井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(まとめ)

特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”(竹中 平蔵 × 井庭 崇)の連載のまとめ。

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(1)
対談の概要とプロセス

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(2)
今回制作した「政策言語」プロトタイプの内容

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(3)
政治的コミュニケーションのイノベーション

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(4)
政策言語が行なおうとしているのは “道具による革命”である

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(5)
政策言語によって教育がどう変わるか


SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室

※ 当日の資料/映像は、SFC Global Campus の「パターンランゲージ」授業ページで一般公開されています(無料)。
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竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(5)

2010年11月27日に行なった特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”の最後に触れた「政策言語によって教育がどう変わるか」という話を補足したい。


政策言語教育

「政策言語」という名称は、実は5年ほど前にすでに考えついていた。それは、慶應義塾大学SFCの現行カリキュラム(2007年から実施)の改定作業を行なっている最中のことであった。学部設立の経緯を踏まえ、さらにこれからのことを考えてみた結果、「政策言語」というものが総合政策学部の教育の重要な要素になるだろう、と考えるようになった。

総合政策学部と環境情報学部では、1990年の設立当初から、「自然言語」と「人工言語」について、独自の“言語教育”を行なっていた。理論を教えた後に実践・応用するという従来のスタイルではなく、ワークショプなどでの実践を通じて感覚的に体得させるインテンシブな“言語教育”が売りであった。

その後十年ほど経ってから、環境情報学部では「デザイン言語」という第三の “言語教育” を開始した。デザイン言語でも、それまでの自然言語・人工言語と同様に、ワークショップでの実践とインテンシブな“言語教育”を行なったのだ。さまざまな領域からトップデザイナーたちを講師に迎え、非常に魅力的な科目が揃っていた。そして、その教育を受け、素晴らしい学生たちが育ち始めていた(デザイン言語については、「『デザイン言語』という実験:慶応藤沢キャンパスの新たなフェーズ」(後藤武) および 「デザイン言語とは何であろうか?」(脇田玲) にその趣旨の説明がある)。

そのとき僕が考えたのは、総合政策学部でもこのようなワークショップでの実践を通じたインテンシブな教育ができないだろうか、ということだった。デザイン言語に倣って、「それは、総合政策学部なのだから『政策言語』 と呼ぶべきものだろう」と考えた。政策の“言語教育”というわけである。当時の学部長であった、故・小島朋之先生にお話したところ、「ほう、いいですね。どんどんやっちゃってください。」と、いつものにこやかな笑顔で背中を押していただいた(小島先生はいつもそうであった)。

ところが実際に案を詰めていくと、デザイン言語のときのようにはうまく実現できそうにないことがわかってきた。まず、政策を実際につくっているプロを講師として迎えることが難しい。これは、日本においては誰が政策デザインのプロなのかがよくわからないという問題でもある。そして、デザインの分野に比べて、その政策をつくることに関する根本原理・定石などがほとんど研究されていないという問題もあった。つまり、ルールやパターンとして、言語化がまったくされていないのである。こうして、カリキュラム改定にはとうてい盛り込むことができない、と判断せざるを得なかった。

それでも、その熱い思いは、現行カリキュラムにも一部実装されてはいる。創造実践科目群にある政策デザインワークショップ、外交政策ワークショップ、未来構想ワークショップなどである。これらのワークショップによって、「ワークショップの実践による学び」の部分は実現できたといえる。

しかし、もう一つの大切なポイントである「政策の言語」教育については実現できなかった。それが僕には「宿題」として残ってしまったといえる。早いもので、それからすでに5年が過ぎた。(時が経つのは本当に早い!)

そんな経緯もあり、今回、「政策言語」をつくるという第一歩が踏み出せたのは、本当によかったと感じてる。これは、まだほんの始まりに過ぎないが、ここから同僚の教員や学生たちと政策言語をつくっていくきっかけとなればと思う。

今回おつきあいいただいた竹中先生だけでなく、SFCには社会的実践があちこちのプロジェクトでなされている。それらの実践知を記述していけば、様々なレベル/ドメインの政策言語がつくれるはずである。そして、学外の賛同者や協力者とともに洗練し、導入実験し、整備していく。研究と教育と実践が一体となっているSFCらしいアプローチだと僕は思うが、どうだろうか?


「竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング」連載 完
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学習パターンtwitter 配信再開!

学びのパターン・ランゲージである「学習パターン」(Learning Patterns)のTwitter配信を再開します。毎日数個、学習パターンを取り上げてつぶやきます。

変化が激しい現代社会では、学生のみならず、あらゆる年代の人にとって「学び」が重要になっています。そしてその「学び」は、単なる詰め込み型ではなく、新しい関係性を発見し、自ら意味を編集・構成していくような創造的な活動であるはずです。学習パターンは、そのような創造的な「学び」のためのコツをまとめた秘訣集です。

毎日の生活における「学びのスパイス」として、学習パターンon Twitter( @LPattern )をぜひフォローしてください。

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竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(4)

2010年11月27日に行なった特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”の最後に触れた「政策言語が行なおうとしているのは “道具による革命”だ」という話について、補足しておきたい。


道具による革命(Tool-Driven Revolution)

かつて、物理学者フリーマン・ダイソンは、科学革命には「概念による革命」(Concept-Driven Revolution)と「道具による革命」(Tool-Driven Revolution)の二つがあると指摘した。トーマス・クーンが『科学革命の構造』で取り上げた科学革命は「概念による革命」の方であったが、ここ5世紀ほどは「道具による革命」も多いのだという。

科学者が世界を観察するとするとき、日常的な理解よりも深いレベルで理解しようとする。直観的に理解できることもあるが、多くの場合は何らかの道具=手段が必要となる。顕微鏡があればミクロの世界を観察することができ、望遠鏡があれば遥か彼方の星の姿を観察することができる。

同様に、世界に関わり、実験を行なうときにも、何らかの道具立てが必要になる。そのため、新しい実験道具が開発されれば新しい発見につながることがしばしばある(詳しくは、以前のエントリ「Thing Knowledge (物のかたちをした知識) その1」および「… その2」を参照してほしい)。

このように、道具というのは僕らの認識や発見を支えている。ダイソンは、このような道具によって科学革命が起きることを、「道具による革命」と言ったのである(詳しくは、以前のエントリ「Imagined Worlds (科学の未来)」を参照してほしい)。

政策言語が行なおうとしているのは、まさに「道具による革命」である。政策を理解し、つくり、実践するための道具として機能するために、僕らは政策言語をつくろうとしている。

もちろん、「道具」といっても、政策言語は機器・装置という意味での道具ではない。それは、コトバを用いた構成物だ。「Context」、「Problem」、「Solution」で構成される言語(パターン・ランゲージ)なのである。

政策言語が「言語」であることを強調するのは、そこで記述されたコトバによって思考やコミュニケーションを支えるからである。そのためには、政策言語が実際の政策デザインのコツをうまく表現しているだけでなく、コトバとして使いやすい/使いたいと思わせることも重要だ。だからこそ、単に実践知を記述するというだけでなく、わかりやすく魅力的なコトバで表現するということが求められるのである。

政策言語という道具によって、政策デザインのあり方、開き方、質を向上させることができるかどうか。挑戦はまだ始まったばかりである。
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竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(3)

2010年11月27日に行なった特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”の冒頭で、竹中平蔵先生が「小泉内閣が発足したとき、メールマガジンとタウンミーティングのアイデアを出してくれたのが井庭さんだった」と、当時のエピソードを紹介した。

今回の対談は、いわば「政策デザインのイノベーション」がテーマだったので、「政治的コミュニケーションのイノベーション」の話をする時間がとれなかった。そこで、対談の補足として、この「政治的コミュニケーションのイノベーション」について書きたいと思う。


