井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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井庭研究会B1(2011年春学期)シラバス

井庭崇研究会B1(月曜5限)

パターン・ランゲージによる実践知の言語化プロジェクト
(魅力があり、想像力をかきたて、人を動かす「ことば」の探究)


【Important Dates】

2011年
1月13日(木) 5限 井庭研説明会
1月22日(土) エントリー〆切
1月27・28日(木・金) 面接
1月29日(土) 井庭研最終発表会(2010年度)


【目的・内容】

魅力があり、想像力をかきたて、人を動かす「ことば」を生み出すには、どうすればよいのでしょうか? ――― 本研究会では、そのような「ことばの力」を探究し、実践知を「パターン・ランゲージ」として言語化することを目指します。

パターン・ランゲージとは、デザインの知(問題発見+問題解決の知)を記述するための方法です。パターン・ランゲージの要素である「パターン」には、どのような状況(Context)のときに、どのような問題(Problem)が生じやすく、それをどのように解決すればよいのか(Solution)が記述されます。このようなパターンには、対象となるデザイン領域における「よりよいカタチ」についての想像力をかきたて、人を動かす機能があります。

パターン・ランゲージの方法は、もともとは建築デザインの分野で提唱されたのですが、その後ソフトウェア・デザインの分野に応用され、成功を収めました。さらに、組織デザインなど、新しいデザイン領域にも応用され始めています。SFCでも「学び」のパターン・ランゲージ(学習パターン:Learning Patterns)が制作され、学内外で注目を集めています。本研究会では、このパターン・ランゲージの方法にもとづいて、新しい領域の実践知の記述に取り組みます。

2011年度春学期は、メンバー全員で「(広義の)プレゼンテーションのパターン・ランゲージ」を作成します(※)。人に何かを伝えるとき、伝える内容をどのように整理し、表現し、伝えるのか。そのようなプレゼンテーション・デザインの秘訣について考え、パターン・ランゲージとして記述するというプロジェクトに、メンバー全員で取り組みます。

パターン・ランゲージをつくるということは、「ことばの力」によるエンパワーメントを通じて、社会へコミットすること、未来へコミットすることを意味します。そのような新しい方法の開発・実践に挑戦する、「やる気」のあるメンバーを募集します!


※ 井庭研では、今後、「政策言語」(政策デザインのパターン・ランゲージ)、「集合知パターン」(オープン・コミュニティ運営のパターン・ランゲージ)、「ライティング・パターン」(文章執筆のパターン・ランゲージ)、「学習パターン【子ども版】」(子どもの学びのパターン・ランゲージ)等に取り組んでいきたいと考えています。これらのパターン・ランゲージの制作に興味がある人も、2011年春学期から参加してください。

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【授業スケジュール】

ゼミは、月曜5限を予定しています。
毎週のゼミでは、メンバー全員でパターン・ランゲージの制作作業・レビュー等を行ないます。


【履修条件】

● プロジェクト活動によって付加価値のあるアウトプットを生み出す意志があること。
● プロジェクトに付随して必要となる、ゼミ時間外での個人作業・グループワーク(パターンの執筆/文献読解/レビュー等)にきちんと参加する意志があること。
● 知的コミュニティとしての研究会を、自分たちでつくっていく意志があること。


【その他の留意点】

● 本研究会では、参加者全員によるプロジェクト(プレゼンテーション・パターンの制作)を行ないます。個人研究はありません(卒業プロジェクトについては応相談)。
● ゼミの時間は延長することがあります。また、ゼミ後に議論・交流のための食事会を開催します。ゼミの時間の後には、ほかの予定を入れないようにしてください。
● 井庭研究会B2との同時履修や、他の研究会との同時履修も歓迎します。
● 履修希望者は、1月29日(土)に開催される井庭研最終発表会(2010年度)に参加してください。


