井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

<< July 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

イベント告知「不可視のパターンランゲージ」(池上高志 × 岡瑞起 × 井庭崇)

来週の12月11日(土)の「複雑系の数理」の授業では、池上 高志さんと岡 瑞起さんをゲストにお呼びして、対談を行います。

池上 高志 × 岡 瑞起 × 井庭 崇 「不可視のパターンランゲージ」
日時:2010年12月11日(土)3・4限(13:00~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室


池上さんは、人工生命の研究に取り組む複雑系研究者で、『動きが生命をつくる:生命と意識への構成論的アプローチ』という知的刺激に満ちた本の著者でもあります。「つくって理解する」という構成的理解を、コンピュータ・シミュレーションや、実際の物質、芸術などを通じて実践しています。かつてから僕が刺激を受けてきた複雑系研究者のキーパーソンです。

岡 瑞起さんは、東京大学 知の構造化センターの pingpongプロジェクトのリーダーです。pingpongプロジェクトでは、行為の観点からデザインを構造化することを目指し、その手段として言語が用いられているようです。そして、人をセンサーにして環境を読み取ることで「動く地図をつくる」、ということに取り組んでいるそうです。

先日、pingpongプロジェクトの李明喜さんと、雑誌『思想地図β』創刊号の座談会でお話しする機会があったのですが、どうやら「パターン」や「パターンランゲージ」という概念の捉え方や取り込み方が、僕とは異なるようです。そして、僕の研究会では「動きの地図をつくる」(Mapping the Dynamics)というテーマで研究をしていますが、これは、pingpongの「動く地図をつくる」と一見近そうに見えるけれども、やはり根本的なところで目指すところが違うようです。

今回は、pingpongプロジェクトの紹介をしていただけるということなので、この機会にその差異がどこにあるのかを明らかにし、それぞれの特徴を理解したいと思います。

そして、池上さんには「パターンの不可視性」というテーマで語っていただけるということなので、どのような話になるのか、今から楽しみです。


この対談イベントは、授業の一環として行われますが、履修者以外の聴講も歓迎しますので、興味がある方はぜひお越し下さい。

なお、この対談については、現在のところ、映像配信の予定はありません(この対談は、タイトルに「パターンランゲージ」とありますが、「パターンランゲージ」の授業の一環ではなく、「複雑系の数理」の授業での開催となります)。

ComplexSystemsIkegamiPoster3s.jpg
イベント・出版の告知と報告 | - | -

イベント告知 「創造と想像のメディア」(江渡 浩一郎 × 井庭 崇 対談)

来週の12月9日(木)の「パターンランゲージ」の授業では、江渡浩一郎さんをゲストにお呼びして、対談を行います。

江渡 浩一郎 × 井庭 崇 「創造と想像のメディア」
日時:2010年12月9日(木)4限(14:45~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室


江渡さんは、産業技術総合研究所で研究員をされているメディア・アーティストで、最近は『パターン、Wiki、XP ̶ 時を超えた創造の原則』という本の著者としても有名です。この本は、パターンランゲージの考案者であるクリストファー・アレグザンダーの思想の変遷と、そこから影響を受けたWikiシステムやソフトウェア開発手法のXP(エクストリーム・プログラミング)との関係を初めて明解に説明したという点で、この分野に大きな貢献をしました。

今回は、江渡さんのこれまでの作品を振り返りながら、いろいろお話を伺いたいと思います。僕からも、現在構想中の「創造システム理論」(Creative Systems Theory)を紹介し、それらを踏まえて、オープンなコラボレーションによる創造や、創造を支援するメディアの構築について、一緒に考えていきたいと思います。

授業の一環として行われますが、履修者以外の聴講も歓迎しますので、興味がある方はぜひお越し下さい。なお、当日の映像/資料は、後日、SFC-GC上で公開予定です。(とはいえ、映像ではなく、その場を共有するということは、ひと味違う体験となると思うので、ぜひ会場でお会いしましょう!)

