井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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井庭研 重要文献リスト120冊(2021年7月バージョン)

井庭研では、たくさん本を読みます。難しいものも読みます。重要なものは、何度も読み直し、読み込みます。

本を読むのは、単にそこに書いてあることを知るということではありません。本を読むのは、考え方の型を知り、考える力をつけるためであり、それを自分の創造の道具・基盤とするためです。概念・知識は単体ではあまり役に立ってはくれませんが、他の概念・知識とつながって豊かなネットワークに育っていくと、ものを考える力、創造的に発想する力の源泉となります。

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そのためには、ある程度の量を一気に読むことが重要となります。《量は質を生む》のです。ある程度の分量の本を短期間にどんどん読むことで、概念・知識のつながりがよく見え、また、化学反応のようなものが起きて、思考力と創造力が豊かになり強化され、自分の概念装置として使いこなせるようになっていきます。

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本を読むことに慣れないうちは、「坂道を登る」ような少しきつい感覚があるかもしれませんが、大丈夫。だんだん力がついて、読みこなせるようになっていきます(実際、そうなった人たちがたくさんいます)。しかも、坂を登って行き、高いレベルに上がると、視座が上がり視野が広がるので、麓(ふもと)にいるときには見ることも想像することもできなかったような素晴らしい景色を見ることができるようになります。それは、とても爽快で、喜びにあふれる感覚です。そうなれば、どんどん自分で読んでいけるようになり、本を読むごとに、これまでに読んだいろいろな話へのつながりをたくさん発見し、ますますワクワクを味えるようになります。こうして、自分の力を高め、人生が豊かになっていく。ぜひその感覚を味わってもらいたいと思います。

さらに、自分たちの研究・思想に重要な文献を各自読んでいると、それが井庭研の他のメンバーとの共通認識を持つことになり、それを共通言語として話すことができるようになります。これは、創造的なコラボレーションに参加するための、とても重要な前提条件となります。

とはいえ、何を読めばいいのか、自分で考えるのは難しいものです。そこで、最初の学期に何を読めばよいのか、重要文献をまとめました。このあたりを押さえておくと、先輩たちの話を理解したり、「井庭研らしい」思考・発想の勘所をつかむことができ、話し合いや創造に貢献することができる入口に立つことができます。各自、本を入手し、どんどん読み進めていってください。

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【最初の半年で読んでおくべき本】15冊

■井庭研でやっていることの考えの基本を理解する


■クリストファー・アレグザンダーの思想と取り組みについて直に学ぶ


■人間行為のパターン・ランゲージを実際に読んでみる


■思考と創造の本質について捉え直す


■ナチュラルな生き方・社会へのシフトの重要性を感じる


その他、研究会で紹介する重要論文(初級編)

*   *    *


【最初の半年から手元に置いて、必要に応じて適宜読む本】10冊


■人間行為のパターン・ランゲージをいろいろ読んで、分野・表現の多様性と共通点を感じる



■パターン・ランゲージの原点を知り、その質感に触れる


■研究と論文執筆のための考え方の手引き


*   *    *


【入ってから1年以内に読んでおくべき本】25冊

■人間行為のパターン・ランゲージを具体的に知り、日常に活かす


■アレグザンダーの思想とパターン・ランゲージの展開をさらに深く理解する


■創造的な思考と学びについて深く考え直す


■個から普遍へと至る道を理解する


■ナチュラル・クリエイティビティの豊かなイメージを持つ


■創造社会のヴィジョンを実感する


その他、研究会で紹介する重要論文(中級編)


*   *    *


【入ってから1年半までに読んでおくべき本】30冊

■現象学について理解を深める


■相手を内側から理解するとはどういうことか


■ナチュラルでクリエイティブな豊かさについて味わう


■これからの生き方について考える


■つくる人生についてイメージを持つ


■ナチュラルでクリエイティブなコミュニティについて考える


■中動態について理解する


■東洋の思想・哲学を知る


■学問の営みと潮流を知り、新しい学問をつくることの意識を高める


その他、研究会で紹介する重要論文(上級編)


【より深い理解・思考・創造のためのおすすめ文献】40冊

■まだ邦訳されていないアレグザンダーの最新の考えを知る


■社会システム理論と社会を分析するということ


■複雑系とオートポイエーシスのシステム理論を知る


■つくる人生についてイメージをさらに深める


■言葉の可能性を感じる


■創造の考えについて深める


●学びと成長についての原典にあたる


■思考と実践の哲学、プラグマティズムについて理解する


■井庭研に関係するいろいろな思想・哲学を知る


■論文執筆の力の向上
井庭研だより | - | -

2021夏プロ「新しい世界観の概念装置を組み立てる:ホワイトヘッド哲学を学び、アレグザンダー思想の理解を深める」

井庭研2021夏の特別研究プロジェクト
「新しい世界観の概念装置を組み立てる:ホワイトヘッド哲学を学び、アレグザンダー思想の理解を深める」

担当:井庭 崇(総合政策学部教授)
タイプ:特別研究プロジェクトA(4単位:2021秋学期に履修申告)
実施形態:オンラインですべて実施
2021年8月5日〜9月30日の間の15回

【概要】
本プロジェクトでは、クリストファー・アレグザンダーがしばしば参照する哲学者アルフレッド・ノース・ホワイトヘッドの哲学について、文献読解を通じて理解を深めます。単にホワイトヘッドの哲学を理解するだけでなく、全体性、有機的秩序など、アレグザンダーに通じる概念を改めて深く理解する機会としたい。

アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド(1861-1947)の哲学がどういうものかは、『ホワイトヘッドの哲学』(中村昇, 講談社, 2007)の次の紹介がわかりやすい。

「われわれの世界は、つねに流動している。動いていないものは、なにひとつない。・・・生物、無生物のべつなく、つねに活発に変化していく。これが、わが宇宙の実相だ。ここを起点にしてホワイトヘッドは、すべてを説明していく。したがって、かれの宇宙には、生きていないものは存在しない。すべてが、一様に「生きて」活動している。だが、われわれも巻きこんでいる、このはてしない流動状態は、つかみどころがまったくないから、とりあえず、どこかに切れ目をいれなければならないだろう。
 まず、これらは、闇雲に動いているわけではない。あるパターンが見てとれる。それぞれのスケールで、おなじようなパターンが繰りかえされているとホワイトヘッドは考えた。そして、つぎに、そうしたパターンをなす流動状態のそのつどの瞬間は、唯一無二のあり方で出現する。この世界では、ただの一度も、まったくおなじ状態など生じたことはない。つまり、一回だけの比類のない出来事が、おなじパターンで何度も反復されているというのが、わたしたちの住む、この宇宙のあり方なのだ。繰りかえされる間断なきパターンと、そのときどきのかけがえのない断面とによって、世界は成りたっているといえるだろう。この切り口からホワイトヘッドは出発する。
 また、ホワイトヘッドの哲学には、堅固な個体は登場しない。部分的な個別の状態を最初に想定することは決してない。一番基底にあるのは、あくまでも創造活動なのだ。この世界は、たえず、あらたに創りつづけられている。だからといって、その背後に、創造する主体がいるわけではない。豊饒な創造の坩堝のなかに、あらゆる存在は、つねにすでに投げこまれている。「過程」(process)こそ、「実在」(reality)なのだ。
 独立した個は存在しないのだから、この創造されつづけている世界は、べつべつの部分にはわかれない。すべての側面が密接に関係しあう。その関係の複雑で膨大な網は、もちろん、固定されたものではなく、たえまない流動状態のなかで、それ自体をダイナミックに変容させていく。」(中村昇『ホワイトヘッドの哲学』)

以上の説明を読むだけでも、クリストファー・アレグザンダーとの接点が感じられるだろう。実際、アレグザンダーは、彼の著書『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー:建築の美学と世界の本質 ― 生命の現象』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 2013)で、何度もホワイトヘッドに言及し、自説との関係について語っている。

例えば、“全体性」と「センター」の理論”の章で、「全体性」の考え方の多くの文献のなかで「おそらく最も際立った議論」であるとして、ホワイトヘッドの『過程と実在』を紹介している。さらに、『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー』の重要な概念である「センター」も、ホワイトヘッドの哲学に通じるという。

「すべての空間が「センター」を張り巡らしたようなシステムであるという考え方を最初に提唱したのは、アルフレッド・ノース・ホワイトヘッドであり、・・・ホワイトヘッドは、彼が「有機体」と呼んでいる連結した存在で構成されるシステムを提案しました。彼の考えでは、実在するすべてのものは空間的に存在する入れ子状で重なり合った「有機体」のシステムとして理解されるものだということです。-----私が思うに、このホワイトヘッドの有機体は、私がこの本で「センター」として説明している実態とまさしく同様のものではないかと思うのです。」(アレグザンダー『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー』)

また、『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー』では、「生命」が重要な概念として論じられているが、この「生命」というのはいわゆる「生物」のことではなく、無生物にも見られる「いきいき」とした質のことである。この「生命」の考え方もホワイトヘッドに通じているという。

「この概念の中では、「生命」とは何がしかの形ですべての事象、建築物に存在する、日々の実用的な生活の中にでもあるものなのです。・・・この考え方の本質は、古典的です。新しいことは、既存の科学的な思考を用いた構造的な形式という概念で説明できるということと、理解できるという点だけです。・・・同じような視点は、歴史を紐解くと、仏教の考え方やアメリカンインディアンの世界観の中にも表れています。仏教の世界観では、すべてのものの中には「生命」があると示されており、無数の経典によってそのことが記されています。・・・同じような考え方はアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドの哲学や書物の中でも述べられています。・・・ホワイトヘッド氏の考え方では、「生命」の無いものは無いのです。「生命」の可能性は事物に本来備わっているのです。」(アレグザンダー『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー』)

ここで、東洋の思想との関わりに触れているのも興味深い。昨年の夏の特別研究プロジェクトでは、「新しい学問をつくる:西洋と東洋の知を融合させた、創造実践の学問を構想する」として、東洋哲学についての理解を深めたが、今年は、西洋(ホワイトヘッド)の側からの接続を試みることになりそうだ。

さらに、アレグザンダーは、近代の機械的な世界観からの脱却を唱えるが、これも、ホワイトヘッドの考えと重なる。

「ここ300年のあいだ、機械主義的な世界観によって私たち自身が「自己」から切り離されてしまいました。私たちは、強力で極めて正確な世界観を手にしています。しかし、その概念には「自分自身」の存在意義を明らかにするはっきりとした説明がないのです。これこそホワイトヘッドによって主張された有名な「自然からの乖離」現象なのです。」(アレグザンダー『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー』)

以上のように、クリストファー・アレグザンダーの思想をさらに深く理解するために、ホワイトヘッドについて理解することは重要であることがわかる。

しかしながら、そこには大きな壁が立ちはだかっている。それは、ホワイトヘッドの哲学は「このうえなく難解」(中村昇『ホワイトヘッドの哲学』)だという点である。中村昇は『ホワイトヘッドの哲学』で、その難解さを、次のように表現している。

「ホワイトヘッドは難解だといわれる。わたしもたしかにそう思う。なんの因果か、哲学を生業としているから、多少の難しさには慣れっこのはずだが、ホワイトヘッドの難解さは、どうにも手のつけようがない。群を抜いている。特に『過程と実在』は、最初読んだときは、まったく取りつく島がなかった。なにをいっているのかさっぱりわからない。しかも具体的な話をほとんどしないから、手がかりもない。本当にこまった。」(中村昇『ホワイトヘッドの哲学』)

こう言われてしまうと怯んでしまうかもしれないが、まったく望みがないわけではなさそうだ。中村は、さらに続ける。

「しかしよくよく読みすすめると、ホワイトヘッドの難しさは、この哲学者のせいではないことに気づく。ようするに、ホワイトヘッドが難解なのではなく、〈この世界そのもの〉が難解なのだ。・・・この状態をホワイトヘッドは、愚直にも真正面から描き切ろうとしている。これが、かれの本を難しくしている一番の理由だと思う。
 そんなホワイトヘッドの本でも、よくしたもので、何度もなんども読んでいくうちに、少しずつ霧がはれてくる。なんとなくわかってくるのだ。この世界も、長く住みつき、おおくの経験をつむと、いろいろわかってくる。あれとおなじだ。」(中村昇『ホワイトヘッドの哲学』)

このようなわけで、ホワイトヘッドを一人で学ぶのはきわめて難しいだろう。そこで、本プロジェクトでは、みんなで挑戦してみよう、ということなのだ。しかも、アレグザンダーの思想に慣れ親しんでいる僕らならば、もしかしたら、それを糸口として理解への道がひらけるかもしれない。

なお、あらかじめ、断っておくが本プロジェクトの担当者である僕(井庭)は、ホワイトヘッドの研究者ではないし、特段理解が深いわけでもない。そのため、僕が解説したり、質問に答えるということは期待しないでほしい。僕を含む参加者全員で、難解なホワイトヘッドの哲学に挑戦する、そういうつもりで本プロジェクトに参加してほしい。

そのような難しい闘いではあるが、多少なりの勝算はある(あくまでも多少であり、また保証はないが)。それは、僕が普段、難解な本を読むときのプロセスや技を参加者に共有し、それを踏まえてみんなで取り組むということだ。ふだん僕は、難解な哲学書を読むときに、手に入るあらゆる入門書・解説書を片っ端から読みまくって、そこから本丸の哲学書にアプローチする。そうすることで、読み解き方を自分なりにつかみながら、自分で読みこなすことができるようになる。そのとき、僕は一人で20〜30冊くらい読むことになるわけであるが、それはなかなかにハードなことなので、それをそのままみんなにやってもらうというのは、非現実的だろう。そこで、本プロジェクトは、それを参加メンバーで分担しあうというやり方で行う。つまり、一人ですべてやる代わりに、「分担して読んでくる」+「紹介しあい話しあう」ことで、全員で理解を深めていくコラボレーションで取り組むのである。

