井庭研における論文執筆の"三種の神器"
井庭研で毎学期輪読している、論文執筆の“三種の神器”について紹介したい。
その三冊とは、『創造的論文の書き方』(伊丹敬之, 有斐閣, 2001)、『「超」文章法』(野口悠紀夫, 中公新書, 2002)、『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)である。
1.『創造的論文の書き方』(伊丹 敬之)
1冊目は、『創造的論文の書き方』(伊丹敬之, 有斐閣, 2001)である。この本が素晴らしいのは、研究とは何か、テーマをどう探すか、仮説と証拠をどう育てるかというところから、論文・文章の書き方までを語ってくれているところだ。
この『創造的論文の書き方』の大きな特徴に、経営学者が書いているという点がある。この手の本で経営学者が書いているのは珍しい。スパッとは検証できない類の研究を含む経営学の分野だからこそのアドバイスは、実は僕らのような新しい分野で新しいタイプの研究に挑戦している人にとってはかなり役に立つ。
さらに、『創造的論文の書き方』にあって、他の本ではまず書かれていない内容もある。それは、「止めの打ち方」。つまり、論文の締めくくり、「おわりに」の書き方だ。「過度の一般化」(オーバー・ジェネラリゼーション)ではなく、「自分が何の一部だったのかを書く」という指摘は、とても重要だ。
というわけで、おすすめの1冊目は、『創造的論文の書き方』(伊丹敬之, 有斐閣, 2001)である。学生を指導しているなかでよく生じている問題・難しさを踏まえて書かれている感じがする。学生はもちろん、教員も、学ぶところが多いのではないだろうか。
2.『「超」文章法』(野口 悠紀夫)
2冊目は、『「超」文章法:伝えたいことをどう書くか』(野口悠紀夫, 中公新書, 2002)である。この本は、僕らは全部ではなく、いつも一部しか読まないのだけれども、そこにとても重要なことが書いてある。メッセージとは何か、そして、面白いか/ためになるか、という基準の話。
『「超」文章法』のp.10に書いてある、次の部分は、いつもハッとさせられる。「仕事を効率的に進めるには、書類の整理をうまく行う必要がある。」というのは、メッセージになっていないのであり、「書類は、内容別に分類するのではなく、時間順に並べるのがよい。」となってこそメッセージだ、と。
文章を書き始めるときに、メッセージが大切なのはいつもわかっているが、そのメッセージというのがつい前者のようになってしまいがちだ。しかし、アブストラクト(概要)に結論を書くのと同じように、メッセージにも中身がなければならない。そうでなければ、ただ必要性を叫ぶだけになってしまう。
そんなわけで、僕も、井庭研でも、文章を書くときはいつも、『「超」文章法』(野口悠紀夫, 中公新書, 2002)のこの部分を読んで、セルフチェックをする。
3.『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント)
3冊目は、『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)である。この本は、ビジネスの方で有名な本だけれども、論理的な文書の書き方として参考になる。メッセージをトップにどのような論理階層・構造で書くとよいのか、ということがわかりやすく書かれている。
『考える技術・書く技術』では、まず、パラグラフ・ライティングの話を学ぶが、それ以外に、他の本にはない優れた部分は、「導入部」(Introduction、はじめに)についての部分。どのようにして、読者を本論へと導くのか、ということが書かれており、とても役立つ。
この部分を読めば、導入部(Introduction、はじめに)をどう書けばよいのかが見えてくる。よく学生に、「アブストラクト(概要)とイントロダクションが内容的に似てしまうんですが…」という相談を受けるが、これを読めば、それらはまったく違う役割・内容だということがわかるはずだ。
ということで、おすすめの3冊目は、『考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)である。
以上をまとめると、「よい研究とは何か」と「論文の閉じ方」を『創造的論文の書き方』から学び、「メッセージとは何か」を『「超」文章法』から学び、「論文の全体構成」と「導入部」の書き方を『考える技術・書く技術』から学ぶ。このように3冊を読んで、論文の書き方を学ぶというのが井庭研流。
もちろん、すぐにはすべてができるようになるわけではないので、毎学期読んで、再度学びながら、書き続ける。こうやって、毎学期書くことで、徐々に身についていくのである。