PatternLanguageEtoIbaPoster.jpg
イベント・出版の告知と報告 | - | -

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング

先週の土曜日(2010年11月27日)、僕の授業「パターンランゲージ」に竹中平蔵先生をお呼びして、対談を行った。タイトルは「政策のパターンランゲージに向けて」。授業時間2コマぶち抜きの3時間対談だ。

対談といっても、何か具体的な社会・経済のイシューについて議論するタイプの対談ではない。その場でひとつの「創造」を行ってみよう、という実にユニークな形式の対談である。

もう少し具体的にいうと、竹中先生に政策デザインについて自らの経験や考えをお話ししていただき、僕がそれをまとめていく。つまり、竹中先生が「素材」を提供し、僕がそれを「料理」するという、即興的コラボレーションなのだ。オーディエンスは、その場に立ち会い、ときにその創造に参加する。

事前打ち合わせや準備なしで、本当にその場でつくっていく。だから、本当に時間内にできるかどうか、非常にチャレンジングな試みであった。


PolicyLanguage0.jpg


この対談で、僕らは何をつくったのか?

それは、僕が「政策言語」(Policy Language)と呼ぶものだ。専門的な言葉で言うと、「政策デザインのパターンランゲージ」。政策をデザインするときの問題発見と問題解決の知を言語化したものである。

「政策言語」という言葉は、僕がつくった言葉である。「政策パターン」という略し方も考えられるが、いくつかの理由があって、「政策言語」と略すことにした。その理由とは、「パターン」という言葉が専門外の人には強すぎる(「ワン・パターン」とか「固定的」なイメージが強い)という理由と、ここで強調したいのが「言語」性だという理由である。


Slide1.jpg


政策言語という新しい言語をつくる動機は、何だろうか?

それは、政策のデザインに必要な考え方のビルディングブロックを明示することで、政策をつくるプロセスを開いていきたいということだ。

現在、日本では、政策をつくっているのは、ごく一部の人たちに限られている。それ以外の人々は、政策について評価し、批判したり肯定したりすることぐらいしかできない。

そのような状況に陥った理由はいろいろあるだろうが、ここで僕が注目したいのは、政策デザインのための「道具」(ツール)の不在である。

このような背景から、「政策言語」という「政策デザインのための新しい道具」を提案し、実際にそのプロトタイプをつくってみよう、と考えたわけだ。


Slide2.jpg


それでは、政策言語では、何を言語化するのだろうか?

政策言語における各要素(パターン)には、二つの知識が埋め込まれている。まず第一に、どのような状況(Context)において、どのような問題(Problem)が生じるのか、という知識。そして第二に、その問題(Problem)をどう解決(Solution)すればよいのか、という知識。

政策をデザインするとはどういうことかを突き詰めていくと、その本質は、状況から問題を発見をし、その問題を解決することであるとわかってくる。それゆえ、政策言語では、「状況→問題」と「問題→解決」の両方を記述することになる。


Slide3.jpg

Slide4.jpg


今回の対談では、まず、竹中先生に小泉内閣での経験を振り返っていただき、どのようなことが重要なポイントであったかを自由に語ってもらった。それを、僕が、状況/問題/解決のフレームに落としながら、書き出していった。


PolicyLanguage1.jpg


その後、それらの要素(パターンの種)の関係性を考えていく。壁一面のホワイトボードをつかって、「感覚的に近い」要素同士を近くに配置していく。逆に「遠い」と思うものは遠ざける。何度も何度も貼り直しながら、要素間の関係をあぶり出していく(これらはKJ法の考え方/やり方に通じている)。

決して、トップダウンに「これは政策形成プロセスについてのもので、これは情報共有の話で・・・」というようなに既存の枠にはめていってはいけない。ここでやりたいのは、すでに持っているフレームに当てはめることではなく、今まで想像していなかったような、新しい関係性/新しいフレームワークを発見することなのだから。


PolicyLanguage2.jpg

PolicyLanguage4.jpg

PolicyLanguage3.jpg


この関係性づくりのフェーズには、オーディエンスにも参加してもらい、一緒に悩み、考えた。要素が少ないこともあり、作業は難航したが、なんとかまとめることができた。

不思議なもので、関係性を考えるということは、全体像を模索しているように見えて、実は各要素の理解を深めるということでもある。そうなるのは、「全体は部分から成り立つが、部分は全体から影響を受ける」という循環構造があるからだ。だから、ここでやっている作業というのは、諸要素の空間的な配置替えをしながら、その循環構造に迫っていくということなのである。


