井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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井庭研究室シラバス(2014年度秋学期)

井庭崇研究室

Creative Media Studio


創造社会をつくるチェンジ・メイカーになる



2014年 7月10日(木)井庭研説明会(6限)@ κ11教室
2014年 7月16日(水)井庭研説明会(6限)@ κ12教室
           ※新規履修希望者は、必ずどちらかに参加してください。
2014年 7月20日(日):エントリー〆切
2014年 7月25日(金)・28日(月):面接

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【目的・内容】
井庭研 Creative Media Studio は、「創造社会をつくるチェンジ・メイカー」の活動・育成の場です。

創造社会(Creative Society)とは、「人々が、自分たちで自分たちのモノや仕組みをつくる社会」のこと。そのような創造社会の実現のためには、ガチガチに固まってしまっている現状の制度・慣習にゆらぎを起こし、閉塞的な状況・空気を打ち破ることが不可欠です。

井庭研 Creative Media Studio では、創造社会の実現のために重要なテーマや、先進的な企業との共同研究など、実践的な研究プロジェクトに取り組みます。

具体的には、創造・実践活動の秘訣を言語化する「パターン・ランゲージ」や、未来ヴィジョンを言語化する「フューチャー・ランゲージ」の作成を行い、組織・社会変革の支援と実践に取り組みます。

井庭研流の「創造社会をつくるチェンジ・メイカー」は、トップダウン的に大きく仕組みを変えるような「革命家」「改革屋」ではなく、認識や思考、コミュニケーションのあり方が変わる「新しいメディア」をつくり、それを組織・社会に導入・活用することで変化を引き起こすことを目指します。

井庭研 Creative Media Studio では、実践的な研究活動のなかで「創造社会をつくるチェンジ・メイカー」としての力を身につけます。最終的には以下のすべての力を身につけ、実践できる人を育成します。

  • どのような分野・テーマでも質の高いパターン・ランゲージを作成することができる。
  • 組織やコミュニティにパターン・ランゲージを効果的に導入・活用することができる。
  • パターン・ランゲージをつくる人を支援することができる。
  • パターン・ランゲージの思想と歴史、そしてこれからの展開について語ることができる。
  • フューチャー・ランゲージをつくることを支援することができる。

以上の力を身につけるために、井庭が主導する実践的なプロジェクトに取り組みます。また、対外的なワークショップ/セミナーでの活動や、国際学会での論文発表なども行います。

RP2PL-PR-200.jpg「創造社会」や「パターン・ランゲージ」については、書籍『パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語』(井庭 崇 編著, 中埜 博, 江渡 浩一郎, 中西 泰人, 竹中 平蔵, 羽生田 栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013)をよく読んでください。井庭研への参加の前提となります。

また、具体的な事例としては、『プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』(井庭 崇 + 井庭研究室, 慶應義塾大学出版会, 2013: 2013年度グッドデザイン賞受賞)を見てみてください。

「創造社会」については、「創造社会論」の授業映像が全7回分公開されています。この授業での対談を見れば、創造社会のイメージをつかむことができるはずです。→ SFC「創造社会論2014」対談まとめ


【受入予定人数】
新規募集は、1年生を中心に、2年生と合わせて5〜8 名程度


【履修条件】
  • 井庭研をファースト・プライオリティにおいて活動できること。
  • 井庭研でのいろいろな活動に主体的、積極的、かつ、徹底的に取り組む覚悟があること。
  • 『パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語』(井庭 崇 編著, 中埜 博, 江渡 浩一郎, 中西 泰人, 竹中 平蔵, 羽生田 栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013)を読んでいること。
  • 2014年 7月10日(木)6限、もしくは 2014年7月16日(水)6限に行われる井庭研説明会に必ず参加し、詳しい話を聞き、現役メンバーと話すこと。


    【その他・留意事項】
  • 担当教員(井庭)と他の学生メンバーと一緒に「プロジェクト」に取り組みます。いわゆる「個人研究」はありません。
  • プロジェクトのテーマは、重要度や社会的ニーズなどに応じて担当教員(井庭)が判断して設定します。


    【選考の日程】
    2014年 7月10日(木)井庭研説明会(6限)@ κ11教室
    2014年 7月16日(水)井庭研説明会(6限)@ κ12教室
               ※新規履修希望者は、必ずどちらかに参加してください。
    2014年 7月20日(日):エントリー〆切
    2014年 7月25日(金)・28日(月):面接


    【エントリー方法】
    エントリーメールの提出先: ilab-entry [at] sfc.keio.ac.jp
    メールのサブジェクト(件名): 井庭研2014秋 履修希望
    以下の内容を書いたファイル(PDFもしくはWord)を、メールに添付してください。

    井庭研2014秋 履修希望
    (1) 氏名(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真*
     *写真はスナップ写真等で構いません。説明会で個別に話した内容など、本人を特定する必要がある場合があります。
    (2) 自己紹介(適宜、写真や図などを入れてください)
    (3) 志望理由・問題意識・意気込み
    (4) パターン・ランゲージの特にどの部分に惹かれるのか(『パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語』を読んだ上で答えてください)
    (5) 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, スポーツなど, その他)
    (6) これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
    (7) これまでに履修した授業のなかで、お気に入りのもの(複数可)
    (8) これまでに所属した研究会(あれば)
    (9) 来学期、並行して所属することを考えている研究会(あれば)


