井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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井庭研B2メンバー追加募集!(2012年度春学期)☆最新情報☆

井庭研究室では、2012年度春学期の新規メンバーの追加募集を行ないます。

井庭研究会B2
2012年4月3日(火):追加エントリー〆切
2012年 4月5日(木):面接予定

今回、追加募集を行なうのは、井庭研B2(火曜5限)です。井庭研B2「創造社会の理論・方法・実践プロジェクト」についての詳細は、研究会シラバスをご覧ください。


今回の追加募集では、「EC(ネットショップ)」、「政策」、「教育」のそれぞれの領域におけるパターン・ランゲージの制作に興味がある人を募集します。


1. [EC] ネットショップのパターン・ランゲージ制作

2012年度春学期から1年間かけて、インターネットサービス(ECサイト、ネットショップ)のパターン・ランゲージの制作にとりくむプロジェクトを開始します。ビジネスのデザイン、サイトのデザイン、ヴィジュアルのデザイン、マーケティングのデザイン等に興味がある人、または、パターン・ランゲージの制作に興味がある人のエントリーをお待ちしています。

参考資料 ●「Patterns: Design Insights Emerging and Converging」(IDEO)
参考資料 ●「Yahoo! Design Pattern Library」(Yahoo!)


2. [政策] 政策のパターン・ランゲージ(政策言語)の制作

政策をデザインするときの問題発見・解決の知を言語化した「政策言語」(PolicyLanguage)を作成します。政策言語をつくるひとつの目的は、政策をデザインする際の思考の要素を言語化し、明示化することです。もうひとつの目的は、政策のデザインに必要な考え方のビルディング・ブロックを明示することで、政策をつくるプロセスをひらくということです。これまでのように多くの人が政策を消費(Consumption)するのでなく、また政策について単にコミュニケート(Communication)するだけでもなく、政策の創造(Creation)に参加するための方法・道具を、パターン・ランゲージの考え方を応用して構築したいと思います。

参考資料 ●「竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング」
参考資料 ●「政策言語:政策デザインのパターン・ランゲージ向けて」


3. [教育] 創造的な学びのための教育のパターン・ランゲージの制作

変化が激しい現代社会では、あらゆる年代・立場の人にとって「学び」が重要になっています。そしてそこで求められている「学び」は、単なる詰め込み型ではなく、新しい関係性を発見し、自ら意味を編集・構成していくような「創造的な学び」です。しかしながら、教育の現場ではこれまで知識伝授型の教育が主に行なわれてきたため、「創造的な学び」の教育方法はまだまだ蓄積が少ないというのが現状です。そこで本研究では、創造的な学びを実現している先駆的な教員たちの発想や方法を、パターン・ランゲージと記述・共有することに取り組みます。

参考資料 ●「探究型学習のためのパターン・ランゲージの制作」
参考資料 ●「Learning 3.0: The Age of Creative Learning」
参考資料 ●「Design Thinking for Educators」(IDEO)



【追加エントリー課題】

井庭研B2シラバスをしっかりと読んで内容を理解した上で、以下のエントリー情報を4月3日(火)までにメールで提出してください。

エントリーメールの提出先: ilab-entry2012 [at] sfc.keio.ac.jp
メールのサブジェクト(件名): 井庭研究会B2 履修希望
以下の内容を書いた文書ファイル(WordもしくはPDFファイル)を、メールに添付してください。

井庭研究会B2 履修希望

(1) 氏名(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名
(2) 「EC」「政策」「教育」のどのテーマに参加したいか、およびその志望理由
(3) 来学期、並行して所属する予定の研究会
(4) これまでに所属した研究会
(5) これまでに履修した授業のなかで、お気に入りのもの(複数可)
(6) これまでに履修した担当教員(井庭)の授業
(7) その他の自己紹介(やっていること、興味があること、将来の方向性、自己アピールなど)


※なお、井庭研では、研究会メンバーには全員、春学期に 「社会システム理論」(月曜3限)と「シミュレーションデザイン」(火曜3・4限)も同時に履修してもらうことになっています。
井庭研だより | - | -

2012年度春学期「社会システム理論」シラバス

2012年度春学期の「社会システム理論」(井庭 崇)のシラバスを書きました。開講曜日時限は、月曜 3限です。社会のリアリティを捉え、さらに未来をつくっていくための理論を学んでいきましょう!


科目:社会システム理論
担当:井庭 崇
開講:月曜 3限


【主題と目標/授業の手法など】

本講義では、社会を「システム」として捉える視点を身につけ、変化を生み出す力を身につけることを目指します。

 本講義で取り上げるのは、「社会システム理論」(オートポイエーシスの社会システム理論)です。その理論では、社会はコミュニケーションがコミュニケーションを連鎖的に引き起こすことで成り立つシステムであると捉えます。このような捉え方で、社会学者ニクラス・ルーマンは、次のような問題に答えようとしました。「社会的な秩序はいかにして可能なのだろうか?」と。個々人は別々の意識をもち、自由に振る舞っているにもかかわらず、社会が成り立つ(現に動いている)、この不思議に取り組むのが、社会システム理論です。

 社会システム理論の捉え方によって、既存の社会諸科学では分析できない社会のダイナミックな側面を理解することができるようになります。また、個別の学問分野を超えた視点で社会を捉えることができるようになります。この理論を考案した社会学者ニクラス・ルーマンは、この社会システム理論を用いて、経済、政治、法、学術、教育、宗教、家族、愛などの幅広い対象を分析しました。この授業では、さらに、組織学習やパターン・ランゲージ、オープン・コラボレーションなど、現代の新しい潮流の理解に、この理論を用いていきたいと思います。

社会システム理論は非常に難解な理論ですが、授業ではできる限り噛み砕いてわかりやすく説明します。また、映像や演習の時間なども設け、より楽しく実践的に学ぶ場にする予定です。前提知識等は必要ありません。学年も問いません。未来を切り拓いていきたいと思っている人は、ぜひ一緒に学びましょう。