最後に強調しておきたいのは、本プロジェクトで目指すことは、ホワイトヘッドの哲学を単に理解することではなく、その概念装置を通して、世界を見る(認識する)ことができるようになることであるということだ。また、ホワイトヘッドの哲学を理解することで、アレグザンダーの概念装置をより精密に理解し使いこなせるようになることである。

このような読書による概念装置の獲得ということについて、内田義彦が『読書と社会科学』で明解に語っているので、いくつか引用しておきたい。まず、概念装置とはどいうものかについて。

「概念装置を脳中に組み立て、それを使ってものを見る。・・・概念装置を使うことによって、肉眼では見えないいろいろの事柄がこの眼に見えてくる。それも、ある程度ながら-----用いられた概念装置にかかわりのある限りにおいては-----否応なく、好みを越えて、否定しようにも否定しがたく見せつけられるかたちで見えてくるんで、その限りだれでもが同じ地盤に立つ。同時に先人の発見の伝達と蓄積が可能になってきます。」(内田義彦『読書と社会科学』)

本を読むときに、単にそこに書いてあることを理解する・知る、というのではなく、認識の手段としての概念装置を獲得するために読むという読み方について、次のように述べている。

「本を読むことで、認識の手段としての概念装置を獲得する。これがかなめです。それも、-----概念装置が自分の眼に代わってものを見る手段に化けちゃわないで、自分の眼そのもののはたらきを補佐する手段として役立ちうるようなかたちで獲得することがかなめですから------認識手段としての概念装置を習うについても、単にこれをを覚える、配線図のリプリントみたいに筋がきを頭にたたきこんじゃ駄目です。組み立てながら、たえず自分の眼をはたらかせてその効果のほどを験してみながら、組み立て方・使い方を体得する。そういう操作をすることで、はじめて既成の概念装置も、自前の概念装置として役立ちましょう。」(内田義彦『読書と社会科学』)

そして、このように認識の手段としての概念装置を獲得するためには、単に受け入れるだけでなく、読んで、自分のなかでその概念装置を組み立て直す必要があると言う。これは僕もとても重要なことだと実感することだ。

「概念装置は、同じ自分の眼を補佐する装置であっても、物的装置とちがって、身体の外部ではなく内部にあるもの、自分の脳中に組み立てるものです。・・・一人一人、苦労して組立て作業をやらなければなりません。製品を調達するのではなく、自己製作をする。新しい概念装置を自分で開発する場合はもとよりのことですが、先人が作り上げて学界の共有財産になっている既製の概念装置をそのまま使う場合でも、それを自分の認識手段として使いこなすためには、組立て作業それ自体を、一、一この眼を働かせながらキチンと、ていねいにやって、自家薬籠中のものとしておかなければなりません。でないと、その概念装置は、知ってはいても、自分のこの眼でものを見る認識手段としては、役に立たない。その意味では、既製の概念装置の修得も、真にそれを自分の概念装置として獲得するためには、新しい概念装置の開発とまったく同じ種類の自主性と労苦がいる、ということを強調しておきたいと思います。概念装置はすべて、新旧を問わず自前でやらなければならない。で、心血をそそいで組立て作業をやる。やらざるを得ない。」(内田義彦『読書と社会科学』)

このように、独特の世界観をもつ哲学の本を読むということは、とても創造的な営みなのである。本プロジェクトでは、このような概念装置の組み立てという体験を、みんなで実践していければと思っている。とても大変ではあるが、やりがいのある、そんな「夏学期」をお楽しみに!


【本プロジェクトで取り上げる文献】

■入門編の文献(全員共通)
・『ホワイトヘッドの哲学』(中村 昇, 講談社, 2007)
・『読書と社会科学』(内田 義彦, 岩波書店, 1985)
・『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー:建築の美学と世界の本質 ― 生命の現象』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 2013)

■助走編の文献(下記のなかの1冊をグループで担当し、みんなに紹介)
・『ホワイトヘッド『過程と実在』:生命の躍動的前進を描く「有機体の哲学」 (哲学書概説シリーズ) 』(山本 誠作, 晃洋書房, 2011)
・『コスモロジーの哲学:ホワイトヘッドの視座』(チャールズ ハーツホーン, クレイトン ピーデン, 文化書房博文社, 1998)
・『ホワイトヘッド:有機体の哲学』(田中 裕, 講談社, 1998)
・『ホワイトヘッド:秩序への冒険』(ポール・グリムリー・クンツ, 紀伊國屋書店, 1991)
・『ホワイトヘッドへの招待:理解のために』(ヴィクター・ロー, 松籟社, 1982)
・『具体性の哲学:ホワイトヘッドの知恵・生命・社会への思考』(森 元斎, 以文社, 2015)
・『連続と断絶:ホワイトヘッドの哲学』(飯盛 元章, 人文書院, 2020)
・『日常の冒険:ホワイトヘッド、経験の宇宙へ』(佐藤陽祐, 春風社, 2021)
・『ホワイトヘッドと現代:有機体的世界観の構想』(山本 誠作, 法蔵館, 1991)
・『ホワイトヘッドと西田哲学の〈あいだ〉:仏教的キリスト教哲学の構想』(延原 時行, 法蔵館, 2001)

■本丸編の文献(全員共通:訳が2種類と英語原著があるので、それらを複合的に使用して理解する)
・『過程と実在〈1〉コスモロジーへの試論』(A.N.ホワイトヘッド, 平林 康之 訳, みすず書房, 1981)
・『過程と実在〈2〉コスモロジーへの試論』(A.N.ホワイトヘッド, 平林 康之 訳, みすず書房, 1983)
・『ホワイトヘッド著作集 第10巻 過程と実在 (上)』(A.N.ホワイトヘッド, 山本 誠作 訳, 松籟社, 1984)
・『ホワイトヘッド著作集 第11巻 過程と実在 (下)』(A.N.ホワイトヘッド, 山本 誠作 訳, 松籟社, 1985)
・"Process and Reality"(Alfred North Whitehead, Free Press, 1979)



【参加条件】
2021年春学期に井庭研究室に在籍していて一緒に特別研究プロジェクトをつくろうという思いを持ち、実際に行動が伴っている人、および、2021年秋学期に在籍予定の人。


【必要経費】
文献(書籍)購入代:約3万円(各自購入)


【評価方法】
出席、個人最終レポート、文献発表、話し合いへの貢献、プロジェクト全体への貢献から総合的に評価する。


【授業スケジュール】

■入門編:『ホワイトヘッドの哲学』+『読書と社会科学』(春学期にも読むが、新規メンバー向け)+『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー』の一部


8/5(木)13:00〜18:00
内田義彦『読書と社会科学』、および中村昇『ホワイトヘッドの哲学』についての話し合い

8/6(金)13:00〜18:00
アレグザンダー『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー』、および中村昇『ホワイトヘッドの哲学』についての話し合い


■助走編:解説書輪読(グループで分担書についてプレゼン)

8/23(月)13:00〜18:00
解説書のグループ発表1+内容についての話し合い

8/24(火)13:00〜18:00
解説書のグループ発表2+内容についての話し合い

8/26(木)13:00〜18:00
解説書のグループ発表3+内容についての話し合い


■本丸編:『過程と実在』読解

9/13(月)13:00〜18:00
ホワイトヘッド『過程と実在』第1部についての話し合い

9/14(火)13:00〜18:00
ホワイトヘッド『過程と実在』第2部前半についての話し合い

9/15(水)13:00〜18:00
ホワイトヘッド『過程と実在』第2部中盤についての話し合い

9/16(木)13:00〜18:00
ホワイトヘッド『過程と実在』第2部後半についての話し合い

9/21(火)13:00〜18:00
ホワイトヘッド『過程と実在』第3部についての話し合い

9/22(水)13:00〜18:00
ホワイトヘッド『過程と実在』第4部についての話し合い

9/24(金)13:00〜18:00
ホワイトヘッド『過程と実在』第5部についての話し合い


■総括編:まとめとふりかえり

9/27(月)13:00〜18:00
全体総括&ふりかえり

9/28(火)13:00〜18:00
全体総括&ふりかえり

9/30(木)13:00〜18:00
最終レポートを踏まえての語り合い
井庭研だより | - | -

慶應義塾大学SFC「パターンランゲージ」2021シラバス

「パターンランゲージ」
慶應義塾大学SFC総合政策学部・環境情報学部(基盤科目-共通科目)
担当教員:井庭 崇
開講:2021年度春学期(前半)
曜日時限:金曜4・5限(オンライン開講)

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【主題と目標/授業の手法など】

この授業では、一人ひとりがもつ創造性を支援するためのメディア「パターンランゲージ」について、その考え方と作成方法を体験的に学びます。パターンランゲージでは、創造・実践の経験則(コツ)を「パターン」という小さな単位にまとめ、言語化します。

2021年度の授業では、感じるままに思い切り遊ぶ場をつくり活動している「原っぱ大学」(HARAPPA株式会社)との共同研究として、「自然に遊び心が発動される場づくりのパターンランゲージ」を、履修者全員で本気でつくります。原っぱ大学の代表の塚越 暁さんからのメッセージは以下の通りです。

皆さん、こんにちは。原っぱ大学 “ガクチョー” の塚越です。

大人と子どもが野で遊ぶ「原っぱ大学」を逗子に立ち上げて5年。大人も子どもも “自然に” 遊び心が発動される場をつくってくることができました。その場は僕らスタッフの在り方や行動、そして積み重ねられてきた環境により出来上がっているはずなのですが…。

場をつくってきた僕らは当事者すぎてこの場を構成している重要なエッセンスが何なのか感覚でしかとらえきれていません。新しく加わったスタッフはそこで何が起きているのか、どうふるまえばいいのか理解できないで困る、ということが頻繁におきるようになりました。僕らの場のエッセンス、行動原理を共通言語化しなければ・・・。

そんな悩みが次第に大きくなり井庭先生に相談したところ、今回の授業のご提案をいただきました。自分たちだけでは抽出できない場に潜むパターンを皆さんと一緒に発見したいです。そこから浮かび上がるパターンは僕ら原っぱ大学スタッフの共通言語になるとともに、大人と子どもが自由に「遊ぶ」場を構成する普遍的なものになるのではないかと思っています。ぜひ、皆さんの力を貸してください!

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これまで井庭研究会ではいろいろな企業・団体と共同研究でパターンランゲージをつくってきましたが、今回のように授業で外部の方の願いに応える共同研究は初めてです(初めてのチャレンジ、ワクワクしますね!)。この授業に参加するみんなで、使命感をもって、よりよいパターンランゲージに仕上げていきたいと思います。つくったパターンランゲージはホームページ等で広く公開する予定です。

この授業は、オンデマンド映像とリアルタイムの時間をうまく組み合わせる《オンデマンド・ライブ・ミックス》の形式で行います。解説のレクチャーはオンデマンド映像で各自見てもらい、金曜4・5限の授業時間中にグループワークを行います。従来であれば授業外で行っていたグループワークを授業時間内に行い、従来であれば授業時間内に行っていたレクチャーを授業外に行うという「反転」をします。これにより、必ず全員が集まって《まとまった時間》のなかで取り組むグループワークが実現するとともに、グループワークの場に教員・TA/SAが顔を出し、相談に乗ったりアドバイスをしたりすることができ、グループワーク成果のクオリティを上げることができると見込んでいます。

パターンランゲージの作成は、本来、非常に多くの作業と長い時間を要するものなので、授業期間内にゼロから完成まで持っていくために、いろいろと工夫をします。まず、初回授業の前に映像を見てもらい取り組んでもらう課題(履修選抜課題)があります。詳細は、本シラバスの【履修選抜課題】と、慶応SFC「パターンランゲージ」2021年度授業サイト(https://note.com/iba/m/m00e53370e26a)を見てください。これにより、スムーズなスタートを切ることができます。

また、授業期間中は、すべての作成作業を履修者だけで行うのではなく、担当教員とTA/SAが「ジェネレーター」として作成の一部を担い、次のステップへと進めることもします。その意味で、担当教員やTA/SAも一緒に取り組むクラス全体のプロジェクトだということになります。このような工夫をすることで、なんとか5週間で完成まで持っていければと思います。なお、原っぱ大学の塚越さんも授業時間に参加していただける予定です。また、この授業・共同研究は、一般社団法人みつかる+わかるのメンバーにも関わってもらえる予定です。

この授業では、パターンランゲージについて多面的に理解を深めてもらうために、授業と並行して文献を読む宿題を毎週出すので、授業初回までに早めに、書籍 『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』を入手しておいてください。

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【授業計画】

第1・2回(4/9 金):グループワーク(サマリー・ライティング)
マイニング・インタビューから得られた大切なポイントのサマリーを記述していくグループワークに取り組みます。

第3・4回(4/16 金):グループワーク(CPSライティング)
体系化して得られた「パターンの種(たね)」のCPS(Context, Problem, Solution)を書くグループワークに取り組みます。

