井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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学習パターン対話ワークショップの分析(1)

以前紹介したように、SFCの授業「パターンランゲージ」では、「学習パターン」(Learning Patterns)を用いた「学びに関する対話ワークショップ」を行なった。

ワークショップの内容については、「"Design Your Learning!" Dialogue Workshop @SFC」を、狙いについては、「メディアとしての学習パターン:対話ワークショップの狙い」を、ご覧いただきたい。

今回は、このワークショップの際に提出してもらったデータの分析結果を紹介したい。なお、ワークショップ参加者は計36人で、学年別の内訳は1年生6人、2年生16人、3年生13人、4年生3人であった。


■ 体験パターン(全体)

個々のパターンごとに、そのパターンを体験している人数をまとめると、以下のようになる。参考までに、学年別の内訳を色分けで示してある(学年によって履修者数が異なるので、読み取りの際には注意)。

ExperiencedPatternsSmall.jpg


体験したことがあるパターンとして、最も人数が多かったのが「『まねぶ』ことから」「身体で覚える」であった。約7割が体験している。

「『まねぶ』ことから」の体験について具体的なエピソードをみてみると、体験の場面はかなり多岐にわたっている。受験勉強の仕方、外国語学習の方法、研究のやり方、スポーツのフォーム、コーチングの方法、楽器の演奏、コミュニケーションの取り方、イベント司会の仕方、文章の書き方、ものづくりの基礎技術、アイデアの出し方などが挙げられている。

「身体で覚える」の具体的な体験談は、スポーツが最も多く、次に音楽、そして、コンピュータ等の技術の習得であった。

次に多かったのは「『はなす』ことでわかる」であり、それから「まずはつかる」が続く。このあたりまでが、参加者の約半数が体験しているパターンである。

逆に、誰も体験していないというパターンもあった。「フロンティアンテナ」だ。“研究プロジェクト中心”のSFCであるから、本来は最先端の動向を知るということは不可欠なはずだが、今回の参加者(全員学部生)についてはそのあたりの体験はないようだ(大学院生であれば、もっと多くの人が体験しているはずである)。


■ 体験パターン(学年別)

次に、各パターンを体験したことがある人数を、学年別にみてみよう。学年によって人数が大きく異なるので、このグラフから、横軸を「体験している人の、その学年の全人数における割合」としてある。

ExperiencedPatterns1stSmall.jpg

1年生は母数が6人なので、この結果から統計的な含意を読み取るのは難しいが、他の学年にはない大きな特徴がいくつかある。

まず第一に、パターンNo.0〜3という抽象度の高いパターンがひとつも選択されていないという点である。具体的にいうと、No.0「学びのデザイン」、No. 1「SFCマインドをつかむ」、No. 2「研究プロジェクト中心」、No. 3「SFCをつくる」であり、これらのパターンは、それ以降に続く個別パターンを束ねる役割をしているものである。これらの抽象的なパターンは、入学後1年未満では、体験や意識がないということだろう。

第二に、2年生以上では体験されている No.37「セルフプロデュース」が選択されていない点も注目に値する。これは、1年生はまだ「SFCらしい学びのスタイル」を身につけている途中である、ということの表れかもしれない(とはいえ、母数を増やしたときに結果が変わる可能性もあるので、これらはあくまでも仮説的な考察にすぎない)。


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ExperiencedPatterns3rdSmall.jpg

2年生と3年生は、それぞれ16人と13人におり、分布の特徴がわかりやすい。どちらの場合も、基本的には、学び始めのパターン(「『まねぶ』ことから」「身体で覚える」)に大きな山がある。

興味深いのは、2年生では小さな山であった対人関係のなかの学びのパターン(「『はなす』ことでわかる」「教えることによる学び」)が、3年生では大きく伸びていることである。これは、研究会で後輩ができたり、授業のアシスタントをする等の「半学半教」の経験と関係しているのかもしれない。

ExperiencedPatterns4thSmall.jpg

最後の4年生の分布に関しては、3人のデータなので、ここから何かを導きだすことは難しいだろう(できるならば、今後、どの学年も、ある程度の人数が確保できる調査をしたいものである)。