【教材・参考文献】

教科書として以下の2冊の書籍を指定します。授業進行に合わせて読んでいきます。

●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)
●『Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, Addison-Wesley, 2005)

また、各回に使用する文献や関連する参考文献は、各回の説明のところで示してあります。必要なものについては適宜コピーを配布します。


【履修上の注意】

●毎週、英語で文献を読み、そのサマリーを提出するという宿題を出します。
●講義中のPCの使用を原則禁止とします。


【授業計画】

■■■ 第1回(4/9) イントロダクション

目的と内容、および進め方について説明します。ニクラス・ルーマンの提唱した「社会システム理論」の魅力はどこにあるのか? また、社会的創造の潮流や、創造的なコミュニケーションのメディアについて概観します。


■■■ 第2回(4/16) 創発的な出来事としてのコミュニケーション

社会システム理論では、社会の構成要素は人ではなく「コミュニケーション」であるといいます。ここに、社会の捉え方に関する理論的革新があります。しかも、その「コミュニケーション概念もこれまでとは異なる捉え方をします。それがどのような捉え方なのかを理解します。

【文献読解】
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論〈上〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章


■■■ 第3回(4/23) コミュニケーションのメディアとコード

特定の種類のコミュニケーションが連鎖していくには、いろいろな不確実性が伴うため、本来は成立が困難なものです。それにもかかわらず、近代社会においては、安定的に生成・連鎖が生じている種類のコミュニケーションがあります。そこで、そのようなコミュニケーションの生成・連鎖がいかにして可能なのかという秘密に迫ります。

【文献読解】
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論〈上〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章


■■■ 第4回(5/1) 近代社会とはいかなる時代か

社会システム理論では、近代社会は、経済、法、学問、宗教など、機能的な分化が起こったと捉えます。つまり近代社会では、経済システム、法システム、学問システム、宗教システムなどがそれぞれ自律的に動いているということです。それぞれの機能システムは、どのようなコードで動いているのか、そして、近代社会とはいかなる時代なのかについて考えます。

【文献読解】
●『Ecological Communication』(N. Luhmann, University Of Chicago Press, 1989) [『エコロジーのコミュニケーション:現代社会はエコロジーの危機に対応できるか?』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章、第1章


■■■ 第5回(5/7) オートポイエーシスと構造的カップリング

ルーマンは社会を、自分で自分自身を生み出す「オートポイエーシス」の特徴をもつシステムだと捉えました。一体、オートポイエーシスとはどのようなものなのでしょうか。また、オートポイエティック・システムは他のシステムや環境とどのような関係をもつのでしょうか。この授業では、社会システム理論における「システム」の考え方を詳しくみていきます。

【文献読解】
●『Autopoiesis and Cognition: The Realization of the Living』(H. R. Maturana, F. J. Varela, Springer, 1980) [『オートポイエーシス:生命システムとはなにか』(H.R. マトゥラーナ, F.J.ヴァレラ, 国文社, 1991)] 一部
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論〈上〉』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部


■■■ 第6回(5/14) 社会に変化をもたらすVoiceとExit

アルバート・ハーシュマンは、世の中を変えるには、Voice(発言)と Exit(退出)という二つの選択肢があるといいました。Voice(発言)は直接意見を言うことで変えていくということ、Exitはそこからいなくなることで間接的にシグナルを送るということです。この授業では、Voice/Exit論を、コミュニケーションの生成・連鎖の観点から捉え直します。

【文献読解】
●『Exit, Voice, and Loyalty: Responses to Decline in Firms, Organizations, and States』(Albert O. Hirschman, Harvard University Press, 1970) [『離脱・発言・忠誠:企業・組織・国家における衰退への反応』(A.O.ハーシュマン, ミネルヴァ書房, 2005)] 一部


■■■ 第7回(5/21) シナリオ・プランニング:未来の物語をつくって学ぶ

組織学習の方法のひとつに、「シナリオ・プランニング」というものがあります。プランニングという名前ですが、よい計画を立てることが目的なのではなく、複数人で未来像について語り合うプロセスのなかで、各人が学ぶ、あるいは組織が学ぶということが目指されます。シナリオ・プラニングとはどのようなものであり、実際にどうやるのかを理解し、実際に演習で体験してみます。

【文献読解】
● 『The Art of the Long View: Planning for the Future in an Uncertain World』(Peter Schwartz, Crown Business, 1996) [『シナリオ・プランニングの技法』(ピーター・シュワルツ, 東洋経済新報社, 2000)] 一部


■■■ 第8回(5/28) パターン・ランゲージ 1:ユーザー参加のメディア

建築家のクリストファー・アレグザンダーは、住民参加型のまちづくりを行なうために、「パターン・ランゲージ」という方法を考案しました。パターン・ランゲージは、設計者がもつ創造の経験則 を「パターン」という単位にまとめ、それを体系化したものです。現在では、パターン・ランゲージは、ソフトウェアデザインや組織デザイン、コミュニケーション・デザインなど、幅広い分野で使われるようになっています。この授業では、そのパターン・ランゲージの社会的機能について考えてみたいと思います。

【文献読解】
●『The Production of Houses』(C. Alexander, Oxford University Press, 1985) [『パタンランゲージによる住宅の建設』(C.アレグザンダー他, 鹿島出版会, 1991)] 一部


■■■ 第9回(6/4) パターン・ランゲージ 2:組織変革の方法論

組織やコミュニティに新しいアイデアを導入するのはなかなか難しいものです。そのアイデアが革新的なアイデアであるほど、理解されるのは困難になります。また、それまでのやり方と異なることから、恐怖心や疑念も生まれてくるでしょう。しかしながら、そのようなイノベーションを引き起こしている人たちは、現に存在します。その人たちはどのように変革を進めているのでしょうか。この授業では、組織変革のパターン・ランゲージとして有名な『Fearless Change』のパターンを用いて、自らの経験を語り合う対話ワークショップを行ないます。