    【授業スケジュール】
  • 毎週のゼミを、木曜日4・5限に行います(研究会タイプA型:4単位)
  • この他にもプロジェクトの遂行のために多くの時間を活動に当てるため、個人的な予定の調整をお願いすることがあります。


    【評価方法】
    プロジェクトへの貢献度、および研究室に関する諸活動から総合的に評価します。


    【教材・参考文献】
    『パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語』(井庭 崇 編著, 中埜 博, 江渡 浩一郎, 中西 泰人, 竹中 平蔵, 羽生田 栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013)は、エントリー前に読んでください。

    井庭研における重要文献の一覧は、こちら(井庭研 必読文献一覧) を見てください。井庭研在籍中の早い段階でこれらの文献をすべて読み、知識を身につけ、考えを深めてください。これらの文献を読んでいることが、「卒業プロジェクト」の受け入れ(3年生の終わり)に求められます。


    【関連科目】
    前提科目(推奨):「創造社会論」「パターンランゲージ」
    関連科目:「ワークショップデザイン」


    【問い合わせ】
    井庭研究室についての質問・連絡は、 ilab-entry [at] sfc.keio.ac.jp までお願いします。
  • 井庭研だより | - | -

    SFC生向けキャリアセミナー「農業という選択」

    以下のようなSFC生向けのトークライブを実施します(SFC現役生だけでなく、SFC卒業生や、取材のためのメディア関係者の方はご参加いただけます)。

    SFC生向けキャリアセミナー2014「農業という選択」
    「農」の何を変えているのか? 「農」から何を変えていくのか?
    6月27日(金)18:10~19:40 ι11(イオタ11)教室



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    SFCの卒業生が農業の世界でイノベーションを起こしているのを知っていますか? 彼ら・彼女らの取り組みは、いわゆる「農業」の範疇・常識を超え、まったく新しい風を生み出しています。これまでになかった、SFC卒業生による新しい農業のあり方を考えるセミナーです。ぜひご参加ください!

    大津 愛梨 さん(熊本県 O2ファーム)1998年環境情報学部卒
    宮治 勇輔 さん(神奈川県 みやじ豚 代表)2001年総合政策学部卒
    小島 希世子 さん(神奈川県 えと菜園 代表)2002年環境情報学部卒
      ×
    井庭 崇(総合政策学部准教授)1997年環境情報学部卒

      どんなことをしているの?
        農業での新しい挑戦ってどんなもの?
         「農」の世界で生きるってどんな感じ?
           え、起業の道も就職の道もあるんですか?
              どんな未来を目指しているんですか?

    ※学年は問いません。ぜひSFC卒の先輩たちの挑戦についてのアツい思いを聞いてみましょう!

    ※取材希望の方は、iba [at] sfc.keio.ac.jp までご連絡ください。
    イベント・出版の告知と報告 | - | -

    2014年4〜5月活動記録

    2014年4〜5月活動をまとめました。

    なんだか異様にせわしい日々だったという気がしていたわけだが、どちらかというとプロジェクト活動や論文執筆や打ち合わせなど、いま成果として表れるものではないものに多く時間を割いていたようだ。それらは今後、花ひらく。新年度のスタートとしてはかなり全力のスタートダッシュができたと思う。

    対談

  • 水野大二郎×井庭崇, 「デザイン」, 創造社会論, 2014年4月 【映像:前半/ 後半

  • 中川敬文×井庭崇, 「空間」, 創造社会論, 2014年4月 【映像:前半/ 後半

  • 小阪裕司×井庭崇, 「商い」, 創造社会論, 2014年4月 【映像:前半/ 後半

  • 市川力×井庭崇, 「教育」, 創造社会論, 2014年5月 【映像:前半/ 後半

  • 飯盛義徳×井庭崇, 「地域」, 創造社会論, 2014年5月 【映像:前半/ 後半

  • ドミニク・チェン×井庭崇, 「文化」, 創造社会論, 2014年5月 【映像:前半/ 後半

  • 四角大輔×井庭崇, 「生き方」, 創造社会論, 2014年5月 【映像:前半/ 後半

  • 河添健×中山俊宏×國枝孝弘×井庭崇 対談, 「自分の学び方」, 総合政策学, 2014年5月 【映像


    講演+ワークショップ

  • 井庭崇, 「パターンランゲージ ワークショップ ~企業の創造的成長のためのパターンランゲージ3.0~」, ウィルソン・ラーニング ワールドワイド, 2014年4月 【スライド

  • 井庭崇, 「パターンランゲージ ワークショップ ~企業の創造的成長のためのパターンランゲージ3.0~」, ウィルソン・ラーニング ワールドワイド, 2014年5月


    新しいワークショップのデザイン

  • 井庭崇 + Future Language Project, 「Future Language Workshop」, 2014年4月

  • 井庭崇 + Generative Beauty Project, 「Generative Beauty Workshop」, 2014年5月


    大学内ワークショップ

  • 井庭 崇+井庭研究室, 学びの対話ワークショップ @「総合政策学」(慶應義塾大学SFC 2014年度春学期前半), 2014年4月 ※ラーニング・パターンを用いたワークショップ

  • 井庭 崇+井庭研究室, 学びの対話ワークショップ @「環境情報学」(慶應義塾大学SFC 2014年度春学期前半), 2014年4月 ※ラーニング・パターンを用いたワークショップ

  • 井庭 崇, プレゼンテーションについての対話ワークショップ @「ワークショップデザイン」(慶應義塾大学SFC 2014年度春学期前半), 2014年4月 ※プレゼンテーション・パターンを用いたワークショップ