まず、そもそもの背景だが、小泉内閣が発足した当時は、森内閣の直後で、政治への不信が高まり、かつ、人々の関心度が薄れている状況だった。そこで、「政治のコミュニケーション」を変える必要があるのではないか、と考えた。つまり、政治家と一般の人たちとのコミュニケーションの新しいカタチを考えることができないか、と。そして、その「政治家と一般の人たちとのコミュニケーションの新しいカタチ」として、「内閣メールマガジン」と「タウンミーティング」のアイデアを提案した(僕がまだ博士課程の大学院生だったときの話)。

もう少し具体的に説明していくことにしよう。


1. コミュニケーションの新しいカタチ

僕ら一般人にとっては、普段、政治家の発言や振る舞いは、TVや新聞、雑誌などのマスメディアを通じてしか触れることはない。つまりマスコミのフィルターを通した情報が、いくぶん強調されたかたちで届けられる。多くの人は、そういう情報であると心のどこかではわかりながらも、情報をそのまま受け入れたり、話半分に受け取って残りを自分の想像力で埋め合わせたりしている。【Context】

そういう状況において、政治家が発言した言葉の全体や細部、意味やニュアンスなどを、僕らは本当には知らないまま、彼らへの印象や意見をもつことになってしまっている。これでは、政治に対してまっとうな評価などできないのではないか。【Problem】

そこで、政治家からの言葉を直接受け取れるようなメディア/場を設けるべきだと考えた。マスメディアを通さずに、直接に僕らに届くような、政治的コミュニケーションの新しいカタチ。こうすることで、政治に対する認識や関心を、取り戻すことができるのではないか。【Solution】

(その具体的なアイデアが、「内閣メールマガジン」と「タウンミーティング」ということである。)


2. 向こうからこちらに

それでは、「政治的コミュニケーションの新しいカタチ」を、どのように実現すればよいのだろうか? 当時、ブレア首相が政策についての自らの意見をホームページに書いているということで、話題になっていた。これも、首相の言葉が直接的に届く、政治的コミュニケーションのカタチだろう。【Context】

しかし、日本の場合は、そもそも政治への関心が薄まっているわけで、自分からわざわざホームページを見に行くというような積極性を期待することはできない。それではどうしたらよいのだろうか?【Problem】

「こちらから向こうに行く」のではなく、「向こうからこちらに来る」ような仕組みは実現できないだろうか。ITの言葉でいうならば、ユーザーが情報を取りに行くという「プル型」ではなく、向こうから情報が送られてくる「プッシュ型」の仕組みをつくる、ということである。こちらが向こうの世界に入って行くのではなく、向こうがこちらの世界に入ってくる。そうすることで、日常世界のなかに「政治」が視野に入ってきやすくなるだろう。【Solution】

(まさにこれこそが、「内閣メールマガジン」であり「タウンミーティング」であった。内閣メールマガジンでは、自分のEメールボックスに、友人からのメールや仕事のメールと同じように、首相からの(自分宛の)メールが届くことになる。タウンミーティングでは、自分が住んでいる町に首相や大臣が来て、それを家族や隣人と見に行くことになる。これが「向こうからこちらに」という意味である。)


3. 新しいメディアによる実現

こうして、「政治的コミュニケーションの新しいカタチ」を、「向こうからこちらに」という仕組みでつくるということまではわかったが、それは具体的にどのようなメディアで実現するのかを考える必要がある。【Context】

すでに書いたことだが、マスメディアというシステムは、話題性やニュース性があるものが取り上げられやすく、そうでないものはあまり取り上げられない。そうなると、せっかく新しい仕組みを実現したとしても、ほとんど普及しないということも十分あり得る。そういう状態に陥らずに、より多くの人に興味をもってもらうためにはどうしたらよいのだろうか?【Problem】

そのひとつの答えは、話題性があるような新しいメディアで実現するということだろう。まず、実現方法に話題性があれば、その情報はマスメディアに乗りやすい。その結果、多くの人に興味をもってもらい、広く普及すればするほど、その普及率は日々、ニュース性をもつことになるだろう。【Solution】