【文献読解】
●『Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, Addison-Wesley, 2005)


■■■ 第10回(6/11) 創造的コラボレーション:コミュニケーションの連鎖で生み出す

コラボレーションとは、複数の人々が、ひとりでは決して到達できないような付加価値を生み出す協働作業のことです。創造的なコラボレーションが行われている組織やチームでは、そのコミュニケーションの流れに「勢い」が生まれ、連鎖的に共鳴・増幅していきます。このような流れに身を委ね、コミュニケーションのパスをつないでいくと、思いもかけない飛躍的なアイデアやイノベーションが生まれることがあります。そのような創造的コラボレーションで、一体何が起きているのかを考えたいと思います。

【文献読解】
●『Group Genius: The Creative Power of Collaboration』(Keith Sawyer, Basic Books, 2008) 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 第2章
●「コラボでつくる!―― コミュニケーションの連鎖による創発」(井庭 崇, 『創発する社会』, 国領二郎 編著, 日経BP企画, 2006年)pp.68-85


■■■ 第11回(6/18) オープン・コラボレーション 1:Collaborative Innovation Networks (COINs)

不特定多数の人たちが出入りしながら協働的に付加価値を生み出していく「オープン・コラボレーション」は、どのように発展していくのでしょうか。Creatorのまわりにいる Collaborative Innovation Networks の人々が重要な役割を担っていることを理解します。

【文献読解】
●『Coolfarming: Turn Your Great Idea into the Next Big Thing』(Peter Gloor, AMACOM, 2010) 一部


■■■ 第12回(6/25) オープン・コラボレーション 2:オープンソース・ソフトウェア開発

不特定多数の人たちが出入りしながら協働的に付加価値を生み出していく「オープン・コラボレーション」の事例として、Linux OSのオープンソース・ソフトウェア開発について取り上げます。

【文献読解】
●『Just for Fun: The Story of an Accidental Revolutionary』(Linus Torvalds, David Diamond, HarperBusiness, 2002) [『それがぼくには楽しかったから』(リーナス・トーバルズ, デビッド・ダイヤモンド, 小学館プロダクション, 2001)] 一部


■■■ 第13回(7/2) オープン・コラボレーション 3:WikiとWikipedia

不特定多数の人たちが出入りしながら協働的に付加価値を生み出していく「オープン・コラボレーション」の事例として、Wikipediaについて取り上げます。また、Wikipediaのベースとなっている「Wiki」というシステムの発想を理解します。

【文献読解】
●『Wikinomics: How Mass Collaboration Changes Everything』(Don Tapscott, Anthony D. Williams, Portfolio Trade, Expanded ed., 2010) [『ウィキノミクス:マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』, ドン・タプスコット, アンソニー・D・ウィリアムズ, 日経BP社, 2007)] 一部
●『パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則』(江渡 浩一郎, 技術評論社, 2009)序章, 第15・17章、終章
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 第3章


■■■ 第14回(7/9) 社会に変化をもたらす

社会に深い変化をもたらすにはどうすればよいのでしょうか。精神的な側面と実践的な側面とを合わせもつ「U理論」(Theory U)を取り上げます。また、これまでの授業を振り返り、総括を行ないます。

【文献読解】
●『Presence: Human Purpose and the Field of the Future』(Peter M. Senge, et. al., Crown Business, Reprint ed., 2008) [『出現する未来』, ピーター・センゲ ほか, 講談社, 2006)] 一部
●『Theory U: Leading from the Future as It Emerges: The Social Technology of Presencing』(C. Otto Scharmer, Berrett-Koehler Pub, 2009) [『U理論:過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』, C・オットー・シャーマー, 英治出版, 2010)] 一部


【提出課題・試験・成績評価の方法など】

成績評価は、授業への参加、宿題、期末レポートから総合的に評価します。

【履修制限】

履修人数を制限する:100人程度。初回授業時に志望理由を書いてもらいます。
授業関連 | - | -

2012年度春学期「シミュレーションデザイン」シラバス

2012年度春学期の「シミュレーションデザイン」(井庭 崇, 古川園智樹)のシラバスを書きました。開講曜日時限は、火曜 3・4限です。がっつり文献を読んで議論するので、やる気のある人はぜひどうぞ。


科目:シミュレーションデザイン
担当:井庭 崇, 古川園智樹
開講:火曜 3・4限


【主題と目標/授業の手法など】

複雑で動的に変化するシステム --- 例えば生命や社会など --- を理解するためには、それに見合う道具立てが必要になります。そのような「思考の道具」として、本科目では「シミュレーション」の考え方に着目します。ここでいう「シミュレーション」とは、最も広義の意味で捉え、「物事の関係性が設定された状態から、それらの時間発展を内生的な変化として展開し、その振る舞いを観察して対象への理解を深める」ことを指します。この授業では、そのように広義に定義されたシミュレーションについて、思想・手法・実践の面から理解することを目指します。


【教材・参考文献】

本授業では、毎回、指定文献を読んできてもらい、授業中に内容の確認や議論をします。その文献のうちの一部は、各自購入してもらうことになります。輪読の際に線を引きながら読むので、図書館で借りるのではなく購入するようにしてください。これらの本はどれも、今後みなさんの本棚を飾り、時に手に取るとよいと思われる本ばかりです。

●『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭崇, 福原義久, NTT出版, 1998)¥1,890
●『創造性とは何か』(川喜田二郎, 詳伝社, 2010)¥798
●『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです:村上春樹インタビュー集 1997-2009』(村上春樹, 文藝春秋, 2010)¥1,890
●『メタファー思考:意味と認識のしくみ』(瀬戸 賢一, 講談社, 1995)¥735
●『科学革命の構造』(トーマス・クーン, みすず書房, 1971)¥2,730
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)¥2,520
●『デカルトからベイトソンへ:世界の再魔術化』(モリス・バーマン, 国文社, 1989)¥4,725
●『方法序説』(ルネ・デカルト, ちくま学芸文庫, 筑摩書房, 2010)¥945
●『精神と自然:生きた世界の認識論』(グレゴリー・ベイトソン, 新思索社, 2006)¥2,100
●『クリストファー・アレグザンダー:建築の新しいパラダイムを求めて』(スティーブン・グラボー, 工作舎, 1989)¥3,873