  • 井庭 崇 + 井庭研究室, 「地域活性化のパターン・ライティング・ワークショップ」 @ 飯盛研究会, 2014年5月


    企業向けワークショップ

  • 井庭崇+井庭研究室, Future Language Workshop, I社, 2014年5月

  • 井庭崇+井庭研究室, Future Mining Interview, R社, 2014年5月


    担当授業

  • 「ワークショップデザイン」(井庭 崇 , 慶應義塾大学SFC 2014年度春学期前半)【Syllabus / 授業スライド1 / 授業スライド2

  • 「創造社会論」(井庭 崇 , 慶應義塾大学SFC 2014年度春学期前半)【Syllabus / 資料・映像

  • 「総合政策学」(河添 健, 井庭 崇, 國枝 孝弘, 中山 俊宏, 慶應義塾大学SFC 2014年度春学期前半)【Syllabus /資料・映像

  • 「環境情報学」(村井 純, 井庭 崇, 加藤 文俊, 脇田 玲, 慶應義塾大学SFC 2014年度春学期前半)【Syllabus / 資料・映像


    書店フェア

  • 『パターン・ランゲージの世界 ―― 「つくる」ことと「つかう」こと』(井庭崇・江渡浩一郎 選書), ジュンク堂池袋本店(6FのPC・医学コーナー)

  • 『プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』フェア, 代官山蔦屋書店(1号館「哲学・宗教」コーナー) 【情報・写真
  • このブログについて/近況 | - | -

    SFC「創造社会論2014」対談まとめ(全回 映像公開中!)

    この春から新しくSFCに設置された科目「創造社会論」では、毎回ゲストの方をお呼びして、創造的な社会のあり方や生き方について語り合いました。

    今年度は「デザイン」「空間」「商い」「教育」「地域」「文化」「生き方」をテーマに掲げ、以下の方々にお越しいただきました。

    【デザイン】水野 大二郎さん(慶應義塾大学環境情報学部専任講師)
    【空間】中川 敬文さん(UDS株式会社 代表取締役社長)
    【商い】小阪 裕司さん(オラクルひと・しくみ研究所代表 / ワクワク系マーケティング実践会主宰)
    【教育】市川 力さん(東京コミュニティスクール 校長)
    【地域】飯盛 義徳さん(慶應義塾大学総合政策学部教授 / 特定非営利活動法人鳳雛塾ファウンダー)
    【文化】ドミニク・チェンさん(株式会社ディヴィデュアル / コモンスフィア理事)
    【生き方】四角 大輔さん(Lake Edge Nomad Inc.代表)


    各対談の詳細や写真、対談映像などは、以下のページに掲載されています。

  • 水野大二郎×井庭崇 対談「デザイン」
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  • 中川敬文×井庭崇 対談「空間」
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  • 小阪裕司×井庭崇 対談「商い」
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  • 市川力×井庭崇 対談「教育」
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  • 飯盛義徳×井庭崇 対談「地域」
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  • ドミニク・チェン×井庭崇 対談「文化」
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  • 四角大輔×井庭崇 対談「生き方」
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  • 創造社会論 | - | -

    【映像公開】四角大輔×井庭崇対談「創造社会論:生き方」

    創造社会論」の7人目のゲストは、四角大輔さん(Lake Edge Nomad Inc.代表)でした。

    最終かにあたる今回は、四角大輔さんと「創造的に生きる」ということについて語り合いました。とても刺激的でクリエイティブな対談でした!

    東京とニューヨークを行き来しながら、ニュージーランドの湖畔で自給自足の生活を送っている四角さん。バリバリのミュージシャンのプロデューサーから、そのような生活にシフトできたのはなぜ?

    場所の制約を受けない働き方はどういう感じ?

    自分が暮らすために必要な「ミニマムライフコスト」を知る大切さ。

    街の中でのクリエイティビティと、自然の中のクリエイティビティ。

    稼ぐ力とは違う、本当の意味で「生きていく力」。

    左脳はマーケティングの嵐にやられている。

    まず、心で感じることを大切にして、それから左脳ですごく考える。

    頭のなかでのシミュレーションは大切。

    未来イメージは、漠然としているもの。具体的であったなら、疑ったほうがよいかもしれない。

    Future Mining=未来イメージを自分の中から掘り出していく。

    みんなそれぞれいびつで、普通なんてない。

    人生は実験だ。

    一人になって静かに考える場所(シンキング・プレイス)、つまり、「ザ・フォース・プレイス(第四の
    場所)」が必要だ。

    一緒に仕事をする仲間、「ゆるギルド」。

    プロデュースで大切なこと。

    などなど、かなり面白い話がたくさんできました!
    (上のリストは、四角さんが話したものと僕が話したものが混じっています。)


    創造社会論 第13回(映像&スライド)
    http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/flv/flv_play_gc.cgi?2014_38368+13+1

    創造社会論 第14回(映像)
    http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/flv/flv_play_gc.cgi?2014_38368+14+1


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    創造社会論 | - | -

    【映像公開】ドミニク・チェン×井庭崇対談「創造社会論:文化」

    創造社会論」の6人目のゲストは、ドミニク・チェンさん(株式会社ディヴィデュアル / コモンスフィア理事)した。

    「クリエイティブ・コモンズ」(CC)の話から始まり、「TypeTrace」をはじめとした開発ソフトウェアの紹介へ。そこから、ドミニク・チェンさんが重視しているヴァレラらの「autopoiesis」(オートポイエーシス)や、ギブソンの「active touch」(能動触)、エリクソンらの「generativity」(世代継承性)の概念へと移り、「始まりもなければ終わりもない」「学習は終わらない」「読むことは書くこと」という話に。

