井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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もうひとつ、新しいブログ『カオスの想像力』

もうひとつ、カオスの研究に関するブログも立ち上げることにしました。井庭研メンバーの下西風澄君と一緒に書きます。彼とはここ数年、カオスについてのとびきり面白い研究を一緒にやってきました。ここからさらに、想像力をはばたかせたいと思います。

"カオスの想像力 — UNBOUNDED IMAGINATION FOR CHAOS"
http://uichaos.blogspot.com/

UIChaos



僕らの最近のオリジナルな研究成果も紹介していきます。
そして、文体も、いつもとは少し違うタッチで書きたいと思います。

こちらのブログも、ぜひよろしく!
複雑系科学 | - | -

井庭研 夏休みの課題2009

今年の井庭研の夏休みの課題は、以下のものです。Twitterも使います。


【テーマ】
この夏は、井庭研の創造性の要としての「抽象化」について深く理解してほしいと思います。

人間は、何かを把握したり、モデル化をしたりするときに、必ず「抽象化」をしています。日常生活でも学問をする上でも、抽象化はとても重要なのですが、さらにそれを押し進めると、SFCらしい、そして井庭研らしい意義に到達します。それは、各ディシプリン(学問分野)に埋め込まれてしまっている概念や理論、方法を、別の分野で活用したり、新しい発想を生み出すために使うことができるという点です。いわば、「越境の翼」としての「抽象化」です。

僕(井庭)の創造性について振り返ってみると、実は、この「越境の翼」としての「抽象化」がキーとなっていることに気づきます。みんなが井庭研にいて、僕から何かを学ぶとしたら、この能力の向上こそ本質だと思うようになりました。この能力は、すぐに身に付くようなものではないと思いますが、意識していくことで、できるようになっていくものだと思います。

物事をモデル化するということも、物事をシステムとして捉えるということも、暗黙知をパターン・ランゲージとして捉えることも、関係性をネットワークとして捉えるということも、物事を機能分析するということも、すべて「抽象化」の具体的な方法だといえます。これらのほとんどの場合、その抽象化によって、分野を超えた比較可能性を開いています。

この夏休みの課題では、「抽象化」して考えるということがどういうことなのか、ということ、そして、井庭研や自分の研究との関連でいうとどういうことなのかを考えてください。


【文献】
今回は5冊読んでもらいます。以下に、どこを読むべきかということを書くので、そこだけ読めばOKです。各本の最初から最後まで読む必要はありません。ただ、「抽象化」について考えるためには、以下の順番で読むことを強く勧めます。

●「社会・経済シミュレーションの基盤構築:複雑系と進化の理論に向けて」(井庭崇,博士論文, 2003 (夏休みの課題2009抜粋版))
※今回の目的に必要な部分だけを抜粋してあるので、このPDFの内容は、詳細な注も含めてすべて読む。特に、社会をシステムとして捉えるということ、そしてそれをどう具体的に操作可能なモデルにするのかという点についてしっかり把握する。今回の目的に重要となる情報が、注にたくさん記載されているので、そこも必ず読むこと。システム理論とオブジェクト指向とパターン・ランゲージが出てくるので、それらの関係性もみてほしい。

●『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭崇, 福原義久, NTT出版, 1998)
※第1部と第5部。生命・知能・社会というまったく異なる対象に、どのような共通性をみて、どのようにアプローチしようとしているのかに注目する。

●『複雑な世界、単純な法則:ネットワーク科学の最前線』(マーク・ブキャナン, 草思社, 2005)
※さまざまな対象を「ノード」と「リンク」の観点から理解するということの意義について理解する。

●『オートポイエーシス:第三世代システム』(河本英夫, 青土社, 1995)
※第I章から第III章。「第一世代」「第二世代」、「第三世代」のそれぞれのイメージと特徴をつかむ。

●『社会システム理論(上)』(ニクラス・ルーマン, 恒星社厚生閣, 1993)
※「日本語版への序文」から第1章の最後まで。ルーマンがなぜこのような抽象的な論を展開したのか、また、オートポイエーシスの概念を導入するときに、どのような注意を払っているかに注目する。