第5・6回(4/23 金):グループワーク(CPSリバイズ)
フィードバックを踏まえて、CPSを修正をするグループワークに取り組みます。

第7・8回(4/30 金):グループワーク(パターン・ライティング)
CPSをもとに、フル記述形式のパターンを書くグループワークに取り組みます。

第9・10回(5/7 金):ライターズ・ワークショップ & グループワーク(パターン・イラスト作成)
書いたパターンをよりよくするためのライターズ・ワークショップを行います。また、パターン・イラストを描くグループワークに取り組みます。

第11・12回(5/14 金):グループワーク最終成果発表 & ふりかえり
この授業で取り組んできたグループワークの成果のパターン・ランゲージを発表するとともに、これまでを振り返ります。


【提出課題・試験・成績評価の方法など】

成績は、授業への参加、グループワークでの貢献と成果、文献読解の宿題、最終レポートから総合的に評価します。

【履修上の注意】

  • 授業は全回オンラインで行います(Zoom)。受講に適した通信環境で参加してください(原則としてカメラオン推奨)。

  • 授業と並行して、文献を読んでまとめを提出する個人宿題が毎週出ます。授業初回までに早めに、書籍 『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』(井庭 崇 編著, 慶應義塾大学出版会)を入手しておいてください。


    【学生が準備するソフト・機材】

  • 本授業のグループワークではパソコンを用いて作業をするので、授業へはスマートフォンやタブレットではなく、パソコンで参加するようにしてください。

  • 本授業は、Zoomを用いて行います。https://zoom.us/ からインストールし、適宜、最新版にアップデートするようにしてください。


    【履修選抜課題】

    受入学生数(予定):約 90 人
    選抜方法:課題提出による選抜

    慶応SFC「パターンランゲージ」2021年度授業サイト(https://note.com/iba/m/m00e53370e26a)にアクセスし、そこに書かれている説明をよく読んだ上で、指定の映像を見て、以下の課題に取り組んで提出してください。

    「自然に遊び心が発動される場づくり」における大切なことを10〜20程度、マイニング・インタビュー映像で語られたことから抽出し、記述してください。大切なことは、それぞれ、どういうときに何をすることが大切か(語られていればその理由も)それぞれ1行程度にまとめてください。それを10〜20程度、箇条書きで書いてほしいと思います。授業では、この課題で提出されたものを素材として、パターンランゲージを作成していきます。

    提出形式:PDF
    課題レポートの最初に、必ず、名前、学年、学籍番号、メールアドレスを記載してください。


    【教材・参考文献】

    教科書
  • 『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』(井庭崇 編著, 中埜博, 江渡浩一郎, 中西泰人, 竹中平蔵, 羽生田栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013年)

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    参考文献
  • 『対話のことば:オープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』(井庭 崇, 長井 雅史, 丸善出版, 2018年)
  • 『プロジェクト・デザイン・パターン:企画・プロデュース・新規事業に携わる人のための企画のコツ32』 (井庭 崇 , 梶原 文生, 翔泳社, 2016年)
  • 『おもてなしデザイン・パターン:インバウンド時代を生き抜くための「創造的おもてなし」の心得28』(井庭 崇, 中川 敬文, 翔泳社, 2019年)
  • 『旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』(井庭 崇, 岡田 誠 編著, 慶應義塾大学 井庭崇研究室, 認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ, 丸善出版, 2015年)
  • 『園づくりのことば:保育をつなぐミドルリーダーの秘訣』(井庭 崇, 秋田 喜代美 編著, 野澤 祥子, 天野 美和子, 宮田 まり子, 丸善出版, 2019年)
  • 『ミラパタ(未来の自分をつくる場所:進路を考えるためのパターン・ランゲージ)ブックレット&カード セット』(クリエイティブシフト, 2017)
  • 『プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』(井庭崇+井庭研究室, 慶應義塾大学出版会, 2013年)
  • コロナの時代の暮らしのヒント』(井庭 崇, 晶文社, 2020年)
  • 『クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育』(井庭 崇 編著, 鈴木 寛, 岩瀬 直樹, 今井 むつみ, 市川 力, 慶應義塾大学出版会, 2019年)
  • 『時を超えた建設の道』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1993年)
  • 『パタン・ランゲージ:環境設計の手引』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1984年)
  • 『Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, 丸善出版, 2014年)
  • 『パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則』(江渡浩一郎, 技術評論社, 2009年)
  • 『A Tale of Pattern Illustrating:パターンイラストの世界』(原澤 香織, 宮崎 夏実, 櫻庭 里嘉, 井庭 崇, CreativeShift, 2015)


    【担当教員】

    井庭 崇(いば たかし)
    慶應義塾大学総合政策学部 教授。株式会社クリエイティブシフト代表取締役社長、一般社団法人みつかる+わかる 理事、および、パターン・ランゲージの学術的な発展を促す国際組織 The HillsideGroup 理事も兼務。2003年、慶應義塾大学政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。
    様々な創造実践領域の研究を通じて、「創造」(creation)そのもの本質に迫り、「創造システム理論」や「深い創造の原理」等を提唱している。また、創造社会(Creative Society)の実現に向けての社会論、および、実践支援の方法としての「パターン・ランゲージ」の作成・研究に取り組んでいる。井庭研メンバーと作成したパターン・ランゲージは、多様な分野の70種類以上にのぼり、その数は、1600パターン以上となる。
    編著書・著書に、『パターン・ランゲージ』(慶應義塾大学出版会、2013年)、『クリエイティブ・ラーニング』(慶應義塾大学出版会, 2019年)、『社会システム理論』(慶應義塾大学出版会、2011 年)、『コロナの時代の暮らしのヒント』(2020年)、『対話のことば』(丸善出版, 2018年)、『プロジェクト・デザイン・パターン』(翔泳社、2016年)、『おもてなしデザイン・パターン』(翔泳社, 2019年)、『プレゼンテーション・ パターン』(慶應義塾大学出版会、2013年:2013年度グッドデザイン賞受賞)、『旅のことば』(丸善出版、2015年)、『園づくりのことば』(丸善出版, 2019年)、『複雑系入門』(NTT出版、1998年)など。2012年にNHK Eテレ「スーパープレゼンテーション」で「アイデアの伝え方」の解説を担当。


    ※ 学期後半には、同じ金曜4・5限に「創造システム理論」(井庭・若新)が開講されます。併せてどうぞ。

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  • 授業関連 | - | -

    中動態で表されるべき「創造」(深い創造)

    最近の僕の「創造の研究」において、創造と中動態の関係について考えていて、とても重要な気づきがあったので、そのことを書き留めておきたい。

    中動態で表されるべき「創造」(深い創造)の話である。

    今回は「深い創造の原理」の話は省略するが、中動態に関わる面だけを取り上げて、わかりやすくシンプルに述べていきたいと思う。

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    スティーブン・キングは、小説を書くときのことについて、次のように語っている。

    「結末を想定している場合もあるが、作中人物を自分の思いどおりに操ったことは一度もない。逆に、すべてを彼らにまかせている。予想どおりの結果になることもあるが、そうではない場合も少なくない。」(スティーブン・キング『書くことについて』)


    日常的な感覚では、にわかには信じられないことであるが、実は多くの作家・芸術家が同様のことを言っている。つくり手は、頭の中にあるものを外化しているというわけではなく、自分が「ああしよう、こうしよう」と考えていることを文字や絵で表現しているといわけでもないと言う。

    そうではなく、つくっている何か・作品そのものが展開し成長するのに寄り添い、伴走し、それを見守り、支援する、そういうことをしていると言うのだ。

    つまり、それは、「創造」というものが、単に能動態で表されるような事態ではない、ということを表している。

    他方、こういうことを言う作家もいる。

    「物語が何を求めているのかを聴き取るのが僕の仕事です」(村上春樹『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』)

    「一旦決めて映画作りだすと、映画作ってるんじゃないですね。映画に作らされるようになるんです。」(宮崎駿『出発点 1979〜1996』)。


    これを読むと、「創造」というものが受動態で表される事態のようにも見える。しかしながら、創造の思考・行為をしているなかで起きることについて言っているので、作家・芸術家は単なる受け身(受動)ではない。それは、能動的な面(つくろうという姿勢+思考+手を動かいて書いたり描いたり構築する)と受動的な面(物語の声を聴く、導かれる)という面を併せ持っている

    つまり、「創造」というものを、能動/受動のフレーム(構造)で捉えることことに無理があるのではないか、と感じる。能動/受動ではうまく捉えられないような事態が「創造」ということなのだ。

    そうだとすると、どう捉えればいいのか?

    このような「創造」(深い創造)がどういうことなのかを捉える鍵は、能動/受動のフレームではなく、かつての能動/中動というフレームである、と僕は考えている。言語で言うと、中動態(middle voice)と呼ばれる態で表現されるものである。

    「創造」(creation)とは、中動態で表される事態であって、それを無理に能動/受動のフレームで理解しようとするから、無理が生じていると考えることができるのではないか。

    我々は現在、能動/受動 を対に考える言語・思考 に慣れ親しんでいる。「する/される」の対立である。

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    しかし、人類は長い間、インド=ヨーロッパ語や、古代ギリシア語、サンスクリット語などが示すように、能動/中動 が対になっていて、受動の感覚・捉え方は無かったようだ。しかも、能動/中動の時代には、同じ「能動」でも、能動/受動のときとは異なる意味で、能動が定義されていたという。

    言語学者のエミール・バンヴェニストは『一般言語学の諸問題』で、能動/中動のフレームにおける能動では、「動詞は主語から出発して、主語の外で完遂する過程を指し示している」といい、これに対立する態である中動では、「動詞は主語がその座となるような過程を表している。つまり、主語は過程の内部にある」と指摘した。

    この言葉を借りて言うならば、「創造」とは、「動詞は主語がその座となるような過程を表している。つまり、主語は過程の内部にある」出来事なのではないだろうか。

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    このことを実践的な感覚で述べているのが、スティーブン・キングだ。

    「作家がしなければならないのは、ストーリーに成長の場を与え、それを文字にすることなのである」(スティーヴン・キング『書くことについて』)


    この発言は、その作品をつくっている主語(作家)が「場」(座)となるということを言い表していると捉えることができる。

    建築家のクリストファー・アレグザンダーも同様のことを述べている。

    「あなたの頭は一つの媒体である。そこでパタンと現実世界との間の創造の火花をちらすことができる。あなた自身は、この創造の火花の単なる媒体にすぎず、その発生源ではない。」(アレグザンダー『時を超えた建設の道』)

    「人は単なる媒体にすぎず、そこでパタンに生命が吹き込まれ、ひとりでに新しい何かが生み出されるのである。」(アレグザンダー『時を超えた建設の道』)

    「だが、いったん肩の力を抜き、自分が媒体になったつもりで、自分を通してその場のさまざまな力を作用させてみれば、何の助けも借りず、ランゲージがほとんどすべての作業を行い、建物が自力で形成されることが分かるのである。」(アレグザンダー『時を超えた建設の道』)


    このように、「創造」が自分を場(座・媒体)として起きるのである。

    createという動詞がインド=ヨーロッパ語や、古代ギリシア語、サンスクリット語などでどのような態で使われどのような意味を持っていたのかは、いまの僕にはわからない(なので、サンスクリット語を勉強しようと思って、最近いろいろ入門書や文法書を買い集めている。インド=ヨーロッパ語や古代ギリシア語なども、わかる人がいたら教えてください)。

    しかし、僕が思うに、おそらくcreateというのは、中動態に合う動詞であっただろうと推察する。

    もともと動詞は、人間の行為ではなく、出来事を表す言葉であったことが知られている。のちに能動/受動のフレームのなかでは、それが主語に紐づけられ、主語の行為を表す品詞として定着することになった。「創造」とは、行為ではなく、出来事を表す言葉だったのではないだろうか。

    creationに関して、ひとつ興味深い話がある。

    西洋では、creationと言えば、その最大のものは、大文字のCで始まるCreation、すなわち、神による世界の創造(創生)である。

    神は、自分を座として、世界の創造を行った。神を人のような主体と捉えると、世界は主体の外でつくられる。

    しかしながら、スピノザの神の理解によれば、神は無限であり、限りがない(外部をもたない)ので、世界全体が神だということになる(國分功一郎『はじめてのスピノザ』など参照)。

    そうやって中動態+スピノザで理解すれば、神は座となり世界を中動態として表されるべき出来事としての「創造」によって世界が立ち現れたと言えるのではなかろうか。これが中動態+スピノザでCreationを考えるときの、僕の捉え方である。

    神の世界のCreationについては、森田亜紀が『芸術の中動態:受容/制作の基層』で興味深いことを指摘している。

    「旧約聖書「創世記」の冒頭には、神が「光あれ」と言って光が出来たその後、「神は光を見てよしとされた」と書かれている。天地創造において、神は自らの創造したいちいちのものについて、それを見て「よし」とする。すべてをつくり終わった後にも神は「その造られたすべてのものを御覧になると、見よ、非常によかった」と述べたという。全知全能であるという神の定義からすれば、これは不思議な記述である。全能である以上、神は、意図したこと着想したことをそのまま実現することができる。こうつくろうと思った世界を、思った通り確実につくることができる。」(森田亜紀『芸術の中動態』)

    「どのような世界が出来上がるか、神はあらかじめ知っていたはずなのだ。それなのに神は、出来た世界をわざわざ目で見て確認し、「よし」と評価する。このことは、たとえ神においてであれ、実現に先立って頭に思い浮かべられていたものとそれが実現してできた実味の事物とのあいだに、区別があることを示唆する。創造によって現実に存在するようになったものには、創造主にとってすらあらためて目で見て「よし」と確認する必要や余地があるような、見ることによってはじめて捉えられる何事かがあるらしい。」(森田亜紀『芸術の中動態』)