    さらに、創造とはどういうことか、創造とコミュニケーションの関係はどうなっているのかについて、僕(井庭)の創造システム理論の紹介も交えながら語り合った。

    変えることが難しい既存の制度の上に新たなレイヤーを重ねてそこで創造の連鎖が起きる仕組みをつくるということ、そして、対象の内側に入ってシステムの改変するということについて、考察・議論のための重要な一歩を踏み出した対談でした。まだまだ語り合い足りないので、次の機会もぜひつくりたいと思います。


    創造社会論 第11回(映像&スライド)
    http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/flv/flv_play_gc.cgi?2014_38368+11+1

    創造社会論 第12回(映像)
    http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/flv/flv_play_gc.cgi?2014_38368+12+1

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    【映像公開】飯盛義徳×井庭崇対談「創造社会論:地域」

    創造社会論」の5人目のゲストは、飯盛 義徳さん(慶應義塾大学総合政策学部教授 / 特定非営利活動法人鳳雛塾ファウンダー)でした。

    飯盛(いさがい)さんは、1990年代後半から、「自分で考えて、自分で決めて、行動できる人」を育てる「鳳雛塾」を立ち上げ、ケースメソッドを中心に人材育成に取り組んできました。鳳雛(ほうすう)というのは、未来の英雄という意味で、地域のリーダーになるような人を育てていきたいという思いがあったといいます。

    ケースメソッドのケースも、当初はビジネススクールで用いられるようなものを使っていたのですが、やはり自分たちと遠い大規模なビジネスのケースだとリアリティがないということで、自分たちの教材、しかも映像も駆使した新しいケース教材を開発してきたということです。

    現在、全国に「○○鳳雛塾」というのが広がっており、これから連携も進んでいくと思われます。対談では、ケースメソッドとパターン・ランゲージの類似点や違いなども多く語り合いました。


    創造社会論 第9回(映像&スライド)
    http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/flv/flv_play_gc.cgi?2014_38368+09+1

    創造社会論 第10回(映像)
    http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/flv/flv_play_gc.cgi?2014_38368+10+1


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    創造社会論 | - | -

    【映像公開】市川力×井庭崇対談「創造社会論:教育」

    創造社会論」の4人目のゲストは、市川力さん(東京コミュニティスクール校長)でした。

    「探究するコミュニティづくり」のために「自ら探究し続ける」「おっちゃん」市川さんと、これからの学びの場・教育のあり方についてアツく語り合いました。とても重要な話ばかりで、めちゃくちゃ面白かった!

    ●教育のWhat(何をやるのか)やHow(どうやるのか)ではなく、Why(なぜやるのか)を考えたい

    ●スクールフリー=脱『学校』的教育観

    ●みんなが頭グルグル、体イキイキ、心ワクワク

    ●「生成的な参加者」(Generative Participant, Generator)

    ●自己肯定感は、自己中から始まる

    ●ミッションの段階的発展「My Discovery」→「Your Discovery」→「Our Discovery」の My から
    Your にはどうやったら上がることができるのか?

    ●面白がる

    ●言葉の重なりから発想が広がる「だじゃれ発想法」

    ●キラキラワードの「個性」ではなく「変」が重要

    ●「みんなのそれぞれのマイノリティなところ」

    ●「偏差値」ではなく「変さ値」

    ●普通から差異をつくる

    ●ソクラテスのハチャメチャ感が重要

    ●挑発文化

    ●半教半X

    ●探究コミュニティ(TQ Community)

    ●探究者は偶然を必然にしていく


    創造社会論 第7回(映像&スライド)
    http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/flv/flv_play_gc.cgi?2014_38368+07+1

    創造社会論 第8回(映像)
    http://gc.sfc.keio.ac.jp/cgi/flv/flv_play_gc.cgi?2014_38368+08+1


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    創造社会論 | - | -

    パースのプラグマティズムからみたパターン・ランゲージ

    パースの「プラグマティズム」と「探究」

    前回の考察に引き続き、チャールズ・S・パーズの「プラグマティズム」と「探究」の考え方から、パターン・ランゲージについて考えてみたい。

    今回は、『パースのプラグマティズム』(伊藤邦武)と『プラグマティズムの思想』(魚津郁夫)を手引きとして、パースのプラグマティズムと探究についてみていくことにしたい。

    プラグマティズムでは「行為」と「思考」のむすびつきに注目する。その特徴を伊藤は次のようにまとめている。多くのプラグマティストが掲げるテーゼは「人間の『思考』とはそれ自体で意味を生み出す独立した内的過程ではなくて、むしろ本質的に『行為』と結びついたものである」ということである。

    パースは、「思考のはたらきは、疑念(doubt)という刺激によって生じ、信念(belief)が得られたときに停止する。したがって信念をかためることが思考の唯一の機能である」と考え、その疑念から信念へと到達しようとする努力を「探究」(inquiry)と名づけた。

    ここでいう「疑念」(doubt)とは、なんらかの問いを発することであり、信念(belief)とは問いが解決されていることである。

    「疑念」は、「我々がそこから自己を解放し、信念へいたりつこうとする、不快で、不満足な状態」であり、そこから解決へと、すなわち信念の確定へと向かうことを促す効果をもつ。