これ以外の文献については、適宜コピーを配布します。


【履修上の注意】

毎回、かなりの分量の文献を読み込んでいきます。きちんと読んできてください。


【授業計画】

■■■ 第1回(4/10) イントロダクション Introduction

授業の内容、進め方について説明します。


■■■ 第2回(4/17) 構成的理解 Constructive Way of Understanding

複雑系科学では、生命や知能、社会を理解するために、コンピュータ・シミュレーションをつくることで理解することが行なわれます。この「つくることで理解する」というアプローチを、「構成的理解」といいます。この構成的理解を、学術的研究からアートまでのつながりを学びます。

【文献読解】
●『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭崇, 福原義久, NTT出版, 1998) 序文、第1〜3章
●『Simulation for the Social Scientist』(Nigel Gilbert, Klaus Troitzsch, Open University Press, 1999) [『社会シミュレーションの技法』, ナイジェル・ギルバート, クラウス・G・トロイチュ, 日本評論社, 2003] 第1・2章
●『動きが生命をつくる:生命と意識への構成論的アプローチ』(池上高志, 青土社, 2007)
序章、第1〜3章、第8章


■■■ 第3回(4/24) 生成的プロセス Generative Processes

「つくることで理解する」という構成的理解が行なわれているのは、コンピュータ・シミュレーションによる学術的研究だけではありません。作家が物語をつくるときにも、ある種のシミュレーションを行いながら構成的な理解をしているようです。そのような作家の言葉をみてみましょう。

【文献読解】
●『創造性とは何か』(川喜田二郎, 詳伝社, 2010)
●『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです:村上春樹インタビュー集 1997-2009』(村上春樹, 文藝春秋, 2010)
●『ものがたりの余白:エンデが最後に話したこと』(ミヒャエル・エンデ, 岩波書店, 2000) 第I章
●『出発点 1979〜1996』(宮崎駿, 徳間書店, 1996)[『Starting Point 1979-1996』(Hayao Miyazaki, VIZ media, 2009)]


■■■ 第4回(5/8) アブダクション Abduction

新しいアイデアを「発想」するということはどういうことなのか。そのようなことに取り組んだ人に、チャールズ・S・パースという人がいます。彼は、これまでの論理学でいわれてきた「帰納」(induction)と「演繹」(deduction)に加えて、「アブダクション」(abduction)というものがあると考えました。アブダクションとはどのようなものか、そして、創造的思考とどのような関係があるのかについて学びます。

【文献読解】
●『アブダクション:仮説と発見の論理』(米盛 裕二, 勁草書房, 2007)まえがき、第1〜5章
● "Deduction, Induction, and Hypothesis" (Charles Sanders Peirce, in 『The Essential Peirce: Selected Philosophical Writings VOLUME 1 (1867-1893)』, Indiana University Press, 1992) p.186-199


■■■ 第5回(5/15) メタファー Metaphor

つかみどころがない物事を捉えるときに、私たちはよく「メタファー」(隠喩)を用いて理解します。例えば、「人生」とは「旅のようなもの」であるとか、「議論」とは「戦いのようなもの」であるというような理解の仕方です。このようなメタファーによる理解は、人間の認知の根本的な特徴であるとも言われています。そして、メタファー的な思考は、創造的思考や発想において重要な役割を果たしていると思われます。認識、思考、創造のレトリックとしてのメタファーについて学びます。

【文献読解】
●『メタファー思考:意味と認識のしくみ』(瀬戸 賢一, 講談社, 1995)
●『Metaphors We Live By』(George Lakoff, Mark Johnson, The University of Chicago Press, 1980) [『レトリックと人生』(ジョージ・レイコフ, マーク・ジョンソン, 大修館書店, 1986] 一部
●『走ることについて語るときに僕の語ること』(村上春樹, 文藝春秋, 2010)[『What I Talk about When I Talk about Running: A Memoir』(Haruki Murakami, Vintage Books, 2009) ] 一部


■■■ 第6回(5/22) パラダイム・シフト Paradigm Shift

物事に対する考え方・認識が根本から変わってしまうことがあります。これが「パラダイム・シフト」と呼ばれる事態です。科学哲学者トーマス・クーンは、科学における革命的な変化について研究し、パラダイム・シフトが起きる時にはどのようなことが起きるのかを明らかにしました。このパラダイム・シフトの考え方について学びます。

【文献読解】
●『The Structure of Scientific Revolution』(Thomas S. Kuhn, The University of Chicago Press, 1962) [『科学革命の構造』(トーマス・クーン, みすず書房, 1971)]
●『Imagined Worlds』(Freeman Dyson, Harvard University Press, 1997) [『科学の未来』(フリーマン・ダイソン, みすず書房, 2005)] 第2章


■■■ 第7回(5/29) 社会科学の歴史的形成 Historical Construction of the Social Sciences

社会科学はどのようにして分化し、発展してきたのでしょうか。また、これからの社会科学はどうなるのでしょうか。それらのことについて議論したいと思います。

【文献読解】
●『Open the Social Sciences』(Immanuel Wallerstein, Stanford University Press, 1996) [『社会科学をひらく』(ウォーラーステイン, 藤原書店, 1996)]
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 第1章
●「ディジタル・メディア時代における「知の原理」を探る: 知のStrategic Obscurantism」(井関 利明, 『メディアが変わる知が変わる:ネットワーク環境と知のコラボレーション』, 1998)


■■■ 第8回(6/5) デカルト的パラダイム Cartesian Paradigm

ルネ・デカルトは、現代の科学的世界観の基礎をつくりました。それは端的にいうと、精神と物質というものを分けるという二元論的なパラダイムです。この回は、デカルトの考えに触れるとともに、その可能性と限界について考えます。