【予定受け入れ人数】

10人程度


【エントリー課題】

本シラバスをしっかりと読んで内容を理解した上で、以下のエントリー情報を1月22日(土)までにメールで提出してください。

エントリーメールの提出先: ilab-entry2011 [at] sfc.keio.ac.jp
メールのサブジェクト(件名): 井庭研究会B1 履修希望

以下の内容を書いた文書ファイル(WordもしくはPDFファイル)を、メールに添付してください。

井庭研究会B1 履修希望
(1) 氏名(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名
(2) 本プロジェクトに参加する動機・意気込み・期待
(3) 好きな言葉(魅力的だと思う言葉)とその理由(挙げられるだけ挙げてください)
(4) 読書経験と、自分の人生・世界観を変えた本の紹介(複数可。フィクション/ノンフィクションは問わない)
(5) 持っているスキル/得意なこと(自然言語, 画像・映像編集, グラフィックス・デザイン, 音楽, プログラミング, その他)
(6) 来学期、並行して所属する予定の研究会
(7) これまでに所属した研究会
(8) これまでに履修した授業のなかで、お気に入りのもの(複数可)
(9) これまでに履修した担当教員(井庭)の授業
(10) その他の自己紹介(やっていること、興味があること、将来の方向性、自己アピールなど)

※ (2)や(4)や(10)では、図や写真を用いて構いません。

以上のエントリー情報にもとづき、面接を行ないます。


【評価方法】

日頃のプロジェクト活動における積極性・貢献度、および研究会関連の諸活動から総合的に評価します。


【関連科目】

12020:パターンランゲージ
30080:社会システム理論


【関連プロジェクト】

井庭研究会B2:新しいシステム理論にもとづく社会研究 (コミュニケーションの連鎖の分析とメディア構築)
● 大学院プロジェクト:インターリアリティ


【研究会ホームページ】

http://ilab.sfc.keio.ac.jp/


【問い合わせ・連絡先】

ilab-entry2011 [at] sfc.keio.ac.jp


【参考文献】

●『パタン・ランゲージ:環境設計の手引』(クリストファー・アレグザンダー 他, 鹿島出版会, 1984)[ C. Alexander, S. Ishikawa, M. Silverstein, A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction, Oxford University Press, 1977 ]
●『時を超えた建設の道』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1993)[ C. Alexander, The Timeless Way of Building, Oxford University Press, 1979 ]
●『形の合成に関するノート』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1978)[ C. Alexander, Notes on the Synthesis of Form, Harvard University Press, 1964 ]
●『オレゴン大学の実験』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会,)[ C. Alexander, The Oregon Experiment, Oxford University Press, 1975 ]
●『パタンランゲージによる住宅の建設』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1991)[ C. Alexander, The Production of Houses, Oxford University Press, 1985 ]
●『まちづくりの新しい理論』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1989)[ C. Alexander, A New Theory of Urban Design, Oxford University Press, 1987 ]
● C. Alexander, The Nature of Order, Book 1: The Phenomenon of Life, Center for Environmental Structure, 2001
● C. Alexander, The Nature of Order, Book 2: The Process of Creating Life, Center for Environmental Structure, 2003

●『C・Alexanderと現代建築:C. Alexander and Contemporary Architecture』(イングリッド・F・キング, a+u, 1993)
●『クリストファー・アレグザンダー:建築の新しいパラダイムを求めて』(スティーブン・グラボー, 工作舎, 1989) [ S. Grabow, Christopher Alexander: The Search for a New Paradigm in Architecture, Routledge & Kegan Paul, 1983 ]
●『パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則』(江渡 浩一郎, 技術評論社, 2009)
● M. L. Manns, L. Rising, Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas, Addison-Wesley, 2004

●『社会システム理論』〈上〉 〈下〉(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1995) [ N. Luhmann, Social Systems, Stanford University Press, 1996 ]
●『システム理論入門:ニクラス・ルーマン講義録〈1〉 』(ニクラス ルーマン, 新泉社 (2007)[ N. Luhmann, Introduction to Systems Theory, Polity, 2011]
●『暗黙知の次元』(マイケル・ポランニー, 筑摩書房, 2003)[ M. Polanyi, The Tacit Dimension, Reissue edition, University Of Chicago Press, 2009 (1966) ]
●『アブダクション:仮説と発見の論理』(米盛裕二, 勁草書房, 2007)
●『メタファー思考:意味と認識のしくみ』(瀬戸賢一, 講談社, 1995)
●『ハイコンセプト:「新しいこと」を考え出す人の時代』(ダニエル・ピンク, 三笠書房, 2006) [ Daniel H. Pink, A Whole New Mind: Why Right-Brainers Will Rule the Future, Riverhead Trade, 2006 ]
●『シナリオ・プランニングの技法』(ピーター・シュワルツ, 東洋経済新報社, 2000)[ P. Schwartz, The Art of the Long View: Planning for the Future in an Uncertain World, Currency Doubleday, 1996 ]