    「信念」は、パースの言葉を借りると「私たちの知的生活というシンフォニーを構成するひとつの楽句をくぎる半終止」だということができる。

    しかしながら、「信念は行動のための規則(a rule for action)であって、この規則を行動に適用すればさらに疑念が生じ、したがってまた思考が生じるので、信念は思考の終着点であると同時に新しい出発点である」という側面も併せ持っている。

    別の言葉でいうならば、信念とは、「我々の本性の内に我々の行為を決定する何らかの習慣が確立していること」(パース)であり、「信念は我々の欲求に応じて何らかの行為を遂行せよという指針を与える効果を有する」(伊藤)のである。

    それゆえ、「疑念」から始まり、「探究」によって「信念」の確定がなされた後は、「行為」によって新たな「疑念」が生じ……ということが繰り返されることになる。

    パースは「探究の唯一の目的は信念の確定である」という。これは、探究は「真理(truth)の把握を目指すのではなく、信念、つまり行為への傾向性(習慣)の確定を目指す」(伊藤)ということを意味している。

    そしてパースは、「人間認識は信念の確定のための認識作用であるかぎり、我々の実際的行為への関わりを明示したものとなって初めて明晰なものとなり得る」とした。これが、パースのいうプラグマティズムの格率(=実践の原則)である。

    ここで、「探究」で目指される信念というのは、行為への傾向性、つまり、習慣のことであるから、思考を明晰にするということは「その思考が究極的にはいかなる習慣を規定するのかを明らかにすることである」(伊藤)といえる。

    パースは言う。「我々の認識対象について、それが何らかの実際的意味を持つであろうと思われるような効果としてどのような効果を有すると思われるか、を考察してみよ。その時、これらの効果についての我々の認識が、その対象についての我々の認識のすべてである」と。

    "Consider what effects, which might conceivably have practical bearings, we conceive the object of our conception to have. Then, our conception of these effects is the whole of our conception of the object." (C.S.Peirce, "How to Make Our Ideas Clear", 1878)

    このプラグマティズムの格率にもとづくならば、「対象認識の形式は、或るなされるであろう行為という条件に対して、その行為が事実なされるとき(つまりその条件が真のとき)、その結果として生じるであろう観察可能な反作用的現象がいかなるものか、を示すものでなければならない。」(伊藤)

    それはつまり、「明晰化された命題は、条件 - 帰結の形式を持つ複文である」(伊藤)ということである。その形式であれば、行為と観察可能な結果によって実際に成り立つのかどうかが明らかになる。

    また、探究が最終的に目指す「習慣」は、どのように同定するのかというと、「習慣の同一性とは、様々な状況下にあって、すなわち単に生ずるであろうことが予想される状況のみならず、いかに非蓋然的であれ恐らくは生ずることが可能であろうような状況をも含めた全状況下にあって、それがどのように我々を行為に導くか、ということに存している。習慣が何であるかは、それが我々の行為を『いつ』『いかに』生ぜしめるかにかかっている」(パース)という。

    このことを伊藤は、「この『いつ』とは、個々の行為の誘発因としての知覚的事実がいかにあるか、ということであり、『いかに』もまた、行為の目的がいかなる感覚的結果の内で実現されるか、ということである」と、わかりやすくまとめている。

    最後に、「習慣」についてもう少しだけ言及しておきたい。習慣にはいろいろな種類・強度のものがあるので、「我々の認識作用がその効果として習慣を形成するということは、すでにあった習慣の種類を変えるか、その強度を変えるか、である」(伊藤)と言える。

    パースは、習慣は生まれつきではなく後天的に獲得されるものだとして、「同種の行動が、知覚と想像の同じような結合のもとで、数多く繰り返されるとき、そこから、未来における同様の状況において、現実に同様な仕方で行動する傾向―これが【習慣】である―が生まれる」という。

    「そしてさらに―この点がまさに重要なのであるが―、人は誰でも、自分自身の習慣そのものを変更することによって、自分自身を多少なりとも統御しているものである。しかも、このような作用を行おうとしても、外的世界において、行おうとする種類の行動を実際に繰り返すことができないような状況において、………内的世界における繰り返し―想像による繰り返し―は、それが直接的な努力によって十分に強化されるならば、外的世界における繰り返しと同じように、習慣を形成し、しかも、この習慣が、外的世界における実際の行動に作用する力をもつ」と、パースは言う。


    プラグマティックな探究を支援するパターン・ランゲージ

    パースのプラグマティズムと探究の考え方にもとづいて、パターン・ランゲージについて考えてみたい。ここでは主に、人間行為のパターン・ランゲージ(パターン・ランゲージ3.0)に焦点を絞って考えることにしたい(ただし、建築やソフトウェアについても同様のことがいえるはずである)。

    まず、パターン・ランゲージ(3.0)が目指すのは、行為の傾向性、すなわち習慣の変化である、ということができる。

    パターン・ランゲージの個々のパターンがもたらすのは、その場での短期的な行為の変化ではなく、中長期的な習慣の変化である。言い換えるならば、そのパターンを読んでその場で「できる」ようになることに主眼が置かれているわけではないということである。