【提出方法:Twitter+レポート方式】
今年は、夏休みの最後にレポートを提出するだけでなく、新しい方法を試してみたいと思います。課題をやっている最中に、Twitterで20回以上つぶやいてください。夏休み中のいつでも構わないので、文献を読んで思ったこと、考えたこと、文献間のつながりの発見、感想など、断片的な段階で「つぶやいて」ほしいと思います。井庭研の他の人のつぶやきに反応したりもしてほしいと思います。

文献を読んだり、自分で考えたりしたことを踏まえ、自分のこれまでの研究、もしくはこれからの研究を「抽象化」という観点で語ってください。自分(たち)は何をしたのか、自分(たち)は何をしようとしているのか。

Twitter20回以上と、レポートの両方をやってください。どちらかが欠けてもだめです。Twitterのアカウントは、普段使っているものでも構いませんし、別途アカウントをつくるのでも構いません。

ゼミメンバー同士、フォローして、他のメンバーがどんなことを考えたのかを知りながら、各自課題に取り組みます。夏休み中、ブラックボックスのままで、休み明けに箱を開けるというのではなく、途中からインタラクションがあって、みんなで高め合うことができればベストです。その意味で、「コラボレーティブな夏休みの課題」です。

夏休みの最後に、集中してつぶやくことのないようにね。(笑)
井庭研だより | - | -

「真の国際化」に向けて

ここ半年ほど、ずっと気になっていることがある。「国際化」という問題だ。もっと具体的に言うと、現代のグローバル社会で「生き生き」と生きていくためにはどうしたらよいのか、という問題だ。これは、僕個人の問題でもあり、大学・学部の問題でもあり、日本社会の問題でもあると思う。

僕自身がまだまだ国際化できていないので、大きなことは言えないのだが、現在、日本や大学で語られている「国際化」の議論はどうも手ぬるいと思う。「国際化」といいながら、格差を活用した「アジア化」という印象が拭えないからだ。例えば大学を例にとると、欧米先進国も含めて全世界から留学生を受け入れる体制を整えるというよりは、アジアからの学生をいかに受け入れるのか、という点が議論の中心となっているように見える。アジアとの連携が重要でないとか、欧米を重視すべきだというつもりはさらさらないが、「国際化」の議論がその観点からのみなされているという現状は、問題だと思う。それでは、真の国際化には到達できない。

また、海外から外国人を受け入れる「大学・学部の国際化」も重要だが、「日本人の学生がどう国際化するのか、それをいかに支援するのか」という話もとても大切だと思う。それを正面切って支援できなければ、これからの大学は使命を果たしていないということになるのではないか。さらに、この問題は、国際化を支援・推進する教職員自身の国際化の問題とも密接に関係している。

近年、フラット化した世界を基盤として、グローバルなコラボレーションが可能となっている。そのコラボレーションを楽しみながら、新しい物事を生み出していくためには、アウトプット能力もコミュニケーション能力も高めていかなければならない。また、文化の違いに敏感であり、しかしながらその背後にある共通項を見いだすことができるセンスも必要となるだろう。ただし、語学力があったり多文化に精通していたりするだけではだめで、新しい付加価値を含むアウトプット(創造・実践)の力が伴わないといけない。

このような真の国際化の能力がどのようなものであるのか、また、それをいかにして高めることができるのか、ということについて、今僕は自信を持って語り切ることはできない。いま言えるのは、その能力が今後ますます重要となり不可欠になる、という直観だけだ。

そこで、自らの実践を通じて、この問題について考えていきたいと考えている。僕自身の活動、そして僕の研究会の活動を「真の国際化」という点から見直し、実践していく。僕がSFCに教員として戻ってきてから5年が経った。これまでの5年間はSFCの「研究プロジェクト中心」というコンセプトを真摯に受け止め、学部生が学術的なアウトプットを生み出すということに注力して教育に取り組んできた。それは、学会発表できるレベルまで研究を高めるという経験を通して、知的なスキルやマインドを高めていく、という試みであった。

これから5年間は、「真の国際化」ということをテーマに、活動のチューニングをしていくことにしたい。もちろん、研究という軸は外せないと思うが、意識として「真の国際化」を一番の目標に掲げたい。このブログでも、その試みや考えについて、書いていきたいと思う。
英語漬け生活 | - | -

『2008 Concept Book』を発行しました。

ConceptBook-Cover150.jpg井庭研究会では毎年、そのときの井庭研における重要な「コンセプト」(概念)をまとめた冊子『Concept Book』を制作している。