    「おそらくつくり手は、出来上がった作品を「見る」ことで、頭の中にあったことを超える何かが、今まで知らなかった何事かに出会うのだろう。」(森田亜紀『芸術の中動態』)


    "万能"の神でさえ、「創造」(creation)とはそのような事態なのだ。創造とは、頭のなかで考えたことを外化するということではないのである。

    それは、自分を座(場)として何かが生成するという出来事のことを言うのである。

    これが、僕の、中動態で表されるべき「創造」の考えである。

    創造は、能動/受動フレームでは正しく捉えることができず、どうしても中動態という物の見方を取らないと理解できない。「中動態」の捉え方でなければ、正しく捉えることができない事態である必然性と必要性が、そこにはある。

    以上が、創造と中動態の関係として、僕が考えていることである。

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    「創造性」の探究 | - | -

    2021年春学期 井庭研「ナチュラルにクリエイティブに生きる未来に向けて」シラバス

    井庭研シラバス(2021年度春学期)

    ナチュラルにクリエイティブに生きる未来に向けて:創造の研究 & 未来をつくる言葉をつくる(ことで、本当に未来をかたちづくる)

    [ 自然のなかの子育て / 創造的な学校・教育 / 企業理念の実践支援 / 生態系保全活動 / 新しい開発援助 / ともに生きる高齢者ケア / ワクワクする人生のZINE制作 / 道を極めることのボードゲーム開発 / 商いの実践探究コミュニティ研究 / 卒 資本主義 & 創造的民主主義への構想 / 音楽作曲 ]

    担当:井庭 崇(総合政策学部教授)
    研究会タイプ:A型(4単位)

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    2021年2⽉6⽇(土):エントリー〆切
    2021年2⽉8日(月)・9(火):面接@オンライン

    ※エントリーを考えている人は、「井庭研に興味があるSFC生の連絡先登録(2020年12月〜2021年2月用)」に登録してください。最新情報をメールで送ります。

    ※最新情報や説明の映像などを、こちら「慶応SFC 井庭研2021年度 新規エントリー者向け情報」(note)にアップしていく予定です。そちらのページもたまにチェックしてみてください。


    2021年度春学期は、以下の10プロジェクトのメンバーを募集します。

    (1) 自然のなかの子育て・暮らしのパターン・ランゲージの作成
    (2) 新しい創造的な学校・教育づくりのパターン・ランゲージの作成
    (3) 組織の理念を具体的実践につなげるためのパターン・ランゲージの作成
    (4) 生態系保全活動のパターン・ランゲージの作成
    (5) パターン・ランゲージによる新しい開発援助
    (6) パターン・ランゲージを活用した高齢者ケア実践の研修デザイン
    (7) 「ワクワクする人生」を生きている人の「人生の育て方」を紹介するZINEの制作
    (8)「 道を極める」感覚を遊びのなかで体感できる面白いボードゲームの開発
    (9) 商いの実践探究コミュニティの研究
    (10) 卒資本主義と創造的民主主義へのシステミック・チェンジの構想


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    ☆      ☆      ☆


    井庭研究室では、より自然で創造的な暮らし・生き方・社会へのシフトを目指して、一緒に研究・実践に取り組む仲間を募集します。

    井庭研では、これからの社会を「創造社会」(クリエイティブ・ソサエティ:Creative Society)だと考え、特に、自然とつながり人間らしく豊かに生きる「ナチュラルな創造社会」へのシフトを目指し、それが可能となるための支援メディア(パターン・ランゲージ)をつくるとともに、そのベースとなる理論・方法論を含む新しい学問の構築に取り組んでいます。

    研究・教育は「未来に向けての取り組み」であるため、まずは僕(井庭)が「これからの未来をどう見据えているのか」について語ることが不可欠だと思います。そこで、まず、そのことについて簡単に述べておきたいと思います(のちのVisionのところで、より詳しく紹介します)。

    僕が見ている・目指している未来社会は、「創造社会」と呼び得る社会です。しかも、自然との関わりを深めた「ナチュラルな創造社会」です。

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    自然(ナチュラル)」というとき、そこには、(突き詰めると表裏一体となる)2つの意味を持っていることに気づきます。一つには、自然(森林や海山など)などの「外なる自然」のことを意味しており、もう一つは、素の自分らしさと自由度をもっていきいきと生きるという「内なる自然」の意味です。これらは別ものではなく、相互に関係しており、理想的な状態では、これらは調和的に重なり合って、ひとつの「自然(ナチュラル)に生きる」ということに収斂します。

    この二つの「自然(ナチュラル)」が分離してしまっていることが、現代の諸問題の根源にあると、僕は見ています。「外なる自然」と「内なる自然」のつながり抜きに、どんなに人工的に別の手をつくしても、限界があると思うのです。ですので、これら2つの意味の「自然(ナチュラル)」---「外なる自然」と「内なる自然」---がうまく重なり合うようことが可能な未来を目指したいと思っています。

    そして、実は、その意味での「自然(ナチュラル)」は、「創造的(クリエイティブ)」であるということにも重なります。かつて、作家のミヒャエル・エンデは、「創造的であるというのは、要するに、人間的であるということにほかならない」と語りました。一人ひとり創造的に生きるということは、誰かがつくった(社会的に与えられた)「人工的」な人生ではなく、その人らしく(「内なる自然」の意味での)自然で人間的な人生を生きるということにほかなりません。そして、そういうことが可能なのは、人工的な環境のなかではなく、深く美しい自然(「外なる自然」)の秩序との触れ合いがある生のなかで、本当に実現できると考えているのです。

    その意味で、井庭研が目指す「創造的(クリエイティブ)」というのは、何らかのメソッドやテクノロジーを用いて「人工的」に飛躍的な思考を実現するというようなものではなく、一人ひとりが本来もっている創造性を十全に発揮するということなのです。この一人ひとりがもつ創造性は、人工的なものではなく、自然(ナチュラル)なものなので、それを僕は、「ナチュラル・クリエイティビティ」(Natural Creativity:自然な創造性)と呼んでいます。世の中的にはAI(人工知能)が全盛ですが、だからこそ、僕らは人間が本来持っている「ナチュラル・クリエイティビティ」の方に着目したいのです。

    ナチュラルにクリエイティブに生きる」とは、一人ひとりがもつナチュラル・クリエイティビティを発揮して生きていくということです。そして、それが最も高まるのは、「外なる自然」とつながり調和し共鳴するときである、と考えているわけなのです。このような考えのもと、井庭研では、一人ひとりが自身のナチュラル・クリエイティビティを発揮し、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことができる社会、すなわち「ナチュラルな創造社会」を実現することを目指して、研究・実践に取り組んでいます。

    以下では、井庭研が目指している未来像(Vision)、それに向かう研究・活動の根底にある「問い」(Mission)とアプローチ(Approach)、そして、その研究の学問的な位置づけ・野望に対する考え(Academic)、そして、そのための教育・育成の方針(Education)について説明します。


    ■Vision - 「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことができる「ナチュラルな創造社会」へ

    僕は、ここ一世紀の社会の変化として、3つのCの重点のシフト --- Consumption → Communication → Creation --- が起きていると見ています。「消費社会」から「情報社会」、そして「創造社会」へのシフトです。

    欧米では一世紀ほど前に、日本では戦後に「消費社会」が始まり、物やサービスを享受するということに人々の関心が集まり、それこそが生活・人生の豊かさの象徴となる時代でした。その後、1990年代から始まった「コミュニケーション社会」(いわゆる情報社会)では、インターネットと携帯電話が普及するにつれて、人間関係やコミュケーションに意識がより向けられるようになり、オンライン/オフラインを問わず、よい関係やよいコミュニケーションを持つことが生活・人生の豊かさを象徴するものになりました。そして、これからの「創造社会」の時代においては、自分(たち)を取り巻く世界や自分の暮らし・人生を構成するものを、どれだけ自分(たち)でつくっているのか、ということが生活・人生の豊かさを表すようになっていくと思われます。

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    創造社会はいま徐々に始まりつつあるのですが、その萌芽的な事例としては、ファブ(FAB)による「ものづくりの民主化」、社会問題を解決する独自のモデル・仕組みを試みる「社会起業家」、地域における「住民参加型のまちづくり」、自分たちでの新しいライフスタイルやワークスタイルの構築、自分らしい人生キャリアをつくる、などがわかりやすいでしょう。このような、自分(たち)でつくるという「創造化」は、これから、教育、ビジネス、組織、行政、地域、家庭などあらゆる場を変えていくことになるでしょう(情報化によっていろいろなことが変わったように)。

    このような創造社会では、一人ひとりがもつナチュラル・クリエイティビティを発揮しながら、日常や仕事上の問題を解決したり、これまでにないものを生み出したりしていくことになります。これには、そういうことができるという自由度・可能性が高まるという希望に満ちた素晴らしい面と、そうやって各自が自分で問題解決や創造をしていかないと、誰も代わりにはやってくれない(すなわち、自分たちでなんとかしなければ生き残れない)というシビアで過酷な面もあります。複雑多様化した社会を動的に維持・生成し続けるためには、一人ひとりがもつナチュラル・クリエイティビティを発揮することが求められるのです。

    「創造社会」に重なる未来ヴィジョンを早くから描き伝えてきたダニエル・ピンクは、ロジカルで分析的な「情報化」の時代に対して、これからの時代は、創作力や共感、喜び、意義というものが、より重要になってくると指摘しています。まず、「パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力」が発揮される機会が増え、求められるようになります(ダニエル・ピンク『ハイコンセプト:「新しいこと」を考え出す人の時代』)。そして、「他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力」も重要になると言います。

    このように、一人ひとりが、自分の自然な創造性を発揮する「創造社会」では、このような力とセンス(感性)を磨いていく必要があり、それらをうまく発揮することそのための教育・支援が重要となります。さらに、一人ひとりが創造性を発揮するとともに、チームでのコラボレーションや、より広い他者との連鎖・増幅を通じて共創していくことができれば、自分たちで自分たちの社会をアップデートしていく「自己革新的な社会」になるでしょう。そうなれば、現在、すでに限界が感じられているような「一部の人が考え、それを承認して受け入れるだけの民主主義」から、誰もがその具体的なアイデア生成に寄与することで社会を形成していく「創造的民主主義」(クリエイティブ・デモクラシー:Creative Democracy)の世界へとシフトしていくでしょう。

    しかも、それは単に「創造的」であればよいだけではありません。現代社会が抱える諸問題を解決していくためには、「ナチュラル(自然)」という側面が欠かせないと思うのです。ここ一世紀の間に、日本をはじめ世界中の多くの人々が、自然から離れた暮らしをするようになりました。改めて、自然との関わり方自分たちの暮らし方について再考しなければならない時期に来ていると思います。

    解剖学者の養老孟司は『都市主義の限界』という本のなかで、「戦後社会の変革を、私は都市化と定義してきた」と述べています。都市化においては「なにごとも人間の意識、考えること」が重要だとされ、「排除されるのは、意識が作らなかったもの、すなわち自然」であると言います。そして、「排除された自然は、やがて都会人のなかでは現実ではなくなる」のだと指摘しました。そして、「人間を構成するもう一つの重大な要素」である「無意識」も、意識化できないがゆえに排除されてしまうと指摘しました。まさに現代社会で起きていることだと思います。

    さらに、「都市とはすべてが人間の所行で生じたものであるから、そこで起こる不祥事はすべて『他人の所為』なのである」ため、すべてのことが行為・思考に帰せられる「人工的」な世界になるわけです。養老孟司との対談のなかで宮崎駿が「視線の矛先が、いまの時代、人間にばかり向いているというのは、ドキリとさせられます」(『虫眼とアニ眼』)と語っているのですが、同感です。このように、人工的な環境のなかで、意識化された物事と人間同士の関係のなかで生きているために、現在のようなとても息苦しく、閉塞感を感じるようになってしまっているのではないでしょうか。

    そして、現代では、あまりにも人々が自然から離れてしまっています。哲学者ミシェル・セールは、現在のフランスでは農家の人口は全体の約10%に過ぎないけれども、一世紀前には80%が農民だったと言い、「われわれの子どもたち、いや、私以降の世代の大半が都会育ちで、農業の経験も動物や植物の生に触れるような体験も非常に少ない」(『惑星の風景 中沢新一対談集』)と憂いていたことがあるのですが、これは日本も同様でしょう。これからの「ナチュラルにクリエイティブに生きる」時代においては、もっと多くの人が、自然のなかに入り、農にも多少関わり、自分たちの身体をつくる「食」のこと、そして、「暮らしの環境」について考えていくことが重要になるでしょう。そして、そういうことに関わることが、生活・人生の豊かさを考えるということになるのです。

    これまでの近代の人工的な社会から「ナチュラルな創造社会」にシフトし、人々がより「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ようになる --- このような未来ヴィジョンのもと、井庭研では、そのような未来に向かうための研究・実践・教育を行っています。

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    ■Mission - 研究の根底にある問い

    井庭研での研究の根底にある問いは、「創造とはどういうことか」、「どうしたら一人ひとりのよりよい創造実践が可能になるのか」、そして「創造的な組織・社会を実現するにはどうしたらよいのか」ということです。その背景には、創造という出来事や、一人ひとりのよりよい創造実践、創造的な組織・社会の実現は簡単ではなく、蓋然性が低い(起きやすさが低い)ということがあります。その蓋然性の低さを乗り越えて、それらが可能になるのはいかにしてなのか、そのことを根源的に問うています。