【文献読解】
●『The Reenchantment of the World』(Morris Berman, Cornell University Press, 1984) [『デカルトからベイトソンへ:世界の再魔術化』(モリス・バーマン, 国文社, 1989)] 序章、第1〜4章
●『方法序説』(ルネ・デカルト, ちくま学芸文庫, 筑摩書房, 2010)


■■■ 第9回(6/12) ベイトソン的全体論 Batesonian Holism

デカルト流の二元論的パラダイムでは捉えられないものを捉える可能性として、グレゴリー・ベイトソンの全体論/サイバネティクスの考え方を学びます。

【文献読解】
●『The Reenchantment of the World』(Morris Berman, Cornell University Press, 1984) [『デカルトからベイトソンへ:世界の再魔術化』(モリス・バーマン, 国文社, 1989)] 第5〜9章


■■■ 第10回(6/19) パターンと学習 Patterns and Learning

グレゴリー・ベイトソンの考えについての理解を深めます。また、社会システム理論やパターン・ランゲージなどの考え方に通じる点について考えます。

【文献読解】
●『Mind and Nature: A Necessary Unity』(Gregory Bateson, Hampton Press, 2002) [『精神と自然:生きた世界の認識論』(グレゴリー・ベイトソン, 新思索社, 2006)]
●『Steps to an Ecology of Mind』(Gregory Bateson, The University of Chicago Press, 2000) [『精神の生態学』(G・ベイトソン, 新思索社, 2000)] "The Logical Categories of Learning and Communication" [「学習とコミュニケーションの階型論」] (p.382-419) & "Cybernetic Explanation" [「サイバネティックスの説明法」](p.532-548)


■■■ 第11回(6/26) オートポイエーシス Autopoiesis

生命や社会、創造を理解するための基礎理論として、オートポイエーシスのシステム理論について学びます。

【文献読解】
●『Autopoiesis and Cognition: The Realization of the Living』(H. R. Maturana, F. J. Varela, Springer, 1980) [『オートポイエーシス:生命システムとはなにか』(H.R. マトゥラーナ, F.J.ヴァレラ, 国文社, 1991)] 一部
●『オートポイエーシス:第三世代システム』(河本英夫, 青土社, 1995)第1〜3章
●『Social Systems』(N. Luhmann, Stanford University Press, 1996) [ ルーマン『社会システム理論』〈上〉 〈下〉(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995)] 一部
●『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法【リアリティ・プラス】』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011) 序章, 第2章


■■■ 第12回(7/3) 生成的構造 Generative Structure

デカルト的な二元論的パラダイムとは異なる見方で、建築の世界を捉え直し、建築のデザインを再考したクリストファー・アレグザンダーの考えと実践の遍歴を辿ります。

【文献読解】
●『パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則』(江渡 浩一郎, 技術評論社, 2009)序章, 第1〜6章
●『Christopher Alexander: The Search for a New Paradigm in Architecture』(Stephen Grabow, Routledge Kegan & Paul, 1983) [『クリストファー・アレグザンダー:建築の新しいパラダイムを求めて』(スティーブン・グラボー, 工作舎, 1989)] 前書き, 序, 第1〜12章
●『Notes on the Synthesis of Form』(Christopher Alexander, Harvard University Press. 1964) [『形の合成に関するノート』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1978)]
●"A city is not tree" (Christopher Alexander, Architectural Forum 122 April , 1965) [ 「都市はツリーではない」(クリストファー・アレグザンダー) ]


■■■ 第13回(7/10) ネットワーク科学 Network Science

近年、自然や社会における物事の関係性の構造に共通の特徴があることがわかり、「スモールワールド・ネットワーク」や「スケールフリー・ネットワーク」として注目を集めています。これらのネットワークの生成原理をめぐる研究がどのようにパラダイム・シフトを引き起こしたのかを学びます。

【文献読解】
●『Linked: How Everything is Connected to Everything Else and What It Means for Business, Science, and Everyday Life』(Albert-Laszlo Barabasi, Plume, 2003) [『新ネットワーク思考:世界のしくみを読み解く』(アルバート・ラズロ・バラバシ, NHK出版, 2002)]
●『Six Degrees: The Science of Connected Age』(Duncan J. Watts, W. W. Norton & Company, 2004) [『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』(ダンカン・ワッツ, 阪急コミュニケーションズ, 2004)] 第3章
●『Sync: How Order Emerges From Chaos In the Universe, Nature, and Daily Life』(Steven H. Strogatz, Hyperion, 2004) [『SYNC』(スティーヴン・ストロガッツ, 早川書房, 2005)] 第9章
●「ネットワーク科学の方法論と道具論」(井庭 崇, 『ネットワーク科学への招待:世界の“つながり”を知る科学と思考』, 青山 秀明, 相馬 亘, 藤原 義久 共編著, 臨時別冊・数理科学2008年7月号 SGCライブラリ 65, サイエンス社, 2008)


■■■ 第14回(7/17) 総括

これまでの内容を振り返り、総括をします。


【提出課題・試験・成績評価の方法など】

輪読や演習での授業への参加、宿題提出、最終レポート等から、総合的に評価します。


【履修制限】

履修人数を制限する:40人程度。初回授業時に志望理由を書いてもらいます。
授業関連 | - | -

NHKスーパープレゼンテーションの初収録……緊張した!