■ 不可視の「体験」を把握する調査ツールとしてのパターン・ランゲージ

以上の結果によって、それぞれの学習パターンが、SFCの一部の学生たちに体験されている/徐々に体験されていく、ということがわかった。このことは、「学習パターン」のパターン・ランゲージとしての妥当性を支持する結果だといえる。

しかし、もっと興味深いのは、本来は個人的な営みであり不可視である「学びの体験」を掘り起こし、把握するということに、パターン・ランゲージが役立っているという点である。以前、「語りのメディアとしてのパターン・ランゲージ」という話を書いたが、今の文脈でいうならば、「新しい調査ツールとしてのパターン・ランゲージ」と捉えることもできるだろう。


有限のパターンを相手に投げかけることで初めて捉えられるリアリティがある ——— その意味において、パターン・ランゲージは新しい調査ツールになり得る。

今回の試みでは、「有限のパターンを相手に投げかけることで初めて捉えられるリアリティ」が「学びの体験」だということになる。


パターン・ランゲージは、本来は分解不可能/記述不可能な実践知を、パターンという単位でまとめ、記述したものである。本来は分解できないものを分解し、本来は書くことができないものを書くわけなので、いわば “不完全” な方法だといえるかもしれない。

しかし、僕ら人間は、ある単位にまとめ、表現しなければ、認識することも伝えることもできない。そう考えると、たとえ不完全だったとしても、役に立つのであれば、ひとまず成功と言えるのではないだろうか。


不可視の「体験」を把握する調査ツールとしてのパターン・ランゲージ ——— この可能性を、しばらく探ってみたい。


(つづく)

※ 今回の分析は、授業SA(Student Assistant)の四元さんと坂本さんに手伝ってもらいました。ありがとう。
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イベント告知「建築の計算(不)可能性」(松川昌平 × 井庭崇)

来週の1月13日(木)2限の「複雑系の数理」の授業では、松川昌平さんを遠隔ゲストにお迎えして、対談を行います。

松川 昌平 × 井庭 崇 「建築の計算(不)可能性」
日時:2011年1月13日(木)2限(11:10~12:40)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) ε 11教室

松川 昌平さんは、複雑系の考え方を取り入れながら、コンピュテーショナル・デザイン(アルゴリズミック・デザイン)の最先端で、独自のアプローチを探究している建築家です。松川さんのアプローチは、単にアルゴリズムを用いて「形」を生成するというのではなく、機能も含めた構造の可能性を探索するためにコンピュータを用いている点に特徴があります。複雑系の考え方が、どのように新しい建築設計の方法に結びつくのか? コンピュテーションは、物理的空間の設計をどう変えるのか? その可能性と不可能性について、『複雑系入門』著者の井庭 崇と語り合います。

松川 昌平
建築家。1974年生まれ。1998年、東京理科大学工学部建築学科卒業。1999年、000studio/ゼロスタジオ設立。2010年現在文化庁派遣芸術家在外研修員および客員研究員としてハーヴァード大学GSD在籍。アルゴリズミック・デザインの研究、実践を行なう。共訳書=コスタス・テルジディス『アルゴリズミック・アーキテクチュア』
(彰国社、2010)。

※ 松川さんは現在米国在住のため、インターネット経由の遠隔参加となります。

この対談イベントは、授業の一環として行われますが、履修者以外の聴講も歓迎しますので、興味がある方はぜひお越し下さい。なお、この対談は、映像配信の予定はありません。

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イベント・出版の告知と報告 | - | -

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(まとめ)

特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”(竹中 平蔵 × 井庭 崇)の連載のまとめ。

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(1)
対談の概要とプロセス

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(2)
今回制作した「政策言語」プロトタイプの内容

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(3)
政治的コミュニケーションのイノベーション

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(4)
政策言語が行なおうとしているのは “道具による革命”である

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(5)
政策言語によって教育がどう変わるか


SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室

※ 当日の資料/映像は、SFC Global Campus の「パターンランゲージ」授業ページで一般公開されています(無料)。
パターン・ランゲージ | - | -

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング(2)

