) 生成的なアートと表現2(ゲスト:田所 淳さん)
アルゴリズミックな音楽制作を行い、また、openFrameworks の本も出版されてる田所 淳さんをゲストとしてお呼びし、生成的な表現について語り合います。

第5回(11/1) 表現手法・ツール1
生成的な世界を簡単に構築するためのツールとして、Processing の使い方を学び、実際に動かしてみます。

第6回(11/5 土) カオスの生成力1(合原 一幸先生 × 木本 圭子さん × 井庭崇 鼎談)
日本におけるカオス研究の先駆者である合原一幸先生と、カオスの織りなす世界を探究し、作品をつくり続けている木本 圭子さんをお呼びし、カオスのもつ生成力について語り合います。

第7回(11/5 土) カオスの生成力2(合原 一幸先生 × 木本 圭子さん × 井庭崇 鼎談)
日本におけるカオス研究の先駆者である合原一幸先生と、カオスの織りなす世界を探究し、作品をつくり続けている木本 圭子さんをお呼びし、カオスのもつ生成力について語り合います。

第8回(11/8) 表現手法・ツール2
生成的な世界を簡単に構築するためのツールとして、Processing を用いて実際に表現をしてみます。

第9回(11/15) 進化と遺伝的アルゴリズム
進化のメカニズムを模倣したアルゴリズムについて学びます。

第10回(11/29) 生成的なアートと表現2(ゲスト:魚住 勇太さん)
マルチエージェントによる音楽制作のシステムを開発し、それを用いたパフォーマンスも行っている魚住勇太さんをゲストとしてお呼びし、生成的な表現について語り合います。

第11回(12/6) 自己組織化・進化の工学的応用
自己組織化や進化など、生物にインスパイアされた考え方にもとづくシステム開発を行っている鈴木純一さんをゲストとしてお呼びし、複雑系の考え方の応用可能性について語り合います。

第12回(12/13) 生成的な世界をつくる1(田中 浩也 × 井庭 崇 対談)
パーソナル・ファブリケーションの考え方を広め、実践している田中 浩也さんをお呼びし、生成的な世界をいかにつくるのかについて語り合います。

第13回(12/20) 生成的な世界をつくる2(田中浩也 × 井庭崇 対談)
パーソナル・ファブリケーションの考え方を広め、実践している田中 浩也さんをお呼びし、生成的な世界をいかにつくるのかについて語り合います。

第14回(1/17) 作品発表会
学期を通して制作してきた"Complexity-Inspired Art and Design"の作品を発表してもらいます。

第15回(1/17) 作品発表会
学期を通して制作してきた"Complexity-Inspired Art and Design"の作品を発表してもらいます。


■履修上の注意

あらかじめ休講になる日が予定されています(休講:10月25日、12月27日)。土曜日に行われる補講(11月5日3・4限)にも参加できることを確認した上で履修してください。


■教材・参考文献

【教科書】
『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭崇, 福原義久, NTT出版, 1998)

【参考書】
『Generative Art: A Practical Guide Using Processing』(Matt Pearson, Manning, 2011)
『Form+Code in Design, Art, and Architecture』(Casey Reas, Chandler McWilliams, Princeton Architectural Press, 2010)
※邦訳『FORM+CODE -デザイン/アート/建築における、かたちとコード』(BNN, 2011)
『Built with Processing -デザイン/アートのためのプログラミング入門』(田中 孝太郎, 前川 峻志, BNN, 2010)
『Beyond Interaction:メディアアートのためのopenFrameworksプログラミング入門』(田所 淳, 比嘉 了, 久保田 晃弘, BNN, 2010)
『動きが生命をつくる:生命と意識への構成論的アプローチ』(池上 高志, 青土社, 2007)
『生命とは何か:複雑系生命科学へ』(金子邦彦, 第2版, 東京大学出版会, 2009)
『A New Kind of Science』(Stephen Wolfram, Wolfram Media, 2002)
『カオス的世界像:非定形の理論から複雑系の科学へ』(イアン・スチュアート, 白揚社, 増補新版, 1998)
『フラクタル幾何学(上)(下)』(B.マンデルブロ, 筑摩書房, 2011)
『自然界の秘められたデザイン:雪の結晶はなぜ六角形なのか?』(イアン・スチュワート, 河出書房新社, 2009)
『クリストファー・アレグザンダー:建築の新しいパラダイムを求めて』(スティーブン・グラボー, 工作舎, 1989)
『オートポイエーシス:生命システムとはなにか』(H.R. マトゥラーナ, F.J. ヴァレラ, 国文社, 1991)
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SFC授業「パターンランゲージ」(2011 秋学期)シラバス

「パターンランゲージ」(2011年度秋学期)@慶應義塾大学SFC
開講:月曜日2時限
担当:井庭 崇

■ 主題と目標/授業の手法など

この授業では、創造・実践のための言語として「パターンランゲージ」を取り上げ、その考え方と方法を学びます。パターンランゲージは、創造・実践の経験則 を「パターン」という単位にまとめ、それを体系化したものです。かつて、建築家のクリストファー・アレグザンダーは、建物や街の形態に繰り返し現れる関係性をパターンとしてまとめました。その後この考え方は、ソフトウェア開発の分野に応用され、成功を収めました。SFCでは、「SFCらしい学び」のパターンランゲージとして、「学習パターン」(Learning Patterns)が制作・配布されています。この授業では、パターンランゲージの考え方を学びながら、創造的コラボレーションや社会デザイン、ものづくりなど、新しい分野において、自らパターンライティングできるようになることを目指します。