NHKの春からの新番組「スーパープレゼンテーション」という番組にレギュラー出演することになりました。

NHK Eテレ 毎週月曜日 23:00〜23:25
「スーパープレゼンテーション」
4月2日(月)より 放送開始
http://www.nhk.or.jp/superpresentation/


NHKSuperPresentation.jpg


この番組では、あの有名なTEDカンファレンスから、毎週おすすめのプレゼンテーション(talk)を、解説つきで紹介していきます。

メインのMCは、伊藤 穣一さん(MITメディアラボ所長, Joi Ito's Web)。
そして、英語ナビゲータ―は、 Kylee さん(アメリカ在住の女子高生シンガー, Kylee OFFICIAL WEB)。

番組での僕の役目は、TEDトークを「プレゼンテーション・パターン」で読み解くというもの。プレゼンテーション・パターンは、創造的プレゼンテーションの秘訣を34個まとめたもの(慶應義塾大学井庭研究室 制作)。

このプレゼンテーション・パターンを見たディレクターの方から声をかけていただき、僕がプレゼン解説をすることになったというわけです。


そんなわけで、今日、初めての収録に行ってきました。

初めてのこと尽くしで緊張しましたが、なかなか面白かったです。

僕の出来としては、まあ、初めてだし、何ともお恥ずかしいかぎり。かみまくったり、恥ずかしくてニヤニヤしてしまったり……。笑

端的に重要なことを話す&かまずにきちんと話す、ということがいかに難しいかを痛感した1日でした。でも、スタッフの方も、対話相手のKyleeもとても親切で、なんとか乗り切れました。

プレゼンテーション・パターンでいうところの「最善努力」はできたと思うので、よいことにしちゃいます。次の目標は、「キャスト魂」ですかね。


今日の撮影スタジオでの写真を2枚ほど。

Presentation Tipsのコーナーで一緒に出演する Kylee と。とってもキュートでsmartな感じの子。話す言葉(英語)は、流石、聴いていて心地がいい。

KyleeAndIba.jpg

Kylee、この番組でファンがますます増えるんじゃないかな。みんなで応援しよう。早速来週、初の全国ツアーがあるということ(詳しくはこちら)。


スタジオの風景。照明もカメラもあちこちから。この写真を撮っているのは、ディレクターが見てる側。僕はこちらの方が落ち着くんだよねぇ。

AtStudio.jpg


TEDのトークはもちろん、Joiの話も Kyleeの話もとても素敵な感じなので、お楽しみに!
プレゼンテーション・パターン | - | -

「パターンランゲージ 3.0:新しい対象×新しい使い方×新しい作り方」(1)

「パターンランゲージ 3.0: 新しい対象 × 新しい使い方 × 新しい作り方」

井庭 崇(慶應義塾大学総合政策学部)

1. はじめに

パターンランゲージは,ある領域に潜む《デザインの知》を記述した言語である.ここでいう《デザインの知》とは,「問題発見+問題解決の知」のことである.つまり,どのような「状況」でどのような「問題」が生じ,それをどう「解決」すればよいのかという知見・発想を記述したものが,パターンランゲージということになる.

このようなデザイン=問題発見・問題解決の知を記述した「言語」を作ることを考案したのは,Christopher Alexanderという1人の建築家である.彼は,住人が自分の住む家のまちをデザインするプロセスに参加するにはどうしたらよいかを考え,その支援方法としてパターンランゲージを考案した.そして,同僚とともに253のパターンをまとめ,本として出版した [1].1970年代後半のことである.

それから十年後の80年代後半に,彼の考えと方法はソフトウェアデザインの領域に輸入され,90年代に本格的に普及していった(この輸入・展開の経緯と背後にある思想については,江渡浩一郎氏の『パターン,Wiki,XP —時を超えた創造の原則—』[2]が詳しい).このような状況において,私は「人間行為」のパターンランゲージという,これまでにない新しい領域のパターンランゲージの記述・制作に携わってきた.その一連の取り組みを通じて,「パターンランゲージとは何か」という本質的な問いや,「パターンランゲージをどのように作ればよいのか」という実践的な問題に対して,自らの考えを洗練させる機会を得た.本稿では,その一端を紹介するとともに,今後の議論の枠組みとなるような捉え方を提示することにしたい.

2. パターンランゲージの進化

パターンランゲージの進化をわかりやすく捉えるために,本稿ではその進化を3つの段階に分けることを提案する.Alexanderによってパターンランゲージの考えと方法が提案された段階を「パターンランゲージ 1.0」,その後ソフトウェアの領域に輸入・展開された段階を「パターンランゲージ 2.0」,そして,現在,私たちが取り組んでいる新しい段階を「パターンランゲージ 3.0」と呼ぶことにする.この1.0から3.0という段階は,断絶的な移行を意味するのではなく,段階が進むごとに新しい特徴が加わっていく加算的な発展だと考えてほしい(図-1).


PatternEvolutionStairs_JP_New_New420.jpg
図-1 パターンランゲージの進化


本稿では,パターンランゲージの進化の各段階の特徴を捉えるために,3つの視点から考察する.その3つの視点とは,「パターンランゲージが支援するデザインの対象」,「パターンランゲージの使い方」,「パターンランゲージの作り方」である.パターンランゲージの進化の3段階と3つの視点による特徴をまとめると,図-2のようになる.以下では,この表の内容に沿って,パターンランゲージ3.0における「新しい対象」,「新しい使い方」,「新しい作り方」を論ずることにしたい(なお,この表の各セル(特徴)は同じ段階の他のセルと結びつくことでその特徴をフルに発揮するが,斜め上下の組合せでも用いることもできる).