●『ものがたりの余白:エンデが最後に話したこと』(ミヒャエル・エンデ, 岩波書店, 2009)
●『物語の役割』(小川洋子, 筑摩書房, 2007)
●『生きるとは、自分の物語をつくること』(小川 洋子, 河合 隼雄, 新潮社, 2008)
●『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(河合 隼雄, 村上 春樹, 新潮社, 1998)
●『一億三千万人のための小説教室』(高橋 源一郎, 岩波書店, 2002)
●『出発点:1979~1996』(宮崎駿, スタジオジブリ, 1996)

●『Learning Patterns: A Pattern Language for Active Learners at SFC 2009』(学習パターンプロジェクト, 慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学学部, 2009)※ http://learningpatterns.sfc.keio.ac.jp/
●「自生的秩序の形成のための《メディア》デザイン──パターン・ランゲージは何をどのように支援するのか?」(井庭 崇, 『10+1 web site』, 2009年9月号)※ http://tenplusone.inax.co.jp/monthly/2009/09/post-2.php
●「『コラボレーションによる学び』の場づくり:実践知の言語化による活動と学びの支援」(井庭 崇, 人工知能学会誌 24(1), 70-77, 2009) http://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/papers/2009JSAI.pdf
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体験学習ゲームのパターン分析

学習パターンのカードゲームづくりの話に関連して、懐かしい話を思い出した。

井庭研の1年目(2004年)に、「体験学習のパターン分析」をするプロジェクトがあった。メンバーは、当時の学部3年生の3人チーム。もうみんな卒業してしまったが、個性的で面白いチームだった。

「ゲーミングのタイプとパターン分類:学習ゲームの作成を支援する」(赤石真依, 野田尚子, 斎藤卓也, 井庭崇研究室研究論文, 2004)

これは後に、以下の学会でも発表している。

「体験学習ゲームのパターン分析」(井庭崇, 赤石真依, 野田尚子, 斎藤卓也, 情報処理学会MPS研究会, 2006)


分析のプロセスとしては、自分たちで集められるだけ体験学習ゲームのやり方を集めて、それらがどのようなビルディングブロックで成り立っているのかを理解しようということだ。ここでいうパターンというのは、パターン・ランゲージのパターンという意味ではなく、一般的な意味での「パターン」として使っている(後にパターン・ランゲージ化しようという構想はあったが)。

文献を読んでは、とにかく、付箋(ポストイット)にそのゲームの重要な要素を挙げていく。それをたくさん出したのちに、KJ法のようなやり方で、全体のなかでの要素の関係性を見いだしていく。ここがこのプロジェクトの山場。一番大変なフェーズであり、創造的な瞬間でもある。

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体験学習チーム活動風景(2004)


当時はまだ共同研究室がなかったので、僕の研究個室の一角で活動をしていた。

模造紙にたくさんの紙や付箋を貼りながら、ああでもない、こうでもないと、思考とコミュニケーションの連鎖を続けていく。手をどんどん動かす。変化を起こし、変化を楽しむ。

こういうとき、ノートやパソコン上で、こちょこちょ作業してはだめ。目の前に広がる空間をめいっぱい使って、自分たちの考えていることをマッピングしていく。

考えるためのスペースの広さが、思考の大きさを決めるからだ。

ちょうど、昨日の「パターン・ランゲージ」の授業で話したね、これ。

↓ 昨日の板書。
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学習パターンのカードゲームを作成中

井庭研の Creative Media プロジェクトでは、現在、学習パターンのコンテンツを用いたカードゲームを作成している。今日のゼミの時間は、制作メンバー3人が試行錯誤しながら作ってきたゲームで、みんなで遊んでみた。

どうすれば学習パターンを用いる意味をしっかりともたせることができるかや、面白いゲーム設計とゲームバランスの関係など、考えるべきことは多々あるが、すでに知恵をしぼっていろいろな仕組みが考えられていて感心した。なにはともあれ、盛り上がったし、僕も楽しむことができた。

学習パターンが収まっている小さなカードを複数手に持ったり、机に並べたりすると、なんだかうれしい気持ちになる。今後の「詰め」のあと、どのようなゲームに仕上がるのかが、実に楽しみである。