2010年11月27日に「パターンランゲージ」の授業で行った特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて” では、竹中平蔵先生のもつ政策形成の実践知を、「政策言語」(Policy Language)としてまとめることを試みた。

※ この対談の概要と制作のプロセスについては、記事「竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング」を参照してほしい。また、この対談の映像が、SFC-GC(Global Campus)で公開されているので、そちらも参照してほしい(第07回と第08回のところ)。


以下では、この対談で作成した「政策言語」のプロトタイプの内容について、具体的に紹介していくことにしたい(これらは、あくまでも内容や表現を洗練する前のプロトタイプである)。

TakenakaIbaDialogue.jpg


今回作成したプロトタイプは、全部で18個。まず、全体像は、以下のとおり。

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A リーダーシップ
1. リーダーのパッション
2. 過去を問うな(今をベストに)
3. 舞台の上での印籠
4. リアクティブからプロアクティブへ

B 開かれた政策
5. もめごとをつくれ
6. Policy Windowをひらく
7. シンプルな政策

C 政策のつくり込み
8. 大きなところで間違えるな
9. 具体的アジェンダ
10. 戦略は細部に宿る

D. 複雑性の縮減
11. ゴミ箱をひっくり返す
12. CPU(Communication Policy Unit)
13. ポリシー・ウォッチャー

E. 自律分散型社会
14. 現場の重視
15. 民間でできることは民間で
16. 民間でリスクを
17. 受益と負担の一致
18. 自助自立


次に、各パターンの内容を紹介することにしよう。対談の時に書いた走り書きなので読みづらいと思うが、現段階の記録として写真を掲載することにしたい。

政策言語の各パターンは、現段階では、その本質的な要素である「Context」、「Problem」、「Solution」から成り立っている。つまり、どのような状況(Context)においてどのような問題(Problem)が生じるのか、また、その問題をどう解決(Solution)すればいいのかが、セットになって記述されている。加えて、その内容を示す象徴的で覚えやすい「名前」(Pattern Name)がつけられている。

Slide3.jpg

パターンの作成にあたっては、「Context」を青、「Problem」を緑、「Solution」を黄色の紙に書いて色分けしながら記述していった。Contextは、他のパターンとの関係で決まるものなので、現段階では空白のままのものが多い。


A リーダーシップ
1. リーダーのパッション
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2. 過去を問うな(今をベストに)
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3. 舞台の上での印籠
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4. リアクティブからプロアクティブへ
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B 開かれた政策
5. もめごとをつくれ
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6. Policy Windowをひらく
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7. シンプルな政策
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C 政策のつくり込み
8. 大きなところで間違えるな
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9. 具体的アジェンダ
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10. 戦略は細部に宿る
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D. 複雑性の縮減
11. ゴミ箱をひっくり返す
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12. CPU(Communication Policy Unit)
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13. ポリシー・ウォッチャー
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E. 自律分散型社会
14. 現場の重視
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15. 民間でできることは民間で
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16. 民間でリスクを
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17. 受益と負担の一致
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18. 自助自立
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以上が、今回作成した政策言語のプロトタイプである。政策言語のイメージを少しでもつかんでいただけただろうか?


SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室

※ 当日の資料/映像は、SFC Global Campus の「パターンランゲージ」授業ページで一般公開されます(無料)。
パターン・ランゲージ | - | -

竹中平蔵×井庭崇 対談:「政策言語」の提案とプロトタイピング

先週の土曜日(2010年11月27日)、僕の授業「パターンランゲージ」に竹中平蔵先生をお呼びして、対談を行った。タイトルは「政策のパターンランゲージに向けて」。授業時間2コマぶち抜きの3時間対談だ。

対談といっても、何か具体的な社会・経済のイシューについて議論するタイプの対談ではない。その場でひとつの「創造」を行ってみよう、という実にユニークな形式の対談である。

もう少し具体的にいうと、竹中先生に政策デザインについて自らの経験や考えをお話ししていただき、僕がそれをまとめていく。つまり、竹中先生が「素材」を提供し、僕がそれを「料理」するという、即興的コラボレーションなのだ。オーディエンスは、その場に立ち会い、ときにその創造に参加する。

事前打ち合わせや準備なしで、本当にその場でつくっていく。だから、本当に時間内にできるかどうか、非常にチャレンジングな試みであった。


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この対談で、僕らは何をつくったのか?