PolicyLanguage6.jpg

PolicyLanguage7.jpg


こうして、最終的には、政策言語の要素18個と、それらの関係性を紡ぎだすことができた。もちろん、これらは政策言語のほんの一部の要素にすぎず、しかもプロトタイプでしかない。今後、さらに要素を加えていくとともに、すでに出てきたものについてはブラッシュアップをしていきたい。


このようにして、今回の対談では、政策デザインのパターンランゲージである「政策言語」の考え方を提案し、そのプロトタイプをつくることができた。僕自身、かなり手応えがあったし、竹中先生にもかなり気に入っていただいたようだ。

今回の試みは、ステージでやっている本人としては「本当に時間内にできるのか」とドキドキであったが、無事できて本当によかった。竹中先生、どうもありがとうございました! そして、参加してくれたみんな、ありがとう!


PolicyLanguage10.jpg

PolicyLanguage9.jpg

PolicyLanguage5.jpg

SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室

※ 当日の資料/映像は、SFC Global Campus の「パターンランゲージ」授業ページで一般公開されます(無料)。
パターン・ランゲージ | - | -

体験学習ゲームのパターン分析

学習パターンのカードゲームづくりの話に関連して、懐かしい話を思い出した。

井庭研の1年目(2004年)に、「体験学習のパターン分析」をするプロジェクトがあった。メンバーは、当時の学部3年生の3人チーム。もうみんな卒業してしまったが、個性的で面白いチームだった。

「ゲーミングのタイプとパターン分類:学習ゲームの作成を支援する」(赤石真依, 野田尚子, 斎藤卓也, 井庭崇研究室研究論文, 2004)

これは後に、以下の学会でも発表している。

「体験学習ゲームのパターン分析」(井庭崇, 赤石真依, 野田尚子, 斎藤卓也, 情報処理学会MPS研究会, 2006)


分析のプロセスとしては、自分たちで集められるだけ体験学習ゲームのやり方を集めて、それらがどのようなビルディングブロックで成り立っているのかを理解しようということだ。ここでいうパターンというのは、パターン・ランゲージのパターンという意味ではなく、一般的な意味での「パターン」として使っている(後にパターン・ランゲージ化しようという構想はあったが)。

文献を読んでは、とにかく、付箋(ポストイット)にそのゲームの重要な要素を挙げていく。それをたくさん出したのちに、KJ法のようなやり方で、全体のなかでの要素の関係性を見いだしていく。ここがこのプロジェクトの山場。一番大変なフェーズであり、創造的な瞬間でもある。

LG2.jpg

LG1.jpg

LG4.jpg

LG3.jpg
体験学習チーム活動風景(2004)


当時はまだ共同研究室がなかったので、僕の研究個室の一角で活動をしていた。

模造紙にたくさんの紙や付箋を貼りながら、ああでもない、こうでもないと、思考とコミュニケーションの連鎖を続けていく。手をどんどん動かす。変化を起こし、変化を楽しむ。

こういうとき、ノートやパソコン上で、こちょこちょ作業してはだめ。目の前に広がる空間をめいっぱい使って、自分たちの考えていることをマッピングしていく。

考えるためのスペースの広さが、思考の大きさを決めるからだ。

ちょうど、昨日の「パターン・ランゲージ」の授業で話したね、これ。

↓ 昨日の板書。
SpaceOfThought.jpg
井庭研だより | - | -

学習パターンのカードゲームを作成中

井庭研の Creative Media プロジェクトでは、現在、学習パターンのコンテンツを用いたカードゲームを作成している。今日のゼミの時間は、制作メンバー3人が試行錯誤しながら作ってきたゲームで、みんなで遊んでみた。

どうすれば学習パターンを用いる意味をしっかりともたせることができるかや、面白いゲーム設計とゲームバランスの関係など、考えるべきことは多々あるが、すでに知恵をしぼっていろいろな仕組みが考えられていて感心した。なにはともあれ、盛り上がったし、僕も楽しむことができた。