    この問いに答えるためには、「創造の研究」に取り組むとともに、「どのような方法・メディアがあれば、人は自らの自然な創造性を発揮して、他者ともに協働的に創造実践することができるのか」ということを考える必要があります。そして、それがいろいろな分野でどのようなことなのかを具体的に明らかにしていくことも不可欠です(その成果が個々のパターン・ランゲージとして表現されます)。さらに、「ナチュラル(自然)であることとクリエイティブ(創造的)であることはどのように関係し、重なり合い、融合させていくことができるのか」ということについても、その本質を深く考えることが重要になります。

    井庭研で取り組んでいるすべての研究は、それぞれのプロジェクト目標を達成するだけでなく、今挙げたような根本的な問いに答えるための研究になります。

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    ■Approach - 創造実践のための言葉をつくる

    井庭研では、個人の思考・実践を支えるとともに、組織・社会のなかでのコミュニケーションを変えるメディアとして、「パターン・ランゲージ」の作成と研究に取り組んでいます。パターン・ランゲージが、僕らがつくっている「未来をつくる言葉」なのです。

    パターン・ランゲージ(Pattern Language)は、もともとは、人間的な自然な質を生む設計(デザイン)の知を共有するための方法として、建築分野で生まれたものでした。その後、ソフトウェアの設計(デザイン)に応用され、さらには教育や組織におけるやり方・型の共有にも応用されました。井庭研では、そこからさらに領域を広げ、暮らしや仕事、生き方のパターン・ランゲージをつくってきました。これまで十数年間で、70種類を超えるいろいろな領域の1700以上のパターンをつくってきました。それらは書籍として出版されたほか、パターン・カードは全国で使われています。

    それぞれの領域のパターン・ランゲージは、それぞれの領域での実践を支え、それについて思考したり、コミュニケーションしたりすることを支援します。それがあることで、多くの人が、起こりがちな問題(落とし穴)に陥ることなく実践したり、問題を解決したりできるようになります。また、今後のことを予期・計画できるようになったり、振り返り、改善していったりすることもできるようになります。さらに、パターン・ランゲージで提供されている新しい「言葉」を語彙(ボキャブラリー)として、実践について語ったり問いを投げたりしやすくなります。このように、パターン・ランゲージは、パターンに支えられた実践を通して、それを使う人たちの「未来をつくる」ことを支援します。

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    井庭研では、いろいろな領域に関するプロジェクトを行っています。それぞれのプロジェクトは、自然、創造、暮らし、生き方、仕事、組織、教育、芸術などの個別領域における課題・目標を持っており、これらのプロジェクトは、個別の目標を持ちながらも、その根底には、すでに紹介した「どうしたら一人ひとりがよりよい創造実践を実践できるのか」と「どうしたらチームや社会的によりよい創造実践ができるのか」という問いへ答えようとしているのです。また、ワークショップを設計・実施したり、日常の環境に埋め込むための新しいメディアのデザインなども行うことで、「ナチュラルでクリエイティブに生きる」ことを支援することに取り組んでいます。

    さらに、井庭研でつくるパターン・ランゲージは、「ナチュラルな創造社会」という「未来をつくる」ことにも寄与します。パターン・ランゲージがいろいろな領域でつくられていくことで、多くの人々がその人にとっての新しい領域の創造実践を始めやすくなる状況が生まれます。つまり、人々の創造実践の自由度が高まるのです。井庭研が目指しているのは、あらゆる領域でパターン・ランゲージが創造実践の下支えをしている世界であり、僕たちの研究・実践は「ソフトな社会インフラ」をつくることの一翼を担っていると言うことができます。

    このように、井庭研では、個々のパターン・ランゲージによって、各人がパターンに支えられた実践によってその人の「未来をつくる」ことを支援するとともに、さまざまな領域でパターン・ランゲージの「ソフトな社会インフラ」を整備していくことで、「ナチュラルな創造社会」という「未来をつくる」--- その二重の意味で「未来をつくる言葉をつくる」ことに取り組んでいるのです。

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    ■Academic - 今の実学、未来への実学、未来の実学となる「新しい学問」をつくる

    井庭研が取り組んでいるのは、社会的な意義をもつ極めて「実学的」な研究です。しかしながら、現在の問題を解決するというだけでなく、将来起きる問題を解決することにも寄与し、未来をかたちづくるということにつながっています。つまり、「今の実学」であるとともに、「未来への実学」「未来の実学」でもあるのです。

    学問的に見たときに、実は、上記のような問いに直球で答えてくれる学問分野は、現在ありません。そのため、既存の学問的枠組みや方法論を超えた「新しい学問」を構築しながら取り組むことが必要となります。それゆえ、井庭研では、新しい学問の土台をつくりながら、その上で具体的な研究を進め、そのことによってさらに土台が固まっていくというような、大胆で実験的なやり方で研究に取り組んでいます。

    その「新しい学問」を、僕は仮に「創造実践学」と名づけています。まだその全貌は見えていませんが、おぼろげに主要な骨格が見えてきているところです。もちろん、いまやっている研究のベースとなり、指針が得られるくらいに固まってきている部分もあります。その点は安心してください。「創造実践学」という名称には、創造実践を研究する学問だという「創造実践・学」(Study on Creative Practice)という意味と、創造の実践と学術的研究の両方に取り組む「創造の実践 / 創造の学」(Practice and Study of Creation)でもあります。

    この「新しい学問」を構築では、単に、既存学問同士を結びつけるというような「学際的」(インター・ディシプリナリー:inter-disciplinary)なものにはとどまりません。いろいろな学問領域を横断し、それらを超越して研究するという「超領域的」(トランス・ディシプリナリー:trans-disciplinary)な研究になります。つまり、すでに有効だと知っている方法や知識の「合わせ技」で戦うというのではなく、そもそもの根本から再考し、自分たちの方法や道具を自分たちでつくっていく必要があるのです。

    科学哲学者のトーマス・クーンは、パラダイムシフトが起きるような状況では、哲学に立ち戻ってそこから考えるということが重要になると述べました。「危機が認められる時代には、科学者たちは自らの分野の謎を解明する手段として、哲学的分析に立ち向かうことがある」(トーマス・クーン『科学革命の構造』)。同じように、井庭研では、ときに哲学にまで立ち戻り、自分たちの考えや方法を再構築するということをしています。そしてさらに、哲学のみならず、社会学、人類学、認知科学、心理学、教育学、建築学、デザイン論、芸術論、美学、数学、文学、経営学、思想史などを必要に応じて縦横無尽に飛び込み、学び、取り入れていきます。しかも、西洋の学問だけでなく、東洋哲学・思想とも積極的に関わり、西洋と東洋の知を融合させたこれからの学問をつくっていこうとしています。

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    また、学問のあり方も「ナチュラルでクリエイティブ」なかたちに変わっていくことになります。すでに上でも取り上げた哲学者ミシェル・セールは、農業に関わる人口の減少について触れた文脈のなかで、次のように語っています。「作家であれ哲学者であれ社会学者であれ、今世紀初頭にはほとんど万人が農業を直接に体験していたのに、現在では誰もそんな体験をしていない。すなわち二〇世紀最大の問題、最重要の事件は、思想のモデルとしての農業の消失だとさえ言えると思います」。これは非常に興味深い指摘です。これからの学問は、物事を分解して分析する機械論的なアプローチや「工業的な製造」型の設計・制御の思想にもとづくものではなく、生命的な複雑さをまるごとつかみ、それを育てていくような「農業的な育成」型の学問になるのではないかと僕は考えています --- それがどういうことなのかは、正直まだはっきりとはわかりませんが。

    井庭研では「新しい学問」をつくるんだという話は、そういうことに興味が湧く人にとっては、その挑戦・議論に参加できるという魅力があると思いますが、必ずしも学生メンバーの一人ひとりに求めるものではありません。それでも、これから取り組む研究が、そのようなワクワクする知的な冒険の一部であるということを「なんだか、面白そう!」と思ってくれる人を歓迎します。

    なお、今年の春休み期間中に、パターン・ランゲージのつくり方について研究する特別研究プロジェクトを実施します。春学期から新しく入るメンバーも原則として参加してほしいと思っています(春学期からの研究プロジェクト参加のための助走・準備になるとともに、いろいろなメンバーと仲よくなる機会になります)。

  • 2021年度 春の特別研究プロジェクト(井庭研)シラバス 「オンライン時代のパターン・ランゲージのつくりかた研究」(2021年 2月22日(月)〜3月5日(金))

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    ■Education - 本格的に「つくる」経験を積んでいくクリエイティブ・ラーニング

    井庭研では、以上のような研究において、本格的に「つくる」経験を積むクリエイティブ・ラーニング」(創造的な学びつくることによる学び)によって、物事への理解を深め、力を養っていきます。これからの創造的な未来を生きるみんなにとって、井庭研で「つくる」経験を徹底的に積むということは、人生における重要な"財産"を得ることになるはずです。井庭研での「つくる」経験を糧として、将来、自分たちで「未来をつくる」ことに寄与・貢献していってほしいと思っています。

    かつて、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)を構想した石川忠雄 元・塾長は、これからの社会で必要となる人を育てるために、慶應義塾に新しい学部(SFC)をつくることを提唱しました。これからの変化の時代においては、「豊かな発想で問題を発見し、分析し、推理し、判断して、実行をすること」が必要になり、それが「人間が経験のない新しい現象に対応する時に使う最も重要な能力」であるとして、「『ものを考える力』を強くするという教育をどうしてもしなければならない」(石川忠雄『未来を創るこころ』)と考えたのです。こうして、「未来を創る大学」として、SFCでは「個性を引き出し、優れた創造性を養い、考える力を強くする教育」が重視されてきました。井庭研では、この問題意識と方針をしっかり受け継ぎ、さらに創造(つくる)の面を強化して、教育・育成にあたっています。

    パターン・ランゲージという「未来をつくる言葉」をつくるという研究・実践のなかで、「パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力」および「他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力」を身につけてほしいと思います。

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    将来的には、なるべく大学院まで進み、しっかりと経験を積んでいくことを強く推奨しています。大学院への進学は、研究者になるためではなく自らの力を高め、センス(感性)を磨き、本当に「未来をつくる」ことができる人として、社会に巣立ち活躍するようになるためです。学部4年生で卒業する人がいても構いませんが、少なくとも修士までの「6年制一貫教育」だというくらいの心持ち・意気込みでいてくれると、本腰を入れて取り組み、大きく成長することができるのではないかと思います。そのくらい本格的に取り組んで初めて、日本や世界において実際に変化をもたらし、「未来をつくる」人になる道が開かれるのです。博士課程まで進み、その道の第一人者になるまで「突き抜け」、未来をつくることを先導していけるようになる人も歓迎します。

    僕は、井庭研で修士マスター:master)になるということは、「未来をつくる言葉」をつくることを自分の領域で経験し、ひととおりのことをマスターした人になるということであり、博士ドクター:doctor)は、社会の問題(病)が解消・治癒されるように治療するドクター(社会の問題を治す医者)になるということだと捉えています。そのためのマスター・コース、ドクター・コースであり、必ずしも研究者になるための場ということではありません(もちろん、「未来をつくる」一つの職業として、研究者という立ち位置は選択肢の一つになると思いますが)。これは、「21世紀の社会を担うプロフェッショナル」=「高度な職業人を育成する」というSFCの大学院(政策・メディア研究科)の趣旨にもずばり合う捉え方です。

    研究会に入る前から、そのように進路を決めたり、恐れおののいたりする必要はありません。ただ、井庭研で取り組んでいることや、そこで身につける力とセンス(感性)が、単に大学時代から就職に向かうための「通り道」なのではなく、自分の人生を自分でつくっていく(そして社会に貢献し、未来をよりよくしていく)ための力とセンス(感性)をしっかりと身につける重要なステップ=階段であると知っておいてもらえればと思います。一段上るだけでなく、何段も上っていかないと、新しい見通しの視野は開けてこないのです。

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    ■Project - 2021年度のプロジェクト

    2021年度は、以下の11のプロジェクトを予定しています。井庭研のメンバーは、どれかひとつのプロジェクトに参加し、研究に取り組みます。 各プロジェクトは、複数人で構成され、成果を生み出すためのチームとして、ともに助け合い、高め合い、学び合いながら、研究に取り組みます。

    (1) 自然のなかの子育て・暮らしのパターン・ランゲージの作成
    (2) 新しい創造的な学校・教育づくりのパターン・ランゲージの作成
    (3) 組織の理念を具体的的実践につなげるためのパターン・ランゲージの作成
    (4) 生態系保全活動のパターン・ランゲージの作成
    (5) パターン・ランゲージによる新しい開発援助
    (6) パターン・ランゲージを活用した高齢者ケア実践の研修デザイン
    (7) 「ワクワクする人生」を生きている人の「人生の育て方」を紹介するZINEの制作
    (8)「道を極める」感覚を遊びのなかで体感できる面白いボードゲームの開発
    (9) 商いの実践探究コミュニティの研究
    (10) 卒資本主義と創造的民主主義へのシステミック・チェンジの構想
    (11) 音楽作曲のパターン・ランゲージの作成(新規募集無し)


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    各プロジェクトの概要は、以下のとおりです。各プロジェクトで扱うテーマの範囲・特徴がわかる重要文献のリストは、こちら「2021年春学期 井庭研 各プロジェクトにまつわる文献リスト」を参照してください。