    パターン・ランゲージのパターンは、ある一定の知覚と想像の結合のもとで繰り返し行為を行うことで、習慣の形成を促すのである。

    だからこそ、パターンはContext - Problem - Solution - Consequenceという「条件 - 帰結の形式」で書かれるのである。そして、「個々の行為の誘発因としての知覚的事実」と「行為の目的がいかなる感覚的結果の内で実現されるか」が書き込まれる。

    パターンは、信念と同様に「行動のための規則(a rule for action)であって、この規則を行動に適用すればさらに疑念が生じ、したがってまた思考が生じる」のである。

    パターンのSolution(Action)を実行すると、その結果が生じるが、そのなかには副作用もあり、それは新たな疑念を生み、他のパターンのContextへと導かれる。パターン・ランゲージは、そのようなパターン同士のネットワークになっている。

    そしてこのような、習慣の形成は外的世界における繰り返しのみならず、内的世界における繰り返しによっても「直接的な努力によって十分に強化されるならば」可能となる。このように、外的行為のみならず、認識を変えることを指針とするものも、パターン・ランゲージ3.0のパターンのなかにはある。

    こうしてパターン・ランゲージ(3.0)は、その人の状況における「疑念」から始まり、パターンを用いた「探究」によって「信念」(a rule for action)の確定に至り、実際に「行為」することによって新たな状況の「疑念」が生じ…ということを続けていくことを支援するのである。

    パターン・ランゲージ(3.0)の根底には、まさにプラグマティズムの考え方、すなわち、人間の「思考」は本質的に「行為」と結びついているという考え方があるとみて間違いないだろう。だからこそ、「行為」を支援するために「思考」のメディアである「言語」を用いることが適切だと言えるのである。


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    パースのアブダクションとパターン・ランゲージ

    パースの「アブダクション」

    井庭研の必読文献の一つに『アブダクション:仮説と発見の論理』(米盛裕二, 勁草書房, 2007)がある。プラグマティズムの創始者であるチャールズ・サンダース・パースの提唱する推論概念「アブダクション」をわかりやすく魅力的に紹介している本である。今回はこの米盛裕二『アブダクション:仮説と発見の論理』を手引きとして、アブダクションとパターン・ランゲージの関係について考えてみたい。

    パースは、推論の種類として従来から言われてきた「演繹」(deduction)と「帰納」(induction)に加えて、「アブダクション」(abduction)という推論形式を見出し、それが科学的思考において重要な役割を担うと主張した。

    「推論」とは「いくつかの前提(既知のもの)から、それらの前提を根拠にしてある結論(未知のもの)を導き出す、論理的に統制された思考過程のこと」(米盛)である。その推論の種類として、従来は「演繹」と「帰納」が言われてきたが、パースはこれに「アブダクション」というものを加えたのだ。

    アブダクションは、「ある意外な事実や変則性の観察から出発して、その事実や変則性がなぜ起こったかについて説明を与える『説明仮説』(explanatory hypothesis)を形成する思惟または推論」(米盛)である。

    このことから、パースは「アブダクション」を「リトロダクション」(retroduction)という言葉で表現することもある。結果から原因への遡及をする推論だからである。

    パース自身が取り上げている例を紹介しよう。「わたくしがある部屋に入ってみると、そこにいろいろな違う種類の豆の入った多数の袋があったとする。テーブルの上には手一杯の白い豆がある。そこでちょっと注意してみると、それらの多数の袋のなかに白い豆だけが入った袋が一つあるのに気づく。わたくしはただちに、ありそうなこととして、あるいはおおよその見当として、この手一杯の白い豆はその袋からとり出されたものであろうと推論する。この種の推論は【仮説をつくること】(making a hypothesis)と呼ばれる」(パース)

    つまり、この例では、以下のような推論をして、観察結果を説明するための仮説を形成している。

    (1)この袋の豆はすべて白い(規則)、
    (2)これらの豆は白い(結果)、
    (3)ゆえに、これらの豆はこの袋の豆である(事例)

    "Rule. - All the beans from this bag are white.
    Result. - These beans are white.
    ∴Case. - These beans are from this bag." (Peirce, 1878)

    "This sort of inference is called 【making an hypothesis】. It is the inference of a 【case】 from a 【rule】 and 【result】." (Peirce, 1878)

    このように、アブダクションは観察された結果や既知の規則から仮説を生み出すため、拡張的(発見的)な機能をもつ推論だということができる。だからこそパースは「アブダクションは説明仮説を形成する方法(process)であり、これこそ、新しい諸観念を導入する唯一の論理的操作である」という。

    このように、アブダクションは拡張的(発見的)な機能をもつが、可謬性(かびゅうせい)の高い推論でもある。つまり、形成した仮説が間違っている可能性があり得るということである。先ほどの例でいえば、手にとった豆が、目の前の袋からではなく他の場所から持ち込まれたものであったかもしれない。

    しかしながら、可謬性の高い推論であるとはいえ、仮説はでたらめにつくられるのではない。「アブダクションはたんなる当てずっぽうな推測ではなく、それはある明確な理由または根拠―つまり『そのように考えるべき理由がある』、『そのように考えるのがもっとも理にかなっている』、『そのように考えざるをえない』というふうに納得できる合理的な理由または根拠―にもとづいて、仮説を提案しています。このようにアブダクションは意識的に熟慮して行われる思惟(reasoning)であり、そういう意味で論理的に統制された推論(inference)である」(米盛)。

    パース自身も「仮説(アブダクション)はあらゆる意味において推論である。正当なものであれ不当なものであれ、ある理由があって採用されているのであり、そしてその理由は、そのようなものとして考えられる場合には、仮説に対してもっともらしさを与えているからである」という。