学習パターンが収まっている小さなカードを複数手に持ったり、机に並べたりすると、なんだかうれしい気持ちになる。今後の「詰め」のあと、どのようなゲームに仕上がるのかが、実に楽しみである。

LPGame1.jpg


LPGame2.jpg
井庭研だより | - | -

モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(5)

2 . 3 「音」と「リズム」の習得

英語力を高める第三の方法は、コトバのもつ「音」と「リズム」を習得することである。

言葉は、単なる記号ではなく、音声として発せられ、音声として聴き取られる。だから、その言語がもつ「音」としての特徴を理解し、その音を身体的に生成できるようにならなければならない。

そして、いくつかのコトバをつなげたフレーズやセンテンスの場合は、さらに音をつなげる「リズム」が重要になる。リズムは、口先だけで生まれるのではなく、身体全体で生み出すものであるから、より身体性を意識する必要がある。

このように、「音」や「リズム」が重要なのはわかっているのだが、それをどうやって鍛えればいいのかについては、正直なところ、現在私自身も模索中である。すでに書いた「言語のシャワーを浴びる環境をつくる」や「表現のストックをため込む/使う」に比べて、まだまだ経験が浅いし、これは効果があると実感できるレベルに達していないのだ。

それでも、「音」と「リズム」の習得は、避けて通ることができない。そこで、ここでは、現在私がよさそうだと考えている方法を紹介することにしたい(つまり、上達するという保証はないが、私自身がやっているので、興味がある方はご参考にどうぞ、という話)。


「音」を知る

まず、日本語と英語では、コトバを構成する「音」の要素の種類が異なることを認識することが重要だ。子音の種類も、母音の種類も、その組合せのやり方も、英語は、日本語の場合とは異なっている。

私たちが日本語で慣れ親しんできたコトバの音の数は、英語の音の数より少ないのだ。だから、私たちは、英語のコトバを、日本語の音の要素に強引に引きつけて理解したり、発音したりすることになりがちである。本来はいくつもの異なる音であるにもかかわらず、それを日本語の「ア」にまとめてしまったり、「オ」にまとめてしまったりしている。そんなことをしていては、いつまでたっても、英語の音を聴いたり、発したりすることはできないだろう。

そこで、英語の音の要素にはどのようなものがあるのかを、徹底的に身体に染み込ませることに取り組みたい。私たちの身体と脳には、日本語の音の回路が相当深いところまで組み込まれてしまっているため、それを打ち破り、拡張するには、「徹底的に」やらなければならないだろう。徹底的に取り組んで、一度英語の音の回路ができあがれば、リスニングもスピーキングも次のステージにあがるはずだ。

音の要素を知ることで、聴こえる世界が違ってくるというのは、外国語に限らず、音楽においても当てはまると思われる。楽曲をただ漠然と聴くだけでは、どの楽器がどの音を出しているのかを認識することはできない。ところが、一度、個々の楽器の音を知ったり、ソロの演奏場面を見たりすると、個々の音を識別できるようになる。私の経験では、自分たちでバンドを組んで初めてベースの音をちゃんと認識できるようになった、ということがあった。英語の場合も、これと似ているかもしれない。


音の要素を知るために、私が現在使っているのが、松澤喜好氏の『英語耳』『英語耳ドリル』『単語耳』のシリーズだ。他の著者からもいろいろな本が出ているが、私は最終的にこれを選んだ。私のやり方は、次のような感じである。

まず、『単語耳』の理論編を読む。この理論編はかなりおすすめで、なぜ英語が聴き取れないのか、あるいはなぜ話した英語が通じないのか、という疑問が解消する。その理由がよくわかるのだ。なので、まずはこれから読むとよい。

その後、『英語耳』と『英語耳ドリル』を並行してやる。著者自身も書いているように、この2冊はどちから始めてもよいようになっている。『英語耳』の方は、音の要素をマスターするのに必要だが、これだけをやると単調で飽きてしまう。『英語耳ドリル』の方は音楽を聴き、歌詞を覚えていくので楽しいが、音をどのように発するのかという発声の説明はこちらにはない。なので、これらを両方並行してやっていくことで、近い将来、これらが交わる点がでてくるはずだ。私はそう考えて、並行して取り組んでいる。


(つづく)

[12] 松澤喜好, 『英語耳 [改訂・新CD版] 発音ができるとリスニングができる』, アスキー・メディアワークス, 2010
[13] 松澤喜好, 『英語耳ドリル 改訂版 発音&リスニングは歌でマスター』, アスキー・メディアワークス, 2009
[14] 松澤喜好, 『単語耳 英単語八千を一生忘れない「完全な英語耳」 理論編+実践編Lv.1』, アスキー, 2007


※本エントリの内容は、「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)には含まれていない、書き下ろし部分。
英語漬け生活 | - | -

これから数ヶ月、ゲスト講演・対談が目白押し!