    (1) 自然のなかの子育て・暮らしのパターン・ランゲージの作成
    現代社会では、人間は自然との関わりの多くを失い、人工的な環境・制度のなかで育ち・暮らしています。その「人間関係」「人工的な環境・制度」のなかで息苦しさや窮屈さ、閉塞感を感じている人は多く、心身への悪影響も少なからずあるようです。そこで、本プロジェクトでは、子どもの健全な成長を支え、生きる力を育むこと、そして、よりいきいきと暮らしていく人生に向けての心身の豊かな土壌を養うことを目指します。具体的には、0〜14歳くらいの子どもの子育て中の親や、保育・教育に携わる人が、どのように「自然のなかの子育て・暮らし」を実現することができるのかを明らかにし、「自然のなかの子育て・暮らしのパターン・ランゲージ」を作成していきます。作成にあたっては、北欧から始まった「森の幼稚園」や、日本での里山遊び、シュタイナー教育、自然を読み解く力などについての文献調査を中心に、関係者のインタビューも行うことで、実践における大切なことを抽出・言語化・体系化していきます。

    (2) 新しい創造的な学校・教育づくりのパターン・ランゲージの作成
    軽井沢風越学園や大日向小学校 しなのイエナプランスクールなど、日本でも新しいタイプの学校が始まっており、また全国のいろいろな学校でさまざまな工夫がなされています。未来に向けた創造的な人を育てる教育は、どのようにデザイン(設計)され、実践されているのでしょうか? 本プロジェクトでは、主に「創造的な学び」(クリエイティブ・ラーニング)の面に注目し、そのような創造的な教育実践を行っている学校を研究し、関係者にインタビューすることで、設計・実践上の大切なことを抽出・言語化・体系化し、「新しい創造的な学校・教育づくりのパターン・ランゲージ」を作成していきます。

    (3) 組織の理念を具体的実践につなげるためのパターン・ランゲージの作成
    組織が大切にしている理念やコア・バリューが、個々の実践においてしっかりと体現されるようになるには、どのような支援ができるでしょうか? 本プロジェクトでは、理念やコア・バリューのひとつひとつが、どのような状況でどのように実践されているのかを明らかにし、それをもとに、理念やコア・バリューを実践につなげるためのパターン・ランゲージを作成します。本プロジェクトは、ある企業との共同研究として行われ、具体的にその企業の理念・状況に合わせてパターン・ランゲージを作成した後には、実際に組織内での活用導入・効果検証へとつなげていく予定です。

    (4) 生態系保全活動のパターン・ランゲージの作成
    人間の暮らしは自然との関係のなかで成り立っています。食品や衣類はもちろん、エネルギーや日々の生活で用いるあらゆる物は自然資源を活用しています。しかし、近代化の過程で、暮らしや産業の変化とともに人間と自然との関係も変化し、過開発による生態系の破壊(オーバーユース)、あるいは管理放棄による荒廃(アンダーユース)といった問題が発生しています。こうした状況に対し、各地域レベルでどのように自然との関係を再構築していくことができるでしょうか? そして、そのための活動をどのように展開していけばよいのでしょうか? 本プロジェクトでは、生態系保全・活用の活動がうまくいっている事例を研究し、そこから実践上の大切なことを抽出・言語化・体系化して「生態系保全活動のパターン・ランゲージ」を作成します。これまではフィールドワークとインタビューによって調査を進めてきましたが、来学期は、主に文献調査を中心として事例・知見を研究していきます。

    (5) パターン・ランゲージによる新しい開発援助
    これまで井庭研では、仕事、教育、暮らし、生き方などのさまざまな分野のパターン・ランゲージをつくってきました。それらのパターン・ランゲージは、いろいろな分野の実践上のコツ・大切なことを共有するための実践支援のために活用されています(実践を支える言語)。また、パターン・ランゲージを用いると、自らの経験や未来について語り合うことができるようになることもわかっています(コミュニケーションのメディア)。さらに、他者の実践・事例を見たときに、何をしてどういう効果が出ているのかを分節化して把握しやすくもなります(認識の眼鏡)。本プロジェクトでは、このような効果をもつパターン・ランゲージを、国内外の諸地域の人々のエンパワーに活かしていくことを試みます。例えば、フィリピンの若者の支援として、現地の関係者や支援者と協力し合いながら、これまで井庭研でつくってきたパターンのなかから重要なパターンのセットをつくり、現地語で提供し、活用するための伴走を行います(パターン・ランゲージ・リミックスと伴走型支援)。その実践のなかで、人々のケイパビリティ(潜在能力)を高める、新しい開発援助(発達・発展の支援)のかたちを構築していきます。本プロジェクトでは、海外だけでなく、日本の地方の高校生のエンパワーメントなどにも取り組みたいと思っています。

    (6) パターン・ランゲージを活用した高齢者ケア実践の研修デザイン
    高齢者ケアの分野では、現場での実践のなかで多くのことが学ばれていますが、そのような現場での学びにおいて、どのようによりよいケア・介護について意識・経験を豊かにしていくことができるでしょうか? 本研究プロジェクトでは、パターン・ランゲージを用いた対話や実践支援による新しいアプローチを開発し、実践導入していきます。具体的には、井庭研でこれまでに作成してきた「ともに生きることば:その人らしく生きるケアの実践」(仮)や『旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』とともに、『対話のことば』や『コラボレーション・パターン』『おもてなしデザイン・パターン』など、井庭研で作成してきた様々なパターン・ランゲージを活用し、実際に介護施設等で研修を実施していきます。支援する側/支援される側という区分を超えて、自分たちの「ともに生きる」スタイルを育てていくことを促すことを目指します。

    (7) 「ワクワクする人生」を生きている人の「人生の育て方」を紹介するZINEの制作
    「自分らしい、よい人生を送りたい」という思いは、誰もが持っているでしょう。しかし実際には、世の中の常識的な生き方を踏襲して、思うようにはいかないと感じている人も多いのではないでしょうか。そのような現代の日本において、自分なりにワクワクする人生を生きている人は、一体、どのようにしてそのような生き方・人生が可能になったのでしょうか? 井庭研では2020年度に、ワクワクする人生を生きている方々にインタビューし、「ワクワクする人生の育て方:一度きりの人生を自分らしく生きるヒント」というパターン・ランゲージを作成しました。そのなかで、ワクワクする人生を生きている方々は、「庭」を育てるように自分の人生を育て、楽しんでいることがわかりました。本プロジェクトでは、その成果を活かして、「ワクワクする人生」を生きている人たちの「人生の育て方」を紹介する「ZINE」(ジン:オリジナルの小冊子の雑誌)を制作し、ワクワクする人生を生きたいと思う人の生き方の参考になることを目指します。

    (8)「道を極める」感覚を遊びのなかで体感できる面白いボードゲームの開発
    芸術でも、学問でも、スポーツでも、どのような分野でも、「道を極める」ということは、極めた者にしかわからない世界です。しかし、「道を極める」上で何が大切かということは、もしかしたら知ることができるかもしれません。そこで、井庭研では2020年度に、「道を極める」ということを研究し、「道を極める」ことのパターン・ランゲージを作成しました。その研究では、650年以上続いている「能」の世界の道の極めかたを、秘伝書である『風姿花伝』を読み解くとともに、能楽師にもインタビューをして、「道を極める」ための大切なことを明らかにしてきました。本プロジェクトでは、その成果を活かして、「道を極める」感覚を遊びのなかで体感できる面白いボードゲームの開発に取り組みます。ここでいうボードゲームというのは、「道を極める人生ゲーム」のようなものだと考えれば、イメージしやすいと思います。そのようなゲームがあることで、遊んでいるなかで、道を極める感覚を養ったり、チームメンバーと共通認識をもったり、家族で大切なことを共有し語り合ったりすることができるようになると考えられます。本プロジェクトでは、子どもから大人まで、ゲームとして楽しむことができるボードゲームの開発を目指します。

    (9) 商いの実践探究コミュニティの研究
    実践者がそれぞれ探究し、集まり交流する「実践探究コミュニティ」と呼び得るコミュニティがあります。小阪裕司さんが主宰するワクワク系マーケティング実践会では、1500店・社の会員が、日々の商いの実践について報告し、交流し、学び合っています。そのような実践探究コミュニティはどのように成り立ち、どのような学びが展開されているのでしょうか? また、なぜ、成立が難しい大人数の「学びのコミュニティ」が維持され、拡大し得ているのでしょうか? 本プロジェクトではその秘密に迫り、そのメカニズムを明らかにしていきます。本プロジェクトの成果は、単に現存するコミュニティの研究にとどまらず、これから立ち上がるコミュニティに対しても役に立つ知見を得ることを目指します。本研究は、小阪裕司さんのオラクルひと・しくみ研究所との共同研究です。

    (10) 卒資本主義と創造的民主主義へのシステミック・チェンジの構想
    地球温暖化に象徴されるような地球環境破壊は、人類の拡大的な活動の結果であり、それは資本主義による自然の搾取の結果だと言われています。そのような現状のなか、私たち人類は、資本主義や経済への依存の状態からいかにして離れることができるでしょうか? そのひとつの可能性が、「創造社会」(creative society)にあると思われます。一人ひとりが日常的な創造性を駆使し、いろいろな物や仕組みをつくることができるようになると、経済的な調達に頼らなくてよくなります。また、社会の共創システムが大規模に立ち上がることになれば、これまでとは異なる社会のあり方を切り拓くことができるでしょう。本プロジェクトでは、そのような資本主義を卒業する「卒資本主義」の可能性を探っていきます。また、民主的な社会の実現のために、一部の人に集合的決定を委ねるかたちとは異なる、新しい民主主義の可能性についても探究します。かつてアメリカのプラグマティズム哲学者ジョン・デューイが「創造的民主主義」(creative democracy)と呼び、日本の政治学者 宇野重規が「プラグマティズム型の民主主義」と呼んだ、民主主義の新しいあり方を、創造社会やパターン・ランゲージに絡めて構想していきます。

    (11) 音楽作曲のパターン・ランゲージの作成
    音楽の楽曲に潜む秩序・構造の分析と、作曲における発想・考え方を研究し、楽曲の設計のパターン・ランゲージとしてまとめていきます。パターン・ランゲージの分野のなかでは、芸術における創造に直球で向き合う珍しい、挑戦的なプロジェクトです。また、作曲の実践についてや、音楽をマスターするということに関するパターン・ランゲージも作成します。本研究は、映画やCMの映像音楽を手がける作曲家・音楽プロデューサーの渡邊崇さん(大阪音楽大学特任准教授)との共同研究です。本プロジェクトは、2020年度からの継続プロジェクトで、新規メンバー募集はありません。


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    【履修条件】

  • 知的な好奇心と、創造への情熱を持っている多様な人を募集します。
  • 井庭研での研究・活動に積極的かつ徹底的に取り組もうという気持ちがあること。
  • 「知的・創造的なコミュニティ」としての井庭研を、与えられたものとしてのではなく、一緒につくっていく意志があること。


    【その他・留意事項】

  • 井庭研では、たくさん本を読みます。難しいものもたくさん読みます。それは、知識を身につけるというだけでなく、考え方の型を知り、考える力をつけるためでもあります。さらに、他のメンバーとの共通認識を持ち、共通言語で話すことができるようになるためでもあります。創造の基盤となるのです。

  • 井庭研では、たくさん話して、たくさん手を動かします。文献を読んで考えるということはたくさんやりますが、それだけでは足りません。他のメンバーと議論し、ともに考え、一緒につくっていく、ということによって、一人ひとりの限界を超えることができます。こうして、ようやく《世界を変える力》をもつものをつくることができるのです。

  • 2021年度春学期も、全活動をオンラインで行います。安定したネット環境で参加してください。

  • 現1年生(9月生含む)、大歓迎です。長く一緒に研究・活動して経験を積み重ねることで、理解が深まり力がつくので、その後、より活躍できるようになります。そのため、井庭研では早い時期からの履修・参加を推奨しています。

  • GIGA生や海外経験のある人、留学生を歓迎しています。井庭研では、日本語での成果をつくるとともに、英語で論文を書いて国際学会で発表したり、海外の大学やカンファレンスでワークショップを実施したりしています。日本語以外の言語を扱えることは、活躍・貢献のチャンスが大きく高まります。ぜひ、力を貸してください。

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    【授業スケジュール】

    井庭研では、どっぷりと浸かって日々一緒に活動に取り組むことが大切だと考えています。大学生活の・時間割上の一部の時間を井庭研の活動に当てるというよりは、 井庭研が大学生活のベースになるということです。井庭研に入るということは、SFCでの「ホーム」ができるということもあるのです。創造的な活動とその社会的な変革は、毎週数時間集まって作業するというだけでは成り立ちません。いつも、どこにいても考え、アンテナを張り、必要なときに必要なだけ手を動かすことが不可欠です。そのため、自分の生活の一部を埋めるような感覚ではなく、生活の全体に重なり、日々の土台となるようなイメージをもってもらえればと思います。

    そのなかでも、全員で集まって活動する時間も、しっかりとります。各自が準備をしたり勉強したりする時間とは別に、みんなで集まって話し合ったり、作業を進める時間が必要だからです。井庭研では、 水曜の3限から夜までと、木曜の4限から夜までの時間は、メンバー全員で集まって活動する 《まとまった時間》 としています。これらの時間は、授業や他の予定を入れないようにしてください。


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    【評価方法】

    研究・実践活動への貢献度、および研究室に関する諸活動から総合的に評価します。


    【エントリー課題】

    このシラバスをよく読んだ上で、2月6日(土)までに、指定の内容を書いたメールを提出してください。

    エントリーメールの提出先: ilab-entry[at]sfc.keio.ac.jp ([at]を@に変えてください)