今年度のグループワークのテーマは、「ソーシャルイノベーション/社会変革」、「まちおこし/地域活性」、「外国語習得」、「異文化理解・交流」、「子どもの学び」、「書くこと」、「ヴィジュアライゼーション」、「情報デザイン/情報アーキテクチャ」等を考えています。これらのいずれかに強いこだわりを持っているか、得意分野であることが求められます。(自分の興味・関心のある分野が、上記リストにない場合には、授業初回に提案してください。)


■ 提出課題・試験・成績評価の方法など

5人程度でグループを組み、パターンランゲージをつくるグループワークを行います。グループワークのテーマは、「ソーシャルイノベーション/社会変革」、「まちおこし/地域活性」、「外国語習得」、「異文化理解・交流」、「子どもの学び」、「書くこと」、「ヴィジュアライゼーション」、「情報デザイン/情報アーキテクチャ」等のパターン作成です。作成したパターンは、ライターズワークショップを通じて、グループメンバー以外の人からのコメントをもらい、ブラッシュアップしていきます。最終回には、最終的な成果を発表してもらいます。成績は、授業中の演習、宿題、最終発表/レポートから総合的に評価し、決定します。


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■ 授業計画

第1回(9/28) イントロダクション
この授業の内容と進め方と、パターンランゲージの背景にある考え方を説明します。

第2回(10/3) パターンランゲージの形式
パターンランゲージの方法と形式について解説します。

第3回(10/17) パターンマイニング1
グループごとに、自分たちのテーマにもとづく実践知を掘り起こしていきます。

第4回(10/31) パターンマイニング2
前回に引き続き、グループごとに、自分たちのテーマにもとづく実践知を掘り起こし、まとめていきます。

第5回(11/7) パターンライティング1
グループごとに、掘り起こして把握できた実践知をパターンとして書いていきます。

第6回(11/12 土) 社会を変える仕組みをつくる1(井上 英之さん × 中室 牧子さん × 井庭 崇 鼎談)
ソーシャルイノベーション分野のキーパーソンである井上 英之さんと、実践派の教育経済学者である中室 牧子さんをお招きし、「社会を変える仕組みをつくる」ことについて語り合います。

第7回(11/12 土) 社会を変える仕組みをつくる2(井上 英之さん × 中室 牧子さん × 井庭 崇 鼎談)
ソーシャルイノベーション分野のキーパーソンである井上 英之さんと、実践派の教育経済学者である中室 牧子さんをお招きし、「社会を変える仕組みをつくる」ことについて語り合います。

第8回(11/14) パターンライティング2
グループごとに、自分たちで書いたパターンをブラッシュアップしていきます。

第9回(11/28) 内からのことばを生み出す(山田 ズーニーさん × 井庭 崇 対談)
文章表現・コミュニケーションインストラクターである山田 ズーニーさんをお招きし、内からのことばを生み出すにはどうすればよいのか、また「魅力があり、想像力をかきたて、人を動かすことば」を生み出すにはどうしたらよいのかについて語り合います。

第10回(12/5) ライターズワークショップ
グループワークで作成しているパターンランゲージを、履修者同士でレビューし合う「ライターズワークショップ」を行います。

第11回(12/12) ユーザーエクスペリエンスデザイン(長谷川 敦士さん × 井庭 崇 対談)
企業が抱えるコミュニケーション課題をデザインによって解決している長谷川 敦士さんをゲストとしてお招きし、ユーザーエクスペリエンスデザインとパターンランゲージとの本質的な関係性と、今後の展望を語り合います。

第12回(12/19) プレゼンテーションについての対話ワークショップ
プレゼンテーションパターンを用いて、自らのプレゼンテーションの経験を掘り起こし、それを語り合うというワークショップを行います。

第13回(12/26) グループワーク成果発表会
グループワークで作成してきたパターンランゲージの発表を行います。

第14回(1/7 土) 共感を生むことば
共感を生むことばはどのようにつくられているのかを、J-POPの歌詞を事例に考えます。

第15回(1/16) グループワーク成果にもとづく対話ワークショップ
各グループが作成したパターンランゲージを用いて、対話のワークショップを行います。また、授業の総括を行います。


■ 履修上の注意

・途中で履修を取りやめることは、グループメンバーの迷惑になります。そのような事態にならないように、内容/進め方をしっかり読み/聴き、よく考えて履修してください。

・パターンランゲージを書くためには、その分野での実践について、強いこだわりがあるか、得意である必要があります。自分の興味・関心のある分野が、上記リストにない場合には、授業初回に提案してください。

・あらかじめ休講・補講になる日がわかっています(10月24日休講、11月12日3・4限補講)。土曜日に行われる補講(11月12日3・4限)にも参加できることを確認した上で履修してください。


■ 教材・参考文献

【教科書】
『The Timeless Way of Building』 (Christopher Alexander, Oxford University Press, 1979)
※邦訳:『時を超えた建設の道』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1993)

【参考書】
『A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction』(Christopher Alexander, Sara Ishikawa, Murray Silverstein, Oxford University Press, 1977)
※邦訳:『パタン・ランゲージ"環境設計の手引』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1984)
『クリストファー・アレグザンダー:建築の新しいパラダイムを求めて』(スディーブン・グラボー, 工作舎, 1989)
『パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則』(江渡浩一郎, 技術評論社, 2009)
『Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas』 (Mary Lynn Manns, Linda Rising, Addison-Wesley Professional, 2003)
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