それは、僕が「政策言語」(Policy Language)と呼ぶものだ。専門的な言葉で言うと、「政策デザインのパターンランゲージ」。政策をデザインするときの問題発見と問題解決の知を言語化したものである。

「政策言語」という言葉は、僕がつくった言葉である。「政策パターン」という略し方も考えられるが、いくつかの理由があって、「政策言語」と略すことにした。その理由とは、「パターン」という言葉が専門外の人には強すぎる(「ワン・パターン」とか「固定的」なイメージが強い)という理由と、ここで強調したいのが「言語」性だという理由である。


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政策言語という新しい言語をつくる動機は、何だろうか?

それは、政策のデザインに必要な考え方のビルディングブロックを明示することで、政策をつくるプロセスを開いていきたいということだ。

現在、日本では、政策をつくっているのは、ごく一部の人たちに限られている。それ以外の人々は、政策について評価し、批判したり肯定したりすることぐらいしかできない。

そのような状況に陥った理由はいろいろあるだろうが、ここで僕が注目したいのは、政策デザインのための「道具」(ツール)の不在である。

このような背景から、「政策言語」という「政策デザインのための新しい道具」を提案し、実際にそのプロトタイプをつくってみよう、と考えたわけだ。


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それでは、政策言語では、何を言語化するのだろうか?

政策言語における各要素(パターン)には、二つの知識が埋め込まれている。まず第一に、どのような状況(Context)において、どのような問題(Problem)が生じるのか、という知識。そして第二に、その問題(Problem)をどう解決(Solution)すればよいのか、という知識。

政策をデザインするとはどういうことかを突き詰めていくと、その本質は、状況から問題を発見をし、その問題を解決することであるとわかってくる。それゆえ、政策言語では、「状況→問題」と「問題→解決」の両方を記述することになる。


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今回の対談では、まず、竹中先生に小泉内閣での経験を振り返っていただき、どのようなことが重要なポイントであったかを自由に語ってもらった。それを、僕が、状況/問題/解決のフレームに落としながら、書き出していった。


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その後、それらの要素(パターンの種)の関係性を考えていく。壁一面のホワイトボードをつかって、「感覚的に近い」要素同士を近くに配置していく。逆に「遠い」と思うものは遠ざける。何度も何度も貼り直しながら、要素間の関係をあぶり出していく(これらはKJ法の考え方/やり方に通じている)。

決して、トップダウンに「これは政策形成プロセスについてのもので、これは情報共有の話で・・・」というようなに既存の枠にはめていってはいけない。ここでやりたいのは、すでに持っているフレームに当てはめることではなく、今まで想像していなかったような、新しい関係性/新しいフレームワークを発見することなのだから。


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この関係性づくりのフェーズには、オーディエンスにも参加してもらい、一緒に悩み、考えた。要素が少ないこともあり、作業は難航したが、なんとかまとめることができた。

不思議なもので、関係性を考えるということは、全体像を模索しているように見えて、実は各要素の理解を深めるということでもある。そうなるのは、「全体は部分から成り立つが、部分は全体から影響を受ける」という循環構造があるからだ。だから、ここでやっている作業というのは、諸要素の空間的な配置替えをしながら、その循環構造に迫っていくということなのである。


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こうして、最終的には、政策言語の要素18個と、それらの関係性を紡ぎだすことができた。もちろん、これらは政策言語のほんの一部の要素にすぎず、しかもプロトタイプでしかない。今後、さらに要素を加えていくとともに、すでに出てきたものについてはブラッシュアップをしていきたい。


このようにして、今回の対談では、政策デザインのパターンランゲージである「政策言語」の考え方を提案し、そのプロトタイプをつくることができた。僕自身、かなり手応えがあったし、竹中先生にもかなり気に入っていただいたようだ。

今回の試みは、ステージでやっている本人としては「本当に時間内にできるのか」とドキドキであったが、無事できて本当によかった。竹中先生、どうもありがとうございました! そして、参加してくれたみんな、ありがとう!