PatternEvolutionMatrix_JP_New_New420.jpg
図-2 パターンランゲージの進化とその特徴(↑クリックで拡大)


(つづく)


[1] Alexander, C., Ishikawa, S., Silverstein, M., Jacobson, M., Fiksdahl-King, I. and Angel, S.: A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction, Oxford University Press (1977). (翻訳:パタン・ランゲージ —環境設計の手引, 鹿島出版会, 1984)
[2] 江渡 浩一郎:パターン,Wiki,XP —時を超えた創造の原則—, 技術評論社, 2009


※ 井庭 崇, 「パターンランゲージ 3.0:新しい対象 × 新しい使い方 × 新しい作り方」, 情報処理, Vol.52 No.9, 2011 より
パターン・ランゲージ | - | -

これから1年の抱負

これから1年間の38才の抱負。

今年のテーマは「かく」(書く&描く)だと思う。

とにかく、かく。書く。描く。

ことばのなかで冒険し、生み出し、積み上げ、構築する。

ひとつひとつのラインにこだわり、描いていく。

そういうことを毎日毎日続けていきたい。

来年の今日には、新しいパターン・ランゲージも大きなものが2つくらい
できあがっているだろうし、本も数冊書いているはずだ。

あとはどれだけ深く潜り、本質に迫れるかどうかだ。

楽しみたい。
このブログについて/近況 | - | -

『Presentation Patterns イラスト制作の軌跡』(Ver.α)

プレゼンテーション・パターンの各イラストが、どのような変遷を経て完成したのかをまとめた冊子『Presentation Patterns イラスト制作の軌跡』(Ver.α)を作成しました。300ページを超える大作です!

今回のパターン制作で描いたすべてのイラスト(約500点!)が掲載されているだけでなく、どのような発想でメタファーを思いついたかや、何を考え修正していったのかについても記述しました。

パターン・ランゲージのイラスト制作に関わる人はもちろん、プレゼンテーション・パターンのファンのみなさんにも楽しんでもらえると思います。また、創造プロセスの記録としても、興味深いのではないかと思います。

PPIllustrationBook.jpg『Presentation Patterns イラスト制作の軌跡』(Ver.α)
井庭 崇 × 原澤 香織 × 荒尾 林子
プレゼンテーション・パターン プロジェクト イラストチーム

冊子PDF(101 M Byte)

※プレゼンテーション・パターンのイラストは、井庭 崇(SFC 教員)と、原澤 香織(SFC 1年生)、荒尾 林子(SFC 3年生)の3人で描きました。


↓イラスト変遷例:パターン「ことば探し」の一部
PPIllustrationBookInside1.jpg

↓イラスト変遷例:パターン「最善努力」の一部
PPIllustrationBookInside2.jpg
プレゼンテーション・パターン | - | -

「創造」とはどういうことか?

先日の井庭研 2011年度最終発表会での僕の講演「創造社会の思想と方法」のスライドをアップしました。

この講演では、「創造」とはどういうことかについて、作家の言葉を紹介しながら迫っていきました。

僕のメインメッセージは、次の通り。

本格的な「創造」とは、自分と創造物との間の主客の境界があいまいになるなかで、意識の外にある必然的な流れをつかまえるということである。


講演では、このことに関係する発言をしている作家の言葉をたくさん取り上げました。取り上げたのは、宮崎 駿 氏、久石 譲 氏、ミヒャエル・エンデ 氏、村上 春樹 氏、スティーヴン・キング 氏、森 博嗣 氏、小川 洋子 氏、谷川 俊太郎 氏と、川喜田 二郎氏。

これらの作家たちの言葉を次のようなまとまりで束ねて、「創造」とはどういうことかについて語りました。

  • つくっているのではなく、つくらされているという感覚
  • つくるというのは、冒険である。
  • 必然的な流れ
  • 創造に求められるタフネス
  • 創造の“ふるさと”

「創造性」の探究 | - | -

井庭研 2012年春休みの課題(B1・B2 新規生&継続生)

井庭研 2012年春休みの課題(来学期から新しく井庭研に加わるメンバーと、今学期からの継続メンバー全員(井庭研B1&B2)に共通の課題)について書きます。

【やること】
コラボレーションに関するK. Sawyerの本『Group Genius』を原著で読むのと、そのオーディオブックで音声でも聴くという二つのことに取り組み、キーポイントをレポートにまとめます。

(1) Reading

Group_Genius210.jpg『Group Genius: The Creative Power of Collaboration』(Keith Sawyer, Basic Books, 2008)


『Group Genius』@Amazon.co.jp
『Group Genius』@Amazon.com


この本は英語で書かれてはいますが、専門書ではなく、一般の人向けに書かれているので、比較的読みやすいと思います。

● まず、この本を早めに入手してください。洋書なので、購入手配をしてから届くまでにかなり時間がかかるので、これを読んだら、すぐに購入手配をしてください(Amazon.co.jpの在庫は現在少ないようなので、多少高くつきますがAmazon.comの方から急ぎの便で入手することをおすすめします)。

● 手元に届いたら早めに、最初から最後までをざっと読んでいきましょう。重要だと思う箇所に線を引きながら読んでください。また、「英語でこういう言い回しをするのか」と発見した箇所があれば、そこにも線を引いてください(後に、まとめるときに、この線が重要となります)。どうしてもわからない箇所などは、飛ばしながら読み進めて構いません。


(2) Listening

この本のオーディオブック版も入手してください。入手には、次の2つの方法があります。

group_genius_audio210.jpg(1) Audible.com
Amazon.com系列のオーディオブックの専門店です。オーディオファイルをダウンロードして、PCやiPod等に入れて聴くことができます。
『Group Genius』@Audible

(2) Audio CD
物理的なCDメディアで購入することもできます。
『Group Genius』(Audio CD)


このオーディオブックを最初から最後まで聴いてください。全部で8時間あるので、歩いているときや部屋で過ごしているときなどに"言語のシャワー"を浴びるように流して聴いてください。


(3) Writing

そして、これらの読解・リスニングをやった後に、線を引いた箇所をもう一度振り返り、この本のキーポイントを1ページのレポートにまとめます。まとめるときには、なるべくこの本で書かれていた書き方を「真似て」、著者自身がまとめを書くような気持ちで書いてみてください。まずは、"「まねぶ」ことから"です。


【補足】
本とオーディオブックのどちらを先にやるかは、問いません。ただし、どちらかを先に終らせる、というような感じではやらない方がよいと思います。本とオーディオは、次のような二つの相互作用のどちらか好きな方を狙うといいでしょう。

