井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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2011年、攻めます。

みなさま、あけましておめでとうございます。

今年もどうぞよろしくお願いします。


2011年の抱負を。

今年は、攻めます。

そして、軽やかに生きる。


具体的には、本をたくさん書きます。書けるだけ書きたい。

今まで自分のなかに溜め込んできた考えや構想を、カタチにしていきたい。

そして、自分でつくっている自分の「殻」を破って、開いていきたい。



そのための最初の一歩として、twitterを正式に再開します。

夏に「twitterを(twitterらしく使うのを)やめます」と宣言してから半年。

それからは原則として、ブログの更新情報と内容紹介、イベント/出版の告知、twitterでしか連絡がとれない人とのやりとりなどに限定して使ってきました。


秋以降、ブログをたくさん書くようになり、本の執筆も進みました。

実は、twitterをやめようと思ったひとつの理由は、まともに文章を書かなく(書けなく)なってしまったからでした。

現在はその状況が改善されたので、もう再開してもよいと思っています。



せっかくなので、今度は、以前とは違う使い方を試してみようと思います。

以前は、研究者/教員としてのつぶやきがほとんどで、日常的なことは書いてきませんでした。

「〜なう」も一度も言いませんでした。どうも、そういうことは書く気になれなかったんです。


でも最近は、もっとtwitterらしいラフな使い方をしてもいいかな、と思えるようになりました。

なので、twitterっぽいツイートもしようと思います。

ごく軽やかに。



ということで、みなさん、今年もどうぞよろしく。

まずは、ここから。

フォローミー! (^_-)☆ → http://twitter.com/takashiiba
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2010年を振り返る:研究成果・発表一覧

2010年も、あと1日で終ろうとしている。

ということで、今年一年間を振り返ってみることにしたい。


今年は2月末にアメリカから帰国し、春からは大学でのいつもの日々に戻った。

昨年一年間かなり自由に研究生活をしてきた影響で、日本での日常に戻るのに結構苦労したが、以前よりも「自由であること」にこだわり、生活の再設計を試みた。

できないことはちゃんと「できない」と言う、やりたくないことは「やりたくないと思っている」ことをちゃんと伝える、〆切のある仕事を自らつくらないなど(これら自体は、賞賛できることではないけれども……)。

過去の経緯からなんとなくやっているということも、本当に必要なことかを考えて、必要性を感じないなら、やめるようにした。

それでも、日々いろんなタスクが積み重なって、アップアップするときもある。そうなったら、優先順位の低いものから整理して、なるべく自由の「のりしろ」をつくるように努力する。


このように「自由であること」にこだわったのは、それが今の自分にとって、知的な探究や創造をするための必要条件だと感じたからだ。

そして、その自由な時間のなかで、本を読む時間を増やし、人に会って話す時間を増やし、考える時間を増やし、自分がそのとき心からやりたいと思う研究・創造に取り組む。

結果としては、表面的なプロダクティビティは下がったが、知的には実に豊かな一年だったと思う。そして、来年への勢いがついていると思う。


今年の研究成果・発表は、以下のとおり。

書籍関連では、東浩紀さんにお世話になった一年だった。

学会発表の数が例年に比べて圧倒的に少ないのは、学生がファーストオーサーで僕が指導するというタイプの発表が、今年はゼロだったため(これは7年前に井庭研が始まって以来初めて)。

そして、授業で魅力的な対談がたくさんできた(ありがとうございました!)。


書籍(講演・座談会が収録された)

『ised 情報社会の倫理と設計 設計篇』(東 浩紀, 濱野 智史 編著, 河出書房新社, 2010年5月)
第4回講演「自己革新的な社会に向けての教育とメディア」(井庭崇)

『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇』(東 浩紀, 濱野 智史 編著, 河出書房新社, 2010年5月)

『思想地図β vol.1』(東浩紀 編, 合同会社コンテクチュアズ, 2010年12月)
特集第二部 パターン・サイエンス「パターンの可能性:人文知とサイエンスの交差点」(井庭崇+江渡浩一郎+増田直紀+東浩紀+李明喜)


学会誌(エッセイ)

● 井庭 崇, 「モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築」, 人工知能学会誌 25(5), 710-714, 2010 [ 加筆・修正版 ]