    メールのサブジェクト(件名): 井庭研(2021春) 履修希望

    以下の内容を書いたファイル(PDF)を、メールに添付してください。


    件名:井庭研(2021春)履修希望

    1. 名前(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真 (写真はスナップ写真等で構いません)
    2. 自己紹介と日頃の興味・関心(イメージしやすいように、適宜、写真や絵などを入れてください)
    3. 井庭研の志望理由
    4. この研究会シラバスを読んで、強く惹かれたところや共感・共鳴したところ
    5. 参加したいプロジェクト(複数ある場合は、第一希望など、明示してください)
    6. 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, その他)
    7. これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
    8. これまでに履修した授業のなかで、お気に入りのもの(複数可)
    9. これまでに所属した研究会と、来学期、並行して所属することを考えている研究会(あれば)

    2⽉8日(月)・9(火)に面接@オンラインを行う予定です。詳細の日時については、エントリー〆切後に個別に連絡します。

    ※エントリーを考えている人は、「井庭研に興味があるSFC生の連絡先登録(2020年12月〜2021年2月用)」に登録してください。最新情報をメールで送ります。

    ※最新情報や説明の映像などを、こちら「慶応SFC 井庭研2021年度 新規エントリー者向け情報」(note)にアップしていく予定です。そちらのページもたまにチェックしてみてください。


    【教材・参考文献】

    井庭研共通の重要文献は、以下の通りです。プロジェクトごとの文献リストは、こちら「2021年春学期 井庭研 各プロジェクトにまつわる文献リスト」をご覧ください。



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  • 井庭研だより | - | -

    2021年春学期 井庭研 各プロジェクトにまつわる文献リスト

    2021年度春学期の井庭研「ナチュラルにクリエイティブに生きる未来に向けて:創造の研究 & 未来をつくる言葉をつくる(ことで、本当に未来をかたちづくる)」各プロジェクトにまつわる文献リストは、以下の通りです(井庭研共通の重要文献については、シラバスの【教材・参考文献】をご覧ください)。

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    (1) 自然とのなかの子育て・暮らしのパターン・ランゲージの作成




    (2) 新しい創造的な学校・教育づくりのパターン・ランゲージの作成




    (3) 組織の理念を具体的実践につなげるためのパターン・ランゲージの作成




    (4) 生態系保全活動のパターン・ランゲージの作成




    (5) パターン・ランゲージによる新しい開発援助




    (6) パターン・ランゲージを活用した高齢者ケア実践の研修デザイン




    (7) 「ワクワクする人生」を生きている人の「人生の育て方」を紹介するZINEの制作



    (8)「道を極める」感覚を遊びのなかで体感できる面白いボードゲームの開発




    (9) 商いの実践探究コミュニティの研究




    (10) 卒資本主義と創造的民主主義へのシステミック・チェンジの構想




    (11) 音楽作曲のパターン・ランゲージの作成



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    井庭研 - 2021春の特別研究プロジェクト「つくりかた研究」シラバス

    慶應義塾大学SFC 井庭崇研究室 2021春の特別研究プロジェクト
    「オンライン時代のパターン・ランゲージのつくりかた研究」

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    【担当教員】 井庭 崇
    【タイプ】 特別研究プロジェクトA(4単位)
    【実施期間】 2021年 2月22日(月)〜3月5日(金)
    【実施形態】 すべてオンラインで実施
    【授業形態】 講義・グループワーク

    シラバス(1/21 マイナー・アップデート・バージョン)

    【概要】本特別研究プロジェクトでは、オンライン時代のパターン・ランゲージのつくりかたの研究を行う。昨年度までに井庭研究室で開発し実行してきた方法は、リアル空間で、模造紙や付箋を駆使したやり方でのものであった。2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大の状況下で、研究会がオンライン開催となり、複数のプロジェクトにおいて従来のやりかたに囚われない新しいやりかたを試行錯誤しながら研究を遂行してきた。そこで、本特別研究プロジェクトでは、それぞれの試みと結果を振り返りながら、完全オンラインでのパターン・ランゲージの作成方法としてまとめる。参加者は事前に、クリストファー・アレグザンダー著『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー:建築の美学と世界の本質 - 生命の現象』、およびバーバラ・ミント著『考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』と『創造的論文の書き方』を読み、プロジェクト期間中にその理解を深める話し合いの時間を持ち、実践に活かす。また、グループワークで取り組むテーマによって、追加で読むべき文献を紹介する。

    【参加条件】2020年度秋学期に井庭研究会に所属していたか、2021年度春学期に履修許可を得た学生

    【受入予定人数】約30名

    【募集締切日】2021年2月13日(土)

    【評価方法】 プロジェクト活動への参加、課題、成果論文で評価する

    【必要経費】書籍代として 2万円程度

    【使用文献】参加者は以下の文献を、各自購入し、開始日までにすべて読んでおいてください。また、グループワークでは、必要に応じて、追加で文献を入手し読むことがあります。

  • ザ・ネイチャー・オブ・オーダー:建築の美学と世界の本質 ― 生命の現象』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 2013)
  • 考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)
  • 創造的論文の書き方』(伊丹 敬之, 有斐閣, 2001)

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    【実施スケジュール(予定)】

    2月22日(月)9:30〜18:00+α
    特別研究プロジェクトの目的と進め方の紹介、および参加メンバーの自己紹介。さらに、パターン・ランゲージの作成プロセスに関するレクチャー
    文献に関する話し合い:『ネイチャー・オブ・オーダー』第1・2章
    +キックオフ懇親会(夕方〜夜:オンライン)

    2月23日(火)9:30〜18:00
    パターン・ランゲージのつくりかた研究のグループワーク
    文献に関する話し合い:『ネイチャー・オブ・オーダー』第3・4章

    2月24日(水)9:30〜18:00
    パターン・ランゲージのつくりかた研究のグループワーク
    文献に関する話し合い:『ネイチャー・オブ・オーダー』第5・6章

    2月25日(木)9:30〜18:00
    パターン・ランゲージのつくりかた研究のグループワーク
    文献に関する話し合い:『ネイチャー・オブ・オーダー』第7・8章

    2月27日(土)9:30〜18:00
    パターン・ランゲージのつくりかた研究のグループワーク
    文献に関する話し合い:『ネイチャー・オブ・オーダー』第9・10・11章

    3月1日(月)9:30〜18:00
    論文の書き方に関するレクチャー
    パターン・ランゲージのつくりかたについての論文執筆のグループワーク
    文献に関する話し合い:『考える技術・書く技術』
    アカデミック・リサーチ・パターンの紹介。

    3月2日(火)9:30〜18:00
    パターン・ランゲージのつくりかたについての論文執筆のグループワーク。
    文献に関する話し合い:『考える技術・書く技術』
    アカデミック・リサーチ・パターンの紹介。

    3月3日(水)9:30〜18:00
    パターン・ランゲージのつくりかたについての論文執筆のグループワーク。
    文献に関する話し合い:『創造的論文の書き方』
    アカデミック・リサーチ・パターンの紹介。

    3月4日(木)9:30〜18:00
    ライターズ・ワークショップについてのレクチャー
    論文をよりよくするためのライターズ・ワークショップの実施

    3月5日(金)9:30〜18:00+α
    論文をよりよくするためのライターズ・ワークショップの実施
    ライターズ・ワークショップを踏まえての論文修正のグループワーク
    特別研究プロジェクトのふりかえり。
    +打ち上げオ懇親会(夕方〜夜:オンライン)

    最終的なグループワーク成果論文やふりかえりレポートは、3月末までに提出

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  • 井庭研だより | - | -

    2020年に育てた野菜・果物 56種類

    2020年にうちで育てた野菜・果物を数えてみたら、56種類でした!

    カリフラワー、ブロッコリー、茎ブロッコリー、オクラ、ピーマン、なす、きゅうり、ミニトマト、ゴーヤ、キャベツ、芽キャベツ、白菜、サンチュ、サニーレタス、グリーンリーフレタス、サラダ菜、ベビーリーフ、ケール、ほうれん草、春菊、豆苗、枝豆、そら豆、絹さや、スナップえんどう、わけぎ、下仁田ネギ、ミョウガ、エシャレット、しそ、パセリ、イタリアンパセリ、パクチー、バジル、スペアミント、モヒートミント、カモミール、ローズマリー、しいたけ、エリンギ、なめこ、いちご、ブルーベリー、ブラックベリー、柚子、温州みかん、柿、金柑、綿花、忙しくて受粉しないで失敗したのはメロン、スイカ、食べられたが大きくならなかったのが紫玉ねぎ、まだ途中なのは、人参、玉ねぎ、にんにく、スナックパイナップル。


    その季節、季節で植えられるもの・食べたいものを植えていった結果、数え上げてみると結構な数に!

    おいしいし、楽しい。

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    食と農 | - | -

    2020年を振り返る:成果発表・活動等一覧

    2020年は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で、暮らしが大きく変わった。大学の授業が完全オンライン開講となり、子どもたちも春は学校に行かずに家にいた。国際学会は現地開催ができなくなり、すべてオンラインで実施、講演などもすべてオンラインでの実施となった。みんなで、オンラインで何ができるのか・どこまでできるのかに挑戦している感じで、それはそれで2020年代の始まりとしては意味があることであったと感じている。

    日々の仕事は、昨年までのサバティカルのように、ほぼ家にいて仕事をするというスタイル。それ自体は僕には合うので悪くはない。しかし、これまで通りの生活とは大きく異なるため、それに合わせた家事・子育てのウェイトが増えた。

    そんななか、いま自分の専門からできることはないかと考え、『コロナの時代の暮らしのヒント』を書き下ろして出版した。僕のなかでは、これほどまで、思い立ってから出版までの時間が短い本は珍しい。また、この本は、いろいろなパターン・ランゲージのパターンを紹介しつつ、我が家の具体例を紹介するというエッセイのような本になっていて、こういう本を書くのも初めてだ。思いがけない経験となった。

    来年も、コロナが明けるのかは不透明であるが(変異種なども出てきており、さらに深刻化する可能性も大きい)、そのときどきの状況に合わせて柔軟にスタイルを変えていきながら、人生における重要な一歩一歩を進んでいきたい。

    今年の成果の一覧をつくってみると、やはり、例年よりも発表や登壇がかなり少なかったんだなぁ、と思う。国際学会がオンライン開催となり、いつものような学会経験ができないということで、井庭研メンバーが今年出そうという積極的な雰囲気にならなかったことが大きい。僕もあまり積極的には誘わなかった。

    しかし、今年らしいこともある。今年は、オンライン授業を初めてやりながら、オンライン授業の研究をする(オンライン授業のパターン・ランゲージをつくる)というような探究・仕事の仕方をしてきた。それらの成果の多くは、まだ今年はパブリッシュできていないが、来年順次公開していきたいと思っている。

    井庭研の研究も面白いものがどんどんできつつあるし、僕自身の研究も深まってきてよい感じだ。来年もさらに深めて、しっかり書いて、本や論文として出していきたい。


    【書籍】

    今年、書籍を1冊書き下ろして出版しました。また、僕のインタビューが掲載された本が出ました。

  • 『コロナの時代の暮らしのヒント』(井庭 崇, 晶文社, 2020年9月)
  • 『教育の未来をつくるスクールリーダーへ』(『教職研修』編集部 編, 教育開発研究所, 2020年1月) ※5章 未来をつくる子どもたちの力と学び


    【学会基調講演】

  • Takashi Iba, "Support for Living Better Throughout the COVID-19 Situation with Pattern Languages: An Attempt at Pattern Translation to Another Domain and Pattern Language Remix," 9th Asian Conference on Pattern Languages of Programs (AsianPLoP 2020), Sep, 2020
  • 井庭 崇, 「クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育」, 2020年度「台湾日本語教育研究」国際シンポジウム, 2020年11月


    【学会発表】

    今年は、国際学会論文(英語)を10本、発表しました。*
    *以下のリストに、1本情報が抜けていたので、追記しました。

  • Takashi Iba, Miho Masai, Yuuri Abe, Yuji Kosaka, "Patterns for Building Customer Relationships in a Pattern Language for Value-Creation Marketing", Proceedings of 24th European Conference on Pattern Language ofPrograms, July, 2020
  • Konomi Munakata, Takashi Iba, "Wholeness Egg II: A Design Technique Applied in Everyday Life", Proceedings of 24th European Conference on Pattern Language ofPrograms, July, 2020
  • Haruka Iba, Takashi Iba, "Patterns for Gaining Language as Native Speakers Do: A Pattern Language for Improving Foreign Language Skills when Studying Abroad, Part 2", Proceedings of 24th European Conference on Pattern Language of Programs, July, 2020
  • Yumiko Shimokawa, Natsuki Takahashi, Misaki Yamakage, Takashi Iba, "28 Important Knacks to Improve Patterns", Proceedings of 24th European Conference on Pattern Language ofPrograms, July, 2020
  • Misaki Yamakage, Sakie Namiki, Sawami Shibata, Kiyoka Hayashi, Takashi Iba and Mitsuhiro Yamazaki, "A Pattern Language for Creating a City with Natural, Local and Creative Elements Learned from Portland, Oregon", PUARL + Building Beauty Conference 2020, September, 2020
  • Takashi Iba, Miho Masai, Yuuri Abe, Yuji Kosaka, "Patterns for Motivating Customers in a Pattern Language for Value-Creation Marketing", HILLSIDE Proceedings of Asian Conference on Pattern Language of Programs, October 2020
  • Miwane Umewaka, Ryohei Suzuki, Keibun Nakagawa, Takashi Iba, "Omotenashi Design Patterns: A Pattern Language for Creative Hospitality", HILLSIDE Proceedings of Asian Conference on Pattern Language of Programs, October 2020
  • Chiaki Sano, Yuki Kawabe, Rioja Kuroda, Takashi Iba, "Taste Language for Taste Centered Cooking: 14 patterns for Japanese soup stock," HILLSIDE Proceedings of Asian Conference on Pattern Language of Programs, Sep, 2020
  • Takashi Iba, "Support for Living Better throughout the COVID-19 Situation using Pattern Languages: An Attempt at Pattern Language Remix and Domain Translation", HILLSIDE Proceedings of Conference on Pattern Language of Programs 27, October 2020
  • Takashi Iba, Miho Masai, Yuuri Abe, Yuji Kosaka, "Patterns for Learning Through Practice: in a Pattern Language for Affective-Science-based Marketing", HILLSIDE Proceedings of Conference on Pattern Language of Programs 27, October 2020