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来年度の井庭研の構想(パターンランゲージ/社会システム理論)

来年度の井庭研をどういうカタチの研究会にするのか、そんなことをここ1週間ほど考えている。

秋学期もまだ半ばだというのに、少々気が早いように思うかもしれないが、実は1ヶ月後には研究会シラバスの〆切があるので、そろそろそういうことも考えておかなければならないのだ。

極端な案まで含めて、いろいろ考え、研究会メンバーとも話した結果、だいぶ方向性は見えてきた。次のようなカタチで開催することになりそうだ。

まず、研究会のタイプを、A型(週2コマ開催)から、B型(週1コマ開催)×2種類に変更する。つまり、二つのテーマを掲げてそれぞれ学生を募集し、その二つを学期中並行して進めていくのだ(井庭研B1が火曜日、井庭研B2が木曜日というような感じで)。

実は、井庭研は2004年の発足以来B型で開催してきたが、2008年にA型に変更したという経緯がある。A型にもB型にも、それぞれメリットとデメリットがあるが、研究会タイプをB型に戻すのは、経験上、その方が(他の研究会を同時履修する人を受け入れやすくなるので)研究会がよりオープンになり、結果としてメンバーの多様性が増すことにつながるからだ。

テーマと運営方針は、以下のように考えている(2010年11月17日現在の案)。


■ 井庭研B1案「新しいパターン・ランゲージをつくる」
メンバー全員で、体系だったパターン・ランゲージをひとつ制作する。来学期は「プレゼンテーション・パターン」をつくりたいと考えている。個人研究ではなく、研究会メンバー全員で行う「プロジェクト研究」によって成果を出す(学習パターンプロジェクトのようなイメージ)。


■ 井庭研B2案「社会システム理論にもとづく社会研究」
参加者各自の問題意識にもとづく社会研究を「個人研究」として行う。主に想定される参加者は、他の研究会ですでに社会研究を行ってきた人で、新しい視点や捉え方がほしいと思っている人。もしくは、しっかりとした問題意識とテーマをもっており、SFCらしい新しいアプローチで研究したいと考えている人。輪読は、ニクラス・ルーマンの著作、『社会の社会』等を読みたいと考えている。


■ サブゼミ案「ホワイトヘッド哲学の探究」
出来事の連鎖として世界を理解するアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドの哲学を学ぶ。最終的に目指すのは、ニクラス・ルーマンの理論やアレグザンダーの思想との接合。井庭研メンバーで興味がある人のほか、研究会外からの参加も歓迎する。


これまでの井庭研を知っている人には、ネットワーク分析やシミュレーションはどこに行ってしまったのか?という疑問をもつ人がいるかもしれない。

それらの手法は、井庭研B2の社会研究において、分析手段として適切かつ必要である場合には、当然用いることになるだろう(僕自身は今後も使い続けるつもりだ)。


シラバス〆切までまだ時間があるので、これをベースにもう少し考えてみることにしたい。

どうだろう。上記のテーマ、魅力的だろうか?
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トキコエとパタラン:井庭研究会(2010年度秋学期)スタート!

2010年度秋学期の井庭研究会のゼミが始まった。学期2週目に海外出張が入ってしまったので、少し遅めのスタート。ようやくキックオフができたという感じがしている。

輪読ゼミの初回は、夏休みの宿題として読んだ、井庭研テーマに深く関わる3冊について、その共通点と議論した(詳しくはエントリ「Summer Readings --- 井庭研2010 夏休みの課題」 参照)。

(1) The Timeless Way of Building (Christopher Alexander, Oxford University Press, 1979)
(2) Ubiquity: Why Catastrophes Happen (Mark Buchanan, Three Rivers Press, 2001)
(3) Orality and Literacy (Walter J. Ong, Routledge, 1988)

ゼミの議論や僕の考えついて書き出すと切りがないので、今回はその詳細には触れないが、ひとつ衝撃的な発言だけ、記録しておこうと思う。


学生のひとりが、本の内容について議論しているとき、「トキコエでは・・・」と言った。僕も含め、みんな頭の上に「?」マークが点灯した。「トキコエ」? そんな言葉知らないぞ。。。