その三冊とは、『創造的論文の書き方』(伊丹敬之, 有斐閣, 2001)、『「超」文章法』(野口悠紀夫, 中公新書, 2002)、『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)である。
1.『創造的論文の書き方』(伊丹 敬之)
1冊目は、『創造的論文の書き方』(伊丹敬之, 有斐閣, 2001)である。この本が素晴らしいのは、研究とは何か、テーマをどう探すか、仮説と証拠をどう育てるかというところから、論文・文章の書き方までを語ってくれているところだ。
この『創造的論文の書き方』の大きな特徴に、経営学者が書いているという点がある。この手の本で経営学者が書いているのは珍しい。スパッとは検証できない類の研究を含む経営学の分野だからこそのアドバイスは、実は僕らのような新しい分野で新しいタイプの研究に挑戦している人にとってはかなり役に立つ。
さらに、『創造的論文の書き方』にあって、他の本ではまず書かれていない内容もある。それは、「止めの打ち方」。つまり、論文の締めくくり、「おわりに」の書き方だ。「過度の一般化」(オーバー・ジェネラリゼーション)ではなく、「自分が何の一部だったのかを書く」という指摘は、とても重要だ。
というわけで、おすすめの1冊目は、『創造的論文の書き方』(伊丹敬之, 有斐閣, 2001)である。学生を指導しているなかでよく生じている問題・難しさを踏まえて書かれている感じがする。学生はもちろん、教員も、学ぶところが多いのではないだろうか。
2.『「超」文章法』(野口 悠紀夫)
2冊目は、『「超」文章法:伝えたいことをどう書くか』(野口悠紀夫, 中公新書, 2002)である。この本は、僕らは全部ではなく、いつも一部しか読まないのだけれども、そこにとても重要なことが書いてある。メッセージとは何か、そして、面白いか/ためになるか、という基準の話。
『「超」文章法』のp.10に書いてある、次の部分は、いつもハッとさせられる。「仕事を効率的に進めるには、書類の整理をうまく行う必要がある。」というのは、メッセージになっていないのであり、「書類は、内容別に分類するのではなく、時間順に並べるのがよい。」となってこそメッセージだ、と。
文章を書き始めるときに、メッセージが大切なのはいつもわかっているが、そのメッセージというのがつい前者のようになってしまいがちだ。しかし、アブストラクト(概要)に結論を書くのと同じように、メッセージにも中身がなければならない。そうでなければ、ただ必要性を叫ぶだけになってしまう。
そんなわけで、僕も、井庭研でも、文章を書くときはいつも、『「超」文章法』(野口悠紀夫, 中公新書, 2002)のこの部分を読んで、セルフチェックをする。
3.『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント)
3冊目は、『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)である。この本は、ビジネスの方で有名な本だけれども、論理的な文書の書き方として参考になる。メッセージをトップにどのような論理階層・構造で書くとよいのか、ということがわかりやすく書かれている。
『考える技術・書く技術』では、まず、パラグラフ・ライティングの話を学ぶが、それ以外に、他の本にはない優れた部分は、「導入部」(Introduction、はじめに)についての部分。どのようにして、読者を本論へと導くのか、ということが書かれており、とても役立つ。
この部分を読めば、導入部(Introduction、はじめに)をどう書けばよいのかが見えてくる。よく学生に、「アブストラクト(概要)とイントロダクションが内容的に似てしまうんですが…」という相談を受けるが、これを読めば、それらはまったく違う役割・内容だということがわかるはずだ。
ということで、おすすめの3冊目は、『考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)である。
以上をまとめると、「よい研究とは何か」と「論文の閉じ方」を『創造的論文の書き方』から学び、「メッセージとは何か」を『「超」文章法』から学び、「論文の全体構成」と「導入部」の書き方を『考える技術・書く技術』から学ぶ。このように3冊を読んで、論文の書き方を学ぶというのが井庭研流。
もちろん、すぐにはすべてができるようになるわけではないので、毎学期読んで、再度学びながら、書き続ける。こうやって、毎学期書くことで、徐々に身についていくのである。
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