これから数ヶ月の間、僕の授業ではゲスト講演・対談が目白押し。知的な刺激をたくさん、どうぞ! (どれも授業の一環として開催しますが、履修者以外の聴講も歓迎です。)

以下に、その予定をまとめておきます。

■ 竹中 平蔵 × 井庭 崇 「政策のパターンランゲージに向けて」
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室
※SFC「パターンランゲージ」の一環。当日の映像はSFC-GCで後日公開予定。

■ 江渡 浩一郎 × 井庭 崇 「創造と想像のメディア」
日時:2010年12月9日(木)4限(14:45~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室
※SFC「パターンランゲージ」の一環。当日の映像はSFC-GCで後日公開予定。

■ 池上 高志 × 井庭 崇 「動きを捉える。動きをつくる。」
日時:2010年12月11日(土)3・4限(13:00~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室
※SFC「複雑系の数理」の一環。

■ 松川 昌平 × 井庭 崇 「計算可能性/不可能性とデザイン」(遠隔対談)
日時:2011年1月13日(木)2限(11:10~12:40)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) ε11教室
※SFC「複雑系の数理」の一環。
イベント・出版の告知と報告 | - | -

来年度の井庭研の構想(パターンランゲージ/社会システム理論)

来年度の井庭研をどういうカタチの研究会にするのか、そんなことをここ1週間ほど考えている。

秋学期もまだ半ばだというのに、少々気が早いように思うかもしれないが、実は1ヶ月後には研究会シラバスの〆切があるので、そろそろそういうことも考えておかなければならないのだ。

極端な案まで含めて、いろいろ考え、研究会メンバーとも話した結果、だいぶ方向性は見えてきた。次のようなカタチで開催することになりそうだ。

まず、研究会のタイプを、A型(週2コマ開催)から、B型(週1コマ開催)×2種類に変更する。つまり、二つのテーマを掲げてそれぞれ学生を募集し、その二つを学期中並行して進めていくのだ(井庭研B1が火曜日、井庭研B2が木曜日というような感じで)。

実は、井庭研は2004年の発足以来B型で開催してきたが、2008年にA型に変更したという経緯がある。A型にもB型にも、それぞれメリットとデメリットがあるが、研究会タイプをB型に戻すのは、経験上、その方が(他の研究会を同時履修する人を受け入れやすくなるので)研究会がよりオープンになり、結果としてメンバーの多様性が増すことにつながるからだ。

テーマと運営方針は、以下のように考えている(2010年11月17日現在の案)。


■ 井庭研B1案「新しいパターン・ランゲージをつくる」
メンバー全員で、体系だったパターン・ランゲージをひとつ制作する。来学期は「プレゼンテーション・パターン」をつくりたいと考えている。個人研究ではなく、研究会メンバー全員で行う「プロジェクト研究」によって成果を出す(学習パターンプロジェクトのようなイメージ)。


■ 井庭研B2案「社会システム理論にもとづく社会研究」
参加者各自の問題意識にもとづく社会研究を「個人研究」として行う。主に想定される参加者は、他の研究会ですでに社会研究を行ってきた人で、新しい視点や捉え方がほしいと思っている人。もしくは、しっかりとした問題意識とテーマをもっており、SFCらしい新しいアプローチで研究したいと考えている人。輪読は、ニクラス・ルーマンの著作、『社会の社会』等を読みたいと考えている。


■ サブゼミ案「ホワイトヘッド哲学の探究」
出来事の連鎖として世界を理解するアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドの哲学を学ぶ。最終的に目指すのは、ニクラス・ルーマンの理論やアレグザンダーの思想との接合。井庭研メンバーで興味がある人のほか、研究会外からの参加も歓迎する。