    このように、アリストテレスによる演繹の論理学と、F・ベーコンとJ・S・ミルらによる帰納の論理学に加えて、パースによってアブダクションによる探究の論理学が創設・確立されたのである。


    パターン・ランゲージを「つかう」過程におけるアブダクション

    ここで考えてみたいのは、パターン・ランゲージとアブダクションとの関係である。第一に、パターン・ランゲージがどのようなアブダクションをもたらすのか、第二、パターン・ランゲージをつくるときにはアブダクションがどのように行われているのか、ということである。

    僕はパターン・ランゲージを知識記述・共有の方法としてではなく、語り・対話のメディアとして用いている。これは、パターン・ランゲージの分野のなかでは珍しい使い方で、僕が2010年から始めた独自の使い方である(最近、国際学会等でも面白がられ始めている)。

    例えば、ラーニング・パターンを用いた対話のワークショップでは、準備として40パターンをざっと読んで、自分に経験があるかをチェックするということを行う。つまり、不可分な全体としての「経験」をパターンによって読み解くという作業をする。まず、ここがアブダクションに関係する。

    そこでは、学びに関して、自分の経験のなかでよい結果を生み出した原因が、ある特定のパターンと同様のことを行ったからではないかと推論する。この推論は間違っているかもしれないが、パターン記述との一致からもっともらしい仮説であると判断される。これが、パターンによるアブダクションである。

    これは自分の経験に対してだけでなく、他者の行いに対する推論としても行われる。あるTEDトークをみて、その伝え方の巧みさをプレゼンテーション・パターンで読み解くとしよう。その結果を生み出しているのが、どのパターンたちなのかを考えるとき、そこにもアブダクションが行われる。

    あるいは、一緒に活動しているプロジェクトのメンバーが行っている行為がどのような意味をもっているのかを、コラボレーション・パターンを用いて理解するということがあるとしよう。ここでも、パターンによって、その行為の理由を推論することができる。

    パターン・ランゲージの個々のパターンは、状況→問題→解決→結果というセットで書かれている。それゆえ、ある観察結果から、個々のパターンを用いて遡及的なリトロダクション=アブダクションによって、その原因を推論するということを支援することができる。

    しかもパターン・ランゲージでは、個々のパターンだけでなく、体系だったランゲージとして、いきいきとした質(名づけえぬ質)を実現できるようにまとめられている。そのため、全体的なレベルにおいても、質を実現するためにどうすべきなのかをパターン群によってリトロダクションすることができる。

    すでに見てきたように、「アブダクション」(abduction)=「リトロダクション」(retroduction)とは、可謬性を伴いながらも、もっともらしい蓋然的な仮説をつくる推論である。

    有馬道子は『パースの思想:記号論と認知言語学』において、次のようにわかりやすくまとめている。「アブダクションとは、『規則(rule)』と与えられた『結果(result)』からコンテクスト(context)を参照しながら『事例(case)』についての推論をおこなうことである。私たちは世界を知覚をとおして経験するが、その経験された『結果』についてそれをある一定の『事例』として判断するのは、コンテクストを参照しながらそこに何らかの『規則』を適用することによって『おそらく…であろう』という蓋然性としての推論をおこなうことであるということ」なのである。

    つまり、「わたしたちは知覚を『解釈する』ことによって『おそらく…であろう』という仮説的推論を下すことによって、経験を知るということになる」(有馬)のであり、「パースの考えの基調をなしているのは、『解釈』という推論によって世界を知るということ」なのだという。

    (それゆえパースの記号論は、「対象」「記号」「解釈項」の三項関係で考えられているのであるが、この話は別の機会にすることにしたい。)


    科学的な発見の過程におけるアブダクション

    パターン・ランゲージをつくるときにも、仮説形成の推論であるアブダクションが重要な役割を担う。そのときは、科学的思考における仮説形成と同様のことが起きていると僕は考えている。そこで、まずは科学的な発見の過程におけるアブダクションについて見てみることにしよう。

    パースのアブダクションは、次のような推論だということもできる。驚くべき事実Cが観察されたとき、もしAが真のときCが当然成り立つのであれば、Aが真であると考えることが理に適っている。科学における発見の際には、このようなアブダクションが起きているとパースは言う。

    "The surprising fact, C, is observed; But if A were true, C would be a matter of course. Hence, there is reason to suspect that A is true." (Peirce, "Pragmatism as the Logic of Abduction", 1903)

    米盛裕二『アブダクション:仮説と発見の論理』は、科学的発見におけるアブダクションの例として、ニュートンによる万有引力の法則の発見を取り上げている。ニュートンは、「諸物体は支えられていないときには落下する」という事実から「質量はたがいに引力を及ぼし合う」という法則を発見した。

    米盛は、この「万有引力の法則の発見は、われわれが直接観察した事実(諸物体は支えられていないときは落下するという事実)から、それらの事実とは違う種類の、しかも直接には観察不可能な「引力」という作用を想定する仮説的な思惟による発見」であると指摘する。

    つまり、「こうした理論的対象の発見は観察データから直接的な帰納的一般化によって導かれるものではなく、それは諸物体の落下の現象を説明するために考え出された『仮説』による発見」なのである。

    なので、「諸物体の落下の現象をどれだけ周到に観察し一般化してみても、創造的想像力、仮説的思惟の働かないところでは、直接には観察不可能な「引力」という理論的仮説的対象というものを考えつくことはできない」のであり、ここにアブダクションの推論が不可欠なのである。