(このとき、企業などがユーザーに配信し始めていた「メールマガジン」というメディアを使うとよいのではないか、と考えた。今となっては、メールマガジンは新しくともなんともないが、2001年当時は、まさに「IT」(情報技術)に注目が集まり、ビジネス/生活の世界にどんどん拡大・普及している時代であった。ちょうど「IT立国」というような旗を掲げていたこともあり、ITを新しいカタチで使うというのは理にかなっている。「内閣メールマガジン」はこのような発想で生まれたのだ。)

以上のアイデアを、当時、大臣であった竹中先生に出し、それが間もなく実現することになった。僕自身は、アイデアを出しただけで、実装・運営等には関わってはいないのだけれども。(個人的には、メールマガジンの雰囲気が思ったよりもカタかったことと、タウンミーティングでヤラセ問題が出てきたりしたことが、少々残念ではある。)

まとめると、次の3つのパターンが合わさって、「内閣メールマガジン」と「タウンミーティング」のアイデアが生まれたといえるだろう。

1. コミュニケーションの新しいカタチ
2. 向こうからこちらに
3. 新しいメディアによる実現

僕がみるところでは、実は、鳩山由紀夫 元首相は、この「1. コミュニケーションの新しいカタチ」、「2. 向こうからこちらに」、「3. 新しいメディアによる実現」を、 twitter でやろうとしたのではないか。メールマガジンはもはや新しいメディアではなく、別の新しいメディアが必要であったし、それだけでなく、「新しい公共」を掲げる鳩山さんだからこそ、本来は twitter というメディアとの親和性も高かったはずだ。残念ながら、twitterらしいメディアの活用はなされなかったけれども。

以上で示したように、「政治的コミュニケーションのデザイン」もしくは「そのためのメディアのデザイン」についても、このようなパターン・ランゲージ化はできそうだ。しかも、それらは、広義の「政策言語」の一部として捉えてもよいかもしれない。


SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室

※ 当日の資料/映像は、SFC Global Campus の「パターンランゲージ」授業ページで一般公開されます(無料)。
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竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(2)

2010年11月27日に「パターンランゲージ」の授業で行った特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて” では、竹中平蔵先生のもつ政策形成の実践知を、「政策言語」(Policy Language)としてまとめることを試みた。

※ この対談の概要と制作のプロセスについては、記事「竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング」を参照してほしい。また、この対談の映像が、SFC-GC(Global Campus)で公開されているので、そちらも参照してほしい(第07回と第08回のところ)。


以下では、この対談で作成した「政策言語」のプロトタイプの内容について、具体的に紹介していくことにしたい(これらは、あくまでも内容や表現を洗練する前のプロトタイプである)。

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今回作成したプロトタイプは、全部で18個。まず、全体像は、以下のとおり。

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A リーダーシップ
1. リーダーのパッション
2. 過去を問うな(今をベストに)
3. 舞台の上での印籠
4. リアクティブからプロアクティブへ

B 開かれた政策
5. もめごとをつくれ
6. Policy Windowをひらく
7. シンプルな政策

C 政策のつくり込み
8. 大きなところで間違えるな
9. 具体的アジェンダ
10. 戦略は細部に宿る

D. 複雑性の縮減
11. ゴミ箱をひっくり返す
12. CPU(Communication Policy Unit)
13. ポリシー・ウォッチャー

E. 自律分散型社会
14. 現場の重視
15. 民間でできることは民間で
16. 民間でリスクを
17. 受益と負担の一致
18. 自助自立


次に、各パターンの内容を紹介することにしよう。対談の時に書いた走り書きなので読みづらいと思うが、現段階の記録として写真を掲載することにしたい。

政策言語の各パターンは、現段階では、その本質的な要素である「Context」、「Problem」、「Solution」から成り立っている。つまり、どのような状況(Context)においてどのような問題(Problem)が生じるのか、また、その問題をどう解決(Solution)すればいいのかが、セットになって記述されている。加えて、その内容を示す象徴的で覚えやすい「名前」(Pattern Name)がつけられている。