今年も、先月、最新バージョンである『2008 Concept Book』が完成した。昨年のコンテンツを参考としながらも、テーマ・記述を全面的に改訂し、より内容豊富に、かつ、わかりやすくまとめた。

ぜひ、ダウンロード・印刷して、見てみてほしいと思う。


『2008 Concept Book』
Table of Contents

【Communication】
1 「コミュニケーションの連鎖」としての社会
2 コラボレーション
3 パターン・ランゲージ
4 コミュニケーション
5 オートポイエーシス

【Emergence】
6 複雑系
7 自生的秩序ConceptBook-category250.jpg
8 ネットワーク
9 べき乗分布
10 量子的世界観

【Methodology】
11 機能分析
12 アクション・リサーチ
13 アウトプットから始まる学び
14 構成的理解
15 カオスの足あと


download『2008 Concept Book』 (井庭研究会 編著, 2008)※約10M byte

見開きを想定したデザインになっているので、印刷の際には両面印刷をして、表紙向かって左側の辺にホッチキスを数箇所とめるようにするとよいと思う。

ConceptBook-Chap1-430.jpg


『2008 Concept Book』の制作では、編集担当の学部生2人を中心として、研究会メンバー全員でコンテンツを作成した。今回は僕も結構執筆に参加している。全体としてクオリティをできる限り高めるために、内容や表現をかなり詰めた。そんなわけで、今年の作業は本当に大変だった。でも、その苦労の甲斐があって、かなり素敵な出来だと思う。

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ちなみに、表紙に「Japanese edition」とあるのは、今年は英語版のConcept Bookもつくりたいという野望があるからだ。英語版は来春を目処に制作する予定。乞うご期待!
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井庭研 雪山合宿2008

金曜から日曜にかけて、井庭研メンバーと雪山合宿に行ってきた。スキー&スノボのお楽しみ合宿だ。例年だと、10月にORF準備のための研究会合宿をやるのだが、今年はそういう作業は大学で(半分泊まり込むようなかたちで)取り組むことにし、合宿では交流をメインに据えようということになった。そんなわけで、先週の金曜日は、ゼミ後に、横浜/東京に集合し、夜行バスで白馬五竜へと向かった。

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ゲレンデの雪の状況は、まだ12月頭ということもあって、正直あまりよくはなかった。山の上の方以外は滑走禁止になっていて、滑走可能だったのはコース全体の3割程度。ところどころにアイスバーンもあって、ズズズーーーッと横滑りして、何度も怖い思いをした。

さらに悪いことに、初日は、雪が降るは風は吹くはの過酷な天候。リフトに乗っているときは特に、顔についた雪に体温を奪われた。滑るのはあっという間で、リフトに乗っている時間の方が長いので、どんどん身体は冷えていく。こういうときはいつも、「人間って変な生き物だなぁ」と思う。寒けりゃ、行ったり来たりなんてやめりゃいいのにって(笑)。ま、そうはいっても、気持ちよく滑ると、ついまたリフトに乗って滑りたくなっちゃうんだけどね。

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こんな感じで初日は大変だったのだが、2日目は打って変わって快晴となった。景色がとてもきれいで、爽快な気分で滑ることができた。完全に雪化粧している山々も、下界に見える町の風景も、冷たく澄みわたった空気ごしに見ると、心が洗われるような綺麗さだった。

今回一緒に行ったメンバーは、意外にもスキーヤーが多かった。12人のうち4人がスノーボーダーで、残りはスキーヤー。スキーヤーは初心者が多かったが、スノーボーダーは、みんなうまくて感心した。僕はスノーボードは両足を固定されるのと、左右対称ではないので好きではない。うまく滑っている人を見るのは楽しいけれど、自分でやってみたいとは思わない。一度やって、もう二度とやらないと心に決めた。あんなの怖すぎる。

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僕は、スキーとスノーブレード(ファンスキー)をやった。2008ilab_ski11.jpgスノーブレードというのは、普通のスキーの板の半分くらいの長さの板を使う特殊なスキー。ブーツは普通のスキーのものを使うが、ストックは使わず、スノーボードのように身体を使って滑る。ローラーブレードに近い感覚で滑ることができるので、ローラーブレード好きな僕としては、かなり楽しめるスキーなのだ。ストックも持たないし、板も短いので動きやすく、自由度が高いのも魅力だ。