これまでの井庭研を知っている人には、ネットワーク分析やシミュレーションはどこに行ってしまったのか?という疑問をもつ人がいるかもしれない。

それらの手法は、井庭研B2の社会研究において、分析手段として適切かつ必要である場合には、当然用いることになるだろう(僕自身は今後も使い続けるつもりだ)。


シラバス〆切までまだ時間があるので、これをベースにもう少し考えてみることにしたい。

どうだろう。上記のテーマ、魅力的だろうか?
井庭研だより | - | -

特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”(竹中 平蔵 × 井庭 崇)

来る2010年11月27日(土)、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)にて、以下の特別対談を行います。

SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室


対談のテーマである「パターンランゲージ」は、“生き生き”とした町をボトムアップにつくるための実践知を把握・記述する手法として、建築デザインの分野で提唱された方法です。この方法は、後にソフトウェアデザインや組織デザイン等、さまざまな分野に応用されています。このような応用・展開が可能だったのは、パターンランゲージの方法が、広義の意味での 「デザイン」(問題発見+問題解決)の知 を扱う方法だったからです。

この対談では、「デザイン」(問題発見+問題解決)の知を把握・記述する「パターンランゲージ」の方法を、社会や政策のデザインに活かす道を模索します。つまり、自分たちで自分たちの“生き生き”とした社会をデザインするための方法として、あるいは、そのような社会状況を実現するための政策をデザインするための方法として、パターンランゲージの考え方を応用することの可能性を考えます。

対談では、パターンランゲージとはどのような方法なのかという説明から始め、その背後にある社会観や、政策づくりの実際、今後の社会・政策づくりにおいて考えるべきことについて、方法論者の井庭崇と、実践経験をもつ経済政策学者の竹中平蔵が、3時間じっくり話し合います。授業「パターンランゲージ」の一環として開催されますが、履修者以外の聴講も歓迎します(事前登録等はありません。当日定員オーバーの場合には、履修者優先とさせていただきます。ご了承ください)。

竹中 平蔵
慶應義塾大学総合政策学部教授。同大学グローバルセキュリティ研究所所長・大学院メディアデザイン研究科教授。専門は経済政策。小泉内閣時代に、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣を歴任。著書に『「改革」はどこへ行った』、『闘う経済学』、『構造改革の真実』、『経済ってそういうことだったのか会議』、『経世済民:経済戦略会議の180日』、『対外不均衡のマクロ分析』、『研究開発と設備投資の経済学』など多数。

井庭 崇
慶應義塾大学総合政策学部准教授。同大学院政策・メディア研究科委員。専門はシステム理論と方法論。創造性、複雑系、オートポイエーシス、パターン・ランゲージ、ネットワーク分析、シミュレーションの研究・教育に従事。 SFC発のパターン・ランゲージである「学習パターン」を制作。著書に『複雑系入門』、共著に『ised 情報社会の倫理と設計』、『創発する社会』、『総合政策学の最先端 第IV巻』等。


なお、今回の対談を含む授業の全回が、SFC-GC(Global Campus)にて映像配信されています。直接会場に来ることができない方は、後日こちらの映像をごらんください(中継ではなく、数日後からの配信となります)。

SFC-GC 「パターンランゲージ」授業ページ
http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/class/class_top.cgi?2010_25136

PL2010TakenakaIbaPoster.jpg
イベント・出版の告知と報告 | - | -

モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(4)

2 . 2 表現のストックをため込む/使う

日本にいながら英語力を高める第二の方法は、表現のストックをため込んでいくことである。(1)表現を学ぶための読書を行うこと、(2)適切な言葉の選び方を学ぶこと、(3)より適した表現を模索しながら書くこと、によって表現のストックを充実させていくのである。


(1)表現を学ぶための読書

英語での表現を学ぶための読書では、自分の専門に近い分野の一般書/専門書などを、片っ端から読んでいく。この目的のためには、普通の読書とは異なり、なるべく知っていることが多く書かれている本を選ぶとよい。