ジャーナル論文(投稿中)

Takashi Iba, "Scale-Free Networks Hidden in Chaotic Dynamical Systems", arXiv:1007.4137v1 [nlin.CD], 2010 [ 論文 ]


学会発表

● 井庭崇, 「創造システム理論の構想」, 第14回進化経済学会大会, 2010年3月 [論文]

● Takashi Iba, "Network Analysis for Understanding Dynamics", International School and Conference on Network Science 2010 (NetSci2010), May, 2010

● Takashi Iba, "Autopoietic Systems Diagram for Describing Creative Processes", 2nd Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010), Oct., 2010 [ 発表スライド ]

● Takashi Iba, Mami Sakamoto, and Toko Miyake, "How to Write Tacit Knowledge as a Pattern Language: Media Design for Spontaneous and Collaborative Communities", 2nd Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010), Oct., 2010 [ 発表ポスター]


講演

● 井庭 崇 + 学習パターンプロジェクト, 招待講演「学習パターン:学びのパターン・ランゲージ」, パターン祭り2010「AsianPLoP2010の報告と展望」, 情報処理学会 ソフトウェア工学研究会 パターンワーキンググループ, 2010

● 井庭 崇, 「学習パターン」, UMTP組込みモデリング分科会, UMLモデリング推進協議会, 2010

● Takashi Iba, "Hidden Order in Chaos: The Network-Analysis Approach to Dynamical Systems", Center for Complex Network Research (CCNR), Northeastern University, Nov., 2010


対談

● 「isedとはなんだったのか:『ised 情報社会の倫理と設計』倫理篇・設計篇刊行記念」(東浩紀/濱野智史/井庭崇/荻上チキ/小倉秀夫/加野瀬未友/楠正憲/崎山伸夫/鈴木健/鈴木謙介/津田大介/八田真行/村上敬亮)

「The Nature of Order」(中埜 博 × 井庭 崇, 2010年10月) [ 対談映像 ]

「政策のパターンランゲージに向けて」(竹中 平蔵 × 井庭 崇, 2010年11月) [ 対談映像1対談映像2 ]

「創造と想像のメディア」(江渡 浩一郎 × 井庭 崇, 2010年12月)[ 対談映像 ]

「不可視のパターンランゲージ」(池上高志×岡瑞起×井庭崇, 2010年12月)
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研究者としての自分のライフワーク

研究者としての自分のライフワークを、一体何にするのか?


かれこれ5年ほど悩んできたが(相当悩んだ)、

ここ最近、だいぶ定まってきた気がしている。


そのテーマは、人類の歴史的なスケールの射程をもつが、

今、取り組むべきことは明確に手元にある。


僕に貢献できることもあるが、

自分が生きているうちにはとても解決しないような壮大な話。


そして、学問分野をかなりまたぐので、

まっとうな研究者は取り組もうとは思わない。


しかし、僕にとっては、昔からの興味も

最近の研究も、広く包含する。

そんなテーマだ。



ここに行き着くことができたのは、

今年僕が触れた熱き探究者たち(研究者もいれば技術者もいる)

から受けた知的な刺激があったからだ。

本当に感謝が尽きない。



具体的な大きな成果を生み出せないまま、年末に突入している2010年だが、

なかなかよい年末かもしれない。
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米国ボストン出張(2010年秋)

昨日まで1週間ほど、米国ボストンに出張してきた。今回は学会参加ではなく、現地の研究者とのミーティングと交流が目的。

最も大きなイベントは、ノースイースタン大学のバラバシ・ラボ(Center for Complex Network Research)での講演。講演タイトルは、"Hidden Order in Chaos: The Network-Analysis Approach to Dynamical Systems" (Takashi Iba) 。昨年取り組んでいた離散カオスのネットワーク分析の研究について、初めて人前で話したことになる。後半には、”Chaotic Walk"(「カオスの足あと」とも呼んでいる)研究の紹介もした。英語での講演(1時間)はまだたどたどしいが、手応えはあった。

発表の前後に、センターの若手の研究者たちとの交流もできた。つい先日 Nature に論文が掲載されたポスドクの Yong-Yeol Ahn や、人文・芸術系の分野でネットワーク分析の展開を推進している訪問研究者 Maximilian Schich、そのほか大学院生たちだ。ひとつ共同研究も始まりそうだ。