Slide3.jpg

パターンの作成にあたっては、「Context」を青、「Problem」を緑、「Solution」を黄色の紙に書いて色分けしながら記述していった。Contextは、他のパターンとの関係で決まるものなので、現段階では空白のままのものが多い。


A リーダーシップ
1. リーダーのパッション
PL2010_seed1.jpg

2. 過去を問うな(今をベストに)
PL2010_seed2.jpg

3. 舞台の上での印籠
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4. リアクティブからプロアクティブへ
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B 開かれた政策
5. もめごとをつくれ
PL2010_seed5.jpg

6. Policy Windowをひらく
PL2010_seed6.jpg

7. シンプルな政策
PL2010_seed7.jpg


C 政策のつくり込み
8. 大きなところで間違えるな
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9. 具体的アジェンダ
PL2010_seed9.jpg

10. 戦略は細部に宿る
PL2010_seed10.jpg


D. 複雑性の縮減
11. ゴミ箱をひっくり返す
PL2010_seed11.jpg

12. CPU(Communication Policy Unit)
PL2010_seed12.jpg

13. ポリシー・ウォッチャー
PL2010_seed13.jpg


E. 自律分散型社会
14. 現場の重視
PL2010_seed14.jpg

15. 民間でできることは民間で
PL2010_seed15.jpg

16. 民間でリスクを
PL2010_seed16.jpg

17. 受益と負担の一致
PL2010_seed17.jpg

18. 自助自立
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以上が、今回作成した政策言語のプロトタイプである。政策言語のイメージを少しでもつかんでいただけただろうか?


SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室

※ 当日の資料/映像は、SFC Global Campus の「パターンランゲージ」授業ページで一般公開されます(無料)。
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イベント告知「不可視のパターンランゲージ」(池上高志 × 岡瑞起 × 井庭崇)

来週の12月11日(土)の「複雑系の数理」の授業では、池上 高志さんと岡 瑞起さんをゲストにお呼びして、対談を行います。

池上 高志 × 岡 瑞起 × 井庭 崇 「不可視のパターンランゲージ」
日時:2010年12月11日(土)3・4限(13:00~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室


池上さんは、人工生命の研究に取り組む複雑系研究者で、『動きが生命をつくる:生命と意識への構成論的アプローチ』という知的刺激に満ちた本の著者でもあります。「つくって理解する」という構成的理解を、コンピュータ・シミュレーションや、実際の物質、芸術などを通じて実践しています。かつてから僕が刺激を受けてきた複雑系研究者のキーパーソンです。

岡 瑞起さんは、東京大学 知の構造化センターの pingpongプロジェクトのリーダーです。pingpongプロジェクトでは、行為の観点からデザインを構造化することを目指し、その手段として言語が用いられているようです。そして、人をセンサーにして環境を読み取ることで「動く地図をつくる」、ということに取り組んでいるそうです。

先日、pingpongプロジェクトの李明喜さんと、雑誌『思想地図β』創刊号の座談会でお話しする機会があったのですが、どうやら「パターン」や「パターンランゲージ」という概念の捉え方や取り込み方が、僕とは異なるようです。そして、僕の研究会では「動きの地図をつくる」(Mapping the Dynamics)というテーマで研究をしていますが、これは、pingpongの「動く地図をつくる」と一見近そうに見えるけれども、やはり根本的なところで目指すところが違うようです。

今回は、pingpongプロジェクトの紹介をしていただけるということなので、この機会にその差異がどこにあるのかを明らかにし、それぞれの特徴を理解したいと思います。