◎ 先に本の一部を読み、内容を理解した上で、その部分のオーディオを聴く。

または、

◎ 先にオーディオの一部を聴き、耳で聴いてわかった程度の事前理解をした後、本でその部分をしっかり読む。

好きな方で構いませんし、部分によって変わって構いません。


【狙い】
今回の課題は、次の3つのことを狙った課題にしました。

・コラボレーションについての理解を深める。
・英語での読解力、語彙力、表現力(言い回し)を向上させる。
・英語のリスニング能力を向上させる。

これらは、今後、卒論や学会発表論文など、英語で論文を書くための基礎力になるとともに、国際学会に参加するときにも、そこでのコミュニケーション能力として発揮されると思います。

英語での読解やリスニングに慣れない人が多いと思うので、大変だと思うけれども、この春のチャレンジとしてがんばってみてください。英語力も結構上がると思います。


【レポート提出】
提出はメールで、以下のとおりお願いします。

使用言語:英語
分量  :1ページ
ファイル:Wordファイル、もしくは、PDFファイル
    (ファイル名に半角アルファベットで名前を入れる)
提出〆切:2012年3月31日(土)
提出先 :井庭研 課題提出用ML( ilab-submit )
メール件名:春休みの課題2012( 自分の名前 )


『Group Genius: The Creative Power of Collaboration』
(Keith Sawyer, Basic Books, 2008)

INTRODUCTION: BEYOND THE LONE GENIUS

Part I: The Collaborative Team
 1. The Power of Collaboration
 2. Improvising Innovation
 3. Group Flow
 4. From Groupthink to Group Genius

Part II: The Collaborative Mind
 5. Small Sparks
 6. Collaboration over Time
 7. Conversation and the Mind

Part III: The Collaborative Organization
 8. Organizing for Improvisation
 9. The Collaborative Web
 10. Collaborating with Customers
 11. Creating the Collaborative Economy
井庭研だより | - | -

井庭研究会 2011年度最終発表会(1月28日)のご案内

2012年1月28日(土)に、井庭研究会 2011年度最終発表会を開催します。

井庭研の学部生と大学院生による研究成果の発表です。今年は、各人の問題意識にもとづく個人研究のほか、『プレゼンテーション・パターン』の制作プロセスを振り返る大変興味深い発表が多数あります。僕も、基調講演として最近考えていること(創造社会の思想と方法)について話します。

学内外の方で興味がある方は、ぜひお越し下さい。井庭研の研究活動・内容を知っていただくとともに、発表者への質問・アドバイスをいただければと思います。
  • 学内の方は、当日、直接会場へお越し下さい。
  • 学外の方は、準備・事前連絡等の都合で、事前に ilab [atmark] sfc.keio.ac.jp まで、メールでご連絡いただければと思います。

なお、当日はランチタイムが短いため、ランチをご持参ください(会場やその周辺で食べることができます)。


✤✤ 井庭崇研究会 2011年度最終発表会 ✤✤✤

日時:2012年1月28日(土)
時間:9:45開場、10:00開始~18:00終了予定
会場:慶應義塾大学SFC 大学院棟 τ 11(タウ11)



✤ 開場 [9:45]

✤ 開会式 & 基調講演 [10:00-10:30]

・「創造社会の思想と方法」(井庭 崇)


✤ キャンパスライフ&キャリアデザイン[10:35-11:05]

・「SFCの研究会の生態系:ビジュアライジングSFC」(藤吉 賢)
・「『生き方の創造』のためのキャリアデザイン・パターン試論」(小原 和也)


✤ 卒論・修論発表[11:15-12:40]

・「名刺から見る現代社会のコミュニケーション:出会いの規範」(松村 佳奈)
・「モジュール化によるプラットフォーム上の集合知活用促進:東日本大震災の復興事例分析」(清水 たくみ)
・「Archi-Commonsによる建築デザインの共有資源化:木造賃貸アパートの再生プロジェクトを事例として」(連 勇太朗)

— ランチ休憩 —

✤ プレゼンテーション・パターンの制作プロセス (1) 《ペア・ライティング》[13:30-14:10]

・「プレゼンテーション・パターン:イントロダクション」(井庭 崇)
・「プレゼンテーション・パターン制作におけるペア・ライティング:インタビューから見えてきたペアの効果」(中野 えみり・安浦 沙絢)
・「二人の中で何が起こったのか:プレゼンテーション・パターン制作におけるペア・ライティングの軌跡」(仁科 里志)


✤ 卒論発表(英語セッション)[14:20-15:10]

・"Fashion as a Social System: A Theory for Understanding the Diversification of Fashion" (Shunsuke Fuji)
・"The Art of Writing Design Knowledge: Lessons from the Project of Making Presentation Patterns" (Mami Sakamoto)


✤ プレゼンテーション・パターンの制作プロセス (2)《発見の連鎖の分析》[15:15-16:00]

・「プレゼンテーション・パターン名をめぐる発見の連鎖の分析」(山口 祐加)
・「プレゼンテーション・パターンにおける全体像の進化」(濱田 正大・柳尾 庸介)
・「プレゼンテーション・パターンのイラスト制作の分析」(荒尾 林子・原澤 香織)


✤ New Pattern Languages & Understanding Hidden Social Order (英語セッション)[16:10-16:55]

・"Presentation Patterns Ⅰ: A Pattern Language for Creative Presentations" (Aya Matsumoto)
・"Social Entrepreneurship Patterns: A Pattern Language for Change-Making on Social Issues" (Eri Shimomukai)
・"Relation of Vote Shares and Electoral Systems in Japan, 1890-2009" (Ko Matsuzuka & Tomoki Furukawazono)


✤ パターン・ランゲージの新しい方法論 [17:00-17:30]

・「プレゼンテーションの構造の探究ワークショップ:パターンの新たな関係性の発見」(村松 大輝)
・「パターン・ランゲージ制作における段階的マイニング」(野村 愛・門谷 めぐみ)


✤ 講評 & 閉会式 [17:35-18:00]


※以上の発表順番・タイトル等は、変更される場合があります。ご了承ください。
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