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また、MIT Media Labの Cesar Hidalgo のラボも訪問した。彼はネットワーク科学の国際学会つながりの友人。昨年度までHarvard Kennedy Schoolにいたが、今年からMIT Media Labに移り、「Macro Connections」というラボを立ち上げた。今年はMedia Labに、若手がリーダーのラボが3つ立ち上がったらしいが、これはそのうちの一つ。社会・経済のネットワーク分析の若手が、Media Labでどのように研究を展開するのか非常に楽しみだ。

あと、僕が昨年1年間過ごした MIT Center for Collective Intelligence も訪れ、最近の動向や研究上の話などをした。それ以外にも、現地にいる研究者/学生(日本人も含む)とたくさん交流ができ、非常に充実した1週間であった。

さらに、言語習得に関しても現状の確認と今後の目標が定まった。リスニングについては、それなりに聞けるようになっているのを確認した。次は、英語の発音とイントネーションをきちんと改善したいと強く思った。(今後、少しそちらのトレーニングをきちんとやることにしようと思う。)

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今回は、ホテルではなく、ウィークリーアパートメント(といっても戸建ての一部屋)に滞在した。その方がホテルに泊まるよりも安いし、町を満喫できる。行き慣れているスーパーで買い物をし、自分で朝食をつくり、Zipcar(時間貸しのレンタカーのようなもの)や地下鉄で町を移動し、いつもの店でランチを食べ、お気に入りの本屋で知的な休憩をする。やっぱり、僕はボストンの町並みと生活が好きだなぁ〜、と再認識。そして、空が広い。この自然のスケール感も好き。

研究の面でも、言語習得の面でも、精神的な面でも、たくさん刺激を受け、これからの秋冬の知的生活の原動力を得た。さあ、またがんばるぞ!


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※昨年住んでいたマンションの裏庭には、まだワイルドターキーちゃんがいた。思わず、"Wow! You are still here! How are you?"と声をかけた。いつもどおりマイペースで歩いていたので、元気なのだろう。
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めずらしく小説を読んでいる

小説を無性に読みたくなる時期というのがある。

ほとんど小説を読まない僕にとって、かなりめずらしい感覚だ。

それは突然訪れ、いきなり終る。



ふだんから僕は本をよく読む方だが、それは科学書や思想書などの類の本。

小説に描かれた世界を味わおうという気持ちは、これっぽっちも生まれてこない。

でも不思議なことに、この時期には、逆に科学書などを読む気が失せてしまう。



実は半月ほど前から、その波がやってきている。おそらく、7、8年ぶり。

今回も、それは何の理由もなく始まった。

そんなわけで、めずらしく小説を読んでいる。



僕の印象では、小説には、「生」と「性」について書かれているものが多い。

「生」は「死」との関係において、「性」は「愛」・「苦悩」との関係について。

そういったテーマで、具体的なストーリーが、出来事や会話が、描かれる。



僕が小説を好きになれなかったのは、「死」と「苦悩」が過剰すぎるからだ。

人はよく死ぬし、愛(ときには歪んだ)や葛藤・苦悩で満ちあふれている。

おそらく、人生にはそういうものが必要なときがあって、それを読むことが考えることになったり、救いになったり癒しになったりするのだろう。

(僕の場合、そういうものは思想や科学の知識で埋めようとしていたようだ。)



今回は、少しいつもと違う感覚を味わえている。

「そういうことあるよね」とか「こういうの素敵だな」という気持ち。

そして、「こういう時期って確かにあるね」という懐かしさ。

「もう僕は経験できないけど、そういう人生もあり得るね」という想像。



大人になったというか、思春期からだいぶ離れた年齢になったこともあるだろう。

(まあ、こんなふうに僕は、いろんなことに気づくのが、ふつうの人よりもかなり遅いのである。)

しばらく、楽しめそうだ。
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続・期待と幻滅と。



“教育しようなんて考えを、僕は捨てることにした。”