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SFC「パターンランゲージ」特別対談 “政策のパターンランゲージに向けて”
対談:竹中 平蔵 × 井庭 崇
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00〜16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室

※ 当日の資料/映像は、SFC Global Campus の「パターンランゲージ」授業ページで一般公開されます(無料)。
パターン・ランゲージ | - | -

これから数ヶ月、ゲスト講演・対談が目白押し!

これから数ヶ月の間、僕の授業ではゲスト講演・対談が目白押し。知的な刺激をたくさん、どうぞ! (どれも授業の一環として開催しますが、履修者以外の聴講も歓迎です。)

以下に、その予定をまとめておきます。

■ 竹中 平蔵 × 井庭 崇 「政策のパターンランゲージに向けて」
日時:2010年11月27日(土)3・4限(13:00~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)12教室
※SFC「パターンランゲージ」の一環。当日の映像はSFC-GCで後日公開予定。

■ 江渡 浩一郎 × 井庭 崇 「創造と想像のメディア」
日時:2010年12月9日(木)4限(14:45~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室
※SFC「パターンランゲージ」の一環。当日の映像はSFC-GCで後日公開予定。

■ 池上 高志 × 井庭 崇 「動きを捉える。動きをつくる。」
日時:2010年12月11日(土)3・4限(13:00~16:15)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) 大学院棟 τ(タウ)11教室
※SFC「複雑系の数理」の一環。

■ 松川 昌平 × 井庭 崇 「計算可能性/不可能性とデザイン」(遠隔対談)
日時:2011年1月13日(木)2限(11:10~12:40)
会場:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) ε11教室
※SFC「複雑系の数理」の一環。
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“つくる数学” と “つくる授業”

今年度から担当することになったSFCの科目「複雑系の数理」も、授業のやり方について新しい試みをしている。

この科目では、複雑系の科学で行われている「つくることで理解する」(構成的理解)を実際に体験しながら、カオスなどの概念・理論を理解することが目指されている。

「つくることで理解する」ことを目指すからには、単に与えられた課題をこなすのではなく、自分たちで「つくりながら」学ぶことが望ましい。できあがった理論をただ暗記するのではなく、研究者が日頃行っているような試行錯誤をしながら前に進んでいく感覚を味わってほしい。


そこで、履修者たちが自ら授業を「つくる」という方式にすることにした。いうなれば、「つくる数学」を学ぶための「つくる授業」。

ふつう、大学の授業というのは、教員が概念を説明し、演習用プログラムも配布し、質問にも答えるというかたちをとる。しかし、このやり方で一番「学び」が多いのは、実は、授業準備をする教員であって、その話を聞く学生はその一部しか得ることができないことが多い。

そんなのはあまりにも学びたい学生に対して失礼ではないか!ということで、この科目ではまったく違うアプローチをとることにした。履修者に一番学びが多くなるような授業設計だ。具体的にいうと、履修者自身が事前に概念・理論を調べ、勉強し、他の履修者に説明する。演習用プログラムも用意し、質問にも答える。

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実際どのように進めていくのかというと、履修者は3人でチームを組み、各チームはテーマ候補から、1つを選択してもらう。あとは、自分たちの担当の回までに授業準備をし、当日、他の履修者(と僕)に向かって授業をする。

1回の授業あたり2チームが割り当たっていて、概念・理論の説明だけでなく、演習プログラムの準備、演習の進行、そして、その他のファシリテーションもすべて任されている。僕がやるのは、説明が間違っているときに指摘をしたり、必要なときに補足したり、最後にまとめの解説を行うだけ。

このように、自分たちが参加する授業を自分たちでつくる。これがこの授業のコンセプトである(ということを履修前に告知してあるので、それを了承した学生だけが履修している)。

先生が黒板に書いた数式をノートにひたすら写すのでもなく、与えられた課題を解くのでもなく、自分たちが中心となって授業を構成する。「つくる数学」を「つくる」こと無しに学ぶのではなく、「つくる数学」の授業を「つくりながら」理解する。体験としての学びではなく、行為としての学びと言ってもいいかもしれない。

