井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(連載まとめ)

連載「モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築」のまとめ。


モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(1)
Introduction

モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(2)
1. 米国での研究生活で感じた自分の英語力の低さ
1.1 スピーキング
1.2 リスニング
1.3 ライティング

モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(3)
2. 日本にいながら英語力を高める方法
2.1 「言語のシャワー」を浴びる環境をつくる
(オーディオブック / 講演映像 / 授業映像 / テレビ映像 / ラジオ音声)

モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(4)
2.2 表現のストックをため込む/使う
(表現を学ぶための読書 / 適切な言葉の選び方を学ぶ / より適した表現を模索しながら書く)

モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(5)
2.3 「音」と「リズム」の習得

モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(6)
2.4 英文構成の瞬発力をつける
2.5 即興的にバリエーションを生み出すための文法を身につける

モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(7)
3. 多面的なアプローチによるスパイラルアップ


※『人工知能学会誌』に書いたエッセイ「モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築」(井庭 崇, , Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに大幅に加筆・修正。
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モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(7)

3. 多面的なアプローチによるスパイラルアップ

日本で書店に行って、英語学習書のコーナーに行くと、実に多くの本が出版されている。それぞれ独自性を出すために、「これだけ覚えればOK」、「この基本文法さえわかれば問題ない」、「発音が悪くてもこれで通じる」など、一部の範囲/能力だけを強調するようなものが多い。しかし、それらは、学び始めるときの心理的な壁を低くしてくれるものの、信じ過ぎない方がいいように思う。

英語力を伸ばそうとするならば、すべてをやり、多面的に向上させていく必要があるからである。単語も、熟語も、文法も、構文も、スタイルも、発音/イントネーションも、英語特有のリズムも、ライティングも、リーディングも、リスニングも、スピーキングも、ボディ・ランゲージも、その背後にある文化も、すべて大切なのだ。それらは、相乗効果を伴いながら、スパイラルアップしていくものだと思う。私自身、このような多面的なアプローチによるスパイラルアップをイメージしながら、英語に絶えず触れることができる環境構築を日々心がけている。


「英語ができることがアドバンテージになる時代は終って、英語ができないことがディスアドバンテージになる時代が来た」———これは、私の知り合いの若手研究者の言葉である。彼は南米出身で、現在はMITで教えていてる。母語ではない英語で人々に語りまくり、グローバルなアカデミックの世界に切り込み、フロンティアを突っ走っている。その姿に、私も大きな刺激を受けている。

日本では、いまだに「まずは日本語をきちんとやるべき」という声を聞く。「英語か日本語か」ではなく、「英語も日本語も」という発想が必要だと私は思う。母語としての日本語はきちんとやるべきだし、それと同時に世界と渡り合うための英語。その両方が必要だ。

私たちは今、「英語を使う」=「海外で暮らす」ではない時代に生きている。日本にいながらも英語で学び、英語で仕事をする。それがグローバルな時代ということだろう。日本にいながらの環境構築。今回書いた私の経験と方法が、何らかの参考や刺激になれば幸いである。

(Fin.)

※「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに大幅に加筆・修正。
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モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(6)

2.4 英文構成の瞬発力をつける

会話において必要となるのは、その場その場でリアルタイムに英文を構成できるということ。それができなければ、自分が言いたいことを言うこともできないし、相手の言ったことに反応することもできない。実際、英語で会話をしているとき、簡単な内容なのに言葉にできなかったり、会話の後で「あぁ、あのときこう言えばよかった」と思うことはよくあることだ。

瞬発的に英文構成ができる力をつけるには、どうしたらよいだろうか? 僕がよいと思う方法が、『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』(森沢洋介)で展開されている訓練だ。取り上げられているのは難しい文章ではなく、ごく簡単なものばかり。最初の文は、なんと、"This is a good book." だ。

それでも、CDに収録されている音声で日本語を聞き、すぐにそれに対応する英文を思いつくかというと、これがなかなか難しい。読み上げの間隔が絶妙で、瞬発的に思いつかないと間に合わないようにできている。しかも、実際にやってみると、自分がいかに適当な文で話していたか、ということも痛感する。this と that、単数と複数などが、めちゃくちゃだったと気づく。つまり、正確に瞬間英作文ができていないということだ。このことに気づくだけでも、大きな一歩が踏み出せたといえるだろう。

このような訓練を積むことで、英文の基本パターンを自分のなかに刻み込んでいく。くり返し覚えて、「身体で覚える」。この基本パターンを実際の会話のなかで使うことができれば、英語での会話も、これまでとはかなり違ってくるはずだ。


2.5 即興的にバリエーションを生み出すための文法を身につける

もちろん、基本パターンだけですべてを言い表せるわけではない。それらを組み合わせで、様々なバリエーションを生み出すことが必要だ。その「バリエーションを生み出す」ために必要なのが、やはり、文法だと思う。

僕らは中学校から英語を学び始め、文法を学び続けてきた。だから、「いまさら文法?」と思うかもしれないし、英文法の本を開いてみても「知っている」と思うものばかりだろう。しかし、それらを使いこなせているかと問われると、自信をもって Yes とは言えない人がほとんどだ。

そこで、少し視点を変えて、文法を学び直すことをおすすめしたい。それは、「バリエーションを生み出すための文法」という視点だ。「知識としての文法」は僕らはもう十分知っている。そうではなく、今度は即興的な英文構成の力をつけるという観点から、文法を捉え直し、身につけるのだ。

結局、どんなに込み入った話も、定型のパターンとそれらの組合せで成り立っている。だから、どのパターンをどのように組合せることができるのかを知れば、自分でもそういう文章をつくることができる。その組合せ方のルールが、文法である。定型からのズラし方の可能性を教えてくれるものだと言ってもいい。そういう視点で、文法を実践的な力に変えていこう。


以上のように、定型のパターンと文法を身につけることができれば、瞬発的に、かつ即興的に英文を構成することができるようになる。日本にいてもできることは、実に多い。


[15] 森沢洋介, 『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』, ベレ出版, 2006

※本エントリの内容は、「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)には含まれていない、書き下ろし部分。
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