昨日、僕は、こう書いた。



心からそう思ったし、その気持ちは今日も変わらない。

もう何年も、そして特にこの半年、ずっと考えてきたことだ。

ずっと考えてはきたが、未だ実践には移せていないこと。



誤解してはいけないのは、それが意味するのは、

授業をちゃんとやらないとか、学生の面倒をみないとか、

そういうことではない、ということ。



「教え育てる」なんて考えを捨てる、と言っているのだ。

だからといって、ただ放任するというわけではない。

それではあまりにも無責任だろう。



今、僕が、大切だと考えているのは、

無理に相手を自分に合わさせないこと。

無理に自分を相手に合わせないこと。



異なる人間同士なのだから、異なるままでも仕方がない。

これが大前提。

しかし、異なるからこそ、コミュニケーションが必要だ。



言葉は、ほとんど何も運べないけれども、

それは、自分の世界の一部になり、相手の世界の一部になる。

人が変わるか変わらないかは、その人次第だ。



心のどこかで持っていたい、ほのかな期待は、

「教え育てた」結果の「良い」状態へのものではなく、

その人なりの成長があること。



ただそれだけの(おそらく本当は当然である)ことを、

僕はいまさら確信し、実践しようとしている(に過ぎない)。

でも、これがすごく難しいことなのさ。
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特別対談(中埜 博 × 井庭 崇) @SFC「パターンランゲージ」

来週2010年10月28日(木)の「パターンランゲージ」の授業では、建築家の中埜 博さんをお呼びして、クリストファー・アレグザンダーの思想やパターン・ランゲージに関する対談を行います。履修者以外の聴講も歓迎しますので、興味がある方はぜひお越し下さい。

「パターンランゲージ」特別対談2010 “The Nature of Order”
日時:2010年10月28日(木)4限(14:45〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)大学院棟 τ(タウ)11教室

中埜 博
カリフォルニア大学バークレー校環境設計学部建築学科大学院修了。環境構造センター在日代表として、クリストファー・アレグザンダーの日本での建設プロジェクト「盈進学園プロジェクト」に参加。現在、東京環境構造センター代表。著書に『パタンランゲージによる住まいづくり』井上書院、『パタンランゲージによる住宅の建設』監訳、建築作品多数。

井庭 崇
総合政策学部准教授。創造社会の実現に向けた「新しい方法をつくる」研究に取り組んでいる。創造性、複雑系、オートポイエーシス、パターン・ランゲージ、ネットワーク分析、シミュレーションの研究・教育に従事。 SFC発のパターン・ランゲージである「学習パターン」等を、研究会メンバーとともに制作。


なお、今回の対談を含む授業の全回が、SFC-GC(Global Campus)にて映像配信されています。直接会場に来ることができない方は、後日こちらの映像をごらんください(中継ではなく、数日後からの配信となります)。

SFC-GC 「パターンランゲージ」授業ページ
http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/class/class_top.cgi?2010_25136

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期待と幻滅と。


ときどき、僕はひどくがっかりする。

幻滅には、その前提に期待がある。

期待しなければ、幻滅はやってこない。


さて。


期待しない教育は可能だろうか?

期待がないから幻滅もない、教育。

そんなことを考える。


そして、気づく。


自分が教育業だと思っていること自体が、そもそも間違いなのだ。

教育しようなんて考えを、僕は捨てることにした。

なかなかシンプルになった。
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The Sense of Wonder

昨年は、僕の人生にとって、とても重要な1年であった。

それは、世界のトップレベルの大学/研究所で研究する機会を得たからではなく、自分のかなり深いところに封じ込めていた“感覚”を取り戻すことができたからだ。


アメリカで、自由に好きなことを好きなだけできる、という状況で、僕が選んだのは、自然における自己組織化や自生的な秩序形成というテーマであった。

もともとやる予定でいた「インターネット上のオープンなコラボレーションの研究」は、早々に切り上げ、秩序の研究に没頭した。

実はこれは、「転向」というよりは、十数年前に僕の研究の出発点になった「複雑系」の研究への原点回帰、というのに近い。

十数年前には、複雑系研究としての自分のオリジナルな研究内容がなかったが、昨年は幸いにも、カオスのなかに潜む美しい秩序を発見し、その不思議さと美しさに魅了されながら、研究を進めることになった。