    アインシュタインのいう「経験をいくら集めても理論は生まれない」というのは、まさにこのことを指しているといえる。

    このことは、ケプラーの法則の発見にも当てはまる。ケプラーは、ティコ・ブラーエが長年にわたって集めた惑星の運動についての膨大な観察データをもとにして、何度も仮説を立て直しながら試作を重ね、楕円運動の仮説に行きついている。

    N・R・ハンソンも、ケプラーについて「彼は何度もその事実に戻らねばならなかった。事実群から仮説を立ててみる。また事実に戻ってそこから別の仮説を立ててみる。この繰り返しであった。そして最後に、楕円運動の仮説に至った」といい、その過程を理解するにはパースの考え方が重要だと述べている。

    つまり、結果から原因への遡及推論であり、パースのいうリトロダクション(retroduction)=アブダクション(abduction)である。ケプラーはまさにそのような遡及的な推論を行ったのである。

    「ケプラーは惑星の運動に関する観察結果から、その観察結果をもたらした惑星の運動へと遡及推論を行ったのです。つまり、ティコ・ブラーエの観察結果が正しいとしたうえで、それらの観察結果を説明しうるように考えようとすると、惑星はどのように運動していなくてはならないか、観察結果に合うような惑星の運動とはどういうものでなくてはならないか、というふうに遡及推論を行った」(米盛)のである。

    このことは、ヘンペルの次の指摘とも合う。「データから理論にいたるには創造的想像力が必要である。科学的仮説や理論は、観察された事実から【導かれる】のではなく、観察された事実を説明するために【発明される】ものである」。

    パースも次のように述べている。「人は諸現象を愚かにじろじろみつめることもできる。しかし想像力の働かないところでは、それらの現象は決して合理的な仕方でたがいに関連づけられることはない」と。仮説を形成するための論理的操作を含む推論、すなわちアブダクションが不可欠なのである。

    このように、科学的な発見において、「アブダクションは正しい仮説の形成を目指して意図的に用いられる方法であり、したがって十分に意識的に熟慮して用いられるなら、それは論理的に統制された思惟の方法であり、科学的発見のためのすぐれた推論の方法となりうる」(米盛)のである。


    パターン・ランゲージを「つくる」過程におけるアブダクション

    拡張的・発見的な思考においてアブダクションが重要であることは、科学においてだけでなく、パターン・ランゲージにおけるパターンの発見にも当てはまると、僕は考えている。

    まず、パターン・マイニングの際に、ある結果(いきいきとした質の実現)をもたらす要因(パターン)はなにかを突き止めるとき、そこには帰納的一般化とは異なるアブダクションによる推論が不可欠となる。

    そして、パターンにおける「解決」(Solution)からそれが解決する「問題」(Problem)を特定するとき、あるいは、問題が生じる「状況」(Context)や背後に働く力(Forces)を特定するときにも、アブダクションによる推論が不可欠となる。

    パターン・ランゲージのパターンにおける「問題」「状況」「力」は観察できる対象ではなく、事例の帰納的一般化では得ることができない。それらは、アブダクション=リトロダクションによって遡及的に考えられる必要がある。

    もちろん、アブダクションであるから、パターンそのものも、その「問題」「状況」「フォース」も仮説(hypothesis)にすぎない。理に適ってはいて、もっともらしいものであるが、仮説にすぎないのである。

    このことは、アレグザンダーがパターンを「単なる仮説にしかすぎない」と看做していることと合致している。パターンは調査やつくり込みが不完全であるから仮説なのではなく、アブダクションによってつくられるために根源的な意味で仮説なのである。

    それゆえ、観察・経験からパターンを捉えるということは、機械的な作業では断じてないのである。パターンを捉えるということは、創造的想像力を駆使しながら論理的操作を行うという知的・創造的な営みなのである。パターンも、ヘンペルが科学的仮説や理論について述べた「観察された事実から【導かれる】のではなく、観察された事実を説明するために【発明される】ものである」ということになる。

    パターン・コミュニティでよく、「パターンは発明(invent)するものではなく、発見(discover)するものである」ということが言われるが、この言葉を聞くときに、僕はいつも違和感を感じるのは、以上の理由による。

    もちろん、アブダクションは「発見の論理」であると言われるように、発見の仮説形成における拡張的推論である。それゆえ、「発見(discover)するものである」に含まれるわけであるが、他方で本来は発明(invent)の要素も多分に含まれているはずなのである。

    それゆえ、「発明」か「発見」かという二分法はミスリーディングである。そのため、僕はこの二分法で語ることはしないようにしている。パターンを捉え・書くということは、(アブダクションの意味で)「発見」であり「発明」なのである。

    以上見てきたように、パターンをつくるときにも、それを用いるときにも、アブダクションによる遡及的な推論が重要な役割を担っている。このことから、パターン・ランゲージはプラグマティズムで言われる「探究」(inquiry)のためのメディアであるということもできるだろう。

    プラグマティズムの「探究」の概念とパターン・ランゲージの関係については、別途考えてみたいと思う。(なお、「探究」と同様のことを別の概念体系で論じたのが「自生的秩序の形成のための《メディア》デザイン──パターン・ランゲージは何をどのように支援するのか?」(井庭崇, 2009)である。そこでは、発見の連鎖にパターンがいかに寄与するのかを考察した。 )

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