思い返せば、僕は8年ぶりのスキー。もう滑れなくなっているのではないかと心配したが、不思議なことに身体は覚えているものだ。しょっぱなから、8年のブランクを感じない滑りができたと思う。スノーボーダーたちと行った中級コースも、十分楽しめたし。

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今回、スキーが初めてという人や、子供の頃にやった以来初めてという人が多かったが、最後には、みんなうまく滑れるようになっていた。スノーボーダーもスキーヤーも一緒に滑ることができたし、みんなの普段とは違う顔も見ることができた。今回の合宿で、ORFに向けて根詰めて取り組んだ疲れを、うまく解放できたのではないだろうか。

さて、心機一転、秋学期の後半戦、がんばろう!
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井庭研究会 2008年夏休みの課題

2008年の井庭研の夏休みの課題は、デザインスキルの向上を目指し、読書と実践に取り組むというもの。以下が、その内容だ。


井庭研究会 2008年夏休みの課題

今年の夏休みの課題は、「複雑な情報を可視化・表現する」能力を高めることを目指します。つまり、ヴィジュアライゼーションやデザインの能力を向上させよう、ということです。デザインのコツに関する本を読み、実践してもらいます。

まず以下の3冊を購入し、読んでください。これらの本は、内容的にためになるだけでなく、見た目にも魅力的な本なので、楽しみながら読んでください。

『デザイン・ルールズ:デザインをはじめる前に知っておきたいこと』
『デザインする技術:よりよいデザインのための基礎知識』
『シンプリシティの法則』

そして、これらの文献で得た知見を活かして、

    「井庭研」を表現するポスター

をつくってください。

「井庭研」を表現といっても、井庭研の概念や方法をうまく表現することだと思ってください。井庭研のすべてを取り上げる必要はなく、メリハリをつけて表現してもらえればよいと思います(新規履修者の人は、「井庭研」を表現するのは難しいと思うので、井庭研関連の授業を表現してください。コラボ技法、モデシミュ、シミュレーションデザインなど、そこで学んだ概念や方法を表現してください)。


作成するポスターについて
ポスターのサイズは、A3とします(用紙の向きは縦でも横でも構いません)。

ポスターといっても、いろいろな種類がありますが、今回想定しているのは、商品の広告ポスターと、(ORFや学会でのポスター発表の)文字が多いポスターの間くらいのイメージです。(つまり、インパクトだけのヴィジュアライゼーションでもなく、文字での説明が過剰な展示でもなく、その間を狙ってください。)

必ず Adobe Illustrator や Photoshop などのツールを用いて、デザインしてください。(Power Pointは、ビジュアル的に美しくないので認めません。)

これらのツールを使えないという人は、秋学期に使うことになるので、夏休み中にマスターしておいてください。これらのソフトウェアをもっていないという人は、研究室や特別教室にもありますし、特にIllustratorはかなり便利なので、これを機に購入するといいと思います。アカデミックパックなら正規価格よりもかなり安く買えます(3万円弱)。


活用したコツをまとめる
また、ポスターの作成にあたり、上記の3冊のどのコツを活かしたのかを、具体的に取り上げて、まとめてください(WordもしくはPDF提出)。


締切&提出
2008年9月22日(月)までに、井庭研MLに提出してください。

ポスターについては、IllustratorやPhotoshopのオリジナルファイルと、PDF形式で保存したものの、両方を提出してください。(ファイルサイズが大きくなると思うので、どこかにアップして、URLをメールしてください。)

活用したコツについては、WordかPDFファイルをメールに添付してください。


提出されたものの公開
秋学期の最初に、提出されたポスターを一堂に展示する「『井庭研』ポスター展」を開催したいと思います。井庭研ホームページにも掲載したいと思います。


書籍の詳細情報
それぞれ早めに購入して読み始めてください。少し大き目の本屋さんで購入する必要があります。

『デザイン・ルールズ:デザインをはじめる前に知っておきたいこと』(伊達千代&内藤タカヒコ, MdN, 2006)
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Step 1 まとまりを持たせる
Step 2 変化を付ける
Step 3 強調する
Step 4 デザインのテクニック
Step 5 色について


