井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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井庭研(2008年度春学期)スタート!

2008SpSeminar200.jpg 2008年度春学期の井庭研究会がスタートした。今学期から、ゼミ生全員が火曜と金曜の両方のゼミに参加するという形式に変わった。火曜日は輪読、金曜日は研究レビューの日として、週2回集まる。以前からこの形式にしたかったので、ようやく実現したという感じだ。新規生は3人。全体としては、学部生が15人、修士が2人という構成だ。

今学期輪読する文献は、以下のとおり。これらの文献を読んで、「現代社会の捉え方」について学び、自らの研究の位置づけ・意義を魅力的に語れるようになることを目指す。また、井庭研の重要概念のひとつである「コミュニケーションの連鎖」とその支援について理解を深めるために、広義の「メディア」論を学んでいく。どれも井庭研のテーマにとってとても重要な本ばかり。来週から、週1冊ペースの「春の輪読マラソン」がスタートする。

【井庭研 2008年度春学期 輪読文献リスト】
● 「『創発社会』の到来とビジネス・パラダイムの転換」(井関 利明, 『創発するマーケティング』, DNP創発マーケティング研究会 編著, 日経BP企画, 2008, p.11~p.82)
● 「ディジタル・メディア時代における「知の原理」を探る: 知のStrategic Obscurantism」(井関 利明, 『メディアが変わる知が変わる』, 井上輝夫, 梅垣理郎 編, 有斐閣, 1998, p.3~p.40)
『ハイコンセプト:「新しいこと」を考え出す人の時代』(ダニエル・ピンク, 三笠書房, 2006)
『シュンペーターの経済観:レトリックの経済学』 (塩野谷 祐一, 岩波書店, 1998)
『リキッド・モダニティ:液状化する社会』(ジークムント・バウマン, 大月書店, 2001)
『社会学的想像力のために:歴史的特殊性の視点から』(伊奈 正人, 中村 好孝, 世界思想社, 2007)
『声の文化と文字の文化』(ウォルター・J. オング, 藤原書店, 1991)
『想像の共同体:ナショナリズムの起源と流行』(ベネディクト・アンダーソン, 定本版, 書籍工房早山, 2007)
『〈メディア〉の哲学:ルーマン社会システム論の射程と限界』(大黒 岳彦, NTT出版, 2006)
『動きが生命をつくる:生命と意識への構成論的アプローチ』(池上 高志, 青土社, 2007)
『世界が変わる現代物理学』(竹内 薫, ちくま新書, 2004)
● 「経済学から歴史学中心の社会科学へ」(金子邦彦, 安冨歩, 『経済学の現在2』, 吉田雅明 編, 日本経済評論社, 2005, p.97~p.126)
『社会を越える社会学:移動・環境・シチズンシップ』(ジョン・アーリ, 法政大学出版局, 2006)

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井庭研だより | - | -

SFCにおける学びの真髄

新年度・新学期が始まった。新たな気持ちで、スタートしたいと思う。

4月に入ってまず最初にやったことは、キャンパス・ライフ・ガイダンス(CLG)において行った「新入生へのメッセージ」という講演だ。午前と午後の2回行ったので、総合政策学部と環境情報学部の新入生約900人に話したことになる。「SFCを 1万倍 楽しむ方法」と題した講演では、次のようなことを語った。

まず、SFCがか掲げる「研究プロジェクト中心」とはどういうことか。ここでいう「研究」とは、いわゆる学術研究だけでなく、創作や社会実践をも含む、広い概念であるということ。そして、SFCでの学びの真髄が、授業の履修が中心なのではなく、「研究」を絶えず行うという「研究プロジェクト中心」であるということ。僕の言葉でいうと、「アウトプットから始まる学び」ということだ。既存の知識を自分にインプットすることによって学ぶのではなく、自分からアウトプットしていくことによって学ぶということである。そのためには、主体性が求められる。「SFCはみんなを大人扱いします。」――― 1年生から自分の歩く道を考えながら決めていく、つまりセルフ・プロデュースが求められているのである。

このことをさらに考えるために、講演では3つのキーワードを掲げた。「創造」、「先端」、「方法」の3つだ。「創造」(innovation)とは、何かをつくったり実践したりするということ。アウトプットを生み出すということだ。「先端」(frontier)とは、最先端の領域・問題に取り組むということ。すでに誰かが行っていることをなぞっても意味がない。「車輪の再発明」ではなく、まだ誰も成し遂げていないことに取り組むことが重要だということ。「方法」(method)とは、「どのように取り組むのか」という方法を意識し、分野を超えて「方法」を探究し、他分野の方法を移転したり、新しい方法を生み出したりすることが重要だということ。SFCは既存のディシプリン(学問分野)に依存しているわけではないので、学問の間を自由に行き来し、「方法」をディシプリンから解放し、新しい分野に適用するということこそ、SFCの強みであり、取り組むべき課題だと僕は考える。取り組みたい問題に合わせて「方法」を適切に選択するという力、そして新しい「方法」をつくりだす力を養ってほしい。

WhatIsResearch「創造」、「先端」、「方法」というキーワードをつかって、「研究」を語ると左図のようになる。「研究」とは、「先端」領域において「創造」するということである。そして、それを実践するためには「方法」が必要なのであり、「方法」自体のイノベーションも求められる。実はこのような考えのもと、SFCの現行カリキュラムは、研究プロジェクトを中心に、「創造」支援系と「先端」支援系の授業を配置した構造になっている。

SFCcurriculum 「研究プロジェクト中心」≒「アウトプットから始まる学び」というのは、このような「研究」を、学部の後半からではなく、学部1年生から行うということである。その点において、SFCは明らかに他の大学・学部とは異なる学びのスタイルをとっている。1・2年生は一般教養でインプットして3・4年生からゼミに入り、卒論でアウトプットする、というスタイルではないのだ。入学したらすぐ「いまから」「いつでも」アウトプットする、というのがSFCのスタイルだ。これが「アウトプットから始まる学び」の真髄である。私の研究会では、学部2年生でも学会発表(国内外)を行う。それは、1年生から「研究」(先端領域における創造)に取り組んでいるからこそ可能となるのだ。

以上のことを、講演の最後に、聴いている1年生に引き寄せて「5W1H」で表現した。

今日から 【When】
SFCで 【Where】
君(たち)が 【Who】
先端的な研究を 【What】
個人的関心+社会的ニーズにもとづき 【Why】
新しい「方法」によって 【How】
行ってください。

これが、何よりも学生のみんなに伝えたいことなのだ。「いまから」「いつでも」アウトプットをしてほしい。そこからSFCでの学びが始まる。

「入学おめでとう! SFCで楽しみ、SFCを面白くしてください。」
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