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初回のテーマは、ロジスティック写像におけるカオスで、ひとつのチームがCobweb Plotについて、もうひとつのチームが初期値の鋭敏性について担当した。初回ということで、多少の混乱があったものの(自分たちの担当範囲の勘違いや、概念の理解の間違い)、おおむねうまくいったと思う。

僕の予想を超える出来事もあった。授業の演習で簡単なグループディスカッションをし、それをみんなに発表させ、面白かったグループに、賞状を授与するというチームがあったのだ。そんなこんなで、数理系の授業としては、かつてないほど盛り上がったのではないだろうか。今後も楽しみである。

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メディアとしての学習パターン:対話ワークショップの狙い

ひとつ前のエントリ「"Design Your Learning!" Dialogue Workshop @SFC」で紹介したワークショップ。「学習パターン」を使ったこのワークショップで僕らが狙ったのは、大きく分けて次の二つのこと。

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まず第一の狙いは、これから取り入れたい学習パターンのSolution(解決策)とAction(アクション)の具体的なイメージを掴んでもらう機会を提供することである。

パターン・ランゲージは抽象的に書かれているので、自分が経験していないパターンを実感することは少々難しい。パターン・ランゲージでは、あえてそのように抽象的に書いているのであるが、パターンの記述に加えて、具体的な実現例を少し知るだけでも理解度がグッと増す。

このワークショップでは、体験した人がその場で語ってくれるので、そのパターンをリアルに実感することができる。そして、ピンとこなければ質問だってできる。このような過程を経て、自分のこれからの学びのデザインに役立てることができるのだ。

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そして第二の狙いは、「語り部」として自分の体験を語ることで、自分のなかにある「学び方」とその経験を振り返る機会を提供することである。自分を「学びの達人」だと思っている人は別として、ほとんどの人は、自分の学び方やその経験は、他の人に語るほどのものではないと考えているだろう。

ところが、自分が実践した(ささやかな)学びの経験でも、学習パターンのどれかに当てはまり、その具体事例として捉え直すことができれば、それは語る価値があるものに思えてくる。

しかも、実際に話すと、体験談を知りたいと思っている人が、「なるほど!」と、うれしそうに聞いてくれる。

このように、学習パターンがメディアとなり、多くの人のなかに眠っている「学び」の経験談を、コミュニケーションの俎上にのせる。この経験は、その場でのコミュニケーションを誘発するだけでなく、自分の学び方や経験についての振り返りの思考を促すことにもなるはずだ。


全員が、聞き手であり語り部であるという対称性をもつことはすでに書いたが、学習パターンを用いたワークショップは、聞き手の立場にいても、語り部の立場にいても、学びについて考える機会となるのである。

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実は、去年から学習パターンを用いたワークショップの案については、井庭研/学習パターンプロジェクトでは議論を重ねていた。しかし当時は、「学習パターンを知ってもらう」という意図で構想していたため、面白そうなワークショップを思いつくことができなかった。

今回のワークショップは、みんながもっている(ささやかな)経験を、学習パターンの光のもとで語ってもらう、という「語り部」への着目が功を奏したと思う。


特に意識してはいなかったが、この発想の転換が可能だったのは、もしかしたら今年の春にお会いした今村久美さんの「カタリバ」の話の影響が、僕のなかに残っていたからかもしれない(今村さんにお会いしたのは『三田評論』座談会)。もしそうであるならば、出会い・語り合うということは、未来を変える可能性をもっているということになる。

この学習パターンのワークショップも、学生の誰かが「出会い系だ!」と言っていたが、そういう未来を変える「出会い」につながるならば、僕らとしてはとてもうれしい。
パターン・ランゲージ | - | -

"Design Your Learning!" Dialogue Workshop @SFC

SFCの授業「パターンランゲージ」で、初めての "Design Your Learning!" Dialogue Workshop with Learning Patterns を行った。学びのパターン・ランゲージである「学習パターン」を使ったオリジナルのワークショップだ。

ワークショップの内容は、40個ある学習パターンのなかから自分がこれから取り入れたいと思う5つのパターンを選び、すでに経験している人から体験談を聞くというものである。