『デザインする技術:よりよいデザインのための基礎知識』(矢野りん, MdN, 2006)
Book-DesignSkills.jpg
第1章 ものづくりの手がかり―「考」の技法
第2章 点と線とで家が建つ―「図」の技法
第3章 身近だから知らない―「文字」の技法
第4章 情報の舞台装置―「面」の技法
第5章 目に見えることのすべて―「色」の技法


『シンプリシティの法則』(ジョン・マエダ, 東洋経済新報社, 2008)

Book-Simplicity.jpgシンプリシティ=健全さ
法則1 削減
法則2 組織化
法則3 時間
法則4 学習
法則5 相違
法則6 コンテクスト
法則7 感情
法則8 信頼
法則9 失敗
法則10 1
鍵1 アウェイ
鍵2 オープン
鍵3 パワー
人生
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井庭研OB初の結婚式に参加

wedding1.jpg井庭研OB初の結婚式に出席した。

新郎は、井庭研が出来てから2年目の卒業生だ。新婦の方は僕はほとんど存じ上げないので、これからのお付き合いとなる。

当たり前といわれるかもしれないけど、席次表の僕の名前の上には「恩師」と書かれている。これまで「友人」として結婚式に参加することはあっても、「恩師」というのは初めての経験。僕らの関係は、先生・学生というよりは、先輩・後輩という感じに近かったようにも思うが、改めてそういう言葉をみると、少しドキっとする。そして、そんなたいそうなもんじゃないけどね~、と照れてしまう。その名に恥じぬよう、もっともっとしっかりしなきゃ、とも思う。

披露宴では、カメラマン気取りで、一眼レフのデジカメで撮影しまくった。勝手にやっているので、気が楽だ。頼まれているわけではないので、プロが撮るようなベストショットを狙わなくて済む。そのかわり、オフィシャルなものとは少し違った視点から撮影する。

そうそう。僕はスピーチがないので安心していたら、お色直しのときに新郎をエスコート(?)する役に指名されて、とても驚いた。そんなこともあるんだね。びっくり。

2次会は白金台のレストランを貸し切って行われた。披露宴に出席していない研究会OB・OGも加わり、みんなで祝った。研究会OB・OG有志からのプレゼントも、ちょっぴりユーモアを交えながらも、実用的なものを贈った。

3jikai.jpg3次会は、近くのおしゃれなバーへ。3次会といっても、新郎・新婦がいるわけではないので、どちらかというとOB・OG会という感じで、いろいろな話ができた。ワインもボトルをあけ、かなりよい気分に。現役メンバーと一緒の「打ち上げ」ではなく、OB・OGだけとまったりと飲むという機会がこれまでなかったが、やっぱりこういうのもいいね。みんな徐々に大人になっているなぁ。そんなことを感じながら、とても素敵な時をすごすことができた。

ということで、なにはともあれ、結婚したお二人、おめでとう! お幸せに (^_-)☆
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学習パターンプロジェクトの進捗報告

LearningPattern3.jpgいま、学習パターンプロジェクトでは、「SFCにおいて、自分の目的に応じてどのように授業を履修し、学習していけばよいのかを考える」ことを支援する方法を研究・開発している。具体的には、「SFCらしい学び」のヒントを、「学習パターン」(Learning Pattern)として記述し、共有する仕組みを考えている。

この「学習パターン」という方法の背景には、「パターン・ランゲージ」という考え方がある。パターン・ランゲージは、もともとは建築の分野において、古き良き街に潜むパターンを抽出し、それを記述するために提案された。その後、ソフトウェアの巧みな設計についてのコツを記述する方法として導入され、有名となった。最近では、デザインや組織論などにも応用されている。学習パターンは、このパターン・ランゲージという方法を、学習支援に用いるという試みだ。

SFCでは、国際関係から組織・経営、人文・思想、情報技術、デザイン、建築、生命科学にいたるまで幅広い分野の専門科目が提供されている(注:一般教養としてではない)。しかも、1年生から4年生まで、学年に関係なく好きな科目を好きな時期に履修することができる。それゆえ、「どの科目をどのタイミングで履修するのか」や「どのように何を学ぶのか」という、学生自身によるセルフプロデュースが重要となる。そのための支援を、僕らは「学習パターン」を用いて行いたいと考えている。