そして、池上さんには「パターンの不可視性」というテーマで語っていただけるということなので、どのような話になるのか、今から楽しみです。


この対談イベントは、授業の一環として行われますが、履修者以外の聴講も歓迎しますので、興味がある方はぜひお越し下さい。

なお、この対談については、現在のところ、映像配信の予定はありません(この対談は、タイトルに「パターンランゲージ」とありますが、「パターンランゲージ」の授業の一環ではなく、「複雑系の数理」の授業での開催となります)。

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イベント・出版の告知と報告 | - | -

イベント告知 「創造と想像のメディア」(江渡 浩一郎 × 井庭 崇 対談)

来週の12月9日(木)の「パターンランゲージ」の授業では、江渡浩一郎さんをゲストにお呼びして、対談を行います。

江渡 浩一郎 × 井庭 崇 「創造と想像のメディア」
日時:2010年12月9日(木)4限(14:45~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室


江渡さんは、産業技術総合研究所で研究員をされているメディア・アーティストで、最近は『パターン、Wiki、XP ̶ 時を超えた創造の原則』という本の著者としても有名です。この本は、パターンランゲージの考案者であるクリストファー・アレグザンダーの思想の変遷と、そこから影響を受けたWikiシステムやソフトウェア開発手法のXP(エクストリーム・プログラミング)との関係を初めて明解に説明したという点で、この分野に大きな貢献をしました。

今回は、江渡さんのこれまでの作品を振り返りながら、いろいろお話を伺いたいと思います。僕からも、現在構想中の「創造システム理論」(Creative Systems Theory)を紹介し、それらを踏まえて、オープンなコラボレーションによる創造や、創造を支援するメディアの構築について、一緒に考えていきたいと思います。

授業の一環として行われますが、履修者以外の聴講も歓迎しますので、興味がある方はぜひお越し下さい。なお、当日の映像/資料は、後日、SFC-GC上で公開予定です。(とはいえ、映像ではなく、その場を共有するということは、ひと味違う体験となると思うので、ぜひ会場でお会いしましょう!)

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イベント・出版の告知と報告 | - | -

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング

先週の土曜日(2010年11月27日)、僕の授業「パターンランゲージ」に竹中平蔵先生をお呼びして、対談を行った。タイトルは「政策のパターンランゲージに向けて」。授業時間2コマぶち抜きの3時間対談だ。

対談といっても、何か具体的な社会・経済のイシューについて議論するタイプの対談ではない。その場でひとつの「創造」を行ってみよう、という実にユニークな形式の対談である。

もう少し具体的にいうと、竹中先生に政策デザインについて自らの経験や考えをお話ししていただき、僕がそれをまとめていく。つまり、竹中先生が「素材」を提供し、僕がそれを「料理」するという、即興的コラボレーションなのだ。オーディエンスは、その場に立ち会い、ときにその創造に参加する。

事前打ち合わせや準備なしで、本当にその場でつくっていく。だから、本当に時間内にできるかどうか、非常にチャレンジングな試みであった。


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この対談で、僕らは何をつくったのか?

それは、僕が「政策言語」(Policy Language)と呼ぶものだ。専門的な言葉で言うと、「政策デザインのパターンランゲージ」。政策をデザインするときの問題発見と問題解決の知を言語化したものである。

「政策言語」という言葉は、僕がつくった言葉である。「政策パターン」という略し方も考えられるが、いくつかの理由があって、「政策言語」と略すことにした。その理由とは、「パターン」という言葉が専門外の人には強すぎる(「ワン・パターン」とか「固定的」なイメージが強い)という理由と、ここで強調したいのが「言語」性だという理由である。


Slide1.jpg


政策言語という新しい言語をつくる動機は、何だろうか?

それは、政策のデザインに必要な考え方のビルディングブロックを明示することで、政策をつくるプロセスを開いていきたいということだ。

現在、日本では、政策をつくっているのは、ごく一部の人たちに限られている。それ以外の人々は、政策について評価し、批判したり肯定したりすることぐらいしかできない。

そのような状況に陥った理由はいろいろあるだろうが、ここで僕が注目したいのは、政策デザインのための「道具」(ツール)の不在である。

このような背景から、「政策言語」という「政策デザインのための新しい道具」を提案し、実際にそのプロトタイプをつくってみよう、と考えたわけだ。


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それでは、政策言語では、何を言語化するのだろうか?