人によって取り入れたいパターンも経験しているパターンもばらばらなので、全員が聞き手、かつ、語り部となる。

ワークショップの時間を短縮するため、事前準備として、前の週に次のような宿題を出しておいた。

『Learning Patterns』(学習パターン)の冊子を読み、以下のものを作成する。

(1)自分が体験したことがある「学び」のパターンについて、すべてリストアップし、各パターン100~200字の体験談/エピソードを書く。複数枚にわたる場合にはホッチキス止めで提出。

(2)自分が体験したことがある「学び」のパターンのリストを、A4用紙1枚に収まるように、なるべく大きめに印刷する。

(3)自分が今学期取り入れたい「学び」のパターンを5つ選ぶ。それを A4用紙1枚に収まるように、なるべく大きめに印刷する。

(1)は事前に一度経験を思い出しておくための準備であり、実際のワークショップでは、(2)と(3)の紙を使う。

ワークショップを始める前に、まず教室の机と椅子をすべて壁側に寄せて、真ん中に大きな場をつくる。これで場づくりは完了。


ワークショップでは次のことを行う。

参加者は「自分が体験したことがあるパターンのリスト」の紙と、「自分が今学期取り入れたい5パターンのリスト」の紙を手に持って歩く。

自分が今学期取り入れたいパターンを、すでに体験している人を探す。ただし、ふだんから話す機会がある友達は避ける(この機会がなければ話さないと思われる人と話す)。

体験している人を見つけたら、体験談を聞き、「体験談の概要」と「その人の名前」をメモする。1パターンあたり、何人も聞く。

逆に、自分の体験したパターンについて、体験談を他の人に話す。

このようにして、ワークショップ中に、5パターン分すべての体験談を集める。5パターンそれぞれ最低1人は違う人の体験談が入るようにする。

ルールは、たったこれだけ。所要時間50分。


ワークショップは、(僕らが予想した以上に)かなり盛り上がっていた。

自分の体験を生き生きと話す。そして、自分が取り入れたい「学び方」を実践している人から話を聞く。

誰でも何らかの「学び」を日々実践しているので、知らない人同士であっても、必ず何らかの共通点や、理解しあえる差異があるものだ。特に、同じキャンパスにいる学生同士なので、重なる部分はさらに多くなるはずだ。

学習パターンが、コミュニケーションのメディアとなり、ふだんはなかなか語らない/聞くことがない各人の「学び方」に関するコミュニケーションが誘発される。これが、このワークショップの肝である。

ワークショップに込めた僕らの狙いについては次の機会に書くとして、今回はパターン・ランゲージを使った新しいワークショップをやったという報告まで。

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授業関連 | - | -

「複雑系の数理」(2010年度秋学期担当科目)

次は、秋学期の僕の担当授業「複雑系の数理」の紹介です。

この授業では、「カオス力学系」の基本と、Wolframのいう「新しい科学」についてじっくり考えたいと思います。Mathematicaを使って、実際に現象を体験しながら。

授業は基本的に、履修者による発表、PCを用いた演習、僕の解説、という三部構成。履修者はただ先生の話を聞く立場なのではなく、担当範囲を先に勉強してそれを他の履修者に説明するという役割を担います。授業内での半学半教スタイル。

この授業では、ゲストとして池上高志先生をお迎えし、対談する予定です(詳細は未定)。お会いするのはずいぶん久しぶりで、いまからドキドキです。

そして、複雑系の考え方を取り入れてコンピュテーショナル・デザインに取り組んでいる松川昌平さんにも遠隔講演していただく予定。ハーバード大学GSDにいる松川さんとは、昨年僕がMITにいたときに、複雑系関連の話で相当盛り上がりました。楽しみです。

あとは、この授業を担当するのは今年が初めてなので、やりながらチューニングしていきたいと思います。



慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)総合政策学部・環境情報学部
「複雑系の数理」(木曜日2時限, 担当:井庭 崇)