    【講演・鼎談】

    講演・対談・鼎談は、オンライン19本、スタジオから配信2本、リアル1本行いました。

  • 前野 隆司, 井庭 崇, 岩田 華林, 「幸福学 × パターン・ランゲージ:創造社会におけるこれからの幸せな生き方」, shiawase 2020, 2020年3月
  • 井庭 崇, 原尻 淳一, 対談「Learning by creating:集めて、育てて、日常知をつくりだす」, みつかる+わかる 面白ゼミ第2回 わかる知性編, 一般社団法人みつかる+わかる, オンライン, 2020年5月
  • 井庭 崇, 三浦 英雄, 塚越 暁, 伊東 優, 原尻 淳一, 川井 拓也, 市川 力, 「つくるお父さん大集合 つくる=みつかる+わかるで面白人生」, みつかる・わかる面白ゼミ(父の日スペシャル), 一般社団法人みつかる+わかる, オンライン, 2020年6月
  • 井庭 崇, 新井 宏征, 「創造社会における学び」, VUCA labo #004, オンライン, 2020年7月
  • 井庭 崇, 市川 力, 原尻淳一, 「ジェネレーターとジェネレーターシップ」, 一般社団法人みつかる+わかる, みつかる+わかる夏の集中面白ゼミ ジェネレーターシップをイチから考える 第1回, オンライン, 2020年8月
  • 井庭 崇, 市川 力, 原尻淳一, 「ジェネレーターシップを発揮するあり方」, 一般社団法人みつかる+わかる, みつかる+わかる夏の集中面白ゼミ ジェネレーターシップをイチから考える 第2回, オンライン, 2020年8月
  • 井庭 崇, 石黒 和己, 「『複雑系』から学ぶ」, TANKENラボ #1, 探究総合研究所(TANKEN), オンライン, 2020年8月
  • 井庭 崇, 市川 力, 原尻淳一, 「ジェネレーターシップが育つ場」, みつかる+わかる夏の集中面白ゼミ ジェネレーターシップをイチから考える 第3回, 一般社団法人みつかる+わかる, オンライン, 2020年9月
  • 井庭 崇, 「パターン・ランゲージとは何か(井庭崇レクチャー)」, クリエイティブシフト, オンライン, 2020年9月
  • 井庭 崇, 「魅力的なオンライン授業づくりの工夫・コツを語るオンラインセミナー」, クリエイティブシフト, オンライン, 2020年9月
  • 安西洋之,市川文子, 井庭崇, 鼎談「未来をつくる意味の編集・デザイン」, 創造社会論2020, 2020年10月
  • 小泉寛明, 山崎満広, 井庭崇, 鼎談「ナチュラル × ローカル × クリエイティブなまち・コミュニティをつくる」, 創造社会論2020, 2020年10月
  • 前田隆行, 若野達也, 小島希世子, 井庭崇, 鼎談「働く喜び・生きがいを育む」, 創造社会論2020, 2020年10月
  • 上田信行, 塚越暁, 井庭崇, 鼎談「楽しさと面白さの体験をつくる」, 創造社会論2020, 2020年10月
  • 三田愛, 五井野太志, 山田貴子, 井庭崇, 鼎談「自然のなかで自然に生きる」, 創造社会論2020, 2020年10月
  • 鞍田崇, 渡邉康太郎, 井庭崇, 鼎談「いとおしさのデザイン」, 創造社会論2020, 2020年11月
  • 井庭 崇, 「慶応SFCの特徴と魅力」, 神奈川県立多摩高校, 2020年11月
  • 井庭 崇, 「テレワークスタイルのつくりかた」, 金融庁 昼休み講演会, オンライン, 2020年11月
  • 井庭 崇, 宇野常寛, 「コロナの時代の暮らしのヒント」, 遅いインターネット会議, 2020年11月
  • 井庭 崇, 「『クリエイティブ・ラーニング』読書会」, 苫野一徳オンラインゼミ」, オンライン, 2020年11月
  • 井庭 崇, 「ポートランドから学ぶ ナチュラルでローカルでクリエイティブなまちのつくり方のパターンランゲージ 」, ローカル都市経営学講座第3回, オンライン, 2020年12月
  • 井庭 崇, 「Lifeの本質、深い創造、クリエイティブ・ラーニング」, 風越コラボ(第二期), オンライン, 2020年12月


    【リリースしたパターン・ランゲージ】

  • 「テレワークスタイルのつくりかた:テレワーク時代の働き方をデザインするためのパターン・ランゲージ」(クリエイティブシフト)

    【メディア掲載】

    後日追記します。
  • イベント・出版の告知と報告 | - | -

    自ら「つくる」ことで経済から離れる「卒 資本主義」への創造社会ヴィジョン

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    最近、井庭研の大学院生たちと『人新世の「資本論」』(斎藤 幸平, 集英社新書, 2020)や『日本の大転換』(中沢 新一, 集英社新書, 2011)などを読み、資本主義の外部である自然の搾取や、その結果としての環境問題について議論している。資本主義は貪欲に外部を内部に取り込み搾取しながらどんどん拡大していく。もともとそのような運動性を内在していたわけだが、原発という無尽蔵なエネルギー源をもつことで、その拡大はさらに歯止めが効かなくなり、「暴走」に近いような状態となった。このような資本主義に対し、「脱・資本主義」や「脱成長」という議論がしばしば聞かれる。僕らが1990年代に取り組んでいたような話が、再燃しているような印象を受ける。地球温暖化の話題とあいまって、喫緊の課題である危機感はより高い。そんなわけで、最近、昔、環境・エネルギー問題にともに取り組んでいた熱い友人と、どうしたらいいだろうという話をしたりしている。

    このような話をしているなかで、僕が一つ不思議に思ったのは、なぜ経済システムだけがここまでの猛威を振るう存在となっているのか?ということだ。僕が依拠している社会学者ニクラス・ルーマンの機能分化した近代社会像で言うならば、経済システムは、並列して動くいくつもの機能システムの一つにすぎないはずだ(機能分化の近代社会像については『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法』の序章で紹介しているので参照してほしい)。それにもかかわらず、これほど影響が大きいほど、大きな力を持っているのだろうか? まず、そのことが疑問に浮かんだ。そこから考えを深めていくと、社会の新しいあり方へのシフトの糸口がつかめてきた。まだ大雑把な段階ではあるが、そのヴィジョンの覚書として、ここに書き記しておきたい。


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    まず、私たちが日常生活において経済から離れられない・依存してしまうのは、衣・食・住とエネルギーが経済的な調達によって得ているからであろう。つまり、経済に参加しないと、住むところ、着るもの、食べるもの、そして生活上必要となるエネルギーが調達できず、暮らせない・生きていけないのだ。だからこそ、私たちは日々働いてお金を稼ぎ、それで物やサービスを買うということしているわけで、それを止められない理由である。

    科学システムや法システム、政治システム、芸術システムや宗教システムなどには、必ずしも参加しなくても生きていくことはできる(より精神的に豊かになるということはあっても、それらに参加しないと生存し続けることができない、というわけでは必ずしもない)。これに対し、一機能システムでしかないはずの経済システムは、人が暮らす・生きるためにべったりと寄り添いながら生きていくしかないという状態になっているのだ。経済から離れられない理由、資本主義を止められない理由は、衣食住やエネルギーを経済システムに依存して調達しているというところにある。

    このような状態から脱するにはどうしたらよいのだろう? そのような「卒 資本主義」の可能性を考えてみたい。ここで、「卒 資本主義」というのは、「脱 資本主義」と似ているが、少しニュアンスの異なる言葉として提唱したい。この「卒」で表すということは、『クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育』のなかで、鈴木寛さんが「脱近代」ではなく「卒近代」という言葉をつかっていたのに着想を得ている。学校を「卒業」するように、「リスペクトをもちつつ、そこから離れ、次の段階にいく」というニュアンスが「卒」にはある。資本主義が可能にしてくれた恩恵や時期を否定せず認めつつも、そこから離れていくという意味で、「卒 資本主義」。あるいは、もっと身近なレベルの感覚で言うならば、「卒 経済依存」「卒 お金依存」と言ってもよいだろう。

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    さて、「卒 資本主義」はどのように可能になるのだろうか? その鍵は、実はこれまで僕らが語って目指していたことにこそあった、と最近気づいた。それは、「つくる」ということへのフォーカスである。僕はこれからの社会は、「創造社会」(creative society)と呼び得る社会になると考え、そのことについてここ10年ほど言い続けてきた。その社会では、人々は自らの日常的な創造性を発揮しながら、いろいろなものを「つくる」。「つくっている」ということが生活や人生の豊さの象徴になるような時代だ。この「つくる」ということが、「卒 経済依存」、「卒 お金依存」、そして「卒 資本主義」を可能とする鍵なのだ。

    さきほど見たように、衣・食・住とエネルギーをお金を払って購入して調達することで私たちの暮らし・生きることが成り立っている。この現状に対して、これからの創造社会では、衣・食・住やエネルギーも、自分で「つくる」(ことができる)ことにより、経済システム経由で衣・食・住とエネルギーを調達する必要性を減らすことができる

    たとえば、トマトを食べるために、それを「買う」からお金がかかるのであり、自分で「育てる」(つくる)のであればそれだけのお金はかからない(もちろん種や苗、肥料は入手する必要があるが)。経済システムを経由してトマトを調達するのではなく、自分で育てて収穫することで調達することができる、この視点の転換が、ここで言いたいことの要である。洋服を自分でつくれば、買って調達する必要はなくなる。つくればつくるほど、経済的に購入して調達する必要性が下がり、それゆえ、ライフコストは低くなる。お金を多く必要としない暮らしへとシフトできる。四角大輔さんは、ニュージーランドで自給自足生活を送る実験を自ら実践中で、彼のような生き方をすると、「ミニマムライフコスト」はかなり低い。完全時給自足は大変で難しいかもしれないが、ここで言いたいことの本質は、自分で「つくる」ということは、「経済」から自由になるということなのだということだ。

    これらのことは、現在の時点から見ると、難しそうに聴こえるかもしれない。自分に野菜を育てられるだろうか、あるいは服をつくれるだろうか、と。しかし、それが簡単にできるようになり、多くの人がやるようになる社会が、創造社会なのだ。1990年代の初めのまだインターネットが普及していない段階で、ネット上でお金を振り込むことができたり、ネット経由でテレビを見ることができたり、オンラインで授業ができるということは、難しいことだと思っただろう。それと同じように、なんでも自分でつくることができる世界というのは、いまの段階では、信じにくいかもしれない。しかし、FAB(デジタル・ファブリケーション)の技術や装置も開発されていて、かなりの度合いで可能になっている。太陽光パネルなどの自然エネルギー装置により自分たちのところでつくることができる。そして、それぞれの領域における創造実践の経験則を言語化したパターン・ランゲージも、日々の「つくる」の下支えをしてくれる。

    そのような「つくる」ことへのシフトは、単につくる喜びやそれに付随する学びを得られるだけではなく、「卒 経済依存」「卒 資本主義」の道を進むことなのだ、と最近気づいた。自分で「つくる」暮らし・生き方をすることで、経済システムから離れることが可能になる。これが、創造社会の姿であろう。人は、自ら「つくる」ことで、経済システムから自由になることができるのである。

    もちろん、経済がまったく不要になるということではない。完全自給自足にこだわってしまうと、それはそれで不自由になるし、経済によって成り立つよいこともいろいろある。その価値を認めた上で、経済から適度な距離をもって関わることができるようにすることを目指すのが、「卒 資本主義」への創造社会ヴィジョンである。


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    そのような「つくる」ことや「つくる」ことに関するコミュニケーションが展開される社会では、「共創システム」(Co-Creation System)と呼び得るコミュニケーションの連鎖が安定的に生じることになるだろう。そうして、いま以上に、「つくる」ことが継続的に発生しやすい状況になるだろう。そのようなことを促すメディアがパターン・ランゲージである(その点については、以前、次の論文で論じたので、ご覧いただければと思う)。

  • Takashi Iba, “Sociological Perspective of the Creative Society” in Matth us P. Zylka, Hauke Fuehres, Andrea Fronzetti Colladon, Peter A. Gloor (eds.), Designing Networks for Innovation and Improvisation (Springer Proceedings in Complexity), Springer International Publishing, 2016, pp.29-428


  • 来年度の井庭研では、このヴィジョンの解像度を上げ、さらに「卒 資本主義」を実現するための戦略も構築するプロジェクトを立ち上げる。みなさんとも、建設的な語り合いができればと思うし、応援をお願いします!
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