学習パターンでは、学生の多様な状況・将来像に合わせて適用できるようにするように、「身に着けたい能力」と「そのための学習・履修計画案」の組み合わせをパターンとして記述し、まとめていく予定だ。それらのパターンをたくさん集め、カタログ冊子にまとめる。このカタログ冊子は、来年度、『SFCガイド』や『講義案内』とともに、オフィシャルな冊子として学部生全員に配布されることになっている。

LearningPattern1.jpg学習パターンプロジェクトの学生タスクフォースチームは、春学期、昨年度から始まったSFCの新カリキュラム(未来創造カリキュラム)の構成について、その理念・思想・仕組みを理解することから始めた。『SFCガイド』や『講義案内』を熟読し、さらにカリキュラム改定に深くコミットした僕からいろいろな話を聞いて理解を深めていった。

その過程でわかってきたのは、新カリキュラムの思想や意図がほとんど学生に伝わっていなかったという事実だった。ガイドブックには書いてあっても、そんなにじっくりは読まないし、読んでも心にひっかかることなくスルーしてしまったのだろう。1年間そのカリキュラムのもとで学んできたにも関わらず、たとえば「創造融発科目ってそういう意図の科目だったのかぁ。確かに!」というような声を何度も聞いた。ということで、この過程を通じて、チームメンバー自身がSFCのカリキュラムを深く理解できた。これが春学期の一番の成果といえるかもしれない。

LearningPattern2.jpgさて、その後、学生タスクフォースチームが行ったのは、それぞれの科目群における「学び」のポイントを考えるということだ。各科目群はどのような意図をもって設置されたのか、そして、その科目において学生は何を学べばよいのか。そういうことを考えていった。できるところにはキャッチーなフレーズを考えたりしながら、その魅力を表現しようと試みた。

そして、学期末には、それまで考えてきたことを、最終的にどのようなカタチにまとめていくのかについて議論した。パターン・ランゲージには、これがベストという決まった形式があるわけではない。C・アレグザンダーによる建築のパターン・ランゲージは叙述的に書かれているし、ソフトウェアの世界では項目別に整理されて記述される。各パターンをどのように書くかは、誰が読むのかということや、そこで何が語られるのか、ということと深く関係している。さらに、パターン・ランゲージは、たいてい数十~数百個のパターンから構成されるので、それらはカタログの形式でまとめることが多いが、それをどのようにまとめるのかということも考えなければならない。

議論の結果、「学習パターン」が本当に有効活用されるためには、次の二点について考えるべきだ、ということになった。

(1)50~100個のパターンからなる分厚いカタログ冊子はほとんど読まれないだろう。どうしたら読んでもらえるかを考えるべき。
(2)「SFCらしい学び」の支援であれば、履修選択の時期だけでなく、学期中絶えず参照できるようにすべき。

この二つのポイントを考慮して、次のようなアイデアや方向性がでてきた。

● A4サイズではなく、手帳くらいのサイズにして、厚さも薄くする(そして、ウェブに載せる情報と冊子に入れる情報を選別する)。
● 読むだけのものではなく、書き込めるようにする。たとえば、自分の時間割を書き込めるようにする。
● 本質的に重要な「学習パターン」を10個程度にする。絞り込んで、本当の意味での「共通言語」化を目指す。
● 科目の組み合わせについては「おすすめ履修メニュー」で示すことにして、学習パターンとは分けて考える。
● 【学期始め】の履修選択時のコツだけでなく、 【学期中】の学びのコツや、【学期末】の振り返りのコツなども取り上げる。
● 「リサーチ・パターン」も10個くらい掲載する。「研究プロジェクト中心」を謳うSFCにおける学びでは、「研究」活動の支援は重要。
● イラストやデザインについても工夫する。佐藤雅彦さんの『プチ哲学』のような魅力を入れたい。

今後は、これらのアイデアや方向性を活かしたパターン作成に取り組んでいく。

【関連情報】
「SFCカリキュラムにおける学びと研究の支援:学習パターンとリサーチ・パターンの融合へ」(小林 佑慈)
パターン・ランゲージ | - | -

データベース勉強会

database.jpgインターリアリティプロジェクトの番外編として、データベース勉強会を行った。学期中にも何度かデータベースの勉強会をしたが、一日かけて残りをやろうということになった。学期末の研究発表会の翌々日にもかかわらず、共同研究室に集まって、まじめに「勉強」をした。うん、実にまじめだ。