このような研究活動と同時に、生活面でも、ニューイングランド地方の豊かな四季や、アメリカ東海岸のいくつかの町を体験した。そして、自然の美しさや素晴らしさに感動する日々だった。

そういう生活のなかで、おそらく僕が取り戻すことができたもの、そしてそれ以降僕の核になっているもの ――― それが、"the sense of wonder"(センス・オブ・ワンダー)だ。


"the sense of wonder"といえば、それがタイトルになった素敵な本がある。有名なのでご存知の方も多いと思うが、レイチェル・カーソンの『The Sense of Wonder』(邦題:センス・オブ・ワンダー)である。

このとても薄い本には、子どもとともに自然を探検して、「知る」のではなく「感じる」こと、そして、そのなかで「神秘さや不思議さに目を見はる感性」(=センス・オブ・ワンダー)を磨くことの素晴らしさが、彼女自身の経験をベースに書かれている。

最近ふと、この本のことを思い出し、読み直してみたのだが、僕が昨年経験したのはまさにこの感覚の回復なのだ、とわかった。


子どもを公園につれていき、一緒に自然を楽しむ。そのなかでおそらく僕自身が相当変わったのだ。生き返った、と言ってもいいかもしれない。

そうやって感覚を取り戻しながら、ただでさえ興味深いカオスを生み出す数式、しかもかなりシンプルな数式のなかに、まだ誰も知らない美しい秩序を見つけたのだ。その不思議さと美しさに、思わず感嘆のため息が出たり、わくわくして眠れなかったりもした。

そして、自然と数学、無限と有限、かたちと成長、多様性、普遍性、生命、個、・・・そういったものに思いを馳せることも多くなった。


このような境地に達してしまったので、ここ数年の社会事例を追ったり、何かの作業を支援するツールをつくる、というような研究は、もはや僕には魅力的ではなくなってしまった。もっと言ってしまうと、いまの社会の表層的な問題/流行への関心はどんどん薄れていってしまった。

振り返ってみると、ここ10年、「実学」的であろうともがくなかで、自分が心から突き動かされ、情熱をもって取り組むことができるテーマから、ずいぶんと離れてしまったのではなかろうか。社会や技術の研究に、必要性は感じても、強い知的好奇心を感じることは、僕はほとんどないようである。


今後は、自分に、そして the sense of wonder に、正直に研究/探究をしていこうと思う。

そして、お祭りやイベント、僕が今やるべきことではないものなどからは、少し距離をおくことにしたい。

壮大なテーマに対して、僕に残された時間はほんのわずかしかないのだから。


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Charles River, Cambridge, MA. Photograph taken by Takashi Iba, 2009.


※the sense of wonder について語っている本
・Rachel Carson, The Sense of Wonder, 1965 (reprinted by HarperCollins, 1998) 邦訳:『センス・オブ・ワンダー』(レイチェル・カーソン, 新潮社版, 1996)

※カオスのなかに潜む秩序の研究について書いた論文
・Takashi Iba, "Scale-Free Networks Hidden in Chaotic Dynamical Systems", arXiv:1007.4137v1 [nlin.CD], July, 2010
( http://arxiv.org/abs/1007.4137 から論文PDFをダウンロードできる)

※来学期、井庭研の輪読ではアレグザンダーの最新作を読むが、彼もまた the sense of wonder に忠実な探究者だと思う。
・C. Alexander, The Nature of Order, Book 1: The Phenomenon of Life, Center for Environmental Structure, 2001
・C. Alexander, The Nature of Order, Book 2: The Process of Creating Life, Center for Environmental Structure, 2003
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もうひとつ、新しいブログ『カオスの想像力』

もうひとつ、カオスの研究に関するブログも立ち上げることにしました。井庭研メンバーの下西風澄君と一緒に書きます。彼とはここ数年、カオスについてのとびきり面白い研究を一緒にやってきました。ここからさらに、想像力をはばたかせたいと思います。

"カオスの想像力 — UNBOUNDED IMAGINATION FOR CHAOS"
http://uichaos.blogspot.com/

UIChaos



僕らの最近のオリジナルな研究成果も紹介していきます。
そして、文体も、いつもとは少し違うタッチで書きたいと思います。

こちらのブログも、ぜひよろしく!
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