■主題と目標/授業の手法
人類のながい歴史のなかで、「生命とは何か」、「知能とは何か」、そして「社会とは何か」という問いは、幾度となく繰り返されてきました。しかし、これら生命・知能・社会の原理は、現代の科学をもってしても、いまだに解明できていません。それは、生命・知能・社会という対象は複雑であることに加え、動的に自らを変化させていく存在であり、従来の概念や方法では太刀打ちできないためです。この問題に、新しい数理概念やシミュレーション手法などを駆使して研究するのが、複雑系科学です。
 本講義では、複雑系科学における思考・探究の基礎である「力学系」(dynamical systems)の考え方、「カオス」 (chaos)、および「セルオートマトン」(cellular automata)における現象について学びます。数理的な原理を理解するとともに、実際に各自のノート型パソコンを用いて体験的に理解します。ぜひ複雑系科学の面白さと可能性を味わってほしいと思います。

■授業計画

第1回 Introduction
授業の内容と進め方について説明します。

第2回 Constructive Approach and Simulation
理解したい対象のモデルを「つくって動かすことで理解する」という構成的アプローチと、コンピュータ・シミュレーションの特徴について解説します。

第3回 Chaotic Dynamical Systems (1)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第4回 Chaotic Dynamical Systems (2)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第5回 Chaotic Dynamical Systems (3)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第6回 Chaotic Dynamical Systems (4)
規則に従っているにもかかわらず不規則な振る舞いをみせる「カオス」の現象/原理/特徴について学びます。

第7回 A Hidden Order in Chaos
カオスのなかの隠れた秩序についての最新の研究を紹介します。

第8回 Cellular Automata and A New Kind of Science
格子状空間の力学系(セル・オートマトン)における状態変化のパターンと、そこから導かれる興味深い帰結について学びます。

第9回 Capturing & Generating Dynamics
「動き」(ダイナミクス)を捉える方法/生成する方法について考えます。(ゲスト対談:池上高志氏)

第10回 Capturing & Generating Dynamics (ゲスト対談:池上高志氏)
「動き」(ダイナミクス)を捉える方法/生成する方法について考えます。(ゲスト対談:池上高志氏)

第11回 The Generative Power of Chaos
カオスのもつパターン生成能力についての最新の研究を紹介します。

第12回 Cellular Automata and A New Kind of Science
格子状空間の力学系(セル・オートマトン)における状態変化のパターンと、そこから導かれる興味深い帰結について学びます。

第13回 Cellular Automata and A New Kind of Science
格子状空間の力学系(セル・オートマトン)における状態変化のパターンと、そこから導かれる興味深い帰結について学びます。(遠隔ゲスト講演:松川昌平氏)

■授業中のグループ発表
履修者は複数人でグループを組み、カオスやセルオートマトンなど複雑系の概念/理論をひとつ担当してもらいます。担当になった概念/理論について、書籍やWeb等で調べて理解し、さらに、実行可能なMathematicaモデルをつくります。そして、担当の回に、概念/理論についての解説と、実行可能なMathematicaモデルのデモンストレーションを行ってもらいます。

■授業で用いるツールについて
・授業の演習と宿題で、ノート型パソコンを使用します。各自用意してください。
・授業で用いる Wolfram Mathematica 7 は、SFC生であればサイトライセンスにより無料でインストール/使用できます(詳細はITCホームページ参照)。
・履修に際して、Mathematicaの操作方法についての事前知識は必要ありません。

■教科書
・『はやわかりMathematica 第3版』(榊原進, 共立出版, 2010)
・『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭崇, 福原義久, NTT出版, 1998)

■参考書
・『Chaos: Making a New Science』(James Gleick, Penguin, 2008)
・『Nonlinear Dynamics And Chaos: With Applications To Physics, Biology, Chemistry, And Engineering』(Steven H. Strogatz, Wes qtview Press, 2001)
・『A New Kind of Science』(Stephen Wolfram, Wolfram Media, 2002)※オンライン版
・『動きが生命をつくる:生命と意識への構成論的アプローチ』(池上高志, 青土社, 2007)
・『生命とは何か:複雑系生命科学へ』(金子邦彦, 東京大学出版会, 第2版. 2009)
・『JA—The Japan Architect:建築と都市のアルゴリズム』(Vol.77, 2010年4月号, 新建築社, 2010)

■初回授業
2010年9月30日(木)2限。SFC。
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