『書き込み式SQLのドリル:ドンドン身に付く、スラスラ書ける』をテキストにして、熊坂研の川崎さんにレクチャーしてもらう。そして、各自、この本の練習問題に取り組み、実際に自分のPCで実行してみる。データベースには馴染みがないので、ごく簡単なところから始めた。どこまで力がついたかはまだ自分でも判断がつかないが、SQL(データベース言語)を用いてデータベースを操作するということが、どういうことなのかは、なんとなくわかった気がする。あとは実践のなかで、もう一度本を片手に、思い出しながらやるしかない。その基盤ができたことが重要だと思う。

book-sql.jpg『書き込み式SQLのドリル:ドンドン身に付く、スラスラ書ける』(山田 祥寛, ソシム, 2006)

この本は、タイトルに「ドリル」という言葉が入っていることからもわかるように、練習問題が多く、考えさせる構成になっている。ほかにもいくつか入門書をみてみたが、どれも「読む」ことがベースとなっていて、自分が「わかった」のか「わからない」のかが、よくわからない。この本だと、練習問題で、自分がいかにわかっていないかを痛感させられるので、立ち止まって考えることができる。タイトルや装丁は軽そうに見えるけど、意外といい。これから学ぶ人におすすめだ。
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井庭研 2008年度春学期 研究発表会 を開催しました

2008prezen5.jpg井庭研 2008年度春学期 研究発表会を開催した。
井庭研の研究発表会は、学会形式で行う。スーツなどフォーマルな格好で、「研究者」としてのプレゼンテーションを行う。司会も、学生自身が行う。そして、井庭研OB・OGが、ゲストコメンテーターとして参加する。

今回発表された研究の一覧は、以前紹介した通りだ(「井庭研 2008年度春学期 研究発表会のご案内」参照)。今学期は、どの研究もそれぞれに面白く、「井庭研らしい」研究に仕上がっていた。もちろん春学期は、一年間かけて行う研究の中間報告的なものになるので、研究の完成度の面では今後に期待!というところもあるが、それぞれに新しい領域を切り拓いているという意味で、素晴らしい成果だと思う。

特に、今学期国際学会などで対外的な発表をしている人は、その活動と研究を両立させるのがかなり大変だったと思う。4年生も、学期半ばまで就職活動をしていたわけで、それを終えてからすぐ研究に復帰し、学期末まで走り抜けた。おつかれさま、と言いたい。

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■ Award ――― ひとつの象徴として
井庭研の研究発表会では、優秀な研究や活動に“Award”を授与している。ある観点からみて「模範」・「象徴」となる研究や活動を行った人を僕が選び、授与するものだ。そのときどきによっていろいろな種類の“Award”がある。

まず今学期の「井庭賞」(Iba Award)を受賞したのは、三宅論文と下西論文。この二人は、この春学期に、先学期までの研究成果を国際学会で発表しているのだが(三宅発表、および下西発表)、井庭研論文では、その具体的研究を広い視野のもとで位置づけし直す、ということに挑戦した。このように、個別研究をより大きなコンテクストのなかに位置づけるということは、単に「やってみたらこうなった」という研究を超える意味で、とても大切なことだ。その意味で、この二人が行ったことは、「模範」的であるとして、井庭賞を授与した。

「『場』とコミュニケーション:創造的なコミュニケーション・メディアのために」(三宅 桐子)
「科学と芸術の関係について:レオナルド・ダ・ヴィンチを事例に」(下西 風澄)

「新人賞」(Kick-Off Award)は、花房論文と坂田論文。それぞれ、今学期から井庭研に参加した2年生と3年生だ。初学期の成果としては、十分しっかりしたものとなっただけでなく、とても魅力的だ。今後の展開が楽しみだ。

「オートポイエティック・システムとしての音楽:ルーマン理論に基づく音楽の創発現象の考察」(花房 真理子)
「付加価値の連鎖による環境保全と地域活性:茨城県霞ヶ浦再生事業「アサザプロジェクト」を事例にして」(坂田 智子)