政策言語における各要素(パターン)には、二つの知識が埋め込まれている。まず第一に、どのような状況(Context)において、どのような問題(Problem)が生じるのか、という知識。そして第二に、その問題(Problem)をどう解決(Solution)すればよいのか、という知識。

政策をデザインするとはどういうことかを突き詰めていくと、その本質は、状況から問題を発見をし、その問題を解決することであるとわかってくる。それゆえ、政策言語では、「状況→問題」と「問題→解決」の両方を記述することになる。


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今回の対談では、まず、竹中先生に小泉内閣での経験を振り返っていただき、どのようなことが重要なポイントであったかを自由に語ってもらった。それを、僕が、状況/問題/解決のフレームに落としながら、書き出していった。


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その後、それらの要素(パターンの種)の関係性を考えていく。壁一面のホワイトボードをつかって、「感覚的に近い」要素同士を近くに配置していく。逆に「遠い」と思うものは遠ざける。何度も何度も貼り直しながら、要素間の関係をあぶり出していく(これらはKJ法の考え方/やり方に通じている)。

決して、トップダウンに「これは政策形成プロセスについてのもので、これは情報共有の話で・・・」というようなに既存の枠にはめていってはいけない。ここでやりたいのは、すでに持っているフレームに当てはめることではなく、今まで想像していなかったような、新しい関係性/新しいフレームワークを発見することなのだから。


PolicyLanguage2.jpg

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この関係性づくりのフェーズには、オーディエンスにも参加してもらい、一緒に悩み、考えた。要素が少ないこともあり、作業は難航したが、なんとかまとめることができた。

不思議なもので、関係性を考えるということは、全体像を模索しているように見えて、実は各要素の理解を深めるということでもある。そうなるのは、「全体は部分から成り立つが、部分は全体から影響を受ける」という循環構造があるからだ。だから、ここでやっている作業というのは、諸要素の空間的な配置替えをしながら、その循環構造に迫っていくということなのである。


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こうして、最終的には、政策言語の要素18個と、それらの関係性を紡ぎだすことができた。もちろん、これらは政策言語のほんの一部の要素にすぎず、しかもプロトタイプでしかない。今後、さらに要素を加えていくとともに、すでに出てきたものについてはブラッシュアップをしていきたい。


このようにして、今回の対談では、政策デザインのパターンランゲージである「政策言語」の考え方を提案し、そのプロトタイプをつくることができた。僕自身、かなり手応えがあったし、竹中先生にもかなり気に入っていただいたようだ。

今回の試みは、ステージでやっている本人としては「本当に時間内にできるのか」とドキドキであったが、無事できて本当によかった。竹中先生、どうもありがとうございました! そして、参加してくれたみんな、ありがとう!


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SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室

※ 当日の資料/映像は、SFC Global Campus の「パターンランゲージ」授業ページで一般公開されます(無料)。
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学習パターンのカードゲームを作成中

井庭研の Creative Media プロジェクトでは、現在、学習パターンのコンテンツを用いたカードゲームを作成している。今日のゼミの時間は、制作メンバー3人が試行錯誤しながら作ってきたゲームで、みんなで遊んでみた。

どうすれば学習パターンを用いる意味をしっかりともたせることができるかや、面白いゲーム設計とゲームバランスの関係など、考えるべきことは多々あるが、すでに知恵をしぼっていろいろな仕組みが考えられていて感心した。なにはともあれ、盛り上がったし、僕も楽しむことができた。

学習パターンが収まっている小さなカードを複数手に持ったり、机に並べたりすると、なんだかうれしい気持ちになる。今後の「詰め」のあと、どのようなゲームに仕上がるのかが、実に楽しみである。

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