尋ねてみると、「トキコエ」というのは『時を超えた建設の道』のことだという。トキをコエた建設の道、略して「トキコエ」。

「ときメモ」じゃあるまいし、アレグザンダーもびっくりだよ、それ。現代っ子の手にかかると、30年前の建築思想の“問題の書”も、こんなにキャッチーな印象になってしまうのか。

そういえば、SFCの授業「パターンランゲージ」を開講した年に、学生が「パタラン」と呼んでいるのを耳にしたことがある。

「トキコエ」と「パタラン」。。。

もうこの勢いで、「もしドラ」みたいな青春小説でも書いてみようか。
生き生きとしたコミュニティをつくりたい女子学生がアレグザンダーの本に出会う。(いや、それではただのパクリになってしまう!ボツ。)


なにはともあれ、来週からはいよいよ、アレグザンダーの新著 "The Nature of Order"の輪読が始まる。(はて。これは略称がつけにくいぞ。どうしよう。)


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COINs2010 (Collaborative Innovation Networks) 学会報告 その5

The Second International Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010) の3日目には、もうひとつ、僕らの発表を行った。パターン・ランゲージの制作のプロセスに関する発表だ。

パターン・ランゲージをどうやってつくるかという方法/プロセスについては、これまでほとんど語られてこなかった。Pattern Writingというタイトルのドキュメントでも、実際には、パターンの形式(form)についての説明であったり、パターンとはどういうものかという説明にすぎないことが多い。

パターン・ランゲージをつくるということは、個々のパターンを書くということのみならず、それらの関係性の総体としてのランゲージをつくるということでもある。それをどのようなプロセスで行うのかということを、僕らの学習パターンの経験を踏まえながら紹介した。

この学会では、ポスター発表の場合も、プレビューとして5分間の口頭プレゼンをする。今回は、著者の一人の坂本さんが担当。学部3年生で、初めての学会発表であり、かつ、帰国子女ではなく留学経験もないのに、英語できちんと話していて、素晴らしかった。学生の口頭発表をみて、"I'm proud of you."と思ったのは、今回が初めてだと思う。きっと、この夏休み、研究関連の文献を読みまくり、ずっと考え、日々書いてきた経験が活きているんだろう。素晴らしい。

この発表に対しての反応も非常によかった。なかでも、パターン・ランゲージの新しい動向について有益な情報をくれた人がいて、その人と新しく共同研究が始まりそうな予感。楽しみである。


  • Takashi Iba, Mami Sakamoto, and Toko Miyake, ”How to Write Tacit Knowledge as a Pattern Language: Media Design for Spontaneous and Collaborative Communities”, The Second International Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010), 2010

    Preview Talk by M. Sakamoto.
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    COINs2010, GA, USA, 2010. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.


    Poster ”How to Write Tacit Knowledge as a Pattern Language: Media Design for Spontaneous and Collaborative Communities” (PDF)
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    COINs2010 (Collaborative Innovation Networks) 学会報告 その4

    The Second International Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010) の3日目は、Paper Sessionということで、研究発表のプレゼンテーションが次々と行われた。

    そのなかで、僕も発表してきました。今回は、昨年のCOINs2009で発表した「創造システム理論」(Creative Systems Theory) にもとづいて、創造プロセスを記述するための記法「創造システム・ダイアグラム」(Creative Systems Diagram) を提案。まだまだ出来たてほやほやなので、version 0.10。

    そして、「カオスの足あと」の研究の最初の段階の創造プロセスを、実際にこの記法で記述してみた(当時の創造プロセスについて、いろいろメール・インタビューに答えてくれた、しーもとはかせに感謝)。この分析と記述、とても面白かったし、このダイアグラムが使えそうだという実感ももてた。

    これまで「創造システム理論」は、単に理論しか存在しなかったので、どんなときにどう使えるのかさっぱりわからなかったが(聞いている人も僕自身も!)、これでようやく、何か使えそうだという気がしてきた。コーヒーブレイクのときに話した感じだと、オーディエンスの反応もなかなかよかったようだ。

    このダイアグラムを考案するにあたり、モデル図をいくつかのビューに分けるところなどで、大学院生のときに学んだ UML (Unified Modeling Language) の知識が役に立った。こんなところでこんなふうに活きるとは思わなかった。結局、僕はモデリングの人なんだなぁ、と再認識。「創造」を理解し、それを支援するってことを、僕がやるとこうなるんだねぇ、と。面白い。


  • Takashi Iba, "Autopoietic Systems Diagram for Describing Creative Processes", The Second International Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010), 2010

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    COINs2010, GA, USA, 2010.