このとき、最初から最後まですべてを読むのではなく、自分が学びたい言い回しがありそうな章/部分だけを「つまみ食い」して読む。私自身の経験でいうと、昨年から今年にかけて、A.-L. Barabasi の『Linked』 [7] を何度も何度も読んだ。この本からは、専門的な言葉づかいを学ぶだけでなく、ワクワクするような表現も多く学ぶことができた。どの分野でも、一般啓蒙書では難しい考え方が、わかりやすくかつ魅力的に記述されていることが多いので、表現を学ぶための読書に適している。

日頃から私は本を読む時に、重要箇所に線を引きながら読んでいるが、「表現を学ぶ」ための読書においても、使いたい言い回しや真似したい表現に線を引きながら読んでいる。線を引くのは、消しゴム付き鉛筆がおすすめ。濃さに強弱がつけられるし、うまく書けなかったときには引き直すことができる。

PencilAndBook.jpg


ある程度読み進めたら、それまでに引いた線の部分だけを読み返し、そのなかで「やはり重要だ」と思う表現を、ノートに書き写す。自分なりの「表現のストック」をためていくのである。

私は、ノートには MOLESKINE(モレスキン)の横経線のハードカバーのものを使っている。「表現がストックとしてしっかり残っている」と感じることができることが大切だと考えたからだ。このノートなら、なるべくきれいな字で書こうと思えるし、書き込みが増えて行くと、なかなか気分がいい。ノートに書き込むのには、持ちやすいグリップで長時間書いても疲れにくいボールペンを使っている。

真似をしたい表現を、紙のノートに書き写すというのは、いたって身体的な経験だ。ノートに言葉を刻み込んで行くという感覚。ノートとペンにちょっとこだわるだけで、その行為が少し特別な存在になる。そうなればしめたもので、本来は修行のような作業かもしれないが、やる気を維持しながら取り組み続けることができる(表現のストックがたまったことを本当に実感できるのは、その表現を実際に使うことができた時なのだが、そのような幸せな瞬間は、すぐに訪れるわけではない)。

以前は、ストックした表現を検索できるのがいいだろうと考え、コンピュータに打ち込んでいた。しかし、この5年ほどの経験では、結局検索なんてほとんどしなかったし、ストックをためているという実感が伴わないので楽しくない。また、1日中仕事でパソコンに向かっている私の生活においては、ノートに手書きで書くという方が、身体的に異なる行為であるため、モードの切り替えがうまくできる。そんなわけで、最近はノートに手書きで表現のストックをためるようにしている。

Notebook.jpg



(2)適切な言葉の選び方を学ぶ

表現を学ぶための読書に加えて、単語の選び方や言い回しに関する解説本も読んでいくとよいだろう。研究者や学生の場合には、例えば、実際の学術論文からコーパスを作成し、どのような言い回しがどのくらいの頻度で使われるのかを示してくれている『ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典』 [8] や 『ライフサイエンス論文作成のための英文法』 [9] というような本が出ている。学術論文での言い回しや、技術英語に関する本もいろいろ出ており、それらも目的に合わせてうまく活用できるだろう。また、日本人研究者がよく間違える単語を取り上げ、正しい使い方を教えてくれる『科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現』 [10] のような本もある。

この手の本を読むといいのは、言葉の選び方の理由が書かれていることや、微妙なニュアンスの違いについて説明してくれているからだ。その手の知識は、表現を学ぶための読書からは身に付かない。だから、表現を学ぶための読書とは別に、適切な言葉の選び方を学ぶための本を読むとよいのである。

しかも、表現を学ぶための読書と、適切な言葉の選び方を学ぶ読書は、並行して行うとよい。それらの学びには相乗効果があるからだ。表現を学ぶための読書の経験があるからこそ、適切な言葉の選び方を学ぶための本で、なぜそのような表現が取り上げられているのかが理解できるようになる。「たしかに、そういう表現ってよく出てくるもんなぁ」と。逆に、適切な言葉の選び方の知識が身につければ、表現を学ぶための読書での気づきが多くなる。「ああ、本当に、そういう言葉が使われている」と気づくわけだ。だからこそ、順番にではなく、並行して読むとよいのである。