そして、「多面的活動賞」(Multi-Activities Award)という賞を,
成瀬さんに授与した。成瀬さんは、今学期、実にいろいろな研究活動を展開した。まず、ロスで行われた日米数理社会学会合同会議では、先学期から取り組んでいた「生態系をオートポイエティック・システムとして捉える」という研究を発表した。また、「プロジェクト推進のためのパターン・ランゲージ」の英語版を作成し、井庭研論文では「地域活性化のためのパターン・ランゲージ」の研究に取り組んだ。また、井庭研で取り組んでいる「学習パターン」プロジェクトに参加しているほか、今学期から始まった「英語サブゼミ」をとりまとめ、「量子力学サブゼミ」にも参加している。このように、今学期に本当に多くの分野・テーマの活動にコミットした。その精力的な姿勢は、評価に値すると思う。

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このほか、プロジェクトへのAwardとしては、企業との共同研究で、商品市場の実データ解析に取り組んだ「市場分析プロジェクト」に“Hard-Work (^_^) Award”、そして、個人研究とは別に多くの人が参加した「学習パターンプロジェクト」に“Collaboration Award”を贈った。

研究発表会でAwardを授与するというのは、実は、かつての竹中研の伝統から受け継いでいる。竹中先生いわく、「賞は人をつくり、人は賞をつくる」。賞をもらった人は、エンカレッジされて、さらにがんばる。その結果、その人が大成すると、その人がかつてもらった賞だということで、賞の価値があがる。このような連鎖によって、賞と人はお互いに高めあうのだ。竹中先生がやっていたのと同じように、僕もポケットマネーで図書券をプレゼントする。さらなる学びのために使ってほしいと思う。(僕自身、学部3年のときに、竹中研でAwardをもらい、自分が飛躍するための力をかなりもらったという経験がある。)


■ 研究へのコメント ――― 「研究」として行うからには
今回の発表会では、OB・OGの成長ぶりを見れたことも、うれしかったことの一つだ。今回来てくれた8人のOB・OGは、それぞれゲストコメンテーターとして有益かつ適切なコメントをくれた。ついこの前まで、自分がコメントを言われる側に立っていたわけだが、研究や発表に対して、説得力をもってコメントできている姿を見ると、頼もしいかぎりだ。

そこで言われていたことをまとめると、第一のポイントは、「研究として行うからには、その手続きを明示する」ということだ。たとえば、パターン・ランゲージの研究では、それがどのような手続きで制作されたものであるかをきちんと明記しなければ、単なる主観的な創作物となってしまう。「研究」としてやるからには、他の人が追試できるように「手続き」や「証拠」を明示しなければならない。

そして、第二のポイントは、「研究として行うからには、関連する研究との関係を明らかにする」ということだ。これはすべての論文に言えることだが、先行研究のサーベイをもっときちんと行わなければならない。いま論文の参考文献にあがっているものは、その論文へのインプットを担った書籍が多く、似たような研究や比較対象となる研究の論文への参照がほとんどない。これでは、その研究を、ほかの研究との関係性のなかに位置づけられていないことになり、「研究」論文として仕上がっていないということだ。研究の初段階で先行研究のサーベイをしすぎるのはよくないが(「自分」の研究ができなくなってしまう)、研究をまとめる段階では、やはり先行研究をきちんと把握し、比較や差異化を行わなければならない。

以上の点については、夏から秋学期にかけての各研究の課題だといえる。今後のさらなる発展に期待したい。

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■ 春学期を振り返って ――― 融合、活発、そして学び
今学期の最初のゼミは、鴨池で行った(「天気がよかったので。」参照)。あれから早4ヶ月。約120日が過ぎた。長かったといえば長かった気もするが、あっと言う間だったとも言える。最初のゼミでは、寒くて途中で教室へ逃げ込んだわけだが、それが気づくと、暑くて暑くてたまらない季節になっている。

今学期の井庭研では、国際学会発表を積極的に行ってきた。すでに国際学会発表10件を行ったし、夏から秋にかけても6本予定している。英語での発表をこんなにハイペースで行うのは初めてだ。加えて、個人研究のほかに「学習パターン」の活動なども活発だった。今学期から、これまで別々に活動していた井庭研1・2を融合することにしたが、それは成功だったと思う。井庭研という場がかなり魅力的でパワフルな場になったと感じている。そして、各自の学びも格段に進んだのではないだろうか。みんな、本当におつかれさま!

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(井庭研メンバーおよびOB・OG, 2008年春学期 研究発表会, 2008年7月27日)
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