    Presentation Slides: "Autopoietic Systems Diagram for Describing Creative Processes" (1.8 MB)

    創造システム理論にもとづいて、創造プロセスを記述するための記法が、「創造システム・ダイアグラム」(Creative Systems Diagram: CSD)。
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    創造システムの要素は《発見》(discovery)。《発見》は、《アイデア》(idea)、《関連づけ》(association)、《ファインディング》(finding)から成り立っている。創造システム・ダイアグラムでは、どのような《アイデア》がどのように《関連づけ》られ、どのような《ファインディング》があったのかを記述していく。
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    創造システム理論の基本のビューは、《発見》の連鎖を描く「要素ビュー」(Elements View)。
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    多くの《発見》を束ねる「プロセス」の関係を記述するビューが、「プロセス・ビュー」(Processes View)。
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    それぞれの《発見》がどのような環境要因によって成り立ったのかを記述するのが、「環境ビュー」(Environments View)。
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    References
  • Takashi Iba, "An Autopoietic Systems Theory for Creativity," COINs2009: Collaborative Innovation Networks Conference, 2009
  • 井庭 崇, 「創造システム理論の構想」, 第14回進化経済学会大会, 2010
  • 井庭 崇, 「自生的秩序の形成のための《メディア》デザイン ── パターン・ランゲージは何をどのように支援するのか?」, 『10+1 web site』, INAX Publishing, 2009
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    COINs2010 (Collaborative Innovation Networks) 学会報告 その3

    The Second International Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010) の2日目には、いろいろなワークショップが開催された。

    Track 1: The Science of Collaboration: Theory and Process
    Session 1: Basics of Social Network Analysis
    Session 2: Coolfarming training

    Track 2: Applying Design Principles and Practices
    Session 1: Innovation Made Physical: Bodystorming
    Session 2: Service Design Thinking

    Track 3: Increasing Collaborative Capacity
    Session 1: Virtual Collaboration: Global Teaming
    Session 2: Collaborative Social Change: Designing for Impact

    僕はボランティア・カメラマンとしてあちこち会場をまわっていたので、どれもつまみ食いした程度だけども、どのワークショップも、初心者にもわかりやすい内容だったと思う。

    このワークショップの映像も、COINs2010カンファレンスのサイトでアーカイブ/公開されている(10月12日現在は2つのワークショップのみ)。 http://www.coins2010.com/ のトップメニューの「Broadcast」から入り、「COINs Conferences」→「COINs 2010 Conference」→「Workshops」にある、「Session 1: Virtual Collaboration: Global Teaming」および「Session 1: Innovation Made Physical: Bodystorming」。

    一緒に行った井庭研の学生もこれらのワークショップでもまれ、専門用語を知る必要性を痛感したり、英語でのグループワークの大変さを味わったりしたようです。学びのモチベーションがあがったということなので、すばらしい!


    そして、この日の基調講演は、Sandy Pentland氏。 Human Dynamics Labを率いるMIT Media Labの教授で、『Honest Signals』の著者。彼らは、位置や音声の特徴を記録できるバッジを用いて、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションと、ネットワーク上のコミュニケーションの両方を対象として組織の分析をしている。これまでにも、ネットワーク上のコミュニケーションの分析や、位置情報を分析は行われてきたが、これらを包括的に扱い、さらに一歩踏み込んで分析している点が面白い。

    この講演映像も公開されている。http://www.coins2010.com/ のトップメニューの「Broadcast」から入り、「COINs Conferences」→「COINs 2010 Conference」→「Keynotes」→「Sandy Pentland ...」。

    それにしても、こんなにたくさん映像を公開してしまうなんて、なんて太っ腹な学会なんだ!