(3)より適した表現を模索しながら書く

以上は、日々行う基礎体力づくりであるが、より実践に即した磨き方もある。英語で文章を書く際には、自分が言いたいことを適切に表現する言葉や言い回しを調べ、それを使うようにするのである。

文章は、そこで使われる単語が正しいだけでなく、組み合わせる他の言葉(例えば、動詞や前置詞)も正しく選択される必要がある。そういう言い回しを調べるためには、辞書を引く、ということが必要になる。

辞書を引く時には、定義や説明だけでなく、いくつもの例文にアクセスできるのが理想的である。PC で文章を書いているときには、辞書もPC 上で引けると効率的だろう。執筆中にいつもネットにアクセスできるとは限らないし、Web のレスポンスタイムも気になるので、個人的にはPC にインストールできるタイプの電子英語辞典をおすすめしている。

私が使っている「LogoVista 電子辞典」( http://www.logovista.co.jp/ )は、複数の辞書をシームレスに検索できるのでかなり重宝しており、英文を書くときの不可欠なツールになっている。私が入れているのは、次の5つの辞書データである。どれも英文のサンプルが取り上げられているので、検索結果をみれば、だいたい適した言い回しの文章をみつけることができる。

●『リーダーズ英和辞典第2 版』(翻訳家も使う定番の辞典。)
●『新編英和活用大辞典』(品詞や関係性ごとに例文が載っている。)
●『日外ビジネス/技術実用英語大辞典 第4 版』(ビジネス・技術の例文が豊富。)
●『ジーニアス英和大辞典』(単語の語源が載っている。)
●『メリアム・ウェブスター英英辞典』(英英辞典なので、日本語訳ではわからないニュアンスの違いなどがわかる。また、多くの単語に発音の「音声」がついているのも魅力。)

LogovistaDic.jpg


これで見つからないものに関しては、Google で検索して調べている。検索のちょっとしたコツを知っていると、目的の英文に辿り着きやすい。コツというのは、ダブルクォーテーション(" ")でくくるとか、ワイルドカード(*)を使う、マイナス(-)を使うなどである。

ダブルクォーテーションを使えば、複数の単語の並び順を指定して検索することができる。たとえば、This study demonstrate と入力して検索すると、この単語の並び順以外のものも含めて検索されてしまうが、"This study demonstrate"とダブルクォーテーション付きであれば、この並び順のものだけがひっかかる。

ワイルドカードというのは、そこにどんな言葉が入ってもいい、ということを示すものだ。"This * demonstrate"として検索すれば、"This chapter demonstrate"とか、"This book demonstrate"などもひっかかる。

また、マイナスを使えば、その後に指定した言葉を抜きにするという指定ができる。たとえば、"This * demonstrate" -sectionとすれば、"section"が使われているページは排除される。特定分野のページを除くなど、同一ページにあるべきではない言葉を指定しての絞り込みができるのだ。

このようなGoogle検索を活用方法については、『Google 英文ライティング: 英語がどんどん書けるようになる本』という本も出ているので、興味がある人は読んでみるとよいかもしれない(この本では、シンプルなやり方が、いろいろな例を交えて紹介されている)。


以上のように、表現を学ぶための読書を行うこと、適切な言葉の選び方を学ぶこと、より適した表現を模索しながら書くことによって表現のストックを充実させていく。そして、機会があればどんどん使ってみる。これらは、焦らず、ひたすらやり続けることが大切だ。どれだけ英語がうまく使える人でも、日々、生きていくなかで表現のストックをため続けている。これは、英語でも日本語でも同じことなのだ。

(つづく)

[7] Albert-Laszlo Barabasi, 『Linked』, Plume, 2002
[8] 河本健 編, 『ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典』, 羊土社, 2006
[9] 河本健 編, 『『ライフサイエンス論文作成のための英文法』, 羊土社, 2007
[10] グレン・パケット,『科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現』, 京都大学学術出版会, 2004
[11] 遠田和子, 『Google 英文ライティング: 英語がどんどん書けるようになる本』, 講談社インターナショナル, 2009


※「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに大幅に加筆・修正。
英語漬け生活 | - | -
CATEGORIES
NEW ENTRIES
RECOMMEND
ARCHIVES
PROFILE
OTHER