    COINs2010 Workshop: Basics of Social Network Analysis
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    COINs2010, Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    COINs2010 Workshop: Coolfarming training
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    COINs2010, Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    COINs2010 Workshop: Innovation Made Physical: Bodystorming
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    COINs2010, Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    COINs2010 Workshop: Service Design Thinking
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    COINs2010, Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    COINs2010 Workshop: Virtual Collaboration: Global Teaming
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    COINs2010, Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    COINs2010 Workshop: Collaborative Social Change: Designing for Impact
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    COINs2010, Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    COINs2010 Keynote: "Kith and Kin: How Social Networks Make Us Smart"
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    COINs2010, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.
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    COINs2010 (Collaborative Innovation Networks) 学会報告 その2

    The Second International Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010)の1日目は、MIT Center for Collective IntelligenceのPeter Gloor氏による「Coolhunting Academy」から始まった。これは、彼の開発しているツール「Condor」の使い方を学ぶためのワークショップ。ちなみに、Peterは、僕の昨年のMITでの受け入れ担当だった人。

    その日の夕方に開催されたオープニング基調講演は、Jesse Dylan氏。オバマのキャンペーンビデオ「Yes we can」などを手がけたフィルム・ディレクター。今回の講演では、彼が最近関わっている「オープンソース・ヘルスケア」(open source healthcare)ムーブメントについて、彼のつくった映像とともに紹介された。

    「オープンソース・ヘルスケア」では、人びとが、自分たちで自分たちの健康管理・医療を考えることができるようにするために、コミュニティや情報、必要なリソース等にアクセスできる環境を構築することが目指されている。彼は、フィルム・ディレクターとして、その活動を紹介する映像をつくっている。その映像は、彼の非営利組織 Lybba のウェブサイト Lybba.org で見ることができる。

  • "An Introduction to Lybba"
  • ImproveCareNow Collaborative
  • Harvard Catalyst
  • Science Commons

    インターネットが情報の共有方法を大きく変え、そのことで社会が変わる。その過程で、ヴィジョンが映像にのって、より多くの人々の共感を引き起こし、さらに大きなムーブメントに成長する。

    ヘルスケアという内容の重要さや、オープンコラボレーションである可能性もさることながら、映像派の僕としては、映像によるこういったアプローチの観点からも魅力的なプロジェクトである。


    なお、この講演の映像は、COINs2010カンファレンスのサイトでアーカイブ/公開されている。http://www.coins2010.com/ のトップメニューの「Broadcast」から入り、「COINs Conferences」→「COINs 2010 Conference」→「Keynotes」→「Jesse Dylan and Peter Gloor, Opening COINS」


    写真:向かって左から、カンファレンス・オーガナイザーのKen Riopelle氏、J. Dylan氏、P. Gloor氏。
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    COINs2010 Opening Keynote, Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.
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    COINs2010 (Collaborative Innovation Networks) 学会報告 その1

    The Second International Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs2010)に参加するため、米国ジョージア州サバンナに来ている。今回は井庭研の学生4人と、静岡大学の先生・学生と一緒。

    アメリカの南東部の町だけあって、広くゆったりとしていて、そしてなにより陽が暖かい。

    碁盤の目のように道路が敷かれ、あちこちに小さな広場“Square”があるサバンナは、町づくりの観点からも有名らしい。

    そんなこともあり、今日は発表準備の合間に、町を歩きまわってみた。メンバーの一人が、持ってきた『A Pattern Language』(C. Alexander)を手にいろいろとパターンが体現されているものを見つけていた。

    小さな広場であるSquareは、まさに Small Public Squares (61)。Sunny Place (161)、Street Cafe (88)、Stair Seats (125)、Open Stairs (158) 、Opening to the Street (165)、Connection to the Earth (168)、Tree Places (171) など、生き生きとした空間をかたちづくるパターンが、町のあちこちに体現されているのを感じた。

    せっかくなので小さな広場で、Sleeping in Public (94)も実践(笑)。日なたは少し暑いけれども、日陰はひんやり。ちょうど、Squareの木漏れ日がある辺りが心地よい。


    アンティークな建物と溢れんばかりの緑のなかを歩く。
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    Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    Savannah Riverのほとりで『A Pattern Language』(C. Alexander)を読む。
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    Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    バルコニーからこちらを覗いている犬がかわいい。そこも気持ち良さそうだね。
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    Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    Lafayette Squareで休憩。木漏れ日のなかでウトウト。
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    Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    夜の雰囲気も素敵。町の色が変わる。
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    Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    Ellis Squareのきれいな噴水。この広場は他と違ってモダンな空間。
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    Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.

    もちろん、発表準備の方もがんばってますよー。
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    Savannah, GA, USA. Photograph taken by Takashi Iba, 2010.
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